企画記事
PlayStation 2が今日で20周年! 史上最も売れたゲーム機と,ここから生まれた名作タイトルを振り返る
モンスターハンター 2004年3月11日発売
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“ハンティングアクション”というジャンルを確立し,社会現象と呼ばれるほどのブームを起こしたカプコンの「モンスターハンター」シリーズ(以下,モンハン)の初代作品。最新作の「MONSTER HUNTER: WORLD」では大きく様変わりしているが,それより前の作品と比べると,遊び方自体は全く同じと言ってもいい。初代から「モンハン」の基礎となる部分は完全に出来上がっている。
一方で執筆にあたって15年ぶりにプレイしてみたら,最近の作品を遊んでからでは驚くことがたくさんあった。今回はそんな初代特有のポイントをいくつかピックアップして紹介していこう。
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1.武器は片手剣,大剣,ハンマー,ランス,ボウガンの5種類
初代「モンスターハンター」は武器が5種類しかない。モーションはどれも基本は同じだけれど,なんだか痒いところに手が届かない,ちょっと物足りないシンプルなものだった。
片手剣は抜刀しながらアイテムが使えない。大剣は溜め攻撃ができない。ハンマーは縦振りにフィニッシュが無いし,そもそも初代ではモンスターがスタン(気絶)しない。ランスは攻撃と回避が繋がらないし,3連ステップができない。ボウガンはモーションに大きな変化はないが,弾が高価だし,調合で弾を1発作るのに約2秒もかかるので補充も一苦労だ。
ちなみに,ボウガンはライトボウガン,ヘヴィボウガンの2種類が存在しているが名称は「ボウガン」で一括りにされている。
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2.防具は強化できないし,スキルポイントもない
防具は生産のみで強化することができないうえ,今では当たり前の「スキルポイント」が存在しない。スキルは,同じシリーズの防具を複数付けることで発動する隠し要素的な存在だった。
余談だが,防具や武器を生産してもらうには,素材を全てアイテムポーチに入れて店へ持参しなければならず,今思うとかなり不便だった。
3.報酬が安すぎる。お金が一向に貯まらない
久々にプレイしてびっくりしたのが,お金があまりにも貯まらないこと。ハンター業はブラックなのか,それともココット村の財政問題のせいなのか。
はじめて村を訪れると,村長から1500zもらえるのだが,一番安い防具を全身揃えると手元に残るお金は0z。ハンターもハンターで,持っているのはハンターナイフのみ。好きな武器を選んでスタートできる最近のモンハンは本当に待遇が良いと思える。
ちなみに,ランポス討伐の報酬は200z,ドスランポス討伐は350z,イャンクック討伐は800z。いざ防具を新調しようと防具屋を覗いてみると,ランポスシリーズは一部位1500zである。防具を揃える頃にはランポスが絶滅してしまうんじゃなかろうか。
防具のプレビュー機能もないので,やっとの思いで買った防具がイメージしていた物と違った時のショックは想像を絶するものがある。
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4.回復薬は店売りしていない
初代モンハンで最大の不便かつ大問題な点が,回復薬を店売りしておらず,売られている回復アイテムが薬草のみということ。回復薬を作るには薬草とアオキノコが必要だが,このアオキノコがなかなか採れない。
ちなみに,回復薬グレートの調合レシピは薬草+ハチミツなので,個人的にはこちらの方が簡単に入手できた。
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5.武器の切れ味が悪すぎる
序盤の武器では,緑ゲージの切れ味などほとんど存在せず,基本的に攻撃は全て弾かれる。オープニングムービーでは,ハンターがリオレウスと戦っているのだが,ここでもやっぱり攻撃が弾かれている。
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6.【狩猟】という言葉がほぼ出てこない。基本は討伐のみ
最近のモンハンなら討伐しても捕獲してもよい「狩猟」という指定をよく見るはずだが,初代にはそれがない。基本は討伐指定のみで,ごく稀に捕獲クエストが登場する。なので,捕獲用麻酔玉などは支給専用のアイテムとなっている。
7.初代から結構な種類のモンスターがいる
初代にはリオレウス,リオレイアをはじめ,ディアブロス,フルフル,グラビモスなど結構な種類のモンスターが登場している。今はもう戦えないが,オンラインではラオシャンロンやキリン,ミラボレアスも登場していた。
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最近の作品は,アクション性の高さや爽快感が強調され,ゲームとしての完成度がとにかく高いが,初代はゲームというより,現実感が強い方向性だったのだろう。回復薬すら売られていないので,素材を集めるところから始めなくてはならないし,攻撃が弾かれるうえ,有効なスキルも用意できないので,落とし穴やタル爆弾など,ある物はなんでも使っていく必要があった。気軽に「ひと狩り行こうぜ」とはなかなか言えないが,巨大な敵に挑む緊張感やスリルが楽しめるゲームだった。
