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「A3!」「夢100」「アカセカ」の開発者が語る,女性向けゲームの世界観設計&運用秘話「Girls Game MEETS」企画者向けセミナーレポート
2018年9月19日,「夢王国と眠れる100人の王子様」(iOS / Android / 以下,「夢100」),「茜さすセカイでキミと詠う」(iOS / Android / 以下,「アカセカ」),「セルフィ」など女性向けゲームを展開中のジークレストによる,女性向け作品に関わるクリエイターの交流をメインとしたイベント「Girls Game MEETS」が開催された。![]() |
今回で4回目となる本イベントには,「夢100」のディレクターを務める大野氏や,リベルエンタテインメントで「A3!」(iOS / Android / 以下,「エースリー」)のプロデューサーを務める沖田多久磨氏による講演のほか,パネルディスカッションなども行われた。
本イベントはクリエイター向けのセミナーのため,記事にできない内容も含まれていたが,本稿では可能な範囲でその模様を紹介したい。
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3周年&全世界1000万ダウンロードを突破した「夢100」の運用ノウハウ
登壇者:大野氏(「夢100」ディレクター)
全世界で1000万ダウンロードを突破した「夢100」のディレクターを務める大野氏は,これまでの施策における事例などを挙げながら,女性向けゲームの運用について講演を行った。
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“王子様と恋するパズルゲーム”がキャッチコピーの「夢100」は現在,プレイヤーの9割以上が女性層となっているという。また,2015年3月のリリース後,1年目はCM展開や海外進出などで勢いをつけ,2年目はコラボ展開で多面性を出し,3年目はアニメ化などで「夢100」自体が進化してきていると「夢100」を振り返った。制作チームは今のところ60人程度となっており,ほぼ内製でゲームづくりが行われているそうだ。
これまでの施策では,投票企画や演出の強化,全員施策などの事例が紹介された。さまざまな遊び方を取り入れたいとレイドイベントを行った際は,仕組みがやや複雑で世界観構築の難度が高くなってしまったこと,素材収集イベントでは,プレイが面倒でユーザーにストレスを与えてしまったことなどが反省点として挙げられた。
このような反省から,ゲームとしての幅の広がりを楽しみにしているユーザーももちろんいるが,大多数にとっての目的はあくまでも「キャラクターの獲得」だと改めて感じたそうだ。
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一方で,100人以上の王子様全員にテキストや背景などを用意した施策では,それぞれのテキストは短いものになってしまっても,演出次第で感動を生みだせることを学び,その後の季節イベントなどに活かせていると話していた。
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ゲームを運営していくなかで見えてくる課題を元に新しいチャレンジをし,成功する精度を高めていくのが必要だという。
また,ユーザーからの意見や要望を受け付けている「ご意見ボックス」は,問い合わせとは別にアプリ内に設けられており,ここで投稿された内容はスプレッドシートに出力されて毎日更新されているとのこと。毎月行っているアンケートも含め,こうしたユーザーからの意見や要望はチームメンバーの間で随時共有しているそうだ。
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そのほかにも,社内の「夢100」プレイヤーを集めたレビュー会を行っており,ここでは改善リストを元に議論されることもあるという。これらプレイヤーの生の声は,制作の参考にしているようだ。
数多くの女性向けゲームが溢れる現在,「夢100」では改めてユーザーへの価値提供やブランディング向上のためにチーム内で意識を統一し,「夢100」の価値向上につなげる動きを決めているという。
“女性を元気に”というコンセプトを元に,今後もさまざまな施策に取り組み,お客様とともに10年以上続くIPを作りたいと大野氏はこれからの目標を語ってくれた。
女性向けゲームにおけるキャラクターの魅力を向上させるためのTIPS
登壇者:沖田多久磨氏(「エースリー」プロデューサー)
続いて,「エースリー」のプロデューサーを務める沖田氏から,女性向けゲームのキャラクターづくりにおけるヒントについての講演が行われた。
