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覚悟を決めた女は強し。「放課後ライトノベル」第70回は『聖剣の刀鍛冶』で女性達の戦いを見届けます
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印刷2011/12/03 10:00

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覚悟を決めた女は強し。「放課後ライトノベル」第70回は『聖剣の刀鍛冶』で女性達の戦いを見届けます



 今回の「放課後ライトノベル」では,いよいよ物語も佳境に入ってきた『聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)』を紹介する。

 聖剣というとゲーム,とくにRPGではしばしば物語の鍵となるアイテムである。手に入れるのに特別な手順が必要で,それを手に入れない限りゲームが進まないこともしばしば。その割に数値上はもっと強い武器が結構あったりして,あんまり扱いが良くないあたりが泣ける。なにせ20年前にはすでにチェーンソーで神をバラバラにしてたくらいですからなあ……。

 とはいえ『聖剣の刀鍛冶』が世に出てきたときには,その聖剣を「鍛造する」――つまりは人の手で作り出そうという設定を,驚きとともに受け止めたのもまた事実。聖“剣”なのに“刀”鍛冶という点にも興味深いものがあった。まあ,確かに聖剣を「鋳造」しちゃうというのも,ちょっとロマンがないしね。

 近年のライトノベルでは貴重なファンタジー作品として人気を博し,2009年にはアニメ化も行われた本作,現在はどんな展開を迎えているのか? 1年ぶりに刊行された,最新11巻の魅力に迫る。

画像(001)覚悟を決めた女は強し。「放課後ライトノベル」第70回は『聖剣の刀鍛冶』で女性達の戦いを見届けます
『聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)11』

著者:三浦勇雄
イラストレーター:屡那
出版社/レーベル:メディアファクトリー/MF文庫J
価格:609円(税込)
ISBN:978-4-8401-3931-1

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●少女騎士と聖剣の刀鍛冶が出会うとき,運命が回りだす


 本題に入る前に,まずは物語の流れを簡単におさらいしておこう。
 大陸の北端,ブレア火山の麓に位置する独立交易都市ハウスマン。都市と市民を守る役目を負う,自衛騎士団に所属するセシリー・キャンベルは,あるとき若き鍛冶師ルーク・エインズワースが手にする刀を目にし,その業に惚れ込む。彼と共にさまざまな出来事を経験する中で,セシリーは大陸に隠された秘密を知ることになる。

 かつて大陸全土に大量の血と悲劇をまき散らした「代理契約戦争」。その元凶となった悪魔契約――人間を悪魔化させる禁忌の術法は,大陸史上最大最悪の人外「ヴァルバニル」によって生み出された。今では半ば伝説上の存在と思われているその魔物は,現在も生きており,ブレア火山の奥深くに封印されていたのだ。

 その封印は徐々に弱まっており,このままでは遠くない未来にヴァルバニルが復活するのは必至。ルークはそんなヴァルバニルを封印できる唯一のアイテム“聖剣”を作り出す使命を負った,聖剣の刀鍛冶なのである。
 彼の背負うものを知り,彼の刀となって共に戦おうと誓うセシリー。しかしそんな彼女の決意をあざ笑うかのように,事態は日を追うごとに深刻さを増していく――。


●襲い来る敵,迫る崩壊。立ち向かうのは不屈の意志


 シリーズを追いかけていて印象に残るのは,何よりもその「容赦のなさ」である。主人公たちが大きなピンチに陥り,そこから勇気と機転,努力などで逆転する,というのは物語の王道パターンであり,『聖剣の刀鍛冶』でもそれは踏襲されている。しかしこの作品の場合,セシリーたちの追い込まれ方にまるで遠慮というものがない。

 キャラクターごとに見ると,3巻で気丈なセシリーを再起不能寸前にまで追い込んだ事件が最たるものだし(具体的にどういったものかは本編で),国レベルでは今まさに絶体絶命の危機に陥っているところだ。危機に際し,いきなり強力な助っ人が現れるとかいったことはまったくなく,むしろ敵方に強大な新戦力が加わる始末。それどころか,度重なる戦いの中で主人公側の人間は次々と傷ついていき,主要キャラの中にも戦線を離脱する者が……。こんな状態から,いったいどうやって逆転していくのか!? と,とにかく読んでいて不安が絶えない。

 だが,それも当然のこと。セシリーたちが向かい合っているのは,大陸の存亡にかかわる事態であり,そのために剣を交えなければいけないのは,何本もの魔剣(剣に姿を変化させることのできる悪魔)を所有する敵国の戦士たちなのだ。バトルものの中には,命のやり取りをしているはずなのになんとなくキャラクターが死にそうにない,一種の「ぬるさ」が感じられるものがしばしば見られるが,この作品はそんなものとは無縁。文字どおり命を削る戦いの数々に,読みながら思わずこちらも歯を食いしばらずにはいられない。

 そして,だからこそ,どんなピンチに遭っても決してあきらめず,何度でも立ち上がるキャラクターたちの不屈の闘志が胸を打つのだ。セシリーやルークはもちろん,ルークを献身的に支える少女リサ,セシリーの心強い相棒である魔剣アリア。たくさんのサブキャラクターたちから,名もない市井の人々まで,1人たりとも手を抜かれることなく描写されたその生きざまに,誰もが無事に結末を迎えてほしいと願わずにはいられないだろう。


●それぞれの戦いに臨む,女たちの生きざまを目に焼きつけろ!


