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東京ゲームショウでTOTTORI GAME SHOW……? 「なんだかよく分からないけど,とにかく面白いことがありそうだ」という気持ちでステージへ向かうと,会場にはすでに多くの人が集まっていた。メディアや関係者の顔ぶれもゲーム業界だけにとどまらず,この異色の取り組みに注目していた人や,筆者のように好奇心に引かれてやってきた人もいたのだろう。
イベントでは,鳥取県そのものをゲームIPとして展開する「FANTASY TOTTORI プロジェクト」と,その中核を担うRPG「竜宮国 鳥取」の詳細が発表された。
鳥取に実在する神話や歴史,食,自然,場所といった要素をゲームへ取り込み,さらに現実世界での行動までゲームにつなげていくという,かなり壮大な構想だ。
本稿では,同プロジェクトの情報が一気に飛び出した「TOTTORI GAME SHOW」の模様を,イベント終了後に行われた囲み取材での田畑 端氏らのコメントも交えながら紹介しよう。
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「鳥取をゲームにする」。鳥取県そのものをIPへ
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八重樫氏は「TOTTORI GAME SHOWとは何か」という問いに対し,「ズバリ,鳥取をゲームにいたします」と切り出した。
単に鳥取県を舞台にしたゲームを作る,という話ではない。今回の取り組みが目指しているのは,鳥取県そのものをIPにしていくことだという。
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続いてビデオ出演した鳥取県の平井伸治知事は,因幡の白兎,大国主命と八上姫の神話,鳥取砂丘,鳥取城,梨など,鳥取が持つさまざまな文化や名産を紹介。映像の最後には“鳥取国”の創国を宣言した。
八重樫氏によれば,平井知事の映像は鳥取砂丘で撮影され,コメントの多くはアドリブだったという。知事自身がこの取り組みを深く理解し,強く支援してくれていると感じているそうだ。
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47都道府県ではなく「47の国」。鳥取国の君主は八上姫
ここからはゲームの話となり,FANTASY TOTTORI PROJECT プロデューサーで,JP UNIVERSE代表取締役の田畑 端氏が登壇。田畑氏はまず,今回初公開となった「竜宮国 鳥取」の映像を紹介した。
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JP UNIVERSEが開発中の「竜宮国」は,日本を思わせる世界に47の“国”が存在し,それぞれ異なる君主が統治しながら覇を競うファンタジーRPGだ。プレイヤーはその世界の“国民”として参加することになる。
鳥取は県ではなく「鳥取国」となり,その君主を務めるのは,因幡の白兎の神話にも登場する八上姫だ。プレイヤーは八上姫に仕える立場となり,フレンドたちとともに鳥取国で冒険していく。
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鳥取国は隣国からの侵攻を受けており,プレイヤーは危機に陥ったこの国の国民として八上姫に仕え,戦うことになる。ただし,鳥取で始まる戦いはあくまで序章だ。鳥取を皮切りに,47の国が覇を競う「竜宮国」全体へとプロジェクトは広がっていく。
またプレイヤーキャラクターには,pixivの「VRoid」で作った自身の3Dアバターを利用できることも紹介された。
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AIで作る“原風景”を,クリエイターの力で上書きしていく
続いて田畑氏は,「竜宮国」の制作方法についても紹介した。
世界設定,キャラクター設定,物語の原案,ゲームデザインなど,「竜宮国」の土台となる膨大なテキスト資料は田畑氏自身が作成しているという。
とはいえ,文章だけでゲーム世界を作ることはできない。その世界をまず可視化するため,田畑氏は原作となるテキストをもとにAIでイメージを生成している。
田畑氏は,そこで生まれたビジュアルを「竜宮国の原風景」と表現した。
ただし,それを完成形とするわけではない。AIで作った原風景を出発点として,そこにさまざまなクリエイターが参加し,人の手でデザインを上書きしていくという。
田畑氏は,自分でAIを使って制作してみたことで,むしろ「人の才能がどんなところに必要なのかが,すごくよく見えてくる」と話していた。
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その“人の才能”を束ねる存在として登壇したのが,CreARTive Destruction代表で,キュレーター/アーティスティックディレクターを務める水野晃侍氏だ。
水野氏は,JP UNIVERSEが鳥取の神話や歴史,自然,風土をもとに作った世界観やキャラクターの基本設計を受け取り,外部クリエイターがそれぞれの才能を発揮できるよう,ビジュアルやキャラクター表現の方向性を整えているという。
河森正治氏が描く「鳥取魔神城」。八上姫のデザインは江端里沙氏
ここで,「竜宮国 鳥取」に参加するクリエイター陣が紹介された。
鳥取城のクリエイティブを担当するのは,「マクロス」シリーズなどで知られる河森正治氏。そして八上姫をはじめとするキャラクター制作には,「マクロスF」などでキャラクターデザインを手掛けた江端里沙氏が参加する。
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ステージでは,両氏が手掛けたイメージイラストも初公開された。
