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“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
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印刷2011/08/20 00:00

企画記事

“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった

「前山田さんの曲は,

ジェットコースターサウンド」(伊藤氏)


4Gamer:
 ちょっと4Gamerっぽい話題も挟ませてください。
 前山田さんはロマサガを相当遊ばれていたんですよね。

画像集#008のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
前山田氏:
 やり込みましたね! ゲームって何度も繰り返し遊んでいくうちに,音楽がすり込まれていくんですよね。ロマサガは,とくにフィールド曲がけっこう連綿と続くので,ずっとすり込まれてきました。だから僕の音楽の原体験の一つは,イトケンさんに占められているんです。

伊藤氏:
 それは本当に光栄です。

4Gamer:
 前山田さんがロマサガの曲を,伊藤さんが作ったものであると認識したのはいつ頃でしたか?

前山田氏:
 大学に入って,曲作りというものに興味を持った頃からですね。それまでは申し訳ないんですが,誰が作った曲なのかよく分かっていませんでした。

4Gamer:
 ただひたすら,ゲームで遊びながらメロディが脳内にすり込まれていっただけで。

前山田氏:
 そうなんですよねぇ。でもやっぱり,伊藤さんが作られたものは,ほかのゲーム音楽とは違っていたんですよ。いわゆる“イトケン節”というものが,たまらないんです。僕も“マエケン節”と言われるようにならないかなぁなんて思ってるんですけど,まだまだで。
 伊藤さんの曲は,とにかくドラマチックなんですよ。……なぜそんなにドラマチックなんですか?

伊藤氏:
 えっ!?(笑) 僕も前山田さんの曲は十分ドラマチックだと思いますよ。

前山田氏:
 ええええっ!? 本当ですか?

伊藤氏:
 ええ,まだそんなに数多く聴いてはいないんですけど,例えばアニメ「日常」の主題歌(※2)にしても,第1期も第2期もサービス精神が旺盛だなって。とくに第2期の曲なんか,2番になったらBメロとAメロの位置が変わってるじゃないですか。これは斬新だなぁと思いました。

前山田氏:
 ありがとうございます。そういうのが好きなんですよね。とにかく聴いてくれる人を楽しませたくて。

4Gamer:
 とにかく楽しませたいというのは,昨年のインタビューでもおっしゃってましたよね。

前山田氏:
 ええ。格好付けて言うわけじゃないんですけど,僕は音楽で自己を表現したいという気持ちがゼロなんです。自分の何かを語りたいとか,普段は人に見せない部分を音楽で表現したいというのがないんですね。僕が音楽を作るモチベーションは,人を楽しませたいという部分のみなんです。
 まあ,お金が欲しいというのもあるんですけどね,職業ですから(笑)。

4Gamer:
 それは生きていくうえで大事なことですからね。

前山田氏:
 でも基本は楽しませたいということであって,自分のスキルで出来ることがあるならば,全部を詰め込んじゃえというのが僕のスタンスなんです。ランティスさんから出させてもらっている「ヒャダイン」名義の曲は,とくにそれを詰め込んだプロジェクトなんですよ。

伊藤氏:
 そうなんですね。僕は勝手に,前山田さんの作る楽曲を“ジェットコースターサウンド”と呼んでるんですけど,とにかく誰でも分かるような形でめまぐるしいんですよね。

前山田氏:
 ジェットコースターサウンド! その言葉は嬉しいですねぇ。今度どこかで使わせてもらいたいです(笑)。

画像集#009のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった

伊藤氏:
 いやもう,本当にそう思うんですよ。継ぎ目がなくて,ここか,またここかってポイントがしっかり組み込まれていて。ジェットコースター以外でいうなら,万博ですかね。一つの曲の中に,ある程度のコンセプトは決まっていながらも,いろんなパビリオンがあるみたいな。だから,この人は凄いなぁって思ってますよ。
 あと,前山田さんには詞についても聞いてみたいことがあるんです。日常の2曲にしろ,過去のいろんなアレンジ曲にしろ,必ずどこかで誰かがクスッと笑えたり,お腹を抱えて笑えるようなギャグセンスに溢れていますよね。これはどこで培ったきたものなんですか?

前山田氏:
 関西人だからですね。

伊藤氏:
 あ,血だった(笑)。

前山田氏:
 基本的にお笑いが好きで,ブラックジョークも好きなんですが,やっぱり関西人なので,何かギャグを入れないといけないという使命感があるんです。あと,分かる人には分かるものって,凄く楽しいじゃないですか。スネークマンショー(※3)やピチカート・ファイヴ(※4)も,そういうネタを混ぜたりしていて,それを聴いてきたというのも大きいでしょうね。

4Gamer:
 聴き手として,「あ,これを作った人と同じところを面白いと思ってるんだ!」と気付くと,テンションが上がるんですよね。

前山田氏:
 そうなんです。僕はそういうのが凄く好きなんですよ。

4Gamer:
 作り手と聴き手の共犯関係を築こう,と。

前山田氏:
 そうなんです。共犯感が出ることで,聴いてくれる皆さんとの距離も縮まると思いますし,近付きたいと思いますし。そういう部分は,意識して歌詞に入れています。


伊藤氏と前山田氏に共通する

クラシック音楽体験


4Gamer:
 伊藤さんは前山田さんの曲を聴いたときに,「これはオレが与えた影響だ」みたいなものは感じますか?