塊魂 2004年3月18日発売
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指から血が出るほどやったゲームと言えば,筆者はこの「塊魂」だ。
「王子」という謎の生命体を操作して,地球のいろいろな「モノ」を塊に巻き込んで,星や星座を作るという,なんというかぶっとんだ作品である。
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筆者は,このゲームにでてくるすべてのモノを巻き込みたくて,必死に遊んだ。マップ内に隠されるように配置されている,そこでしか巻き込めないモノというのがあるので,そういうモノを探して巻き込まなければならない。かといって時間制限もあるので,そればかりに時間はかけられない。アイテムを探しつつ,着実に塊を大きくしていかなければならないのが,ちょっと抜けた雰囲気のあるビジュアルに反してかなり難しかった。
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操作自体はシンプル……と思いきや,塊が自分の思い通りに動かずに四苦八苦した。コントローラーを握る手に思わず力が入るし,塊の移動で使うスティックを動かす指には特に力を込める。結果,指の皮が盛大に剥がれ,コントローラーが血で汚れた。ホラーでもなんでもないのに,ある意味ホラーなゲームである。
そんな状態になりながらも本作を遊び続けたのは,シンプルなルールで遊ぶのが楽しかったこともあるのだが,何よりすべてのモノを巻き込んでコンプリートしたいという気持ちが強かったからである。
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同じように見えても,実は1つだけ違うモノというパターンもあるので,隅から隅までしっかりと巻き込まなければという気持ちになり,最初は丁寧にマップ内を駆けずり回った。しかし,それだと時間内に塊を規定の大きさにできず,結局何度もやり直すことになる。巻き込むモノを変えてみたり,ルートを変えてみたりすることにもなるので,同じステージを繰り返しプレイしているにも関わらず,飽きが来ないのだ。
そして,すべてを巻き込んだとき,なんだか掃除をしてキレイにできたような感覚になり,段々とマップの隅々までキレイに巻き込むことに達成感を感じるようになった。
また,この作品を語るのに欠かせないのが,とにかく不思議な世界観のことだ。
主なキャラクターは,大コスモの「王様」と,その息子「王子」なのだが,彼らのやり取りがシュールで「いったいどういうことなんだー」と思うことが多々あった。若干ついていけないのだが,これがなぜだか癖になる。
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また,中毒性の高い不思議な歌がBGMとして流れるのだが,これがまた混沌としている。歌唱を担当したアーティストは松崎しげる氏や,バラエティ番組「進ぬ!電波少年」でブレイクした坂本ちゃんといった面々。ほかのまっとうなゲームでは,ちょっと考えられない起用であった。このチョイスからしてやっぱり塊魂は不思議なゲームだと思った。坂本ちゃん,いまなにをしているんだろう……と思って調べたら,TwitterとInstagramをやっていた。元気そうで何より。
昨今のゲームではすっかり見なくなった説明書だが,PS2の時代はばっちり封入されている。本作の説明書は横向きなのが珍しい。シンプルなルールにも関わらず,操作方法は多く,びっしりと説明が書かれているのだが,なぜか最後のページでは王様のチャームポイントが紹介されていて,塊魂らしさに溢れていると心から思った。
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なお本作は,2018年にNintendo Switch向けに移植され,「塊魂アンコール」として発売されている。この奇妙奇天烈で中毒性の高いゲームが最新機種でも楽しめるようになったのだが,Nintendo Switchならではの操作方法が追加されたことで,新しい遊び方も楽しめる1本になっている。ぜひ手にとって,あなたのSwitchを血まみ……いや,塊を転がしながらモノを巻き込んでほしい。
九龍妖魔學園紀 2004年9月16日発売
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学園を舞台にしたPS2のベストゲームを聞かれたら,個人的にチョイスしたいのがこの「九龍妖魔學園紀」だ。
本作は,2004年にアトラスから発売された“學園ジュヴナイル伝奇”で,開発は東京魔人學園シリーズを手掛けたシャウトデザインワークスが行っている。
本作がどんなタイトルかを端的に表すと,“トレジャーハンターの主人公が,秘宝を求めて學園の地下にある遺跡に潜入し,神話上の怪物(神)たちと戦っていく學園ジュヴナイルもの”だ。
舞台は2004年の東京。物語はトレジャーハンターである転校生(プレイヤー)が新宿にある全寮制の天香(かみよし)學園にやってくるところから始まる。プレイヤーは生徒や先生たちの協力を得ながら,學園の地下に広がる遺跡に隠された秘宝の謎に迫っていく。