河森氏が描いたのは「鳥取魔神城」。単なるファンタジー風の鳥取城ではなく,その名のとおり,城そのものが巨大な存在へ変貌したかのようなデザインとなっている。水野氏によると,この鳥取魔神城は将来的にゲーム内で実際に動き,“暴れる”存在として落とし込んでいく予定だという。
江端氏が描いた八上姫も披露された。田畑氏は河森氏や江端氏との打ち合わせで,史実をそのまま再現するのではなく,「歴史を知ったうえで,それをヒーローにするようなエンターテインメントにしたい」と伝えたという。
完成した八上姫を初めて見た田畑氏は,「一目見たときにお仕えしたいと思った」と笑顔を見せていた。
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モンスターは敵であり“食材”。食べて初めて経験値を得る
ここからは「竜宮国 鳥取」のゲームシステムについて紹介された。
その中でも大きく取り上げられたのが,「食う」という要素だ。一般的なRPGでは,モンスターを倒すと経験値を得てキャラクターが成長していく。
しかし「竜宮国 鳥取」では,モンスターを倒しただけでは経験値を得られない。倒したモンスターから食材を手に入れ,それを料理して食べる。そこで初めて経験値を獲得し,キャラクターが成長するという。
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つまり,この世界に登場するモンスターは敵であると同時に“食材”でもある。
そこには鳥取のさまざまな食文化も盛り込まれており,どのモンスターから何が取れるのかを知ること自体がゲーム体験につながっていく。
料理には基本となるレシピが存在するが,プレイヤーが食材を自由に組み合わせることも可能だ。
例えば「鳥取カレー」のレシピに,本来は入れなさそうな食材を投入することもできる。その結果どんな料理ができあがるのかという判定に,AIを活用するという。
田畑氏はAIについて,完成されたクリエイティブを作るためだけでなく,プレイヤーの自由な行動にゲーム側が応答するための技術としても有効なのではないかと説明していた。
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ゲームが完成する前から八上姫とやり取り。「竜宮リンク」は今冬配信
そして今回,「竜宮国 鳥取」本編と並ぶもう1つの柱として発表されたのが,スマートフォン向けの「竜宮リンク」だ。
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現実世界で生活しながら,スマートフォンを通じて異世界「竜宮国」にアクセスするためのコンテンツとなる。公開された映像では,八上姫からスマートフォンへ連絡が入り,「鳥取駅で降り,改札を出よ」と指示される場面も確認できた。
現実世界で行ったことが異世界の出来事につながり,その結果が再び現実側へ返ってくる。ゲームを閉じている間も世界が動き続けるというのが,「竜宮国」全体の構想だ。
「竜宮リンク」は「竜宮国 鳥取」に先駆け,今冬の配信を予定している。田畑氏は,ゲーム完成前からプレイヤーにも世界作りへ参加してもらいたいと話していた。
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JR西日本,NECネッツエスアイ,JCB,LINEヤフーも参加。現実をゲームフィールドに
では,現実世界とゲームを具体的にどう結びつけるのか。このパートでは,FANTASY TOTTORI PROJECT テクニカルディレクターで,JP UNIVERSE取締役の岩田 亮氏が登壇。さらに,テクニカルパートナーとしてNECネッツエスアイのビジネスデザインマネージャー・三馬国生氏らが,現実世界とゲームをつなぐ技術について説明した。
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その中で紹介されたTinyFishは,Web上などに存在する動的な情報をAIによって取得,整理する技術だ。例えば,現実の店舗やホテル,鉄道といった情報をゲーム側へ取り込み,ゲーム内の出来事とリンクさせることが考えられているという。
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さらにビジネスパートナーとして,JCB イノベーション統括部長の山口朋晃氏と,LINEヤフー エンタメ事業開発ディビジョン ソリューションアーキテクトの比企宏之氏も登壇。決済や加盟店ネットワーク,LINEを利用したコミュニケーションなどを組み合わせ,「現実の世界とゲームをつなぐ」ための仕組みを検討していることが明らかにされた。
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JR西日本の八重樫氏は,このプロジェクトを始めた背景について,同社がこれまで「バーチャル大阪駅」「バーチャル広島駅」といった取り組みを続ける中で,バーチャルの力によって現実の地域を拡張できるという知見を得たと説明した。
そこへさらにゲームやゲーミフィケーションの力を組み合わせ,人の行動を生み出したり,ユーザーと一緒に地域の価値を作ったりする「全員参加型の地域創生」を目指しているという。
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田畑氏に聞く,コアなRPGと日常の体験を“分けた”理由
イベント終了後には,田畑氏と八重樫氏らを囲んでの取材も行われた。
「竜宮国 鳥取」について筆者が気になったのは,現実との連携やコミュニケーションを強く押し出すことで,肝心のRPG部分がライトなものになってしまわないのかという点だった。ゲームを普段あまり遊ばない人にも参加しやすくする一方で,田畑氏の新作RPGということで,濃いゲーム体験を期待している人もいるだろう。
