連載
インディーズゲームの小部屋:Room#192「WORLD END ECONOMiCA」

「インディーズゲームの小部屋」の第192回は,Spicy Tailsの「WORLD END ECONOMiCA」を紹介する。本作は,「狼と香辛料」などで知られる人気ライトノベル作家・支倉凍砂氏がシナリオを担当する,三部構成のノベルゲームの第一弾。いつか前人未到の地を踏むことを夢見る少年が,月面の株式市場を舞台に持ち前のトレーディング技術でのし上がろうとする姿を描いた作品だ。
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月への移民がひと段落してから16年あまりが経った頃,人類のフロンティアである月は,一攫千金の夢を追う多くの人間達で賑わっていた。巨万の富を手に入れた者もいれば,競争に敗れて貧しい暮らしをする者達もいる月世界。生粋の月育ちである主人公のハルことヨシハルは,そんな月の貧しい村の出身だ。しかしハルはそんな生活が嫌で,家出をする。彼には大きな夢があったのだ。
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その夢というのが,初めて月面に足跡を残した人類のように,いつか自分の足で前人未到の地を踏むこと。だがそのためには,莫大な資産が必要となる。ノートPCを片手に,場末のネットカフェで寝泊りをするハルは,わずかな種銭を元手に自慢のトレーディング技術を駆使してデイトレーディングを行い,順調に資産を増やしていた。しかし未成年者であるハルは,警官に捕まると実家に連れ戻されてしまう。
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物語は,警官に追われたハルが,教会を運営している女性・理沙と出会い,彼女の教会にかくまわれるようになってから大きく動き出す。一見すると,のんきにアルバイト暮らしをしているように見える理沙だが,実は多額の借金を抱えており,さらにハルよりも先にハガナという家出少女までかくまっている。本作は選択肢のない一本道のノベルゲームで,純粋な意味でのゲーム性は低いが,さすがは支倉氏とうならされる緩急自在のシナリオ展開で,ぐいぐい読まされる。
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物語の見せ場となるのは,一歩間違えば奈落の底の,デイトレーディングによる息詰まる攻防の描写だが,一方で描かれる,ハルとハガナの成長物語にも注目だ。最初はあくまで自分のためだけにトレーディング技術で金を稼ぐことを考えていたハルと,天才的な数学の才能を持ちながらも現実の問題を何一つ解決できないことに無力感を感じていたハガナは,物語の中盤以降,理沙の借金を返済するため,多額の優勝賞金が用意された仮想の投資コンテストに挑むことになる。
![]() ハル |
![]() ハガナ |
![]() 理沙 |
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ハートウォーミングなだけではない,現実世界の厳しさとトレーディングの残酷さ,大人の世界の汚さを描いた本作。この第一部を読み終える頃には,早くも第二部の登場が待ち遠しくなること間違いなしだ。そんな本作は,コミックマーケット80の2日目にあたる8月13日に,東A-47aのサークルスペースにて1000円で発売予定。また8月14日にはショップでの委託販売も開始され,店によって若干価格が異なるものの1400円前後で販売される。公式サイトでは体験版のリンク先が公開されているので,支倉氏のファンならずとも,興味を持った人はぜひお試しあれ。
■Spicy Tails公式サイト
http://spicy-tails.net/![]() セロー |
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