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九龍妖魔學園紀の魅力としてまず挙げたいのが,“その秀逸な世界観”だ。シナリオは日本神話がベースになっているが,本作ではそこに超古代文明やオーパーツ,都市伝説といったオカルト要素をミックスしている。
文章だけで見るとなかなかにカオスでまとまりのない感じがするが,「日本ピラミッド」などの実際に提唱された説を取り上げながら,超古代文明と日本神話をうまく結びつけ,怪しくも魅力的な世界観を生み出すことに成功している。
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とはいえ,日本神話や古代文明についての知識がないと楽しめないのかというとそんなことはない。本作の最大の魅力は“學園に潜入したトレジャーハンター”というシチュエーションをロールプレイできる秀逸なシステムにあるからだ。
本作は,主人公のプロフィールを「名前」はもちろん「身長」「体重」「誕生日」「血液型」「視力」「得意科目」「所属クラブ」と非常に細かく設定でき,プレイヤーの思い描く主人公像を反映し,感情移入もしやすい。
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しかも,主人公は一切しゃべらず,キャラクターたちとのやり取りでは「感情入力システム」という「友」「愛」「悲」「寒」など合計9つの感情で意思表示をする仕組みになっており,これがまた面白い。
例えば朝,友達に「おはよう」と挨拶されたときでも,普通のトーンで「おはよう」と言いたい気持ちなら「友」,「おはようございます!」と暑苦しく返したいなら「燃」といった具合に,プレイヤーが主人公のテンションを想像しながら感情を込めて思いを返せるのだ。
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キャラクターたちも,アロマとカレーを愛する“不健康優良児”や,出会いがしらに突然「石を見ると舐めたくなるよね?」と聞いてくるちょっと危険な石マニアなど,みんなキャラが立っているので,掛け合いを見ているだけでも楽しい。
ちなみに筆者のお気に入りはオカマキャラの朱堂茂美。「寒」などの感情で冷たく当たってリアクションを見るのも良いし,あえて「愛」を連発して彼女(彼)とのキケンな会話を楽しむのも面白い。もちろん筆者は迷うことなく「愛」を連発したのだが,その結果,成績表の特記事項欄に「人として危険です」と注意書きを書かれてしまった。
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また,主人公たちが學園にある,ありとあらゆるものを使って遺跡探索を進めていくシステムもポイントだ。
例えば,遺跡の中には“黄金の鎖”でロックされている扉がある。普通ならここから「鍵」を探すように思える場面だが,本作では,理科室などで手に入る「塩酸」と「硝酸」で「王水」を調合し,それで鎖を溶かすという手段で扉を開けるのだ。金を溶かす「王水」の存在は,多くの人が高校化学の授業で習っていると思うが,本作にはそういった“学校らしい”謎解きがたびたび現れる。
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そのほかにも,学校にある「中国酒」と「マグネシウム」を調合して「火炎瓶」を作ったり,警備員室で拾った週刊誌を「防具」として身につけたりもできる。こういった要素が“学校に潜入したトレジャーハンター”というシチュエーションを盛り立てるのだ。
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魅力的な世界観をベースに,それを味わい尽くせるようなシステムがしっかりと組まれており,筆者はプレイしているうちにその魅力にどんどんと引き込まれ,気づいたらすっかり天香學園の一生徒として學園生活を楽しんでいた。最終的にはエンディングが近づくにつれて「クリアするのがもったいない!」という感情さえ生まれ,しばらくの間エンディング前のデータを止めていたほどだった。
2020年6月4日には本作のリマスター版である「九龍妖魔學園紀 ORIGIN OF ADVENTURE」がNintendo Switch用ソフトとして発売予定となっている。re:charge発売からおよそ14年が経った今,筆者は「これを機に本作に触れてくれるトレジャーハンターが増えてくれればなあ……」なんてロゼッタちゃんとハントくんみたいなことを思っている。
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龍が如く 2005年12月8日発売
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今や説明不要の人気シリーズとなった「龍が如く」。しかし第1作リリース当時の巷の反応は,冷ややかなものも少なくなかった。そのころゲームセンターに入り浸っていた筆者は,店長から「和製GTAと思って買ったのに全然違っていてガッカリ」といった旨のコメントを聞いている。
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「龍が如く」は,任侠モノのドラマが魅力の中核となっている。しかし,“ドラマをインタラクティブに楽しむ”といったゲームの遊び方が,まだ当時は実験的なものに留まっていた。
