連載
ファンタジー世界における「石化能力を持つモンスター」の代表格といえば,メドゥーサやバジリスクが挙げられる。どちらも視線を合わせることで,相手を石化する能力を持っている。
といっても,石化能力を持つモンスターのすべてが,視線を合わせることで相手を石化するわけではない。中には彼らとは異なるユニークな方法で,石化能力を発揮するものもいるのだ。それがコカトリス(Cockatrice)である。
コカトリスは,鶏にトカゲやヘビといった爬虫類の要素を組み合わせた容姿をしている。石化能力といえばメドゥーサに代表されるように,視線によるものを思い浮かべる人が多いが,コカトリスは口から吐かれる石化ブレス(ガス?)によって石化能力を発揮する(作品によっては,視線による石化を行うとしているものもある)。
よってコカトリスと戦うならば,風上を占めつつ戦いたいところだ。うかつにコカトリスの風下に回ってしまうと,石化ブレスによってあっという間に石像に変えられてしまうだろう。
とはいっても,知能は鶏程度のものだし,ブレスは視線よりも回避しやすいし,コカトリスは中級の冒険者であれば,比較的容易に倒せるはずだ。
ただし,コカトリスを倒したとしても油断してはいけない。コカトリスの死体にも石化能力が残っている場合があるため,へたに触れると石化することがあるからだ。
こうしたフィーチャーの例は,フリーウェアのRPG「ネットハック」などでも見られる。同作ではモンスターの死体を食べると特殊能力が得られる場合があるのだが,「コカトリスの死体を食べれば,なんらかの特殊能力が身に付くのでは?」と期待に胸をふくらませ,小手も付けずにコカトリスの死体に触れたり,食べたりして,石化してしまった人も多いのではないだろうか。
コカトリスについてアレコレ調べていると,しばしばバジリスクと同一視されているケースが見受けられるほか,コカトリスとバジリスクは雌雄関係にあるとされる場合もある(ちなみにどちらが雄でどちらが雌かは不明)。
両者ともに冠(鶏冠)のようなものを持ち,石化能力を有するので,コカトリスとバジリスクが元々同じモンスターだったと考える向きも,分からないでもない。ちなみに,現在では鶏の要素が強くなるとコカトリス,トカゲの要素が強くなるとバジリスクと呼ばれるパターンが多いように見受けられる。
コカトリスというネーミングについては,ラテン語で「踏みつける女」という意味の「Calcatrix」が,フランス語圏を経由して,コカトリスになったとする説がある。また古いスペイン語でワニを指すココトリス(Cocotriz)が元になっているとするものも,よく知られている。なおココトリスは,英語でワニを指すクロコダイル(Crocodile)の語源といわれている。
ちなみに伝承上では,コカトリスは特定の条件が整うことで生まれるモンスターとして知られている。鶏が生んだ卵をカエルが暖めて孵化させたり,雄鶏が生んだ卵が雷の晩に孵化したりすると,コカトリスが生まれるという興味深い説がある。ということは,コカトリス自身には生殖能力がないのだろうか。実に気になるところだ。
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