画像集#010のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
伊藤氏:
 いや,前山田さんは影響を受けたと言ってくださってるんですけど,ベクトルが違うんで,どこなんだろう? と,こっちが聞きたいぐらいなんですよ(笑)。

前山田氏:
 いっぱいあるんですよ!
 実はももいろクローバーZ(※5)に書いている曲は,かなり伊藤さんの影響を受けてるんです。コードの使い方とか,これでもか! って盛り上げる切なさやドラマチックさというのが。
 「Z伝説 〜終わりなき革命〜」という曲なんかは,コード進行の部分でかなり影響を受けています。

4Gamer:
 気付きませんでした……。

伊藤氏:
 えっそうなんですか? 今度そういうつもりで聴いてみます。
 でも言われてみると,日常の2曲も,Bメロが凄くクラシックなんですよ。これがわざとなのか,感覚的なものなのかは分からなかったんですが,あえて狙っているとしたら,そういうところに僕の影響があるのかな?

前山田氏:
 そのとおりでございます!

4Gamer:
 何だか今,目の前でもの凄く豪華な答え合わせが繰り広げられています……。

前山田氏:
 Aメロをドスンドスンウーンとやって,Bメロは切なくて,Cメロではこれでもかとドラマチックにぶつけていくっていうのが,一番好きなんです。これは完璧にイトケン節の影響なんですよ。

伊藤氏:
 なるほど。だから僕なんかは前山田さんの曲を聴いたときに,Bメロで安心するんですね。そこはクラシックな展開で,誰にでも次が分かるんです。そしてサビに来たら,うわーっと巻き込めるという,そういうタイプですよね。

前山田氏:
 そうなんです。クラシカルな……ショパン(※7)的な叙情感が凄く好きなんですよ。若干わざとらしいというか,メロドラマ風でもあるんですけど,僕はそれが好きで。

4Gamer:
 お二人とも音楽のベースはピアノですよね。幼い頃からクラシックの影響を受けていたと思うんですが……。

画像集#011のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
伊藤氏前山田氏:
 大きいですね。

前山田氏:
 どんなものを弾いてらっしゃいましたか?

伊藤氏:
 僕は普通にバイエルから始まって,ソナチネ(※8)でやめたんですけど,ベートーヴェン(※9)やショパンが好きですね。オーケストラも好きなんですけど,ピアノの曲のほうが凄く好きです。とくにショパンやラフマニノフ(※10)のピアノ曲が。

前山田氏:
 やっぱりラフマニノフですよね!

伊藤氏:
 ラフマニノフですよ!

4Gamer:
 そう言われると凄く分かります。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」なんか,安っぽい言い方をすると完璧に泣きのメロディですもんね。

伊藤氏:
 ええ。ラフマニノフの曲も,「のだめカンタービレ」(※11)あたりでメジャーになりましたが,僕はもちろんその前から聴いてます。

前山田氏:
 当たり前ですよね! ラフマニノフの叙情感というか,和声の使い方とかが凄く,わざとらしいんですよね。でも僕はそれが凄く好きで。
 あと,ドビュッシー(※12)とかサティ(※13)もわざとらしいことをするんですけど,そういうわざとらしさが好きですね。

伊藤氏:
 彼らはフランスの人なので,色使いがまだ明るいんですよね。でもラフマニノフやチャイコフスキー(※14)は,ロシアなんで……。

前山田氏:
 暗いんですよ。根暗なんです。ねちっこいんです。殺伐とした大地感があって。サティやドビュッシーやショパンは,薔薇が咲いてるんですけど,ロシアの作曲家は空っ風なんですよね。そこがたまらないんです。

4Gamer:
 イタリアの作曲家の作品は,明るくねちっこかったりしますし。

前山田氏:
 風土ってあるんですよねぇ。
 そうそう,僕は子供の頃はバイエルじゃなくて,バルトーク(※15)の「ミクロコスモス」を教則本がわりにやっていたんですけど,もの凄く不協和音だらけだったんですよ。クラシックの入りからして,不協和音とか変なテンションとかばっかりやらされていたので,そういうのも,今の曲作りに若干の影響があるのかもしれません。

4Gamer:
 ほかの生徒さん達は,普通にバイエルなんかをやっていたんですか?

前山田氏:
 そうなんです。うちの姉なんかもツェルニー(※16)とかバイエルあたりをやっていたんですけど。

4Gamer:
 ピアノの先生としても,この子は何かが違うというのがあったのかもしれませんね。

伊藤氏:
 どういうお子さんだったんですか?

