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  • 発表日:2007/11/19
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ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
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印刷2007/12/14 23:59

テストレポート

ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 デスクトップPC向けとなる「真のクアッドコアCPU」が発売され,3週間ほどが経過した。現時点で入手できるのは,「Phenom 9600/2.3GHz」と「Phenom 9500/2.2GHz」の下位2モデルだけだが,2008年には上位モデルとして,「Phenom 9900/2.6GHz」「Phenom 9700/2.4GHz」の2製品が投入される予定だ(関連記事)。

Phenom 9900エンジニアリングサンプル
画像集#002のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 今回4Gamerでは,そんな未発売上位モデルのうち,発表時点での最上位モデルとなるPhenom 9900のエンジニアリングサンプルを日本AMDから入手した。
 事実を端的に述べると,筆者の手元に届いたのは2007年12月12日の朝。テスト期間は非常に短かったが,幸いにしてセットで届けられたASUSTeK Computer製の「AMD 790FX」チップセット搭載マザーボード「M3A32-MVP Deluxe」(BIOS 0603,エンジニアリングサンプル)との組み合わせでは大きな問題もなくゲーム(など)を実行できたので,時間内に取得できた限りのスコアをお届けしたい。


CPUコアは前回テスト時と同じ

HyperTransport Linkは上下合計4GHz動作


 さて,Phenom 9900だが,基本的なスペックは先に「『Phenom』と『AMD 790FX』に関する現状報告」でお伝えしたPhenom 9600のエンジニアリングサンプルと同じ。CPUのバージョンを示す「Family」「Model」「Stepping」も順に10,02,2で変わっていない。参考までに,4Gamerで確認した限り,製品ボックス版のPhenom 9600だと同1F,02,2なので,(単なる想像だが)「Family 10」はエンジニアリングサンプルであることを示しているのかもしれない。

M3A32-MVP Deluxe
メーカー:ASUSTeK Computer
価格:未定
画像集#003のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 さて,CPUのバージョンが同じである以上,先にお伝えしているTLBのエラッタは,本Phenom 9900にも存在している。M3A32-MVP Deluxeの0603版BIOSには,エラッタを回避するための項目が用意されていないため,今回はこの件に関するテストは行えないことを,あらかじめお伝えしておきたい。
 HyperTransport Linkの動作クロックは上下各2GHz。Phenom 9600とPhenom 9500は1.8GHz×2だが,「Phenom 9900とPhenom 9700は2GHz×2」(日本AMD)なので,「エンジニアリングサンプルゆえの特別仕様」ではない点に注意してほしい。最終製品でも,Phenom 9900(とPhenom 9700)のHyperTrasport Linkは上下各2GHzで動作する。なお,Phenom 9900と,11月22日の記事でお伝えしたPhenom 9600,そしてAthlon 64ファミリー最上位の「Athlon 64 X2 6400+ Black Edition/3.2GHz」(以下,X2 6400+)との違いを表1にまとめてみたので,参考にしてもらえれば幸いだ。

※Phenom 9900は今回入手したサンプルのもの。Phenom 9700はAMD提供の追加情報による
画像集#008のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 今回,Phenom 9900の比較用として用意したのは,そのX2 6400+と,「Core 2 Extreme QX6850/3GHz」および「Core 2 Extreme QX9650/3GHz」(以下,C2E QX9650)。ただし,Core 2 Extreme QX6850は,“B-3ステッピングのCore 2 Quad Q6600/2.40GHz”相当に動作倍率を変更した状態で用い,以下C2Q Q6600と表記する。G-0ステッピングのCore 2 Quad Q6600を用意できなかったための変則対応となるので,この点はご理解いただきたい。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

画像集#009のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

CM2X1024-9136C5D
DDR2-1142動作対応のハイエンドDDR2メモリ
メーカー&問い合わせ先:Corsair Memory
実勢価格:5万円前後(1GBモジュール2枚セット,2007年12月14日現在)
画像集#004のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 メモリに関して補足すると,今回はゲームテストに先立って,Corsair Memory製の“PC2-9136”対応メモリモジュールを用い,Phenom 9900について,Ganged/Ungangedの違い,そしてDDR2-1066とDDR2-800の違いを見るべく,「EVEREST Ultimate Edition」(4.2.0.1180 Beta)のメモリリード/ライト/コピーテストを実行。その結果をまとめたのがグラフ1だが,DDR2-1066/800にかかわらず,メモリライトのスコアが低い点で,Phenom 9600のレポート時から変化はなかった。また,Ganged/Ungangedの違いも決定的ではない。

