企画記事
PlayStation 2が今日で20周年! 史上最も売れたゲーム機と,ここから生まれた名作タイトルを振り返る
蚊/蚊2 レッツゴーハワイ
2001年6月21日/2003年7月3日発売
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2001年6月21日に,当時のソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)から発売された「蚊」は,プレイヤーが“蚊”となり,人間の血を吸うという,割と尖ったアクションゲームだ。2003年7月3日には,続編の「蚊2 レッツゴーハワイ」が発売され,別の蚊を選ぶことでの難度選択や,新たなターゲットが追加された。
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プレイヤーの獲物となる人間たちだが,「蚊」では山田家の世帯主である山田健一と,妻の山田カネヨ,娘の山田麗奈,そして麗奈の友人である高嶋綾香の4名。「蚊2」では,山田家の3人とホームステイ先のブラウン家から,世帯主のジョン・ブラウン,妻のリンダ・ブラウン,娘のエリス・ブラウンが対象となる。
二家族とも年頃の娘さんがいることが極めて重要なポイントで,断言してもいいが,これを理由に購入した人もいるはずだ。少なくとも1人は確実にいる。
話は変わるが,サイズフェチと呼ばれる性癖の中に,「巨大娘フェチ」というものがあるのをご存知だろうか。そこには,巨大化した女性(ジャイアンテス)に興奮するタイプと,自身が小さくなって(シュリンカー)普通サイズの女性に興奮するタイプの2種類が存在する。
当時の筆者は,そんな性癖の存在すら知らない純真無垢の少……青年であったが,なぜか現在では「巨大な女性に丸呑みされたい。あと挟まれたいかも」といった願望を(少なからず)持つ中年になってしまった。
その原因の一端を担っているのが,本作であることに間違いはないと思う。
![]() 「蚊」の山田麗奈。17歳JKで,ゲームの取扱説明書によると身長:160.0/B:82.0/W:55.0/H:80.0 |
![]() 「蚊」の高嶋綾香。メガネっ子 |
![]() 「蚊2」のブラウン家の長女,エリス・ブラウン。18歳パツキン |
![]() 「蚊2」の山田麗奈。19歳JDで,ゲームの取扱説明書によると身長:163.8/B:85.2/W:61.1/H:86.5 |
ゲームシステムはシンプルで,選んだステージに登場する人間の吸血ポイントを探り,見つからないように近づいて一定量の血を吸えばクリアだ。ただ,人間はベッドの上でくつろいだりテレビを見ていたりと,生活感溢れる行動をしているので,早々のクリアを狙わず,その様子を見ているだけでも楽しかったりする。
電気のスイッチなど,体当たりでギミックを作動できるものもあり,それに対する人間の反応も面白い。
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「蚊」の場合,ステージはとなる部屋は「台所」「居間」「風呂」「和室」「物置」「寝室(健一とカネヨ)」「麗奈の部屋」の7種類。各部屋にはプレイヤーの最大ライフを上昇させる「ハートリング」や,すべて集めることで2周目に挑戦できるようになる「EXタンク」が隠されている。
これらを探すのもゲームの面白さのひとつで,人間の視界に入らないように注意しながら,部屋の隅々まで飛び回ったものである。攻略サイトなども存在せず,攻略は自身の手で導き出すことが普通であった時代には,アイテムの発見もまた,喜びと達成感を与えてくれるものだったのである。
なお,ゲームの取扱説明書には攻略本の広告チラシが挟まっていたが,攻略本は見ない派であったので購入していない。
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ちなみに,人間の視界に入ったり吸血中に不快な気分にさせると発見されてバトルに突入する。見つかっている時は吸血が不可能で,さらにパチンと一撃を受けるだけで,どんなにライフが残っていても死ぬ。蚊だし……。
初めから見つかった状態である最終ステージは別として,「メタルギア」シリーズさながらの隠密行動がプレイの基本となっているのだ。
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蚊になって人間の血を吸うといった珍妙なゲームシステムながら,箱庭的な空間を自由に飛び回れるフライト部分と,自身の存在を悟られないように行動するステルス部分,そしてアナログスティックをタイミングよく回すといった吸血のアクション部分がバランスよく作り込まれていた本作。
周回プレイも視野に入れたアイテム収集や,やり込み要素なども充実しているので,令和になった今でも十分に楽しめるタイトルではないかと,十数年ぶりにプレイして思った。