画像集#012のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
前山田氏:
 僕は運動神経がゼロだったんです。今でもそうなんですけど(笑)。でもプライドが高いので,運動神経が悪くて格好悪いところを誰にも見せたくなくて,何かしら格好付けたかったんです。そこで,ピアノや勉強を必死にやって,プライドを保っていたという……イヤな子供でしたね。計算尽くの。

伊藤氏:
 僕なんかの場合は,ピアノを習っている男の子はそれだけで馬鹿にされるっていう最後の世代だったんで,それよりは生きやすかったかもしれないですね。

前山田氏:
 僕の頃にもそれは若干ありましたよ。「あいつピアノなんかやって,オカマじゃねえの?」って。でも仕方ないと思っていました。そういうことを言う奴の存在も必要悪だぐらいに考えていましたから。そうでもしないと,アイデンティティが保てなかったんですよ。

4Gamer:
 逆に言うと,ピアノでも何でも得意なものがあるだけで,他から何かを言われても気にしないで済むんですよね。

前山田氏:
 そうなんですよね。それが僕にとっては,たまたまピアノだったということで。


伊藤氏の作品は“歌モノ”スタイル

だから前山田氏も詞を付けた


4Gamer:
 ところで伊藤さんは,前山田さんがヒャダイン名義で勝手にゲーム音楽をアレンジした作品(※17)を聴いたことはありますか?

伊藤氏:
 ええ,ありますよ(笑)。

画像集#013のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
前山田氏:
 すみません! 本当にすみません! 大好きなんです!

伊藤氏:
 いえいえ(笑)。
 正直,完璧だなと思いましたね。歌詞にしても,誰もが言わなかったけど思っていることを見事に形にしていて,大笑いしました。着眼点が面白いんですよね。

前山田氏:
 僕は友達が多いほうではなかったので,ゲームを遊んでいると,なぜこの人は裸でマントを着ているんだろう? とか,夜ご飯食べてるときにこの人達はどんな会話をしているんだろう? とか,そういうことをいろいろ考えていたんです。そこからいろんな設定を勝手に作ったりして楽しんでいました。

伊藤氏:
 そういう楽屋ネタ系が達者ですよね。

前山田氏:
 子供の頃だけじゃなくて,今も基本的に変わってないんですけどね。このキャラクターがこういうことを思っていたら面白いだろうなぁとか。
 今,アニメのキャラソンを作らせてもらうこともあるんですけど,そういう経験が凄く生きています。

4Gamer:
 なるほど。キャラソンを作る原動力は,長年培われた妄想癖にあるわけですね。

前山田氏:
 ええ,完璧にそこで培ってきたものです。とくにファミコンの頃のゲームって,セリフが少ない分,いろいろ想像できるんで,凄く楽しかったですね。

4Gamer:
 行間を想像で埋めるしかなかったですからね。

前山田氏:
 それが楽しくて,それを歪曲させてやってますね。
 ……(小さい声で)キャラソンでは,たまにアニメサイドに「そこまで悪い子じゃないですよ」なんて言われたりしますけど(笑)。

4Gamer:
 ついやり過ぎてしまったり。

前山田氏:
 でも,そういうことは抜きにしても,伊藤さんの曲が本当に好きで,かなりの影響を受けていて,先ほどお話ししたZ伝説だけじゃなくて,ももいろクローバーZに現在進行形で作っている曲も,完全にイトケン節の影響を受けていますから。
 伊藤さんの曲って,普通の人だったら,ある程度で引っ込ませるであろうところから,さらにたたみかけていく構成になっているんですよね。しかも収束しないでループに戻っていくみたいな感じで,切なさに終わりがないんですよ。

伊藤氏:
 よくねちっこいって言われますね(笑)。
 以前,ロマサガ3の四魔貴族の曲を作っていたとき,イントロを下村(陽子)さんに聴かせたんですけど,その段階で「いろんな要素がいっぱい入ってるわね」という感想をもらったんです。
 でも,まだイントロだけですと言ったら,「まだ続くの? 私それでもういいわ」なんて言われましたから。

前山田氏:
 あそこまで何度もたたみかけていくのは何故なんですか?

画像集#014のサムネイル/“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと,そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった
伊藤氏:
 僕が作る曲って,実はゲーム音楽や劇伴には珍しいタイプの,歌メロスタイルなんですよ。イントロ,Aメロ,Bメロ,サビっていう。多くのゲーム音楽って場面に合わせた曲ですから,そういうのが掴みづらいじゃないですか。でも僕は,もともと歌モノが大好きなんで,意識的にはっきりさせているんですね。
 言ってしまえば,歌モノのインストゥルメンタルバージョンみたいなイメージで作っているんです。

前山田氏:
 ああ,それは凄くよく分かります。だから普通の劇伴よりも展開がドラマチックになるんですね。

伊藤氏:
 かもしれませんね。ファンレターをいただくときも,インストゥルメンタルなのに「伊藤さんの歌」と書いてくれる方が多いんですよ。無意識でそういうところを聴いてくださっているのかなということで,そういう感想をいただくと僕としては嬉しいんです。

前山田氏: 
 なるほど……それはもう,僕としても伊藤さんの曲に歌を付けざるをえなかったということですよね。むしろ,ほかの人が歌を付けない理由が分からないぐらいです。

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