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[インタビュー]非営利団体Godot Foundationはそもそも何者なのか。第3のゲームエンジン「Godot Engine」を支える組織に,AIへの姿勢と日本展開を聞いた
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印刷2026/09/11 08:00

インタビュー

[インタビュー]非営利団体Godot Foundationはそもそも何者なのか。第3のゲームエンジン「Godot Engine」を支える組織に,AIへの姿勢と日本展開を聞いた

Godot Engine」は,2Dと3Dの両方に対応するオープンソースのゲームエンジンだ。無料で使えるうえ,MITライセンスで公開されているため,ダウンロードすれば自由に改変もできる。
 エンジンの提供元の方針転換に,すでに手元にあるバージョンの条件が左右されることもない。

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 UnityやUnreal Engineに続く「第3のゲームエンジン」として,小中規模のデベロッパを中心に利用が広がっているほか,「Slay the Spire 2」や,「Battlefield 6」のクリエイティブ機能「Battlefield Portal」など有名タイトルでの採用実績もある。

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 このGodotの開発を支えているのが,非営利団体のGodot Foundationだ。2026年7月22日から24日にかけてパシフィコ横浜で開催されたCEDEC 2026では,CRI・ミドルウェアとの共同講演のため,エグゼクティブディレクターのEmilio Coppola氏が来日した。

 今回,非営利団体としてどうユーザーの声を拾っているのか,そして12月に控える日本初のGodotConについて聞いた。あわせて,Godotへの対応を発表したCRI・ミドルウェアにも話を聞いている。

Emilio Coppola氏
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いいたします。

Coppola氏:
 Godot Foundationでエグゼクティブディレクターを務めています,Emilio Coppolaです。小さなチームなので,組織まわりのことはほとんど自分がやっていますね。
 例えば,パートナーシップやイベント,寄付の管理,それに財団としての採用などです。

 いちばん大きな仕事は,コミュニティの声を聞いて,その声を代弁することです。コミュニティが望む方向にプロジェクトを進め続けることが役割だと思っています。

4Gamer:
 ありがとうございます。日本に来られるのは,今回が初めてではないんですよね。

Coppola氏:
 10回くらいは来ていると思います。仕事で来ることもありますし,長期で滞在したこともあります。

4Gamer:
 今回の来日では,日本の企業も回っているそうですね。

Coppola氏:
 CEDECでの講演が主な目的ですが,それ以外にも多くの企業やゲーム開発者と会っています。

4Gamer:
 企業とはどういった話をされたのでしょうか。

Coppola氏:
 関心が高いのは,Godotに移行する場合に社内でどんな変更が必要になるのか,そして自分たちが必要としている技術をGodotがサポートしているのか,という点です。

 多くの企業は,スタッフの働き方をできるだけ変えずにエンジンだけを置き換えたいと考えています。
 ただ,そのための段取りは会社ごとに違うので,どこまでサポートできるかという話になりますね。

4Gamer:
 企業は基本ゲーム系でしょうか。

Coppola氏:
 ゲーム会社が中心ですが,ゲーム業界以外の会社にも会いました。ゲーム以外の用途で,社内向けのソフトウェア開発にGodotを使っている例は多いんです。
 我々が主眼に置いている領域ではないのですが,ユーザーはたくさんいます。

4Gamer:
 Godot Foundationは非営利団体として,ユーザーにはどういったサポートを提供しているのでしょうか。

Coppola氏:
 直接的なサポートは提供していません。我々がやるのは,「声を聞くこと」です。寄せられる意見の多くは要望で,できる範囲で対応はしますが,サポートとして提供しているものではありません。

 代わりに,サポートを提供している企業と連携しています。スタジオが必要としている支援を実際に提供できる企業のエコシステムを育てたい,と考えています。

 唯一の例外は,非常に規模の大きなタイトルですね。そうした場合は直接一緒に仕事をして,そのゲームのユーザーが最良の体験を得られるようにしています。

4Gamer:
 Godotはオープンソースで,みんなで作っていくエンジンです。Godot Foundationとしてユーザーの声を反映するというのは,具体的にどういうアプローチになるのでしょうか。

