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Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー
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印刷2013/07/22 12:00

業界動向

Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー

 「League of Legends」のプレイヤーが,Facebookで行った書き込みが元となって逮捕され,テロリスト犯として8年もの実刑判決を言いわたされたことが,北米ゲーマーの話題になっている。「自分のクレイジーさ」を友人に笑ってもらおうと,つい表現が過激になってしまったらしいが,結果として,18歳の若者が大きく人生を狂わせることになってしまった。今回は,そんな事件をとおして,現在アメリカ社会の一端を紹介したい。


不用意な書き込みでテロ容疑者となったゲーマー


 日本でも問題視される「ネット犯罪予告」だが,アメリカで「League of Legends」のプレイヤーが不用意な書き込みを行い,それが元で懲役8年の実刑判決を受けるという事件が発生し,北米ゲーマーの大きな話題になっている。

会話で「学校に押入る」などと言えば,「そんなバカなたとえ話するなって」とたしなめられて終わりそうだが,ネット社会ではそうはいかない。書き込みは記録として残るし,どういう文脈で書かれたものなのか分からない場合も多い。18歳だったジャスティン・カーターさんの発言が軽率だったのはいうまでもないが,あまりにもキツいお仕置きを受けることになってしまった
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー
 2013年2月13日,League of Legendsのプレイヤーだった18歳の青年,ジャスティン・カーター(Justin Carter)さんは,仲間のFacebookページでゲーム談義に花を咲かせていた。その会話の中で友人が,「おまえ,本当に狂ったヤツだな」という書き込みに対してカーターさんは,「おお,オレは本当に頭がおかしいかも知れないな。学校に押し入って子供を撃ち,まだ生きているうちに,心臓に食らいついてやるよ」という過激な返答をしたのだ。ただし,そのあとに「lol」(laughing at laud/大爆笑という意味)と「jk」(just kidding/ただの冗談だよという意味)という2つのネット用語が続けられており,その場では問題になることもなく,チャットはそのまま続けられた。
 ところが翌14日,カナダ在住のネットユーザーがFacebookに書かれていた上記の一文を発見し,警察当局に通報。まもなく,カーターさんは逮捕されることになってしまった。

 逮捕容疑は「テロ活動の予告」というもの。テロの脅威があふれる現代においては,たとえ仲間うちでは通じても世の中には通じないジョークもあるし,会話の流れを知らず,ネット用語に疎い第三者が「小学校に押し入って銃撃する」とか,「心臓を食べる」といったおぞましい文言を深刻に受け止めてしまったのも無理はないかもしれない。


犯罪予告とジョークの境界線


2009年にローンチされて以降,アメリカにおけるFree-to-Playの先駆者,そしてMOBA系タイトルの代名詞として,高い人気を維持する「League of Legends」。2013年は,10月4日にプロバスケットボールチーム,L.A.レイカーズのホームスタジアムとして知られるStaple Centerでチャンピオンシップが開催される予定
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー
 犯罪の多発するアメリカでは,裁判を迅速に処理していくための「司法取引」という制度があり,容疑者が罪を認める代わりに量刑を軽くしてもらうことができる。逮捕後に接見した地方検事に司法取引を持ちかけられたカーターさんは,司法取引に応じたが,判決は8年の懲役で,逮捕歴もなく,家宅捜査で武器なども見つからなかったにも関わらず,思いのほか厳しい判決だったのだ。
 ちょっとした書き込みで逮捕されるとは思ってもいなかったカーターさんは逮捕後,絶望と孤独に耐えきれなかったのか,うつ症状が見られるようになり,罪状認否でも十分な答弁ができなかったようだ。

 テキサス州オースティン在住で,両親や弟と同居しているカーターさんは,年齢から考えて高校を卒業して一年も経っていないはずだ。そんな社会慣れしていないカーターさんだけに,刑務所の生活には厳しいものがあったようで,カーターさんの弁護士によれば,虐待や心労などによって,カーターさんは自殺願望があると診断され,数か月間,独房で過ごしていたという。

支援サイト「Free Justin Carter」には,疲れた笑顔を見せる,釈放されたばかりのカーターさんの写真が掲載されている
画像集#005のサムネイル/Access Accepted第390回:過激な書き込みでテロ容疑者にされたゲーマー
 保釈金である50万ドルを用意できなかった両親は,「Free Justin Carter」というウェブサイトを作って支援を求めたり,「Change.org」というオンライン嘆願サイトで,地方裁判所やホワイトハウスに送る署名を集めたり,テレビに出演したりなど,保釈のためにさまざまな活動を行うことになった。彼らの軌跡については,検索するとさまざまなニュース記事が出てくるので,興味のある人は見てほしい。

 ところが,7月10日になって,突然「無名の善人」から50万ドルの寄付が弁護士をとおして行われ,7月11日にカーターさんは釈放された。その人物が誰なのか,個人なのか団体であるのかさえ,両親には明らかにされていないという。

 こうした,なんとか釈放されたカーターさんだったが,「テロ容疑者」の汚名を晴らすための裁判は続けて行われるという。これまでにもゲーマーコミュニティを中心にある程度の募金は集まっているが,今後も多額の裁判費用が必要になるのは間違いない。


 確かに軽率で不謹慎な書き込みではあったが,テロとの戦いという名目で社会全体に監視の目が光る最近のアメリカが,若者のうかつな行為さえ許さない,寛容さの欠けた社会になりつつあるという指摘もある。手で拳銃の形を作った,パンを拳銃の形にかじったなど,他愛ない行為で停学処分になってしまう小学生のニュースもしょっちゅう聞こえてくる。テレビでは毎日のように戦争や撃ち合いの様子が流されているが,学校では「警察と泥棒ごっこ」さえも行ってはいけない。今回のカーターさんの一件からは,そんな現代アメリカ社会の一端も見えてくるようだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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