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ラブコメとか全部何かの間違いだし。「放課後ライトノベル」第53回は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でダメダメな青春を送っちゃおう
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印刷2011/08/06 10:00

連載

ラブコメとか全部何かの間違いだし。「放課後ライトノベル」第53回は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でダメダメな青春を送っちゃおう



 ネス湖にネッシーがいないように,思春期にも青春というものは存在しない。正確には,漫画や小説で見られるようなドラマチックな青春なんてものが存在するわけないのである。

 卒業式の日に告白すると永遠に幸せになれる伝説の樹なんてどこの学校にもないし,甲子園に連れてってと頼んでくる幼なじみもどこにもいないし,「はわわ〜」とか言ってくれる緑髪のメイドロボなんて現在の科学技術では作られるはずもない。
 青春というものは,もっとずっとみみっちいもので,学校帰りに「鉄拳4」でたまたま調子良く連勝の山を築いていたら向かいの台から灰皿が投げつけられ急いで逃げたとか,その程度のものである。

 古来より語り継がれてきた理想的な青春というものは,漫画やゲームやドラマの中にしか存在しない嘘っぱちであり,フィクションであり,不毛な青春しか過ごせなかった人を騙そうとするペテンである。青春なんてないさ,青春なんて嘘さ。寝ぼけた人がきっと見間違えたのであろう。

 だから自分の中高時代にろくな思い出がない同志諸君も,他人を呪ったり妬んだりしてはいけない。明るく楽しい青春なんて,すべては幻想だ。放課後,自分の好きな人が楽しげな顔でほかの誰かと携帯で話していても,それはきっと目の錯覚だし,休日に一人で映画館に行ったらクラスメイトが男女3:3で集まって楽しげに会話していたなんてのも,蜃気楼か何かである。

 せいしゅんなんてないさ,せいしゅんなんてうそさ。
 だから過去のトラウマやうらみつらみは,とりあえず台所の三角コーナーにでも置いといて,もっと前向きにフィクションの青春の話をしよう。今回の「放課後ライトノベル」で紹介するのは,渡航による『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。ひねくれた主人公の価値観は,あるべきはずの理想的な青春時代を過ごせなかった多くの人たちの共感を呼ぶはずだ。

ラブコメとか全部何かの間違いだし。「放課後ライトノベル」第53回は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でダメダメな青春を送っちゃおう
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2』

著者:渡航
イラストレーター:ぽんかん(8)
出版社/レーベル:小学館/ガガガ文庫
価格:600円(税込)
ISBN:978-4-09-451286-1

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●腐った目の高校生・比企谷八幡の生態


 主人公の高校生,比企谷八幡(ひきがやはちまん)は「高校生活を振り返って」というレポートに「リア充爆発しろ!」と書き,働きたくないという理由で将来の目標を専業主夫にしてしまうような社会不適合者。腐った魚のような目が特徴で,当然友達もいなければ,恋人もいるはずがない。

 そんな態度を見かねた生活指導の教師・平塚静(ひらつかしずか)は,彼をある部活に引っ張り込む。それは学年一の才女にして美少女,雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)が君臨する「奉仕部」だった。一見すると完璧美少女に見える雪ノ下だったが,そこは出る杭は打たれる日本社会。幼いころから周囲に妬まれ恨まれ続けていた彼女は,かなり残念な性格の毒舌少女に成長してしまっていた。当然友達もいなければ,恋人もいるはずもない。

 その二人が奉仕部として,困っている人に救いの手を差し伸べる活動をするというのが本作のストーリーだ。しかし,奉仕部に集まってくるのは,外見はビッチで中身は処女の由比ヶ浜結衣(ゆいがはまゆい)とか,外見はオタクで中身は中二病の材木座義輝(ざいもくざよしてる)とか,外見は美少女で中身も愛くるしいけど性別が男の戸塚彩加(とつかさいか)など,一癖も二癖もある奴らばかり。奉仕部の部室はさながら変人の巣窟のような状態になっているわけである。合掌。


●読んでいる側にまで突き刺さる地雷原の数々


 本作の読みどころは,語り手である比企谷が心に抱えている爆弾の数々である。ちょっとした世間話をしていたつもりが,いつの間にか女の子にメールを送ってやんわりと無視された話に,クラスメイトから普通に名前を憶えられてなかった話に,友達の誕生会に行って一人だけ微妙な立ち位置だった話に,バイ菌扱いされた話になっている……などなど,読んでいるこちらの胃がしくしく痛んできそうなエピソードが多数披露される。

 その一方で,日常系ライトノベルのお約束であるヒロインたちとの楽しい会話もちゃんと搭載されている。メインヒロインである雪ノ下は事あるごとに,比企谷を見下したり憐れんだりしてくるし,平塚先生は「衝撃のっ! ファーストブリットおぉっ!!」という懐かしいセリフと共にボディブローを打ち込んでくるし,やや天然気味の由比ヶ浜はトラウマをえぐるような発言を素で言ってくるし……あれ,あんまり楽しそうじゃない?

