ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ プレジデント 吉田修平氏
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2011年9月15日,東京ゲームショウとともに開催されたTGS FORUM 2011の基調講演で,ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ プレジデントである
吉田修平氏,SVP兼第2事業部長
松本吉生氏らによる
「PlayStation Vitaの全貌」と題された講演が行われた。
すでに
速報で新機能のいくつかを紹介しているのだが,ここでは速報では省略した内容を含めてもう少し詳しくお伝えしてみたい。
PS Vitaのコンセプトとは
ソニー・コンピュータエンタテインメント SVP兼第2事業部長 松本吉生氏
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まず,吉田氏はPS VitaでSCEが「どんな新しいゲームの世界を提案しようとしているのかをハード,ソフト,新技術を交えて説明したい」と語り,今回の基調講演の内容を簡単に紹介。
続いて,ソニー・コンピュータエンタテインメント SVP兼第2事業部長 松本吉生氏から,PS Vitaの特徴的な機能などが改めて紹介されたのだが,このあたりについてはすでに何度も述べられていることなので,ここでは割愛したい。ただ,欧米での発売が年明けから順次開始されることや,PS3やPSPと同様にシステムソフトウェアのアップデートでネットワーク機能の拡充,PS3との連携などが追加される予定だということが明かされた。
「単に新しいゲーム機ではなく,新しいエンターテインメント端末を作る」(松本氏)ということで,PlayStationシリーズのDNAを受け継いだ没入感のあるゲームが実現できるハードウェアであることは当然として,3G通信などによるコミュニケーション機能や豊富なセンサー機能などを統合することで,これまでにない体験のできるプラットフォームを作ろうとしているようだ。
ローンチ後のタイトルラインナップは?
すでにローンチタイトル26本など,タイトルリストは公開されている。これは歴代PlayStationシリーズの立ち上げでも過去にない規模のラインナップとなっているという。もちろん,26本以外にも,すでに100本以上のタイトルの開発が進んでいる。ローンチ以降も「継続的に魅力あるタイトルがリリースされます」と,吉田氏は今後のタイトル供給にも自信を示した。
なお,基調講演では発売予定のものも含めて,いくつかのタイトルがムービーでまとめて紹介されていた。ムービー自体を公開できないのは残念だが,どのようなゲームかについては,
「こちら」の記事で画像をまとめて紹介しているのでご参照いただきたい。
これらのタイトル以外に,とくに重点的に紹介されたタイトルが「
Resistance: Burning Skies」だ。Gamescomのカンファレンスでも強く推されていたのだが,この作品はタッチパネルを使ったメレー攻撃や手榴弾の投擲など,PS Vitaらしい機能を使ったものとなっており,一つのモデルケースとなっているのだろう。会場では,実機によるデモが公開されていた。
「Resistance: Burning Skies」を例にゲームの起動方法からテストプレイまでみっちりとデモされていた
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これから投入される期待の新技術
今回の基調講演でハイライトとなったのが,このパートだ。とくに重要な部分については,すでに
速報でお知らせしているので,そちらもご覧いただくとして,ここでは紹介された技術を順に追っていきたい。
●ワイドエリアAR
軽く紹介していたワイドエリアARなのだが,これは文章だけではなかなか理解してもらえない技術ではないかと思われる。
まず,デモムービーを見ると,これまでのARではありえなかったような映像が展開されている。ARマーカー部分が画面外に出てもオブジェクトが消えない,まだARマーカー部分が見えていないオブジェクトがすでに表示されている,といった具合だ。
まず,このARカードの位置に水溜りができる
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キャラクター出現
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左側のARカードがカメラの視野からほぼ消えたのに,オブジェクトは残ったまま。右下には,まだARマーカーが見えていない水溜りが出現
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キャラクターが飛び込んで終了
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ただ,「まだARマーカー部分が見えていない」とはいっても,最初にそのARマーカーの認識は済ませているので,おそらく「一度認識したARマーカーの位置と状態を記憶しておく」ような処理を行っているものと思われる。理論上は,3D空間内で視点の方向や位置を動かしても,カメラやジャイロセンサーの精度さえ十分なら,どの方向に見えているはずかは算出できる。認識後は,たまに補正を加える程度でも十分なのかもしれない。ちょっと考えると,誤差は大きそうな気はするのだが,実際に実現されているのだからお見事というしかない。
こちらは,レースゲーム(?)風のコースを自在に作れるデモ。完全に視界外のマーカーに対しても破綻なく処理が行われていることがよく分かる。見えているARマーカーなら,ぐりぐり動かしても追従して画像が変わっていく(これは従来どおりだが)。デモの雰囲気がなんか,ミニカーとかミニ四駆っぽくてよい感じだ。部屋中にARマーカーを貼って,トラックマニアのような超スタントなコースを作れるツールになると凄く楽しそうなのだが。
●マーカーレスAR
ARマーカーカードなどがなくてもAR映像を安定して表示できるのがこの技術。これについても,デモムービーの画像を並べて紹介してみよう。
部屋の様子をカメラで写し,画面でポイントを指定すると,そこに穴が開く
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穴の中からはサルが登場
