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合言葉は男装女子萌え。「放課後ライトノベル」第13回は学園陰陽アクション『東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST』で悪霊退治にレッツゴー!
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印刷2010/10/09 10:30

連載

合言葉は男装女子萌え。「放課後ライトノベル」第13回は学園陰陽アクション『東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST』で悪霊退治にレッツゴー!



 「陰陽師」と聞いて,皆さんは何を思い浮かべるだろうか。
 やっぱり,安倍晴明を主人公とした夢枕獏の小説(もしくは岡野玲子のマンガ)だよね,という人もいるだろうし,人々の閉ざされた心の闇にはびこる魑魅魍魎に立ち向かう,神妙不可思議にして胡散臭い男(と女)が歌って踊る動画しかない! という人もいるかもしれない。悪霊退散! 悪霊退散!

 しかし,いずれにしても,そのおおもととなった古代日本の官職のことを真っ先に思い浮かべる人は,意外と少ないのではないかと思う。そのくらい,陰陽師というのは今日,ゲームやマンガの中ではかなりメジャーな存在となっているのだ。

 もちろん,ライトノベルの世界でも陰陽師は大活躍。中でも有名な作品が,『少年陰陽師』(著:結城光流/角川ビーンズ文庫)だ。平安時代を舞台に,安倍晴明の孫を主人公に据えた作品で,アニメにもなっているため,知っている人も多いのではないだろうか。

 もっとも原作は30巻を超える長期シリーズのため,今から読むのはなかなか大変。そこでオススメしたいのが,今回の「放課後ライトノベル」で取り上げる『東京レイヴンズ』だ。まだ2巻が刊行されたばかりなので,追いかけるのは難しくない。加えて舞台が現代なので,「時代物はちょっと……」という人でも抵抗なく読める作品なのだ。
 それでは,さっそく紹介行ってみよう。レッツゴー!

画像集#001のサムネイル/合言葉は男装女子萌え。「放課後ライトノベル」第13回は学園陰陽アクション『東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST』で悪霊退治にレッツゴー!
『東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST』

著者:あざの耕平
イラストレーター:すみ兵
出版社/レーベル:富士見書房/富士見ファンタジア文庫
価格:630円(税込)
ISBN:978-4-8291-3552-5-C0193

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●生まれはすごいが経験はゼロ,陰陽師見習いの奮闘記


 今日,ゲームやマンガに登場する陰陽師のイメージといえば,式神を使役して,悪霊を退治する……といった感じだろう。『東京レイヴンズ』における陰陽師も,そのイメージからそう外れてはいない。ただ特徴的なのは,その陰陽師というのが国によって管理されている「国家資格」だということ。

 太平洋戦争時,陰陽師の力を軍事利用しようとする軍部の要請によって陰陽寮(陰陽師の総本山)が復活,紆余曲折を経て現在ではそれが陰陽庁となり,各地で発生する霊的な災害――“霊災”の対処に当たっている,というのが本作の世界。陰陽庁は全国の陰陽師たちを管理しており,彼らはその実力に応じて「陰陽I種」「陰陽II種」などに分けられている。

 先に書いたとおり,陰陽師というのはもともと官職の一つだったことを考えると,本来の形に戻ったともいえるのだが,とはいえ「試験をパスすることでなれる陰陽師」というのが新鮮に感じられるのもまた事実。そして主人公の土御門春虎(つちみかどはるとら)は,その陰陽師を目指して奮闘する陰陽師見習いの一人なのである。

 もっとも,その道のりは決して平坦ではない。陰陽師の名門(ただし今では没落)である土御門家の人間ながら,高校時代まで陰陽師とは無縁の生活を送ってきた春虎は,いわば陰陽師としてはド素人。しかし,1巻である事件に巻き込まれたことから,自らの立場と果たすべき役割を痛感し,陰陽師になることを目指すようになる。

 その事件が解決したのち,1巻ラストで高校を中退して陰陽塾に入るために上京してきた春虎は,周囲からの風当たりも強い中,2巻ではいよいよ,やるときにはやる根性と,不思議と人を引きつける人柄で,自らの道を切り開いていく。今はまだひよっこの春虎が,どのように陰陽師への階段を上っていくのかに要注目だ。


●男装女子から狐耳幼女まで,よりどりみどり(?)のキャラクター


 『東京レイヴンズ』の魅力は何といっても,主人公の春虎を始めとするキャラクターが個性的で生き生きしていること。

 まずはヒロインの土御門夏目(つちみかどなつめ)。土御門の本家の人間である夏目は,分家の春虎とは正反対に幼いころから陰陽師になるべく修行を積んできた黒髪の美少女だ。普段はクールな態度だが,春虎のこととなると冷静ではいられなくなるところがGood。また,1巻では巫女服で,2巻では男装少女として登場してくるのもポイントが高い。