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この点について田畑氏は,「中途半端なものにするのではなく,それぞれの良さをちゃんと突き詰めるため」に,2つの参加方法に分けたと説明した。
1つは,ゲームの中で「本当に濃くて深い体験」をする本編RPG「竜宮国 鳥取」。そしてもう1つが,日常生活の中から「竜宮国」にアクセスする「竜宮リンク」だ。
つまり「竜宮リンク」は,「竜宮国 鳥取」を手軽にしたスマートフォン版ではない。同じ世界に対して,ゲームの中と現実の側から,それぞれ異なる方法で参加するための仕組みというわけだ。
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囲み取材では,物語についても少し話を聞けた。序盤では,プレイヤーが鳥取国を救い,「竜宮国」の中でトップの国へ成長させていくことが大きなモチベーションになるという。
しかし田畑氏は,「そんな単純なまま物事が進むようなゲームではない」とも話す。
今回公開された映像の終盤にも,「君はヴィラン」という意味深なメッセージが登場していた。田畑氏によれば,「ただ単に鳥取を救うための英雄として遊んでいくだけではない」ことが,ゲームとしての面白さになってくるそうだ。
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なぜ最初の国が鳥取だったのか
では,47の国から,なぜ鳥取が最初に選ばれたのか。
田畑氏は,自身もプロジェクトを始める以前は,鳥取に対してそこまで強い印象を持っていなかったと振り返る。しかし実際に鳥取を訪れ,いろいろなものを知ると,その印象が大きく変わったという。
行く前にはそれほど印象が強くなかった鳥取と,知ってみるとコンテンツとしてめちゃくちゃ魅力的だった鳥取。田畑氏は,その両方を自身が経験していることが,1国目として大きな意味を持つと説明した。
また,鳥取の人々にも鳥取をIP化していこうという意志があり,コンテンツ,人,環境が揃っている地域だと感じているとのこと。「世界中の人が鳥取をまず知っていきたくなる目標に,1回鳥取を突き抜けようと思ってやってます」と,田畑氏は語っていた。
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八重樫氏も,JR西日本がこの取り組みで目指しているのは,単純に鉄道を使って鳥取へ来てもらうことだけではないと話す。
実際に鳥取を訪れることはもちろん,別の地域で鳥取の商品を買うなど,ゲームをきっかけとして鳥取県や地域に資する行動を取ってもらうことも大切だという。
一方で,今後企画が具体化していけば,割引切符やフリー切符などとゲームを組み合わせることも検討できるとのことだった。
“その瞬間にしかない現実”もゲームのイベントになる
リアルタイムな現実の情報をゲームへどう取り込むかについて,田畑氏は囲み取材でさらに具体的な例を挙げている。
例えば,ある店に「残り1個しかない商品」があるとする。TinyFishの技術によってその情報を取得し,ゲーム側からプレイヤーへ知らせる。そして実際にその商品を手に入れたプレイヤーが,ゲーム内でも特別な武器などを入手できる。
つまり,いつでも好きなときに挑戦できる一般的なゲームイベントではなく,その瞬間の現実世界で起きていること自体をゲームのインセンティブへ変えていくわけだ。
JCBやLINEヤフーが参加しているのも,この構想のためだ。決済やコミュニケーションなど,ゲーム会社だけでは用意できない現実側の仕組みを組み合わせ,「現実をゲームのフィールドにしていく」ことを目指しているという。
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「竜宮リンク」を本編より先にスタートする理由もここにある。
ゲーム本編を完成させてから現実との連携を始めるのではなく,まずスマートフォンから異世界に参加できる環境を作り,現実世界でどんな行動を生み出せるのかを先行して構築,検証していくという。
なお,「竜宮国」は鳥取だけで終わるプロジェクトではない。まずはJR西日本のエリアが中心になるものの,囲み取材では,将来的に西日本以外も含む47の“国”へ展開していきたいという構想も語られていた。
鳥取をモチーフにしたRPGを作るだけなら,話はもっと単純だっただろう。
しかし「竜宮国 鳥取」が目指しているのは,鳥取の神話や食,場所をゲームへ取り込むだけではなく,ゲームで起きたことを現実へ,現実で起きたことをゲームへ戻していくことだ。
今回の発表だけでは,その全体像がまだつかみにくい部分もある。だが,モンスターを料理して成長する本編のシステム,「竜宮リンク」による現実側からの参加,そして実際の駅や店,決済,コミュニケーションまでゲームにつなごうとしていること。これらを並べてみると,このプロジェクトが「鳥取を舞台にしたゲーム」ではなく「鳥取そのものをゲームにする」ことを目指しているという意味は,かなり見えてきた。
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まずは今冬に「竜宮リンク」,そして2027年にはSteamで「竜宮国 鳥取」が始動する予定だ。
かなり大きなプロジェクトだが,今回の映像には,バトルや物語性,クルマでの移動,「食」の扱いなど,随所に「ああ,田畑さんのゲームだな」と感じられる部分があった。壮大な構想の向こう側に,ちゃんと1本のRPGがある。“もう1つの鳥取”が,どんなゲームとして形になっていくのか。



















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