「エースリー」は現在,アプリ累計で国内550万ダウンロードを突破し,アプリ・メディア・音楽の3つの柱で展開を行っている。コンセプトは「まだつぼみの状態のイケメン役者を育成し,舞台の上で立派に開花させる」というもので,完璧なイケメンではなく,なにかしらの弱点を持ったキャラクターたちが多数登場している。
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沖田氏によれば,キャラへの愛着を生み,「育成したい!」と思ってもらうためには,キャラの魅力=キャラの厚みが重要であるとのことだ。
沖田氏自身も,これまではキャラクターの「ブレ」を起こさないため,どこまでも一貫性を求めていたのだという。しかし,そうした「属性が素早く理解しやすく,決まった行動しか起こさない人物」は,ストーリーの展開をがんじがらめにしてしまうことが多く,また属性への過度な固執は「一元的なキャラ」を生み,キャラに厚みのある魅力が生まれにくくなると話した。
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そこで「エースリー」では,より多角的なキャラクターの魅力を見せるため,思想や行動などのブレを「振れ幅」として肯定的にとらえてみたという。例えば,普段はできることがシチュエーション次第で失敗する,相手によってころころ接し方が変わる,克服できる弱点とできない弱点がある,などだ。これらの「ブレ」は,存在をリアルにし,生身の人間らしく見せることにもつながるため,ユーザーにとっても「目が離せない」「もっと知りたい」と思ってもらえるのではないかと語られた。
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また,キャラクターの「弱点」については,深刻なもの/ギャグ寄りなもの,克服できるもの/できないものといった具合に,いくつかの分類に分けているという。メインストーリーなどでじっくりと克服を描くものや,いくつかのエピソードで少しずつ克服されていく様子を見せるなど,描写の仕方を変えているそうだ。
こうした描き方をすることで,ユーザーがキャラクターを「これからも支えたい」「成長を見守りたい」という感覚を持ってもらえるという。ただし,なかには変化を恐れるユーザーもいるため,どうすればみなさんに受け入れられるかと想像力を働かせ,ひとりで判断するのではなく,チームメンバーやプランナー同士で相談する場を設けていると話した。
また,「エースリー」は男性キャラクター同士の関係性で,新たな一面を見せるさまざまな工夫をしているとのこと。そのなかでも,「お互いに無いものを持っている者同士のペア」や「見た目は正反対だが,意外性のあるつながりのペア」,「チームを越境した者同士で思わぬ関係性を持つペア」など,ヒロインとの関わりだけでは見えなかった一面を描くことで,キャラクターの表情がぐっと豊かになり,濃厚なドラマを描けるのだという。
このように「エースリー」では,時系列に伴う成長や,関係性が生み出すキャラクターの厚みで“キャラクターの人生を見せる”という意識を持って,ゲームづくりをしているそうだ。
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パネルディスカッション:
テーマ「ユーザーに長く愛される女性向けゲームづくり」
パネラー:沖田多久磨氏(「エースリー」プロデューサー)
佐野哲也氏(ジークレスト 取締役)
西山葉月氏(「茜さすセカイでキミと詠う」(以下,「アカセカ」)コンテンツプロデューサー)
第2部のパネルディスカッションでは,先ほど講演を行った沖田氏と,「夢100」の立ち上げから関わり,現在は別の新規プロジェクトを担当しているというジークレストの取締役・佐野氏,「アカセカ」の世界観やシナリオ,キャラクターなどのコンテンツ周りを担当しているコンテンツプロデューサーの西山氏の3名がパネラーとして登壇した。
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まずはそれぞれのタイトルについて,「立ち上げからリリースまでにどのくらいの時間がかかったか?」という話題では,「エースリー」「夢100」は開発開始からリリースまで約10か月だったことが明かされ,場内から驚きの声が上がった。また,「夢100」と「アカセカ」は社内で実施した企画コンテストがきかっけで生まれたタイトルで,どちらも「女性を元気に」をコンセプトにしていると語られた。
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世界観やキャラクターづくりについては,「エースリー」では(キャラクターの)チーム単位で人物像を考える作業をしているのに対し,「アカセカ」はユーザーとキャラクターで一対一の恋愛をするのが最大のポイントのため,キャラクター1人に対して深く作り込んでいくことを重要視しているとのこと。「アカセカ」は歴史上の人物をモチーフにしているため,世界観づくりにも史実要素が活きてくる。