ただ,舞台となる部屋の作り込みや,キャラクターのモデリングに関しては,古さを感じるところもある。最近のグラフィックス事情に合わせたリメイク作品でも出てくれるとうれしいので,ぜひまた吸わせてほしい。
GOD HAND 2006年9月14日発売
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「GOD HAND」(ゴッドハンド)はクローバースタジオが企画・開発し,カプコンから発売された3Dアクションゲーム。クローバースタジオは2007年に解散しているので,知らない読者もいるかもしれないが,「ビューティフルジョー」や「大神」を開発したスタジオだ。
本作はタイトルにもある「ゴッドハンド」と呼ばれる,伝説の右腕を授かった主人公「ジーン」が,魔王サタンの復活を目論む悪魔たちを倒していく物語……と,ここまではカッコいいのだが,ストーリーはギャグやパロディ全開で,ゲームを起動すると「チーン」というキンテキされた効果音から始まる,コメディチックなゲームである。
内容は素手による格闘アクションがメインとなっており,行く手に待ち構えているモヒカン頭のチンピラやセクシーなお姉さんたちを容赦なく殴り倒して行く,イメージとしては「ファイナルファイト」を3Dアクション化したようなゲームだ。
制限時間内に車を破壊するイベントステージが用意されていたり,落ちている木材や鉄パイプを拾って使えば素手より強かったりするあたりは,予想以上に「ファイナルファイト」かもしれない。
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基本アクションはなんと全100種類越え! ジャブやフック,ストレートなどの基本的な技から酔拳や少林拳,ジャイアント馬場のババチョップまで,これでもかというほど登場する。それをコンボとして自由に組み合わせられるので,カスタマイズ要素としても非常に楽しめる。しかもモーションがかなり本格的で,ジャッキー・チェンごっこができたぐらいだ。
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本作のアクションは“ラジコン操作”なことも相まって,元からかなり難しいが,攻撃を加えたり,敵の攻撃を回避すると「難易度レベル」が上がっていく(逆に敵の攻撃を食らうと下がっていく)のが最大の特徴だ。
プレイに慣れてきて「おっ。このゲームチョロいじゃん」などと自画自賛し始める頃には難易度レベルが1から2,3と上がり,4段階目には難易度レベルが「Die」に変化し,敵が恐ろしく強くなって,逆にこちらが泣かされることになる。
ゲームスタート時には,ゲームの難度が「EASY」と「NORMAL」から選べるようになっているが,それに加えて難易度レベルが存在するので,遊ぶ人によって絶妙な難しさで楽しめるというわけだ。うまくプレイすればするほど,敵がどんどん強くなっていくこのシステムはやりごたえ抜群で,プレイ中は敵の攻撃を食らうまいとアドレナリンが出まくりだった。
プライドとしては難易度Dieで最後まで行きたいが,本作はレベル1ですら難しく,レベルが高いままボス戦に突入すると軽く絶望することになる。きっとこうなることを開発された方々はお見通しだったのだろう。難しいまま進めてしまった人のために,救済策が用意されていた。それが「ゴッド☆土下座」である。
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ちなみに,2周目以降には難易度レベルが常時「Die」となる「HARD」モードが登場する。
アクションだけでも十分面白いのだが,ストーリーに絡んでくるキャラクターたちのキャラが濃い。濃すぎる。主人公が戦ってる間カジノに入り浸るヒロインとか,後ろにファスナーが付いたゴリラとか,突然現れて敵対するものの誰だか全く分からないギタリストとか,今にも殺されそうな状況で敵を「デブ」と罵る村人とか。まともなキャラはいないのか……。
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今,本作についてネットで調べると「難しすぎる」という評価がよく見られるが,筆者も言っておこう「かなり難しい」。最初から難しい上に,うまくプレイするほど難しくなっていくのだから,調子に乗っているとプライドをズタズタにされる。PS2でしか遊べないタイトルだが,ぜひアクションゲームが得意だという自信満々なプレイヤーにこそ遊んでみてほしい。
デストロイ オール ヒューマンズ! 2007年2月22日発売