画像集#010のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

AMD OverDrive実行結果。HyperTransportリンクは2GHz,メモリはDDR2-1066動作しているのを確認できる
画像集#005のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 この結果を受けて,今回はメモリコントローラの仕様上の最高スペック,またマザーボードのデフォルト設定を尊重することにし,Phenom 9900のみDDR2-1066(のGangedモード)を利用することにした。X2 6400+とC2Q Q6600,C2E QX9650はDDR2-800のデュアルチャネル動作となるので,この点はご注意を。
 また,一点補足しておくと,Phenom 9900がサポートするDDR2-1066(PC2-8500)モジュールは,基本的にJEDEC準拠品のみとなる。しかしながら,テスト時点でDDR2-1066は承認されていないため,オーバークロックメモリを利用した次第だ。厳密な意味で“JEDEC仕様”のメモリ設定を行ったわけではなく,その意味でスコアは参考値となるが,ポテンシャルを見るという目的では問題ないと判断している。

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.0準拠。ただし,CPUテストということもあり,グラフィックスカード性能に依存したスコアが出やすい「高負荷設定」,および「標準設定」における1920×1200ドットのテストは省略する。また,冒頭で述べたとおり,テスト期間が短かったため,タイトルは「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06),「Crysis」,「Half-Life2: Episode Two」(以下,HL2EP2),「ロストプラネット エクストリームコンディション」(以下,ロスト プラネット)に絞った。


C2Q Q6600と一進一退の攻防

マルチスレッド対応アプリでは底力を見せる


 さっそく,テスト結果の考察に入ろう。2007年12月時点での最速CPUであるC2E QX9650に敵わないのは織り込み済み。X2 6400+やC2Q Q6600との違いを中心に見ていくことになるが,まずグラフ2は3DMark06の結果だ。3DMark06はマルチスレッドに最適化されたタイトルだが,ご覧のようにPhenom 9900はAthlon 64最速のX2 6400+を大きく上回り,C2Q Q6600に対しても,ごくわずかながら優位性を発揮している。

画像集#011のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 続いてはゲームタイトルから,描画負荷が高く,一方でCPUのマルチスレッド処理には対応していないCrysisの結果だが,グラフ3のGPUテストではC2Q Q6600に完敗のPhenom 9900が,グラフ4のCPUテストだと“いい勝負”に持ち込んでいる。なぜこんな結果になっているのか,ひとまず判断を保留して次に進みたい。

画像集#012のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
画像集#013のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 グラフが比較的素直に並びやすい,HL2EP2のスコアをまとめたのがグラフ5だ。マルチスレッド処理への最適化が相応に進んでいるこのタイトルにおいて,Phenom 9900のスコアはC2Q Q6600に届いておらず,X2 6400+を上回って面目を保った程度に留まっている。
 この結果と,CrysisのGPUスコアからは,L2キャッシュ容量の制限が影を落としている印象を受ける。C2E QX9650は1ダイ(2コア)当たり6MB,C2Q Q6600は同4MB,そしてX2 6400+は1コア当たり1MBなので,Phenom 9900の1コア当たり512KBという容量は,やはり少ない。1〜4MB程度のL2キャッシュ容量を想定して作られていると思われる最新世代の3Dゲームタイトルを前に,L2キャッシュ容量512KBは致命的なのかもしれない。
 なお,Phenomは容量2MBのL3キャッシュを搭載しているが,スコアにその効果はほとんど見られない。L2キャッシュの少なさをカバーし切れていない印象だ。

画像集#014のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 ゲームにおけるマルチスレッド処理への最適化を語るうえでは外すことのできないロスト プラネットのテスト結果を見てみよう(グラフ6,7)。GPUパフォーマンステストに近い「Snow」では,GeForce 8800 GTXがボトルネックとなってスコアが頭打ちになっている。今回取り上げたCPUなら,GeForce 8800 GTXの性能をフルに引き出せているわけだ。
 そこでCPUパフォーマンステストとなる「Cave」に注目すると,ここではPhenom 9900のスコアが1024×768ドット設定時にC2Q Q6600のスコアを上回った(※1280×1024ドットではC2E QX9650すら0.3fps上回っているが,これはGPUボトルネックによってスコアがバラついた結果と思われる)。高度にマルチスレッド処理へ最適化されたアプリケーションにおける,Phenomの可能性が見えたスコアといえそうである。