Coppola氏:
 見ている指標はいくつかありますが,優先するのは,最も多くのユーザーに影響するものです。大多数のユーザーが必要としているものなら,優先度は上がります。

 もう1つの基準は,将来にわたって我々が維持できるかどうか。エンジンに含めるうえで持続可能かどうかです。
 要望の中には拡張機能やプラグインで解決できるものも多く,すでに存在しているならそちらを使ってもらいます。エンジンをむやみに大きくしたくないので。

 全員からの要望が集まるIssue(バグ報告や要望などの課題)のトラッカーがあるので,どれが人気で,どれに手を入れるべきかは一目で分かります。

4Gamer:
 困っている人の見つけ方は分かりました。では,実際に修正するときは,財団の中の人が直すのでしょうか。それとも外部の人に依頼するのですか。

Coppola氏:
 ユーザーやスタジオからの寄付とスポンサーシップを集めて,そのお金でエンジンを作るエンジニアを雇っています。
 彼らの仕事の一部が,寄せられたIssueを見て優先順位を付け,どれが最も深刻かを見極めることです。

 修正を手伝ってくれるボランティアも多くいます。ただ,ボランティアの中には楽しい仕事や見栄えのする仕事しかやりたがらない方もいるので,面倒な箇所は財団中心で対応することが多いです。
 重大なバグのような優先度の高いものには,必ず対応するようにしています。

4Gamer:
 要望の数が多く,対応しきれていない領域もあると思います。いま課題に感じているのはどういったところでしょうか。

Coppola氏:
 難しい要望に対応できるエンジニアの人手が限られていることです。バグ修正や正常に動かないときの対応は最優先にするよう心がけています。

 どのユーザーの要望に対応するかは,その内容が多くのユーザーに影響するかどうかと,どのくらいリソースを使うことになるかの2点で優先順位を決めています。
 ユーザーが快適に使えることを考えて,より多くの要望があるものにできるだけ応えられるようにしています。

4Gamer:
 ボランティアの話が出ましたが,最近,コントリビューションポリシーを改訂し,AIによるプルリクエスト(コードの修正提案)を制限する声明を出していましたね。背景を教えてください。

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Coppola氏:
 自律的に動くAIエージェントが登場してから,コントリビューション(開発への貢献)をしたいという人がとても増えました。
 オープンソースプロジェクトへの貢献は,就職などで評価されますからね。「このプラットフォームに貢献した」という実績が欲しいわけです。

 ただ,その人たちは自分がどんなコードを送っているのかを正確には分かっていません。AIに修正を送らせているだけなので。

 我々の側では,送られてきたコードをレビューして,提出した人がその内容を理解しているかを確認する必要があります。自律型のAIが相手だと,そこが成立しない。
 相手が本当に人間なのか,実在する問題を直そうとしているのか,将来それを誰が保守するのかが分からないことが多いんです。

 結果としてスパムが大量に発生して,人間が報告している重要なIssueが埋もれてしまう。それを避けたかった,ということです。

4Gamer:
 人とのやり取り,チャットの部分についてもAIを使わないでほしい,という話もありました。

Coppola氏:
 AIボットは休みなく話し続けられますし,人間が聞いていることに答えていないことも多い。我々のプロセスにとって意味のない返事が来るんです。

 たとえAIを使っていたとしても,話している相手が人間で,提出されたコードに責任を持てる人が向こう側にいる,ということは確認したい。

 これは,そのコードを受け入れる際の責任の問題でもあります。AIが書いたものだと,そのコードのライセンスがどうなっているのか,どこかから持ってきたものではないのかが,非常に判断しづらい。
 Godot本体に取り込まれる(マージされる)コードは,すべてMITライセンスの下になければならないので,人間が作ったものだと確認する必要があります。

 提出されたコードを理解するには,こちらも会話にかなりの時間を投じる必要があります。それが相手のエージェントとのやり取りで,エージェントからコードを受け取るだけなら,そこに意味はありません。そういうものが欲しいだけなら,自分たちで同じことをすればいい話ですから。

