パッケージ
ハッピーバースデイズ公式サイトへ
レビューを書く
準備中
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2018/04/09 10:00

インタビュー

「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー

賛否両論あるのは覚悟のうえの作風


4Gamer:
 和田さんがこれまで作られてきたゲーム――今お話にあった「牧場物語」シリーズやマーベラス時代に手がけた「王様物語」,あるいは今回の「ハッピーバースデイズ」は,どれも独特な世界観が特徴として感じられます。それはやはり,ご自身がこうした世界観のゲームがお好きだからなのでしょうか。

和田氏:
 僕はゲームだったら大抵なんでも好きなので,プライベートではいろいろ遊びます。でも例えば僕が,須田さんと同じ“過激な”ゲームを作ったとしても,須田さんには絶対に勝てない。じゃあ自分には何が作れるかといったら,それはほかの人が作っていないものじゃないかと。さっきお話した「牧場物語」もそうですし,これは僕がゲーム作りを始めたときから,ずっと同じ考え方ですね。

王様物語
画像集 No.017のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー 画像集 No.018のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー
画像集 No.020のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー 画像集 No.019のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー

4Gamer:
 なるほど。ちなみに,普段はどんなゲームを遊ばれるんですか?

和田氏:
 基本的にシミュレーションが好きなんですが,何でもやります。1990年代は格闘ゲーム漬けで,消費者金融に駆け込むぐらいの勢いで「バーチャファイター」につぎ込んでいましたし,2000年代はオンラインゲームが多かったです。きっかけは「ディアブロ」で,その後は「エイジ オブ エンパイア」とか。この2タイトルは,僕の中では“神ゲー”ですね(笑)。

4Gamer:
 では,例えばそういった格闘ゲームであったり,あるいはオンラインゲームを作ろうとは思わなかった?

和田氏:
 ありません。作っても勝てないですから(笑)。僕が遊んでいる時点ですでに至高の状態なのだから,“僕の考えた最強のゲーム”を妄想する余地がないというか。だからこそ神ゲーなんですよ。実際,そうしたタイトルは続編を遊んでみても,あまり面白いと感じないですし。

4Gamer:
 普段遊んでいるゲームと作りたいゲームは違うと。では,和田さんの場合,ゲームを作るときのモチベーションは,どこに置かれているのでしょうか。

和田氏:
 僕はどちらかというとマゾなので,とやかく言われるのは嫌だけど,同時にそれが嬉しかったりもするんです。変なゲームばかり作っているので,プレイヤーからの反応はいつも賛否両論ですが,それを見たり聞いたりするのは好きで。だから作っているときは,いつもその日を夢見ていますね。喜ばれたり,文句を言われたり……それが当たっていることも外れていることもありますが,そういったものがモチベーションになっているんだと思います。

4Gamer:
 じゃあ,ゲームの発売日はネットで感想を探されたりとか? 例えば……その,2ちゃんねる(現,5ちゃんねる)だとか。

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー
和田氏:
 あ,エゴサーチは基本的にしません。エゴサーチで反応が集まるほど,ネットで騒がれたりしないので(笑)。でもTwitter経由で声を聞くことはあります。2ちゃんねるも何かが起こっていたら見に行きますけど,だいたいPart10ぐらいでスレッドが落ちゃうんですよね(笑)。

4Gamer:
 ネガティブな意見を見ても,和田さんはヘコんだりはしないタイプなんですね。

和田氏:
 いや,ヘコみます。やっぱり悔しいですよ。とくに,やりたかったけど泣く泣く断念した部分なんかを,鬼の首を取ったように叩かれるのはとても辛い。
 ゲーム作りって,ファミコンの時代からいろんな制限との戦いで,それはスペックだったり,時間だったり,予算だったりするわけですが,それってプレイヤーにはぜんぜん関係ないし,分からないことなんですよね。だから絶対に口には出さないですが,心の中はぐちゃぐちゃになります。

4Gamer:
 それでも見るんですね。

和田氏:
 ……逆に喜んでくれている人もいますから。それらすべてをひっくるめて,モチベーションにしています。あとそうしたものとは別に,ゲーム画面が初めて表示されたとか,動かせるようになったとかみたいな開発の節目は,やっぱりテンションは上がりますね。

4Gamer:
 なるほど。だとするとマネジメントが仕事の中心になってしまったら,手応えは確かになくなりそうです。

和田氏:
 何より,一つのタイトルに割ける時間が圧倒的に厳しくなる。僕がマーベラスにいた頃は年間30本ぐらい発売していたので,それを責任者として全部見なければならなかった。そうなると,だんだんゲームが嫌になってくるんです。責任ある仕事を任されている気持ちはありながら,「やらされている」感覚がどんどん強くなって,それがとても悲しかった。

