プレイレポート
ホラーADV「ビビエット」プレイレポート。精緻なドット絵で描かれるホラーを味わいながら,じっくりと謎解きに挑む
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ドット絵という技法を使うことでノスタルジックなムードを醸し出す本作。だが,そのビジュアルは単に懐古趣味的なものではなく,プレイヤーの想像力に強く訴えるものでもある。
本稿では,そんな懐かしくも鮮烈な,本作のプレイ感をお伝えしていこう。
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ドット絵が呼び起こす,プレイヤーごとに異なるイメージ
本作の物語は,主人公ジュールが病院のベッドで目覚めたところから始まる。
2日ぶりに意識を取り戻した彼の前に,1人の刑事が現れた。その刑事──デヴォールトの話によれば,ジュールとその妹,そして友人たちは,ヌーヴィルの小島で発見されたという。島で何があったのか,デヴォールトはジュールに説明を求めた。
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だがジュールは,その問いにうまく答えることができない。島で起こった出来事が,彼の記憶をかき乱し,思い出すことすら困難にしてしまったのだ。それほどまでに,彼が受けた衝撃は大きかった。
それでもジュールは,もつれた記憶の糸を解きほぐすように,あの日の出来事を順を追って話し始めるのだった……。
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数日前ジュールは,妹のフェリス,友人のブライス,トリスタン,ディオンの計5人でヌーヴィルの小島に船で遊びにきていた。島には打ち捨てられた屋敷があり,彼らはそこでちょっとしたスリルと,退廃の美を満喫するつもりだった。
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だが,フェリスの“戯言”が友人たちの気分を害してしまったらしく,会はお開きとなり,それぞれ船へと戻っていく。ジュールもまた船へ戻ろうとするが,すぐ後ろにいたはずのフェリスの姿がない。
ジュールがフェリスを探しに屋敷の中に戻ってみると,彼女はまさに,屋敷の奥へと踏み込もうとしていたところだった。
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ジュールがその後を追うと,何か恐ろしい存在に行く手を阻まれ,彼は意識を失ってしまう……。
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……といった具合に,本作の導入部はいかにもな「心霊もの」「ゴシックホラー」といった趣。そしてビジュアルはご覧のとおり,1990年代前半の(あえて言ってしまえばスーパーファミコンの)RPGを思い出させるもの。またキャラクターたちの動きも,じつに細かく作りこまれている。
このビジュアルを懐かしいと感じるか,新鮮と感じるかは受け手によっても変わってくるかと思うが,当時,多くのゲームはこのような「記号的」「抽象的」な表現で構成されていた。
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筆者は本作のビジュアルから往年のRPGだけでなく,「エクソシスト」「オーメン」などの古典的なホラー映画を思い浮かべたが,ほかの人がプレイすればまた別のゲームや映画などを連想するのだろうと思う。デフォルメされたドット絵から舞台や登場人物を各プレイヤーが意識的,あるいは無意識的に連想し,それを作品に重ねることで,それぞれにとってのゲーム体験が生まれるわけである。
ちなみに,本作で使用されている楽曲は1990年代風のPCM音源を使った曲……ではなく,ホラー映画やドラマで流れてきそうな,陰鬱な環境音楽や,もの悲しいピアノ曲だ。また,風の音やドアの音といった効果音もリアル。ドット絵の表現とは対照的ではあるが,本作の雰囲気をしっかりと盛り上げてくれる。
アドベンチャーゲームとしての歯ごたえもどこか懐かしい
さて,前述した経緯により,ジュール(プレイヤー)は妹フェリスを連れ戻すために屋敷を探索することになる。屋敷内はとても暗く,ランプの明かりを頼りに歩みを進めて行かなくてはならない。
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もちろんご期待通り(?),屋敷にはさまざまな仕掛けが存在する。物語を先に進めていくためにも,仕掛けを解いて,行動範囲を広げていく必要があるのだが……。
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その多くは視覚情報を頼りに解くタイプの謎だが,決して単純なものではなく,柔軟な発想が必要となる。また謎を解くための手がかりと,対応する仕掛けが微妙に離れた位置にあることもあるので,関連性に気がつかないとだいぶ手こずることになるだろう。発想がこり固まってしまわないように,誰かと一緒に考えながらプレイするのもひとつの手だ。
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また,フェリスを見つけてもそれで帰れるというわけではない。彼女は屋敷のかつての住人・ビビエットの影響を受けており,いろいろと不可解な言動をするようになる。それだけならまだしも,時にはナイフを振りかざしてこちらに襲いかかってくる。
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もちろん相手は妹なので,銃や火かき棒などで撃退するわけにもいかない。フェリスに追われた場合は,ひたすら逃げて振り切るしかないのだ。ランプの明かりを消すと彼女に見つかりにくくなるのだが,もちろん移動もしにくくなるので,悩ましいところ。
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万が一フェリスに捕まってしまったら,ボタンを連打して振り払わなければならない。何度も続けて捕まると,次第に振りほどくための条件が厳しくなり,最後には……
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なお,ビビエットと夫の間に何があったのかは,屋敷のあちこちに残されたメモや手紙を読むことで,徐々に判明していく。クリアを目指すだけならあまり気にしなくてもいいが,物語を楽しみ尽くしたいならば,ぜひすべての文章を探し出してみてほしい。また,屋敷の各所に打ち捨てられた人形たちは,当時の状況を暗示しているようにも見える。
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ノスタルジックなビジュアルや,往年のRPGを思わせるイベントシーンによるホラー要素を楽しみつつ,なかなかに手ごわい謎解きに挑むことができる本作。何かの合間に少しずつ遊ぶよりも,週末の夜など,ある程度まとまった時間を確保して,じっくりと取り組んだほうが楽しめる作品であることは間違いない。
そんなゲームへの接し方もまた,どこか懐かしさを覚えるものではないだろうか。
そして物語の結末にたどり着いたとき,おそらくほとんどの人は本作をもう一度最初からプレイしたくなるはず……。その理由は,実際に自分の目で確かめてみてほしい。
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「ビビエット」公式サイト
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- ライター:高橋祐介
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