キャラクターづくりにおいては,「信念」と「生き様」を大切にしていて,「彼が実現したいことは何か」「そのためにどんな行動をするのか」「現在の彼に至るまでにどんな過去があったのか」などの設定を,史実要素を織り交ぜながら作っていくそうだ。キャラクター1人1人に生まれたときからの年表が存在しており,人物像に深みがでるよう,徐々に物語の中で描いていくと語られた。
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それぞれのゲーム性については,「エースリー」では沖田氏が演劇の世界を魅力的に描きたいという想いが第一にあったとのことで,それを邪魔せず,かつ納得のいくゲーム性との結びつきがなかなか浮かばず苦労したと語った。最終的に,ストレス無くプレイしてもらえるように振り切り,演劇的な楽しみとしてはミニキャラによる公演などのコンテンツを入れるに至ったという。
また,女性向けのアプリとしては後発だったため,ユーザーもおそらく“本命タイトル”がすでにあることを見越し,その上で「エースリー」を知ってもらい遊んでもらうために,少しでも手間にならないような形にしようと考えたとも明かしてくれた。
一方「夢100」の場合は,誰でも気軽に遊べるというイメージからクエスト部分はパズルにし,パズル上部にミニキャラを配置したり,キャラクターがカットインしたり喋ったりという演出を入れることにより,長く愛してもらえるよう心がけたとのことだ。
また,パズル部分のルールと操作性は,あまり複雑だったり,長い時間がかかったりするものは飽きられてしまうので,いろいろ試行錯誤したそうだが,最終的にパズルの方向性が決まったのはリリースまでなんと残り3か月だったという。さらに,いまの「FEVER」などの仕組みが入ったのはリリース1か月前らしく,最後まで入念な調整が行われていたことが語られた。
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プロモーション展開については,「エースリー」のリリース前にはやはりTwitterを一番重要視していたとのこと。中途半端に小出しにするのではなく,「ここが勝負どころだ!」というポイントでは,しっかりと事前に「この日に大きな情報が出る」とアピールしつつ,ティザーから本サイトを出すまでに,数か月おきに大きなポイントを作っていたと話した。また,リリース後のプロモーションとしては,演劇の街・下北沢の活性化を手伝う取り組みも行ったという。
「アカセカ」でもTwitter運用を重要に考えており,キャラクターの特徴に合わせた施策を毎回考えているそうだ。例えば,日本で初めてラーメンを食べたという徳川光圀(と同じ名前のキャラ)の実装時には,キャラクターに紐付いたハッシュタグを作り,ユーザーが投稿した食べ物の写真に対し,キャラがリプライで採点を返すなどの試みをしたとのことだった。
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最後に現在の女性向け市場や今後について沖田氏は,ナチュラルに生活に入り込んで,生活の一部に寄り添うことのできるコンテンツは,非常に魅力的だと考えているという。佐野氏は,「夢100」がアジアを中心に多数のユーザーにプレイされていることを受け,今後はよりアジア発信で流行るものがあるかもしれないと語った。声優の海外での仕事も増えていることもあり,ゲームづくりとしても日本国内だけのものづくりというよりは,日本と中国などアジア全般で受けるようにという面も意識しているそうだ。
西山氏は,最近の女性向け市場ではアイドルなどの王道モチーフだけでなく,アウトローなど尖ったモチーフを扱ったタイトルが受け入れられていることに触れ,今後はさらに個性の強いタイトルが増えてくるかもしれないと話した。コンテンツの魅力をひと言で伝えやすい,妄想の余地がある,ユーザー間で議論を巻き起こす……など,ヒットタイトルを生み出すための世界観づくりが,より重要になるだろうと見解を述べた。
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本イベントの最後には,登壇者も含めた出席者同士の交流会が行われた。ジークレストは今後もこうしたイベントなどを通じて,女性向け市場をより一層盛り上げていきたいとのこと。今後の動向にも注目していきたい。最新の情報は,ジークレスト公式FacebookやTwitterをチェックしよう。
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