戦いの間（あわい），刀剣男士たちが息づく本丸のもうひとつの姿とは――「舞台『刀剣乱舞』慈伝 日々の葉よ散るらむ」ゲネプロレポート

　2019年6月14日，「舞台『刀剣乱舞』慈伝じでん 日々の葉よ散るらむひびの はよ ちるらん」（以下，「慈伝」）のゲネプロ公演が，品川プリンスホテル ステラボール（Stellar Ball）にて行われた。シリーズ前作から約1年，今作ではどのような世界が描かれるのか。本稿ではできるだけストーリー部分には触れず，筆者の所感をお伝えしていきたいと思う。

―「舞台『刀剣乱舞』慈伝 日々の葉よ散るらむ」あらすじ―

西暦2205年。
歴史改変を目論む「歴史修正主義者れきししゅうせいしゅぎしゃ」が過去への攻撃を開始した。
対峙する時の政府は歴史の守りとして「審神者さにわ」なる者を過去へと派遣する。

物の心を励起する審神者の力によって生み出された，
刀剣に宿りし付喪神「刀剣男士とうけんだんし」たちは，審神者と共に歴史を守る戦いへと身を投じる。

思い出の品々を抱え，荷運びが続く。
行われているのは，審神者の命による＜新たな本丸＞への引っ越しであった。
新天地での生活，出陣の任も成し，本来の役割を果たせるようになってきた刀剣男士たち。

そこへ，深まりゆく秋の風を纏い＜新たな刀剣男士＞がやって来る――

「慈伝」で描かれる本丸のもうひとつの姿

　舞台『刀剣乱舞』（以下，「刀ステ」）は，シリーズとしてこれまでに6作品が上演されている。そして，そのどれもが史実上の偉人やできごとを通し，歴史を守り戦う刀剣男士たちの姿を描いてきた。前作の「舞台『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰」は“シリーズ集大成”と言われていたこともあり，新たなスタートとも言える今作ではどういった方向性の舞台になるのか，気になっていたファンも多いだろう。筆者もまたその一人だ。


　こうした紹介記事を書いておきながら矛盾しているが，筆者は「刀ステ」ファンの1人として，できれば今作もこれまで同様，事前の情報をできるだけ入れずに観に行ってほしいと思っている。そのほうが，この作品の持つ驚きや楽しさを最大限に享受できるかもしれない。なぜなら今作は，これまでに見たことがない「刀ステ」，そして「本丸の姿」を描いているからだ。

　刀剣男士たちの使命は歴史を守ることだ。しかし，人の形をとってこの世に顕現した以上，戦うだけではなく，ものを作り，食べ，眠り，多くの仲間たちと「生きて」いくことが必要になる。本作では，そうした彼らの普通の日常――笑い，泣き，ときには喧嘩をし，また笑い合う――が描かれている。これまでに乗り越えてきたたくさんの戦いの裏で紡がれてきたであろう日々，言ってみれば実に「人間らしい」彼らの姿がここにはあるのだ。


　本作では，山姥切国広と山姥切長義の関係性をはじめ，さまざまなエピソードを紡いでいく形で物語が進んでいく。この紹介記事はやや堅い書き方をしているが，舞台の上には多くの「笑顔」が溢れているし，観ている間は筆者もずっと笑顔だった。刀剣男士に思い入れがある人ならおそらく同じ気持ちになると思うが，人間ではない彼らが人間のように生活している姿が，とても愛おしく感じられたからだ。内番衣裳でくつろぐ姿や，酒盛りをする姿，戦いを離れた幸せな日常。本作には，「こんな本丸も観てみたかった」がたくさん詰まっている。

　とはいえ，刀剣男士たちが戦うシーンがまったくないわけではない。これはおそらく，「刀ステ」では初参戦となる大太刀の太郎太刀と次郎太刀の存在が大きかったこともあるだろう（物理的にも大きいが……）。加えて，これまでの6作品のなかで戦いをくぐり抜けてきた刀剣男士たちもまた，「レベルアップ」している。本作のアクションシーンは無条件に「格好いい！」と熱くなれ，彼らは本当に強くなったのだという説得力も生まれているように感じた。


　「慈伝」は「刀ステ」シリーズのなかで，かなり異色の作品と言えるだろう。筆者も，観始めてすぐは驚きとともにやや戸惑いを感じたのも正直なところだ。けれど物語が進み，終盤へ差し掛かる頃。彼らは戦うために生まれた存在であり，この穏やかな日常は，生きるか折れるかの殺伐とした世界のすぐ裏側であることが思い出されるきっかけがある。

　その瞬間，「ああ，これは紛れもなく自分がよく知るあの本丸なのだ」と，ふいに目頭が熱くなった。よって，シリーズ未見の人は，ぜひ前作までを履修することをおすすめしたい（どれか一本なら「悲伝」が良いだろう）。

　これは戦いのあわいの，ほんのひとときの物語。だからこそ，優しさや愛が心に沁みる。そんなふうに感じさせてくれる，愛おしい一作となった。

■Blu-ray＆DVD発売決定！
舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ Blu-ray＆DVD
発売日：2019年11月6日（水）
【Blu-ray】価格：11,800円＋税 3枚組
【DVD】価格：10,800円＋税 3枚組

●封入特典　ブックレット（カラー）
●特典映像　全景映像、千秋楽カーテンコール、バックステージ映像、会場替わりキャスト登場シーン　予定
●初回限定版　初回数量限定特別パッケージ
※特典内容・商品仕様は予告なく変更になる場合がございますのでご了承ください。
●会場限定予約特典　Blu-ray／DVD発売記念イベント参加抽選申込券
●発売元　マーベラス
●販売元　東宝

舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ　公演概要

■原案
　｢刀剣乱舞-ONLINE-｣より（DMM GAMES/Nitroplus)

■脚本・演出
　末満健一

■音楽
　manzo テルジ ヨシザワ

■主催
　ニトロプラス/マーベラス/東宝/DMM GAMES

■公演期間
【東京】品川プリンスホテル ステラボール
　2019年6月14日(金)〜6月23日(日)

【大阪】サンケイホールブリーゼ
　2019年6月28日(金)〜7月7日(日)

【兵庫】AiiA 2.5 Theater Kobe
　2019年7月11日(木)〜7月15日(月・祝)

【東京凱旋】品川プリンスホテル ステラボール
2019年7月19日(金)〜8月4日(日)

■出演
山姥切国広：荒牧慶彦
へし切長谷部：和田雅成
鶴丸国永：健人
鶯丸：前山剛久
大包平：加藤 将
大般若長光：川上将大
大典太光世：磯野 大
ソハヤノツルキ：飯山裕太
博多藤四郎：木津つばさ
前田藤四郎：大崎捺希
五虎退：設楽銀河
山伏国広：横山真史
同田貫正国：武子直輝
太郎太刀：小林 涼
次郎太刀：小坂涼太郎
南泉一文字：谷水 力
山姥切長義：梅津瑞樹
陸奥守吉行：蒼木 陣

【東京公演】
小夜左文字：納谷 健

【大阪公演】
骨喰藤四郎：北川尚弥

【兵庫公演】
不動行光：椎名鯛造

【東京凱旋公演】
歌仙兼定:和田琢磨

「舞台『刀剣乱舞』慈伝 日々の葉よ散るらむ」公式サイト