4Gamer:
 内部にエンジニアを抱えつつ,外部にはあくまで人の手による貢献を求めている,ということですね。

Coppola氏:
 そうですね。AIを使っていて,自分が何をしているのか分かっていない人から良質なコントリビューションを得るのは非常に難しい。逆に,自分が何をしているのか分かっている人は,たいていAIが生成したコードを好みません。

 デバッグやテストのときにコードアシスタントを使うのは構いません。ただ,提出されるコードそのものは,先ほどのライセンスの問題もあって,人間が作ったものである必要があります。

4Gamer:
 Godotは,企業が作るエンジンと違って,いろいろな人が対等に関わるコミュニティで開発されています。UnityやUnreal Engineとは違った強みは,どういったところにあるのでしょうか。

Coppola氏:
 誰が関わっていようと,我々の強みは,コントリビューターの大半がゲームを作りたい人で,その優先順位がゲームを作ることにある点だと思います。

 いまのコミュニティには,それ以外の目的がありません。そこに集中していることが,Godotをいまの形にしているのだと思います。

4Gamer:
 Unityから一気に人が移ってきたという話もありました。Godot Foundationとして,そもそもUnityやUnreal Engineは競合相手として意識していますか。

Coppola氏:
 他社のゲームエンジンについては,一切競合相手だとは考えていません。ゲームエンジンがいろいろあって,ユーザーの選択肢が多いことが,ゲーム業界として良い方向に行くと思っています。Godotは非営利なので,他社のエンジンと比べること自体が難しいですし。

 機会があればコラボレーションもしてみたいですね。すでにゲームイベントなどで,UnityやUnrealの担当の方とコラボの話もしています。

4Gamer:
 いろいろな人がいるからこそ,機能追加のアイデアも大量に来ると思います。取り入れる,取り入れないの線引きはどうしているのですか。

Coppola氏:
 先ほど挙げた「多くのユーザーに影響するか」といった指標のほかに,エンジンの作業を領域ごとに分けています。レンダリング,エディタ,物理といった具合です。

 それぞれの領域は,財団の人間と企業の人間,そしてユーザーで構成されていて,ミーティングを開いて優先順位を決めます。合意ができたら,それに取り組む。このミーティングは,参加したい人なら誰でも参加できます。チームによって,進め方や誰が決めるのかには多少の違いがありますね。

 方針をまとめたドキュメントもあります。我々のビジョンを書いたもので,プロジェクトの優先事項を示しています。コントリビューターガイドラインと呼んでいる文書で,提案がそのビジョンに合っているかを確認するようにしています。

4Gamer:
 個別の案件ごとに判断するのではなく,あくまで自分たちの方針に合っているかを最重視する。システムとしては,憲法を守るような形ですね。

Coppola氏:
 方向性が途中で急に変わることはなく,決まったプロセスに沿って進んでいきます。

4Gamer:
 エンジンをできるだけ軽くしておく,というのも方針の1つなのでしょうか。

Coppola氏:
 はい,ビジョンの一部です。何かを追加するときは,重くなってでも入れるべき,絶対に必要なものかどうかを確認します。外部のプラグインで済むもの,どこかから持ってこられるものなら,そのほうがいい。

 何にでもイエスと言うのは簡単ですが,そうすると保守が非常に難しい巨大なエンジンができあがってしまいます。何かを取り込む以上は,それをずっとサポートし続けられるかを確認することになるので。

4Gamer:
 使う人が自分なりの色づけをしていってね,というスタンスですね。

Coppola氏:
 拡張性は我々の優先事項の1つですし,オープンソースであることもそうです。多くのスタジオは,必要があればフォークして,自分たちのゲームのための独自バージョンを作っています。要らないものを削ることもできますし,何をやっても構いません。

4Gamer:
 逆に初心者の場合,機能が多すぎても使いづらいですし,少なすぎて自分で足さないといけないのも使いづらい。Godot Foundationとしては,どのくらいがちょうどいいと考えていますか。

Coppola氏:
 コードエディタをGodotに同梱しているのは,そういう理由からです。ゲームを作る人なら誰もが必要とするものだと,確実に分かっているので。

 逆に,特定のジャンルのゲームにしか使わないものは,含めないという判断ができます。だから,最も一般的な用途に向けたツールを用意しています。タイルセットエディタがあり,基本的なオーディオ機能があり,ナビゲーションや物理の機能がある。

