第25回AMDアワード授賞式をレポート。「ドラゴンクエストウォーク」が優秀賞を受賞。大賞/総務大臣賞は「AI美空ひばり」に

　「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'19/第25回AMDアワード」の授賞式が，デジタルメディア協会（Association of Media in Digital。以下，AMD）の主催で2020年8月20日に行われた。優秀賞に「ドラゴンクエストウォーク」（iOS / Android）が，大賞/総務大臣賞に「AI美空ひばり」が選ばれた授賞式の様子をレポートしていこう。


　デジタルメディア業界の発展を目指し，優れたデジタルコンテンツなどの制作者を表彰するAMDアワードも今年で25回目となる。例年は3月に授賞式典が行われていたが，今年は新型コロナウイルスの影響もあり，8月にズレ込んだ。会場が無観客であることに加え，司会者とアシスタントの席がアクリル板で仕切られ，出席者や取材陣もマスクやフェイスシールドで対策を取っての開催となった。


　一般社団法人デジタルメディア協会理事長 襟川惠子氏は，授賞式の冒頭において「未曾有のコロナ禍とはいわれているが，明けない夜はありません。人類の能力をもって，今まで以上に明るく豊かな暮らしがもうじきやってくるので，それまで我慢していきましょう」と力強くコメントした。

　今回のAMDアワードの対象となるのは，「2019年1月1日より12月31日の間に発売・発表された，最新のデジタル技術を駆使して制作された国内のデジタルコンテンツ及びサービス」だ。7月に発表された「優秀賞」「功労賞」「江並直美賞（新人賞）」「リージョナル賞」に加え，「AMD 理事長賞」「大賞/総務大臣賞」の表彰が行われた。

　優秀賞には，スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストウォーク」が選ばれた。受賞のために登壇した堀井雄二氏は「去年9月にリリースしてから多くの方に遊んでいただき，『散歩が楽しくなった』『ダイエットに役立つ』といわれて，すごく嬉しかったです。新型コロナウイルスの影響が出てからは，家にいてもモンスターと戦えるように『においぶくろ』を配って喜んでいただきましたが，今後もいろいろな仕様を入れて，ますます喜んでもらえたらと思います」と受賞の喜びをコメントした。

堀井雄二氏

　また，「うんこ」をデジタル技術でエンターテインメントにして話題を呼んだ「うんこミュージアム」も優秀賞を受賞。アカツキライブエンターテインメント うんこミュージアム総合プロデューサーの小林 将氏は「“固定観念を水に流す”というテーマで始まったうんこミュージアムですが，昨年から熱狂的な展開が続いています。新型コロナウイルスの影響下で形は変わりますが，人々が楽しみ，生活を豊かにできるエンターテインメントをこれからも作っていきます」と決意を語った。

カヤック うんこミュージアム企画制作プロデューサー 香田遼平氏と，アカツキライブエンターテインメント うんこミュージアム総合プロデューサーの小林 将氏

リージョナル賞を受賞した「OUR Shurijo　みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」プロジェクトチームからは，川上 玲氏が登壇

AMD 理事長賞は，アニメ「ドラゴンボール超」の主題歌「限界突破×サバイバー」。氷川きよしさんは「多くの皆さんに曲を好きになっていただき，“新しい氷川きよし”のドアを開けられたような気持ち。もっと自分の個性や，持っているものを表現して自由に音楽を楽しんでいきたい」とコメント

　そして，大賞/総務大臣賞を獲得したのは「AI美空ひばり」だ。没後30年を迎えた美空さんをAI技術で現代に蘇らせるという試みで，4K・3Dの等身大のホログラム映像と歌声合成技術「VOCALOID:AI」という，最新テクノロジーが用いられている。

「AI美空ひばり」

写真左から，ひばりプロダクション社長の加藤和也氏，NHKの寺園慎一氏，ヤマハの大道 竜之介氏

高市早苗総務大臣から，美空さんの長男であり，ひばりプロダクション社長の加藤和也氏へ，AMDアワードのグランプリフラッグが授与された

　美空さんの長男であり，ひばりプロダクション社長の加藤和也氏は「どんなものが生まれてくるのか，楽しみであり怖くもありました。賛否両論はありましたが，それは当たり前で，あれは“AI美空ひばり”であって美空ひばりではありません。最先端技術がエンターテインメントの世界で新たな可能性を見つけ出すきっかけに，美空ひばりというモデルを使っていただいたことに，私は感謝させていただきます」とコメントした。


　また，高市早苗総務大臣は「AIとCGの技術を駆使し，美空ひばりさんの歌声と姿を克明に再現しただけでなく，豪華な制作陣による作詞・振り付け・プロデュースも行われ，紅白歌合戦に出演するなど，多くの話題を集めました。視聴者に驚きを与えると同時に，我が国のデジタル映像技術の高さを印象づける作品でした」と評した。


　最後に，審査員長を務めた慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別招聘教授の夏野 剛氏は「日本は平成の30年間で，テクノロジーの社会適用について後れを取ってきたのが現実です。その中で，今年の受賞作品はテクノロジーをフル活用して新しい価値を作っているものですが，“昔あったものをテクノロジーで蘇らせ，新たな感動を生む”というのは，日本という歴史ある国がもっと取り組んでいい領域だと思います。これを受賞者の皆さんや我々が発信していくことにより，日本全体がテクノロジーを社会に取り入れ，新しい価値を作っていければいいなという思いを強くしました」と檄を飛ばし，式を締めくくった。