 そして,何より肝心の「ラブコメ」要素だが,タイトルにも「まちがっている」と書かれているだけあって,現状あんまりラブってないです。やはりまちがっている。2巻の表紙である由比ヶ浜は,ややそれらしい素振りを見せてはいるものの,1巻の表紙であった雪ノ下はメインヒロインであるくせにデレる要素が現状ほぼ存在しない。比企谷がほかの人たちと携帯の番号を交換しているのに,一人だけ番号を教えようとしないツンっぷり。いっそのこと,最後までこの調子で進めていってもらいたいものだ。


●汲めども尽きぬ千葉愛を堪能せよ!


 最新刊の2巻では,厄介な面々ばかりが集まる奉仕部に,クラスのリア充グループに所属するイケメン・葉山隼人(はやまはやと)が襲来。本来ならスクールカースト上位の彼は,この作品において敵役ポジションのはずなのだが,大変人柄が良く,仲間思いでもあり,本作の登場人物で一番友達になりたいと思わせるようなキャラだったりするから困る。

 その彼からの依頼を解決したと思ったら,今度は比企谷の妹・小町(こまち)が友人から受けた,「お姉さんが不良化した」という相談に乗ってあげたりするなど,比企谷たち奉仕部のメンバーは部室でダベってばかりではなく,結構積極的に活動している。

 そして,2巻でよりパワーアップして登場してくるのが「千葉」である。実は本作の舞台になっているのは千葉県で,ご当地ネタも多数出てくる。比企谷が愛飲するのはもちろん,千葉の名産品(?)MAXコーヒーだ。さらに,千葉県のローカル情報をクイズにした「千葉県横断ウルトラクイズ」もたびたび開催される。
 比企谷が「俺のように津田沼のACEで延々上海と脱衣麻雀をやっていた者は多くないはずだ」と語ったりするなど,千葉のさまざまな駅や土地を訪れたりといった聖地巡礼もできそうな感じである。千葉県民の人は,きっと本作を二割増しぐらいで楽しめるはずだ。

 また,全体的にギャグが多めの本作であるが,そのギャグにカモフラージュされている学校生活ならではの悲しみにも注目してほしい。基本的に,学校は誰かと一緒に行動するのが当たり前になっている空間だ。そのような場所でほぼ一人で過ごすということの息苦しさ。思春期特有の他人との距離感がうまく掴めない歯がゆさや,ぼっちならではの空回りする自意識などがうまく表現されており,似たような体験をしたことがある人には確実に“来る”一作となっている。

■間違った青春を送ってしまった人でも分かる,渡航作品

『あやかしがたり』(著者:渡航,イラスト:夏目義徳/ガガガ文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
ラブコメとか全部何かの間違いだし。「放課後ライトノベル」第53回は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でダメダメな青春を送っちゃおう
 渡航は,第3回小学館ライトノベル大賞の大賞受賞作『あやかしがたり』で2009年にデビュー。江戸時代を舞台に,あやかしの姿を見ることができる少年,新之助と拝み屋のふくろう,そして化猫のましろの三人の道中を描いた,ライトノベルでは珍しい時代劇。
 その売れ行きだが,「死ぬほど売れなかった」「大賞のくせにまったく売れなかった」「ライトノベル史上、『大賞受賞』という冠がついていながらもっとも売れなかった」「三冊出してるくせに他の人の一冊分しか売れてない」「もはや売れないことがアイデンテティ」という具合。……いや,私の意見じゃありませんよ,全部著者のブログ「渡航日誌」に書かれていることです。
 しかし,当たり前の話だが,売れてないからといって,つまらないというわけではない。確かに今のライトノベルの主流からは外れているが,王道を突き進んだ物語は読みごたえがあり,1巻から主人公の成長を描きつつも,全4巻で綺麗に完結している。個人的には3巻の戦いがベストバウト。
 そんな主流とは大きく外れた作品の次作がラブコメ物だったりするから,いろいろ驚きであるが,まったくの別物かというとそんなこともなく,どちらの主人公も他人とのコミュニケーションが苦手だったりと案外共通点はあったりするので,本作が面白かったという人は試しに読んでみるとよいだろう。何はともあれ,ブログであれだけ売れないと嘆いていた渡航が『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でヒットを飛ばしたこともあり,今後は自虐ネタなしでどのようにブログを更新していくのか。そしてどのような小説を書いていくのかにも,ぜひ注目してきたい。

■■柿崎憲(青春以外でも間違っているライター)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライターにして,「放課後ライトノベル」の,ジョージアはエメラルドマウンテンが好きなほう。MAXコーヒーは胸焼けがしてしまい飲みきれないという柿崎氏ですが,どうも千葉県民は毎日MAXコーヒーを飲んでいると思い込んでいるふしがあり,そんな千葉県の方々に尊敬の眼差しを送っていました。うん,何か間違っている気がする。
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