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角度を変えて見ても破綻はなく,自然な映像
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サルが床の上を歩き始めるが,落とし穴にはまって退場
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頭上からたくさんのサルが降ってくる。位置などはとくに指定してない
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道路上を歩き始める。バナナに釣られて集まると……
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やっぱり落とし穴
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これを見ると,具体的に「どこ」という指定をせず,漠然と周りの状況から平面部分を探し出してARオブジェクトを展開させるといったこともやっていることが分かる。
地面などの特定の模様をマーカーにするというのではなく,空中の物体に対しても適用される
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普通の風景をカメラで写すだけで,このような合成映像が簡単にできあがるというのは,なかなか夢が広がる。惜しむらくは,KinectのようなZ軸の距離も取れるカメラだったら,隠面処理もできただろうになあということくらいか。これについては,床面と同様な空間の自動認識である程度対処できる可能性もあるのだが,どっちかというとニンテンドー3DSの両眼カメラにちょっと期待してみたい感じだ。
●PS3との連携機能
PS3とPS Vitaの連動要素もいろいろ開発されている。
まず,ネットワークを介したセーブデータの共有となる「Cloud Save」(「RUIN」が対応),PS3とPS Vitaでネットワーク対戦が楽しめる「Cross Platform Play」(「wipEout 2048」が対応),PS3版で作ったコースデータなどをPS Vitaと共用できる「Data Compatibility」(「ModNation RACERS」が対応),などさまざまな種類の連携について紹介された。
●リモートプレイ
すでに掲載した記事でもなかなかインパクトも大きかったリモートプレイ。実はリモートプレイ自体は,現在のPS3とPSPでも利用でき,torneではテレビ放送や録画された映像をPSPの画面で視聴することもできる。「チャンネル争いに負けたお父さんが別の部屋でセカンドテレビとして使っている」といった事例も報告されているようだ。同様なことはもちろんVitaでも可能になる。PSPと違うのは,画面解像度が格段に上がり,5インチの有機ELディスプレイで視聴できるということだ。現在,12月をめどにtorneのアップデートが予定されており,PS Vitaでのリモートプレイが可能になる見込みとのこと。
torneをPS Vitaで操作し,録画映像を視聴するデモ
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![画像集#058のサムネイル/[TGS 2011]PlayStation Vita基調講演詳報,PS VitaとPS Suiteが拓くゲームの新しい可能性とは](/games/032/G003263/20110916007/TN/058.jpg) |
続いてPS3で動いている「
KILLZONE 3」と「
リトルビッグプラネット2」をPS Vitaの画面でプレイするというデモが行われた。一部はすでにムービーで紹介しているとおり。PS VitaをPS3の周辺機器のように使うというのは,いろいろ可能性を感じさせるフィーチャーである。
なお,リモートプレイなどについては,PS3側のソフトでそれなりの対応は必要になるので,すべてのゲームをPS Vitaでプレイするということはできないのだが,そのうち対応タイトルも出てくると思われる。今後の展開に期待しよう。
クロスプラットフォーム戦略PlayStation Suite
続いてのクロスプラットフォーム関連の話では,再度松本氏が登壇し,PlayStation Suiteの現状を解説した。
PlayStation Suiteというのは,初代PlayStation用のソフトをエミュレータで動かし,スマートフォンなどで使えるようにするための仕組みだ。PS1のゲームだけでなく,PS1相当の機能を持ったプラットフォームとして,新規ソフトを供給することも可能だ。
対応ソフトを作るためには
「PlayStation Suite SDK」が用意されており,11月をめどにベータ版をリリースする予定だという。このSDKでは,開発言語としてC#が採用されている。また,3Dゲーム作成用のゲームライブラリと非ゲームアプリケーションを作るための,UIツールキットが提供される。UIツールキットを使った例として,会場では写真を多用した世界時計やサウンドツール(?)などが紹介された。一般的なアプリ制作環境として見ても,なかなか魅力的なもののようだ。
PlayStation Suiteは,現在,「PlayStation Certified」を取得したAndroid端末でのみ実行可能だが,PS Vitaでももちろん使えるようになる。会場では,PS VitaとXperia PLAYの両方で同じゲームをプレイするというデモも行われた。
現時点ではPS Vitaそのものに話題が集中するのは当然ではあるが,SCEのクロスプラットフォーム戦略の動きも見逃せないものとなりつつある。
現時点でPlayStation CertifiedをクリアしているAndroid端末はソニーエリクソンのXperia PLAY,Sony Tablet P,Sony Tablet Sの3台となっているが,すでに発売されている端末についても検証を進めており,今後は対応機種も広がってくるという。ソニーエリクソン以外の製品も検証対象になっているのかなどの不明点はあるが,ゲームプラットフォームとしては,PS Vita自体より広い市場になることは確実なので,こちらの展開も今後どうなっていくのか気になるところだ。今後の情報に期待したい。