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定番タイトルばかりというのも何なのでカルト系タイトルから,サイコキネシスで人間の頭を粉砕したり,イチジクビームで人間の肛門を決壊させたりして天然エンドルフィンを収集する超ステキなTPS「デストロイ オール ヒューマンズ!」の日本語版を紹介したい。そう,THQが欧米で発売した「Destory All Humans!」ではなく,セガがローカライズして日本で発売した「デストロイ オール ヒューマンズ!」である。ちなみに,パッケージアートを手掛けたのは,怪獣イラストレーターの開田裕治氏だ。
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本作を開発したのは,「Dark Reign 2」や「Full Spectrum Warrior」といったハードなテイストのゲームで名を馳せたPandemic Studios。内容的には1950年代に流行した「Earth vs. the Flying Saucers」(邦題:世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す)や「The War of the Worlds」(邦題:宇宙戦争)などの宇宙人侵略映画をオマージュしたもので,UFOモノの一種だからと「大怪獣ガメラ」の映像がゲーム内に含まれていたりもする。日本では第1作がリリースされたのみなのだが,欧米では支持を得ることに成功しちゃったようで,続編がスピンオフを含めて4タイトルも作られている。
英語版におけるシナリオは,1959年の冷戦下アメリカを舞台に「虐殺に愉悦を覚える残忍なエイリアンのCryptosporidiumが,自分のクローンを作るDNA収集のために善良なアメリカ市民をハンティングしていく」というもの。当時Pandemic Studiosに所属していたMatthew Harding氏が,そのあまりにも残虐な内容に辟易して辞職し,放浪の旅に出た(そこから世界的ストリートダンサー・Dancing Mattとしてのキャリアがスタートした)エピソードも有名だ。また,本作の日本語ローカライズを担当したSF作家・山本 弘氏が自身のWebサイトで明かした裏話によると,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(以下SCEJ)は当初,日本国内での発売にNOを突きつけていたという。
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そのNOに対して,山本氏と日本語版制作担当の小堤正人氏が選んだ対応策は,残虐なシナリオを「天然ボケな関西弁エイリアンのクリプトが,お小遣い稼ぎのためにカルトSFネタをつぶやきまくるスットコなアメリカ市民をハンティングしていく」というものへ魔改造することだった。顛末としては変わっていない気がしなくもないが,山本氏のほか佐藤大輔氏やムトウユージ氏ら,無駄に超豪華なメンバーがシナリオをこねくり回し,声優陣もアドリブをキメにキメた結果,「Destroy All Humans!」と「デストロイ オール ヒューマンズ!」は,日本語版「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」やフランス語版「北斗の拳」くらい,オリジナルとは違う作品に変わり果てた。THQが激おこプンプン丸になったという噂もあるが,真偽のほどはわからずとも,笑って済ませてくれるほうが不思議ですらある。
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本作は「セガがローカライズしたからこうなった」とよく言われるが,その前にPandemic Studiosの過剰なブラックユーモアやSCEJによる規制の(まっとうな)厳しさがあったからこそ,こうなったのだ。世界同時発売や多言語対応が一般的になったり,ある程度のゴア描写が日本でも許容されたり,セガがあまり洋ゲーをローカライズしなくなったりした今現在では,もはや似た雰囲気を味わうことすら難しい。「デストロイ オール ヒューマンズ!」は,PS2時代のセガだったからこその奇跡的な化学反応で生まれたゲームだときれいにまとめておきたい。
ちなみにTHQの一部権利を継承したTHQ Nordicは,2020年発売予定のリメイク版「Destroy All Humans!」に関して,日本語字幕の対応を告知している(音声は英独のみ。関連記事)。「ちゃんと日本語ローカライズされた『Destroy All Humans!』を最新環境で遊べる!」ということではあるが,「バカゲー化した『デストロイ オール ヒューマンズ!』は,やっぱり日本のPS2でしか遊べない!」ということでもある。
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