 11巻ではそんな,それぞれの使命を懸命に果たそうとする人々の中から,さまざまな立場の「女たち」がクローズアップされている。

 最初の第25-1話で語られるのは,セシリーを生み育てた両親のなれ初め。早くに父を失い,母親も自分に似ず線の細いセシリーだが,若き日の2人による波乱万丈のエピソードは,間違いなく彼女が2人の娘だと思わせてくれる。
 次の第25-2話は,セシリーの同僚である自衛騎士団の少女たちによる一幕。セシリーや魔剣の力はもちろんだが,彼女たちもまた,都市を守るために欠かせない存在であることが感じられる一編だ。

 続く第25-3話は,セシリーがかつて救った少女シャーロットと,彼女が仕える軍国の少女王・ゼノビアとの物語。セシリーたちとはまた異なる,上に立つ者の苦悩や決意が実感できるエピソードとなっている。
 そして第25-4話では,それまで幾度となくセシリーたちを窮地に追い込んだ,敵国の魔剣たちにスポットが当てられる。憎むべき敵にして,人ならざる存在である魔剣たちにも,個々の意志があり,時に悩みもするという事実が,この物語が単純な勧善懲悪では終わらないということを改めて思い出させてくれる。

 シリーズでもとくに苛烈な展開が続いていたここ数巻に対し,短編集ということもあってか,どこか「骨休め」的な印象を受ける11巻。だが角度を変えれば「嵐の前の静けさ」という見方もできる。今巻で述べられた彼女たちの意志が,物語をどう動かしていくのかが,今後の見どころと言えるだろう。

 そんな中で最も注目すべき女性は,やはり主人公たるセシリー。最後の第26話でとんでもない爆弾を落としていった彼女が,今後いかにして道を切り開いていくのか。運命の日が刻一刻と迫りつつある,世界の行方とともに見守っていきたい。

■刀鍛冶じゃなくても分かる,三浦勇雄作品

『クリスマス上等。』(著者:三浦勇雄,イラスト:屡那/MF文庫J)
→Amazon.co.jpで購入する
画像(002)覚悟を決めた女は強し。「放課後ライトノベル」第70回は『聖剣の刀鍛冶』で女性達の戦いを見届けます
 著者の三浦勇雄は1983年生まれ。北海道出身で,現在も地元札幌に在住。2005年,『クリスマス上等。』で第1回MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞を受賞し,デビュー。同作から始まる「上等。」シリーズは全8巻の人気シリーズとなる。2007年より,「上等。」シリーズと同じイラストレーターの屡那とのコンビで『聖剣の刀鍛冶』をスタート。こちらも人気作となり,2009年にはTVアニメ化も果たした。現在はMF文庫J ライトノベル新人賞の審査員も務めている。
 「上等。」シリーズ,『聖剣の刀鍛冶』に共通するのが,キャラクターが総じて「強い」ということ。強いといっても武力や戦闘力のことではなく,たとえ何の力も持たない一般人であっても,目指すもののためなら決してあきらめることなく困難に立ち向かっていく意志。いわゆるヒロインもその例外ではなく,単にヒーローに守られるだけではない,芯の強さを持っていることが特徴となっている。
 なお,著者の作品はなぜか,同レーベルのほかの作品の中でパロディにされることが多い。例えば『僕は友達が少ない』の1エピソードには,「聖剣のブラックスター」なるエロゲーが登場(三浦勇雄公認)。同作のコミック版においてそのエピソードが描かれた際には,「聖剣のブラックスター」のゲーム画面を『聖剣の刀鍛冶』のコミカライズを担当する山田孝太郎が描いており,悪ノリがさらに進んでいる。

■■宇佐見尚也(ライター/勇者でろりん)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。鍛冶屋と聞くと,マンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」に出てくるロン・ベルクを思い出すという宇佐見氏。いかにも職人というスタンスと,酸いも甘いも噛み分けたような態度に,子供心に「かっけえなあ,このおっさん」と感じ入っていたそうです。ダイ大といえば,ポップの成長だけでなく,バランやクロコダインといった渋い大人達の活躍も印象的でした。あとマァム(武闘家Ver.)の太もも。
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