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黒川文雄氏が主催のトークイベント「黒川塾 三十(30)」レポート。「行雲流水」をテーマに語られた,エンタメの今と黒川塾の歴史
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印刷2015/11/17 14:30

イベント

黒川文雄氏が主催のトークイベント「黒川塾 三十(30)」レポート。「行雲流水」をテーマに語られた,エンタメの今と黒川塾の歴史

 2015年11月12日,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が主催するトークイベント「黒川塾 三十(30)」が,デジタルハリウッド御茶ノ水駿河台ホールにて開催された。

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 「裏・黒川塾 30回記念〜エンタテインメント・行雲流水(こううんりゅうすい)」と題された今回のイベントは,タイトルにもあるとおり,30回目を迎えた当イベントのこれまでを振り返りつつ,それに伴うゲーム,IT,映像,音楽などといったエンターテイメント業界の移り変わりを,黒川氏自らが語るという,従来とは少し趣の異なる内容となった。本稿ではその模様をレポートする。

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黒川塾主催,司会進行の黒川文雄氏
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ゲストを呼んで黒川氏が進行役に回るこれまでの流れと趣向を変え,黒川氏自らがトークを繰り広げた


黒川塾3年の歴史を振り返りつつ語る,エンターテイメントの現在


 タイトルにある「行雲流水」とは,空の雲や川の水のように物事に執着せず,自然な成り行きに身を任せる,という意味である。氏はそれを現在のエンターテイメント業界に当てはめ,その移り変わりに対してあらがわず,その流れの中で自分の有り様を見つけることが重要だと語った。それが,今回のテーマにこの言葉を採用した理由だそうだ。
 檀上のスクリーンでは,エンターテイメント業界の自然な成り行きを見守ってきた黒川氏の経歴や,3年間で29回開催された黒川塾の内容について紹介が行われた。

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 もともとは音楽業界からエンターテイメントの世界へと足を踏み入れた黒川氏。それ以降,映画やゲーム,ネットコンテンツ,IT系などに従事してきた経験を活かし,今,来ている,あるいはこれから来るであろうエンターテイメントの流れを参加者と共有すること。これを目的として発足されたのが,Facebookコミュニティ「エンタテインメントの未来を考える会」(2015年11月現在,会員数約4700人)であり,同時に黒川塾の原点なのだという。

過去の経歴や写真を披露した黒川氏。マイケル・ジャクソンさんやジョン・ウー監督などの著名人と撮った写真のほか,雑誌で上半身裸になって自らモデルとなった写真も
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 黒川氏がこの黒川塾で最も望んでいることは,ゲストとして呼ばれた人や,会に興味を持って来場した人達が知り合えたことによって発生する科学変化だ。これまでにも,そのときどきで話題になっているもの,黒川氏が興味を持っているものに関係した多くのトークゲストがこの黒川塾に招かれてきた。
 そのメンツには,黒川氏がセガ時代から現在まで関わっているゲーム業界の人物が少なくない。飯田和敏氏森下一喜氏山本大介氏田中弘道氏稲船敬二氏吉田修平氏堀井雄二氏鈴木 裕氏須田剛一氏和田洋一氏など,そうそうたる顔ぶれがであり,各氏のトークを目当てに過去参加したという人も多いのではないだろうか。

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 その中でも黒川氏がとくに印象深かった人物が,元ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木健氏なのだとか。黒川氏はこの黒川塾にぜひ出てもらいたいと久夛良木氏にメールで依頼したが断られてしまい,その後根気よく打診を続けていたところ,一度家に来いと呼ばれ,久夛良木氏の自宅で直接交渉をしたことでようやく実現した苦労を思い出として挙げている。
 黒川塾の過去の開催実績とテーマ,ゲストは以下のとおりだ。

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 ここからはトピックスとして,黒川氏が現在注目しているエンターテイメントやカルチャーが紹介された。
 その中でもとくに注目しているトピックとして挙げられたのが「VR」だ。フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」や,ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」などの小説で描かれていた空想の世界が,このVRでいよいよ現実となってきたと語った黒川氏。「Oculus Touch」では,ついにVRの世界を触ることが可能になり,前述のディック原作の映画「マイノリティ・リポート」に近い世界が,もう間もなく実際に体験できるようになる。黒川氏は,かつてPlayStationで掲げられた「できないことが,できるって,最高だ。」というキャッチコピーを引用し,これを賞賛した。

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 北米ではFacebookがOculusを20億ドルで買収するなど,VRを取り巻く環境が大きな動きを見せている。対して日本国内では,一部大手パブリッシャーが参入予定なものの,制作に着手しているのはまだ個人レベルであり,海外と比べると大きく遅れているという印象がある。しかし,それについて黒川氏はあまり気にしていないという。かつてPlayStationが発売されたときに,異業種の人達の参入によりまったく新しい製品が次々と生まれてきたような可能性が,現在の国内のVRにおけるカオスな環境にはあるのではと語り,日本ならではの作品の登場に大いに期待しているとのこと。

黒川氏はライドシェアの「UBER(ウーバー)」や,シェアルームの「airbnb(エアビーエヌビー)」など,今の時代ならではの「フリーシェア」カルチャーについても紹介
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UBERは一般のドライバーを派遣するタクシーのような配車サービス。依頼者は目的地や料金の支払いをスマホで一括管理できるのが特徴で,黒川氏も北米への出張時に活用したそうだ
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airbnbは,一般の人が持つ部屋を宿泊施設として仲介するサービス。いわゆる「民泊」の仲介でもあり,UBERとともに日本では法律による規制や同業種からの反対などもあり,今後の動向に注目が集まっている

クラウドファンディングの現状についても語った黒川氏。世界的な知名度がなければ多額の資金は期待できず,さらに達成額が大きくなるほど,支援者への還元などによる負担も増える傾向にあるという
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 話は戻って,後半は再び黒川塾についてのトークへ。
 そのルーツは,2010年7月に黒川氏がブシロードの副社長を満期で退任したときに,有志によって開催された「大黒川祭り」だそうで,このとき黒川氏は「まるで生前葬をやってもらったような気持ちだった」と感謝したそうだ。それに対して自分ができる範囲でのお返しをするために企画したのが,この黒川塾とのこと。

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 塾という名を付けたのは,興味のあることに対して常に学んでいく勉強会のようなことをやりたかったのが理由で,黒川氏自身も毎回勉強に挑む心持ちで取り組んでいるのだとか。
 そのテーマ選びや人選にも常に苦労していて,内容によっては開催まで半年以上かかることもあるが,その苦労によってブッキングしたゲスト同士のトークが自然発火して大きく弾けたときの手応えは本当に楽しいもので,本人は「来てくれる人が1人でもいるかぎり,命の続く間はやっていきたい」と力強く宣言した。

「登壇した人の話したいことや,来ていただいた人の聞きたいことを伝えるのが僕の信条」と,黒川氏はこの塾での自身の立ち位置を語った
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黒川氏自身やゲスト,そして来場者相互のネットワークを作るのも,この黒川塾の目的の一つなのだそうだ
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この黒川塾に呼びたかったという,故・西崎義展氏の書籍を推薦。日本映画界の監督至上主義に対して,プロデューサーとして身銭を切って喝を入れた尊敬すべき人物と紹介している

 黒川氏の独演よる約2時間のトークはここで終了。黒川氏がどんな意気込みを持ってこのイベントに臨んでいるかを語る黒川塾の特別版はこれにて幕となった。次は2015年12月10日を予定しているそうなので,イベントに興味を持った人は,次回に足を運んでみるといいかもしれない。

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黒川氏と今回の参加者の皆さん
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