 そこから先の個別性が高い部分になると,どのゲームも同じというわけにはいきません。その領域は公式やサードパーティのプラグインでカバーするようにしています。
 とても簡単なゲームを作るなら,あるいは週末に開発を始めるくらいなら,必要なものはすでにそろっているはずです。

4Gamer:
 ちょっと極端な聞き方になってしまいますが,とても簡単なゲームならAIに書かせてエンジンなしでもそれっぽいものが出来上がります。これからゲームを作る人が,あえてGodotを使う理由や魅力はここだぞ,というポイントを教えてください。

Coppola氏:
 AIを使うことはできますし,実際うまくいきます。使ってはいけないという話ではありません。

 ただ個人的には,ゲームの作り方を学んでいる段階なら,自分が使っているシステムを理解しておいたほうがいいと思います。そのほうがAIに良いプロンプトを出せるようになります。

 構造やアーキテクチャを考えずにAIに任せきりにすると,AIがそれ以上手伝えなくなるところに,すぐ行き着いてしまいます。
 基礎を理解していて,進みたい方向が分かっていて,AIの手綱を短く持てるなら,Godotでもほかのエンジンでも,AIを使って良い結果が得られると思います。だから,知っておくことが大事なんです。

4Gamer:
 たしかに,知識があれば簡単に実装できることでも,知らないと複雑に考えて遠回りしてしまう。初心者にはありがちな気がします。
 さて,Godot自体のアップデートにAIを使うことには問題がある。一方で,Godotで作るゲームにAIを使うことには反対しない,ということですね。

Coppola氏:
 もちろんです。AIに反対しているわけではありません。我々が問題にしたかったのは,自分たちのプロセスに生じている負担だけです。

 自分の製品でAIを使う人は,好きなようにやってもらって構いません。ダウンロードした時点で,それはもうあなたのもので,何をしてもいい。何が正しくて何が間違っているかを判断するのは我々ではありません。AIを使いたいなら使えばいいし,使いたくないなら使わなくていい。

4Gamer:
 UnityやUnreal Engineは公式のMCPなどでAIを使いやすい環境を整えていますし,Robloxはプロンプトベースの機能をリリースしています。Godotはどこまで関わっていこうと考えていますか。

Coppola氏:
 それはユーザーに委ねています。どういう使い方をしたいかは,定期的にアンケートを取るなどして,ユーザーに聞くようにしています。

 MCPについても,統合できるものがあるという話は聞いていますが,コードアシスタント以外の使い方をしたいという声は,ユーザーからあまり届いていません。我々はユーザーが求めていることをやるだけで,求められていない以上,優先度は高くしていません。

 もし大多数のユーザーが関心を持つようになれば,機能を追加したり,エンジンのうちユーザーの役に立ちそうな部分を,外から扱えるように開放したりしていくことになると思います。

4Gamer:
 Godotを使っているのは,自分で使いやすくカスタマイズするような,エンジニア気質の人が多いのでしょうか。

Coppola氏:
 どちらかというとエンジニア側の目線で見ている人が多いですね。

 ユーザーの大半は個人開発者か,中小規模のスタジオ,つまりインディーの開発者です。ずっと,その層がいちばん多いです。

 ここ数年は,もっと大きなスタジオも増えてきていて,200人規模のところも使っています。ただ,寄付やスポンサーをしてくれているユーザーの大半は,いまも個人ですね。

4Gamer:
 企業での採用も増えているのでしょうか。

Coppola氏:
 増えています。とくに最近は事例が増えていて,名前は出せないのですが,社内で試して気に入り,そのままゲームを作っているところがあります。

 大規模なコミュニティの移行が起きてから,多くのスタジオがGodotを選択肢として検討し始めました。ただ,いまはゲーム1本作るのに3〜4年,場合によってはもっとかかります。
 移行した人たちの多くはまだ制作中で,これから世に出てくる段階です。大きなユーザーほど,タイトルが出てくるまでには時間がかかりますね。

