チャ・ミンソ氏は「HIT」「OVERHIT」などを経て,「ブルーアーカイブ -Blue Archive-」を担当し,現在は新作「プロジェクトRX」を開発しているディレクター(RXスタジオPD/副本部長兼任)だ。
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今回の講演は「ブルーアーカイブ」のメインストーリー最終編の完結後にまとめられたポストモーテムをベースにしている。チャ・ミンソ氏は「すでにプロジェクトから離れているため,社内では話していなかったが,今なら率直に語れる」と述べて講演を開始した。
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まずは「うまくいったこと」から。1つ目は「ビジョンビルドの構築」だ。
チャ・ミンソ氏が開発チームに合流後,当初は戦闘のプロトタイプと演出検証が中心だったという。その後,年末のマイルストーンに向けて,起動から戦闘まで約5分で体験できる「ビジョンビルド」の完成を目標に設定した。
この段階では実装を最小限に抑えつつ,スクリプトや演出により「機能が完成しているように見える状態」を作り込んだ。ピッチ用ビルドは「タイトル画面/ロビー/ステージ選択/編成/戦闘」で構成され,小規模ながら「ゲームとして成立する体験」を実現している。
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続いての成功要因は「権限委譲」だ。
ビジョンビルドの手応えを受け,チャ・ミンソ氏はアートディレクターやシナリオリードに大きな裁量を委ねる一方で,ゲーム全体の設計方針に集中した。
プレイ時間,キャラクター数,背景数といった「上限設計」を明確化し,開発全体の判断基準を共有したことで,各チームが迷わずに制作できる体制が整った。
3つ目は「日程遵守と先行リリース戦略」だ。
「ブルーアーカイブ」は2018年4月に開発が始まり,2021年2月に日本版がリリースされた。当初の目標より遅れはあったものの,約3年でローンチを実現している。
チャ・ミンソ氏は「先行リリースの効果」を重視し,完成したゲームを適切なタイミングで届けることを大切に考えている。そのため,テスト段階ではプレイ時間を基準にコンテンツ量を逆算し,開発を進めた。
また,「作って,遊び,改善する」というサイクルを徹底し,ドッグフーディング(製品やサービスを自社で日常的に使用して改善する施策)による継続的な調整を行った。
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4つ目は「長期運営設計」だ。
少人数体制(約70名)での開発だったため,地域展開は日本→グローバル→中国の順で段階的に行われた。
設計面では「OVERHIT」の経験を踏まえ,単純な「強さ依存」を避ける方針を採用。相性(属性)システムと総力戦を軸に,複数のパーティ運用を前提とした長期構造を構築した。
UI表現も含めて視認性を高め,「Easy to learn, hard to master」(覚えるのは簡単,極めるのは難しい)を実現している。
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一方で課題として挙げられたのが「ビルドの安定性」だ。
リリース初期には不具合やメンテナンス対応が発生した。要因としては,内部QA基準の未整備やパブリッシャ連携の経験不足があった。
さらに想定を大きく上回るDAU(500%超),インフラ障害,コロナ禍による開発環境の制約が重なり,安定性に影響を与えた。
チャ・ミンソ氏は「内部プロセスの成熟不足だった」と総括している。
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次に挙げられたのは「日常コンテンツの不足」だ。
戦闘中心の設計から始まったものの,開発を通じてキャラクターとの交流体験の重要性が高まり,モモトークやカフェなどが追加された。
ただし,これらはUI,アート,シナリオを横断する高コスト領域であり,キャラクター追加のたびに制作負荷が増大する構造だった。
3つ目は「アップデート準備」である。
当初は1〜3か月分の先行制作で十分と考えていたが,実際には6か月以上のストックが必要だったと振り返る。長期運営を前提とすると,事前準備の重要性は想定以上に大きかったという。
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質疑応答では,開発哲学やマネジメントについて語られた。
クリエイター間の衝突は「不和は情熱の表れ」とし,重要なことは記録と基準化,そして期限内での完成だと説明。また,デイリークエストについて,日常接触そのものの価値を重視し,小さな体験の積み重ねが重要であると述べた。
さらに意思決定では,即時改善可能なものから優先的に対応し,反復改善で品質を高める方針を示していた。
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チャ・ミンソ氏は講演の終盤,自身の開発スタイルを「単純な反復」と表現した。
作る→遊ぶ→直す→再び作る。このループを回し続けることが開発の本質だという。
現在は「プロジェクトRX」に取り組んでおり,「ブルーアーカイブ」で得た経験を次に活かすことがテーマだと語る。また,「現在の『ブルーアーカイブ』は優れたチームが支えている」と述べ,信頼を示した。
最後に「ゲームが自分の人生を救った。だからこそ,同じように誰かを救うゲームを作りたい」と熱く語り,講演を締めくくった。



















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