4Gamer:
 今のお話とも少しつながるのですが,「王様物語」の公式ブログで,和田さんが「まだ死にたくない」と書いて話題……というか炎上気味になったことがありましたよね。2009年頃だったと思いますが,あのときはどういう心境だったのでしょうか。

和田氏:
 あれもとくに他意はなくて,ただ普通に感じていたことを書いただけのつもりだったんです。だけど,選んだ言葉が強すぎたんだと,今は思います。

4Gamer:
 今あらためて読んでみると,書かれていること自体は至極真っ当だと思えるんですが。

和田氏:
 あのブログは,当時比較的名が知れたクリエイター達で交代に書いていたのですが,皆さん比較的クリエイティブ寄りのことを書いていたので,自分はもう少しマーケティング寄りの切り口で書こう思ったんです。でもあの書き方では,ネガティブな方向に取られても仕方がない。「まだ死にたくない」って書いたら,「えっ,死にそうなの?」って取られるのも当たり前ですよね。

4Gamer:
 それでも,ある意味真摯な,本音ではあったんですよね。

和田氏:
 若い頃からの僕の持論に「シリーズと版権がゲームを殺す」というのがあるんです。シリーズものばかりを作ったり,版権の名前だけで売るような商売を続けていったりしていると,ゲームが好きな人がいなくなってしまうんじゃないかという不安がありました。それがオリジナルにこだわる今の作風にもつながっているんですが,それでも強いIPにはどうしても敵わない。そうした状況に対して「俺はまだ死なないぞ」と,自分としては熱く訴えた,つもりだったんですが……。

4Gamer:
 そういった熱い気持ちは,今も変わりませんか?

和田氏:
 どうでしょうね。熱い思いが薄れたわけではないですが,だいぶ歳を取ったので,今はゲームを作れていること自体幸せ,という気持ちのほうが強いかもしれません。

4Gamer:
 あれから9年が経過しましたが,今のゲーム業界の景色は,和田さんの目にどう映っているでしょうか。

和田氏:
 Nintendo Switchが出るまでは,アナログレコードの終わりを眺めるような,切ない気持ちでいたんですよ。一時期のスマホアプリの台頭で,自分が好きだった家庭用ゲームのシェアは縮小する一方で。寂しかったんでしょうね。でもSwitchが出てきたことで,持ち直してきたんじゃないかと今は考えています。

4Gamer:
 というと?

和田氏:
 業界の偉い人達と話すと,家庭用ゲームに対する見方が変化しているのを感じるんですよ。2010〜2015年頃は,ゲームは完全にF2Pに移行するだろうという意見が大勢でしたが,今はちょっと風向きが変わってきた。買い切り型のパッケージやダウンロード販売といった形で,まとまった一つのコンテンツを売ろうという流れが,少し戻って来たように思います。僕にとって,それは嬉しいことです。

画像集 No.012のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー

4Gamer:
 9年前に感じていた閉塞感を打ち破るような,何か突破口のようなものは見えましたか。

和田氏:
 具体的なものはまだありませんが,例えば先日発売された「MONSTER HUNTER: WORLD」PC / PS4 / Xbox One)なんかを見ていると,まだまだ国内でもミリオンが狙えるんだと,勇気づけられますね。海外でも好調みたいですし,日本のゲーム開発者にとっては,励みになるんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 そうした現状を踏まえ,TOYBOXさんとしては,今後はどういった活動をされていくご予定でしょうか。

和田氏:
 僕自身としては,なるべく自分の企画を気に入ったいただける方と組んで,もの作りを続けていきたいと思っています。次の新作もそろそろ発表予定ですし,それ以外にもいろいろ仕込んでいるところです。一方で,金沢には会社をもっとしっかりとした組織にしていきたいといった考えがあるみたいです。

4Gamer:
 それは,独立したデベロッパとしてひとり立ちしよう,ということでしょうか。

和田氏:
 そうですね。現状の人員だと,内製しようとしても0.5本分程度の力しかないので,それをちゃんと1本作れるようにするのが次のステップです。その体制を整えるべく,今はいろいろと模索をしている最中です。まあ,僕は自由度が高いほうがいいので,外部の力を借りるほうが性に合っているんですけど(笑)。

4Gamer:
 和田さんご自身のミッションとしてはいかがですか。

和田氏:
 一番やりたいゲーム作りという部分は実現できたので,次はそれをしっかりビジネスにつなげて,広げていかなくてはならないですね。
 前作の「Birthdays」は,僕としては理想のゲーム作りができたのですが,やっぱり数が伴わないことには次につながりません。なので今回は,アークシステムワークスさんのマーケ担当の話をしっかりと聞いて,障壁になりそうな僕のコダワリについては引っ込める方向に舵を切ったというわけです(笑)。

4Gamer:
 ちなみに,実際にSwitchで開発してみていかがでした?