4Gamer:
 ある程度の数が使い始めると,そこからさらに増えていきそうです。

Coppola氏:
 そうですね。誰も最初のひとりにはなりたくないですから。

4Gamer:
 大規模なコミュニティの移行というのは,Unityの「ランタイム料金」(関連記事)のときのことでしょうか。

Coppola氏:
 はい,そこで寄付の額が倍になりました。これはとても良かったのですが,同時に「Unityと同じようであってほしい」という期待も持たれました。
 企業と打ち合わせをすると,我々が小さなチームで,財団であることを知らない方が多いんです。

 「マーケティングの担当者と話をさせてほしい」と言われて,それも私です,と。
 「では開発側とやり取りするときは」と聞かれても,それも私です,と。3000人規模の会社だと思われているんですが,実際は違います。

 寄付は増えましたが,対応もかなり大変になって,いまようやく追いついてきたところです。

4Gamer:
 講演では,12月4日にGodotCon Tokyoを開催すると発表がありました。初の日本開催に向けて,期待していることや目標があれば教えてください。


Coppola氏:
 まず,日本およびアジアで初となるGodotConを開催させていただけることを,非常に楽しみにしています。期待と目標は,現ユーザーのサポートと,新規ユーザーの獲得です。

 Godotの日本展開によって,より多くの日本のゲームクリエイターや企業と連携し,現ユーザーのサポートも強化していきたい。CRIとの連携を深めて,GodotConに限らず,日本のゲームイベントへの出展も継続していきたいと考えています。

4Gamer:
 今回の共同講演の相手でもあるCRI・ミドルウェアとのコラボレーションは,どのように実現したのでしょうか。

Coppola氏:
 さまざまなイベントに参加していく中で,CRIの担当者と話をする機会があり,お互いの目標がとても似ていることが分かりました。

 日本展開においてCRIとともにイベントなどに参加することで,Godotの知名度を上げ,ユーザーを獲得していくことが可能だと感じ,パートナーシップを結びました。
 CRIに協力してもらいつつ,日本のユーザーや企業の声を聞いて,将来的には日本語でサポートできるようになれたらいいなと考えています。

――ここで,Godot対応を発表したCRI・ミドルウェアにも話を聞いた。同社は2026年7月8日,ミドルウェア製品ブランド「CRIWARE」がGodotに完全対応すると発表しており,CEDEC 2026の7月24日にはCoppola氏との共同講演を行っている。

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4Gamer:
 あらためて,CRIWAREはどういった製品なのか教えてください。

CRI・ミドルウェア:
 CRIWAREは,音と映像に特化したミドルウェア製品群です。ゲーム開発に不可欠なサウンド演出や動画再生,リップシンクといった機能を,開発者が1から作り込まなくても手軽に実装できるようにします。
 これまで全世界で1万ライセンス以上の採用実績があります。

4Gamer:
 今回のGodot対応によって,開発者は具体的にどのようなことができるようになるのでしょうか。また,ターゲットとなる開発者像も教えてください。

CRI・ミドルウェア:
 CRIWAREがGodotに対応することで,Godotの開発者はエディタ上では表現が難しいサウンド演出や映像表現を,CRIWAREのツールを介して作ることが可能になります。

 また,エンジニアとクリエイターの分業も可能になります。例えばサウンドクリエイターがCRIWAREで音の設定を行い,エンジニアがGodotを介して音を鳴らすような分担をすると,Godotの知識がないクリエイターでも開発に参加できます。
 過去にCRIWAREでの開発経験があるゲーム会社やクリエイターであれば,そのときの経験や資産を活かして,少ない負担でGodot上でのゲーム制作に取り組むことができます。

4Gamer:
 CRIWAREは企業向けのイメージが強くあります。個人や小規模の開発でも使えるのでしょうか。

CRI・ミドルウェア:
 もちろん,インディー開発においてもCRIWAREを活用いただけます。企業向けのライセンス体系とは別に,インディー向けプランを用意しています。

 昨今,コンソールゲーム機上で遊べるインディータイトルも増えてきました。マルチプラットフォーム対応をしているCRIWAREを活用いただくことで,ゲーム開発は格段に楽になり,効率も良くなると考えています。