画像集#015のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
画像集#016のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 というわけで,最も可能性を感じさせたロスト プラネットで,CPUコア数(=スレッド数)の違いによる,パフォーマンスの伸びを確認してみよう。以下,解像度は1024×768ドットに固定。ゲームオプションの「並列レンダリング」を無効化して,よりCPUコアの違いが分かるように設定したうえで,「並列処理」からスレッド数を変更してテストを実行した。
 その結果をまとめたのがグラフ8で,Phenom 9900のスコアは2スレッド以上でC2Q Q6600の上に行く。ゲームにおけるネイティブクアッドコアのメリットは,(それほど大きくはないが)確かにあるようだ。

画像集#017のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー


消費電力はX2 6400+以上

高負荷時はかなり扱いづらい


Cool’n’Quietを有効化すると,アイドル時のクロックは1.3GHzにまで下がる
画像集#006のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 いつものように,消費電力をチェックしてみよう。Windowsが起動してから30分間放置した直後を「アイドル時」,そしてCPUだけに負荷をかけるべく,MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」ベースのベンチマークソフト「午後べんち」を30分間リピート実行し,その間で最も消費電力の高い時点を「高負荷時」として,各時点における消費電力をワットチェッカーで計測した。
 最初にお断りしておくと,冒頭で述べたとおり,C2Q Q6600は“相当”で,しかも最新の――消費電力が大幅に下がった――G-0ステッピングではない。そのため,スコアは参考程度に見てほしい。また,そもそもAMD製CPUとIntel製CPUではマザーボードが異なるので,直接の比較は行えない。

 ただ,それを差し引いても,Phenom 9900の消費電力が非常に高いことはグラフ9からはっきりと見て取れる。10月23日に掲載したCPU購入ガイドで,圧倒的に高い消費電力を記録していたX2 6400+を,さらに大きく上回るのである。とくに,省電力機能「Cool’n’Quiet 2.0」を無効化したときのアイドル時と,高負荷時は突出しており,お世辞にも扱いやすいCPUとはいえそうにない。Phenom 9900のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は140Wだが,見事にこの影響が出てしまっている。

画像集#018のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー

 なお,気になるCPU温度だが,CPUユーティリティ「AMD OverDrive」(Version 2.0.9)では正常と思われる温度を取得できなかったので,スコアの計測は割愛する。
 ただ,今回入手したPhenom 9900にCPUクーラーが付属していなかったため,「Athlon 64 X2 3800+」製品ボックス付属のクーラーを用いたところ,(室温が低いとはいえ)正常に冷却できていたことは付記しておきたい。ヒートシンクも極端に熱くなっていたりはしなかったので,Athlon 64 X2 6400+を冷却できる程度の能力を持つクーラーなら,問題なく利用できそうである。


45nmプロセス世代での巻き返しに期待しつつ

低価格クアッドコアCPUの選択肢拡充を歓迎したい


画像集#007のサムネイル/ネイティブクアッドコアの真価を探る,「Phenom 9900/2.6GHz」プレビュー
 重要なことだが,今回試したPhenom 9900は最終製品でない。マザーボードも問題なく動作したとはいえ量産前サンプルなので,実際に発売される頃には,少なからずパフォーマンスの向上は見込めるのではなかろうか。
 ただ,そこでパフォーマンスがある程度改善したとしても,L2キャッシュ容量がAthlon 64 X2の上位モデルから半減したことで,ゲーム用途では苦しくなった感がどうしても否めない。ロスト プラネットやHL2EP2のスコアには光が見えるものの,抜本的なゲームパフォーマンス改善には,動作クロックのさらなる引き上げが必要だろう。しかし消費電力的には65nmプロセスの限界も感じられ,45nmプロセスへの迅速なる移行を期待するほかなさそうである。

 Phenom 9900の予価は350ドル以下と発表されているが,Core 2 Quad Q6600の実勢価格が3万〜3万5000円程度(12月14日現在)ということを考えると,もう少し安価で登場させる必要があるのではなかろうか。ただ逆にいえば,純然たるミドルクラスCPUとして価格勝負に出てくれば,新たなクアッドコアCPUの選択肢として一定の存在感を示す可能性は十分にある。「ゲームはプレイするが,PCの用途はそれだけじゃない」という人なら,その価値を見い出せそうだ。
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