和田氏:
 開発自体は非常にやりやすかったですよ。最初は思うように処理速度が上がらず苦労したんですが,それが解決してからは順調でした。Switchは携帯機でもあるわけですが,「Birthdays」は意外とこの携帯モードと相性がいいことが分かって。小さい画面でイキモノ達がわらわら動いているのを,持ち運べるのがいいですね。外で遊べるのはもちろん,自分で作ったマップを持ち寄って見せっこできるのは,そこから何か広がるんじゃないかって可能性を感じます。

前作のパッケージ
画像集 No.014のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー
4Gamer:
 そういえば,前作のパッケージは粘土細工のジオラマでしたが,今回はイラストになりましたね。これもアークシステムワークスさんの采配だったりとか?

和田氏:
 これは単純にリニューアル感を出そうということで,アークシステムワークスさんに縁のあるイラストレーターさんに描いていただきました。ちなみに前回の粘土細工も,アークシステムワークスさんの提案で,作家さんを紹介していただいたんですよ。あと今回の「ハッピーバースデイズ」というタイトルも,実はアークシステムワークスさんのアイデアだったりします。

4Gamer:
 そういえば,今回サブタイトルはないんですね。前作では「the Beginning」となってましたが。

和田氏:
 開発中はずっと「Birthdays」と呼んでいて,「the Beginning」の部分は最後に付け加えたものだったのですが,気持ちとしては今後進化させていくためのスタートラインという意味を込めたつもりでした。「ハッピーバースデイズ」は,まだ前作と同じラインにいますので,今回はとくにサブタイトルは付けませんでした。

4Gamer:
 その今後の進化という部分について,構想があるというお話でしたが,例えばどんなことを考えてらっしゃるのでしょうか。ヒントでもいいんですが。

和田氏:
 構想はたくさんあります(笑)。例えば世界を作っていくミクロモードでは,時間の流れを止めてあるんですが,次は時間がゆっくり流れるようにしたいと思っています。イキモノがわらわらと動き,景観が少しずつ変化していく中に干渉できるようになると,ワクワク感が全然違います。さらに昼夜や季節の要素も入れれば,見ているだけでも楽しめるはずです。

4Gamer:
 ああ,楽しそうですね。

和田氏:
 もう一つ,ほかのプレイヤーの世界に遊びに行けるようにしたいですね。それも単に世界を見て回るだけじゃなく,遊びに行った先の世界に,自分が住むことができるという構想です。この2つは,次回があればぜひ実現したいと思っています。

4Gamer:
 「どうぶつの森」みたいな感じでしょうか。先ほどのSwitchの利便性にもつながるお話ですね。

和田氏:
 さらに次があるとすれば,スキンをもっとフォトリアルに寄せてみたいんですよ。ただ,今のコンシューマゲーム機のスペックでは難しいかもしれません。だから今よりさらに次世代の環境が整ってる頃に……実現したいですね。

4Gamer:
 より大人向けの「Birthdays」になりそうです。そのためにも,まずは今作を遊んでもらう必要がありますね。ではインタビューの締めとして,4Gamerの読者に向けたメッセージをいただけますでしょうか。

和田氏:
 はい。この「ハッピーバースデイズ」は,子供の頃に誰もが夢見た「空想科学の世界」を実現した作品です。まずは体験版から触っていただければ,その感覚が分かると思いますので,ぜひ楽しんでみてください。先ほどもお話しした続編もぜひ実現したいと思っているので,本作をたくさんの人に手に取ってもらえたら嬉しいですね。

4Gamer:
 体験版は,発売後もダウンロードできるのですよね。

和田氏:
 ええ。体験版はゲーム中の時間で150万年までプレイできるようになっています。マクロモードで早送りをすると数分ですが,ミクロモードでこもっていれば,体験版で何時間でも遊べます。セーブデータも製品版に引き継げますし,プレイ次第では類人猿が出てくる直前ぐらいまで進められるので,ぜひ試してみてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「牧場物語」の和田康宏氏がSwitchに感じた可能性。生態系シム「ハッピーバースデイズ」クリエイティブプロデューサーインタビュー

「ハッピーバースデイズ」公式サイト


 
  • 関連タイトル:

    ハッピーバースデイズ

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月23日〜04月24日