 続いて春虎の悪友ともいうべき阿刀冬児(あととうじ)。陰陽師とは無関係の生まれながら陰陽師に関する知識を豊富に持っており,無知な春虎のサポート役(と,読者への解説役)を務める。その一方で,元武闘派ヤンキーだったり,何かと鈍い春虎をトラブルに巻き込む張本人でもあったりと,ノリの良さも持ち合わせている。

 1巻でメインを張った春虎,夏目,冬児のトリオに,2巻では夏目に対抗心を燃やすお嬢様の倉橋京子(くらはしきょうこ),ちょっと気弱な眼鏡の少年・百枝天馬(ももえてんま)ら陰陽塾のクラスメイトが加わり,人間関係はより複雑に。多数のキャラクターを登場させながら,誰もをチョイ役に終わらせないことに定評のある著者のこと,彼らが今後の物語の中でどんな役どころを担うのか,今から楽しみだ。

 ちなみに筆者の最萌えキャラは同じく2巻で登場する,春虎の式神のコン。見た目は狐耳としっぽが生えた幼女なのだが,主たる春虎を強く崇拝しており,彼を傷つける相手には匕首を手に果敢に挑む勇気を持ち合わせている。春虎が何か言うたびにあわあわする様は実に可愛らしく,断じてロリコンではない筆者も思わず式神に一人欲しくなったほど。しっぽもふもふしたいです


●深まる謎,忍び寄る影。物語は本格的に幕を開ける


 イントロダクション的な1巻を経て,2巻で春虎は陰陽塾に転入し,いよいよ本格的に陰陽師を目指すことになる。平安時代の狩衣を模した,烏羽色の制服に初めて袖を通し,陰陽師になることをあらためて決意する春虎だが,彼を取り巻く状況は,そうやすやすと彼に平穏な学園生活を送らせてはくれない。

 夏目には,今日の呪術体系の基礎を作った稀代の陰陽師であり,霊災が多発する要因を作った張本人でもある,土御門夜光(つちみかどやこう)の生まれ変わりではないかという噂があった。噂を信じてその力を,ひいては夏目を我が物にしようと,さまざまな連中の魔の手が彼女の元へ伸ばされる。そして連中のもたらすトラブルに,夏目の式神となった春虎もまた,否応なく巻き込まれていく。

 果たして夏目は本当に夜光の生まれ変わりなのか? 大きな謎を孕みつつ,物語は次の局面を迎えようとしている。帝都を駆ける闇鴉たち(レイヴンズ)の物語に,乗り込むなら今だ。

■式神でも分かる,あざの耕平作品

『BLACK BLOOD BROTHERS1 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 兄弟上陸―』(著者:あざの耕平,イラスト:草河遊也/富士見ファンタジア文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#002のサムネイル/合言葉は男装女子萌え。「放課後ライトノベル」第13回は学園陰陽アクション『東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST』で悪霊退治にレッツゴー!
 1999年,『ブートレガーズ 神仙酒コンチェルト』(富士見ファンタジア文庫)でデビューしたあざの耕平。デビュー後第1作となる『Dクラッカーズ』は,富士見ミステリー文庫の代表作となり,のちに富士見ファンタジア文庫で新装改訂版が刊行されるほどの人気を博す。続く『BLACK BLOOD BROTHERS』(富士見ファンタジア文庫)は,著者初のアニメ化作品となった。ほかにも『神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエル』シリーズ(GA文庫)などを手がけている。
 『Dクラ』『BBB』という2つの長編シリーズに共通するのは,一度大風呂敷を広げておきながら,最後は「これしかない」というところにきれいに着地させている点。長編ということで登場人物も多いが,それぞれに必ず見せ場を作っており,いわゆる「捨てキャラ」というのがほとんど存在しない。キャラクター,ストーリー,設定,すべてが高水準の実力派作家だ。
 なお,手がけたシリーズを通してみた場合,1,2巻あたりはオーソドックスに始まり,3巻ごろから急激におもしろくなるケースが多い。その傾向に従うなら,『東京レイヴンズ』も次巻あたりから本番ということになるが,果たして……?

■■宇佐見尚也(ライター)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。これまで,「ラブプラス」は買ったが最後(いろんな意味で)人生終わる! と思って手を出さずにきたものの,ニンテンドー3DS版「ラブプラス」のプロモーションムービーを見て,思わず胸キュンしてしまったという宇佐見氏。「今回ばかりは決意が揺らいでしまいそうで,そのうちこの欄で嬉々として彼女自慢を始めるかもしれませんが,その際は生暖かい目でスルーしてやってください」だそうです。終わりなんかじゃない……むしろここからが始まりだ!
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