4Gamer:
 講演では「Sprite Studio」のデモもありましたが,こちらについても簡単に説明をお願いします。

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CRI・ミドルウェア:
 Sprite Studioは,CRIWARE製品の中でも早くにGodot対応が実現した製品です。2Dアニメーションの制作ツールで,Godotとの相性が良いと考えています。

 ADXやSofdec,LipSyncといった各製品も順次Godot対応を進めていますが,最も早くユーザーの方々に触れていただけるのはSprite Studioになる見込みです。

統合型サウンドミドルウェア CRI ADX(製品リンク
BGMやボイスの再生をプラットフォーム間で共通化でき,インタラクティブBGMなどの演出もツール上で作り込める
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高画質・高機能ムービーミドルウェア CRI Sofdec(製品リンク
共通のムービーデータを多機種に展開でき,透過動画の重ね合わせや,複数動画の同時再生といった演出にも対応する
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音声解析リップシンクミドルウェア CRI LipSync(製品リンク
ディープラーニングによる解析で音声データから口の動きを自動生成する。言語を問わず,2D/3Dの両方のモデルに対応する
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4Gamer:
 Godotへの対応を決めた理由は何だったのでしょうか。

CRI・ミドルウェア:
 CRIのスタンスとして,開発者の要望に応じてさまざまなゲーム開発環境に対応していく方針であるのですが,今回はとくに,海外でのGodot拡大の機運に触れ,早期に対応を決めました。

 日本での本格展開に際してはCRIが協力できる部分が多々ありますし,一方でCRIWAREの海外展開においては協力いただける点も多くあると考えています。

4Gamer:
 Godotがオープンソースで,かつGodot Foundationが非営利団体であるうえで感じた利点や難しさはありますか。

CRI・ミドルウェア:
 Godot自体は,Coppola氏が話しているようにエコシステムと非営利の枠組みで成り立っています。
 ただ,この先ユーザーや採用タイトルが増加し,企業のGodot利用が活発になると,品質や問題解決の責任を誰かが担保したほうが,より良い環境になると考えています。
 そういった面で,営利企業であるCRIが活躍できる場面があると思います。

4Gamer:
 GodotCon Tokyoについて,御社はどのような形で関わられるのでしょうか。

CRI・ミドルウェア:
 GodotCon Tokyoの開催にあたって,Godot FoundationやGodot日本コミュニティと連携して開催サポートを行っています。
 これまで世界各地のGodotConに参加してきたので,その経験を活かして良いイベントにしたいと考えています。

――再びCoppola氏の話に戻る。

4Gamer:
 CRIに限らず,企業との関わり方で,非営利団体ならではの苦労はありますか。

Coppola氏:
 非営利団体なので,企業とパートナーシップを結ぶ際に,営利目的のパートナーシップは結べません。
 それ以外の目的で,共感できる企業とのパートナーシップを望んでいます。相手を選ぶ基準としては,ユーザーにとってメリットがある内容で締結できる企業を選ぶよう心がけています。

 Godotはできる限り軽くしておきたいので,すべての機能をGodotの中に入れていくことは難しい。そのため,外部のツールやミドルウェアの企業との連携は,今後とても重要になると考えています。

4Gamer:
 数年先,Godotはどのような存在になってほしいと考えていますか。

Coppola氏:
 Godotはどうしても,足りていない部分や不足している部分が注目されがちです。機能拡張を進め,多くのツールやミドルウェアへの対応を進めていきたいと思っています。

 将来的には「何でも入っている安心・安全のGodot」と,ゲーム関係者から評価されるようなエンジンを目指したいです。

4Gamer:
 最後に,日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Coppola氏:
 試してみたい,使ってみたいということなら,ゲームジャムに参加して使ってみるのがおすすめです。実際にどう動くのか,自分に合うかどうかを知るには良い方法だと思います。

 それから,これから起業するとして,事業全体を1つの技術に依存させるのなら,ゲームエンジンもそうですが,それを自分が所有していることはとても重要です。誰にも取り上げられませんから。
 この業界のいまの状況を考えると,ほかの選択肢を採るのは大きなリスクだと思います。

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4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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