それでも,“ゲームはこういうもの”といった先入観に囚われずに「龍が如く」に触れた一部のプレイヤーは,このドラマに魅了された。それを彩るのが,人物描写である。それはシナリオ的な意味だけでなく,とくに“表情”の演出が革新的だった。
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PS2時代のゲームハードでは,ひと目で「人間だ」とわかるポリゴンモデルの描画は可能だったものの,表情に関しては口元・目元だけのモーフィングで演出されることが多かった。しかし「龍が如く」は,シーンによってはポリゴンモデルのモーフィングに表情筋の存在すら見出だせるほどの表情演出を実現した。当時の名越稔洋プロデューサー(現シリーズ総合監督)へのインタビュー記事を読み返しても,「(表情のため)独自のエンジンを構築」して,「顔の動きだけを専門で2年間担当したスタッフ」がいたなど,表情に対して強いこだわりを持っていたことがうかがえる。
この表情演出は,「龍が如く」の世界に,従来のゲームには薄かった類の“説得力”を持たせることに一役買った。「龍が如く」シリーズは,第一作から本職の声優ではない俳優を演者として起用しているが,これが違和感なくハマるのも,漫画的・符号的でないビジュアル的な説得力がキャラクターに備わっていたからだろう。
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「龍が如く」はリアルな現代が舞台である都合上,レーザーや魔法などが飛び交うゲームと比較して地味な絵面にならざるを得なかった(まあ,今となってはサテライトレーザーも魔法少女的なアレもある状況だが)。それなのに,内外(シナリオ&キャラクターモデリング)ともに綿密な人物描写や,二転三転するストーリー,映画的なカメラワークにより,SFやファンタジーに匹敵するほどの輝きを放つタイトルとなった。今では裏社会というテーマやフォトリアルなグラフィックスも珍しいものではなくなったが,当時の「龍が如く」は家庭用ハード事業から撤退しても未だ輝く,セガの“強さ”を感じられるタイトルだったと思っている。
また,ここでちょっとしたアイテムを紹介したい。当時のセガが運営していた直販ECサイト・セガダイレクトの,「伝説の極道の素質のある50名様を選び出し(てプレゼント)」というキャッチフレーズのキャンペーンで50人に贈られた,「豪華木箱入り代紋6個セット」である。
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このキャンペーンへ応募するには,プレイしての感想を含むアンケートに答える必要があり,そこで筆者はガッツリと書き込んだ感想を送ったのだ。投稿フォームに書き込んで「いざ送信!」と思ったら,クッキーのタイムアウトでエラー画面に遷移して,ひとしきり愕然としたあと,万全を期しローカルのテキストファイルに感想をイチから書き直し,フォームにコピペして「いざ送信!」と実質二度も送ったのだ。
プレイ感想はあくまで応募要項であり,コンテストではなかったので,執筆内容が功を奏したわけではなかろう。ただ,これが筆者としては人生初の「ゲームについて執筆して何かをもらった」経験となった。この経験が無ければ,4Gamerなどでゲームの記事を書くこともなかっただろう。「龍が如く」は筆者の人生を変えたゲームの1つなのである。
“極道”というワードは,一般的には反社会勢力を指して使われるが,本来の仏教的な意味における“道を極める”こと自体は,どこの界隈においても問えるものだろう。道を極めんとする者達の足跡が刻まれることで,進路が切り開かれ,土が踏み固められ,幅が広がり,道は大きくなっていく。例えば,大昔はゲーマーなど「奇特な趣味人」に過ぎなかったが,極めんとした者達がゲームの道を切り開いていった結果,近年は「eスポーツ選手」として世界的脚光を浴びるゲーマーすら現れたように,世界の可能性が広がっていくものなのだ。
かつてゲームは「子供騙しのピコピコ」に過ぎなかった。しかし,アクション,アドベンチャー,格闘,ロールプレイング,シューティング,スポーツ,恋愛シミュレーション……さまざまなジャンルでゲームの求道者がいたからこそ,それらのエッセンスを集約して「大人向けのエンタテインメント作品」を謳う「龍が如く」シリーズが生まれ得たのだ。そう,FPSでもギャルゲーでも,“道を極める”者は偉大である。読者諸氏も,それぞれの道をガンガン極めていけば,相応の偉大さを得られるだろう――「龍が如く7 光と闇の行方」の“赤ちゃんを極めた男”権田原組長や,“ドMの極み”牧之原聡太みたいに!
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緋色の欠片 2006年7月6日発売
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「緋色の欠片」は,アイディアファクトリー(オトメイト)より発売された恋愛アドベンチャーゲームシリーズ。この世に終わりをもたらす刀「鬼斬丸」を封印する巫女“玉依姫”の宿命を背負った主人公・春日珠紀(名前変更可能)と,彼女を守護する男性たちとの恋愛模様を描くシリーズ1作目が発売されたのは2006年7月だった。
珠紀のもとに集う守護者は,鬼崎拓磨(CV:杉田智和),鴉取真弘(CV:岡野浩介),狐邑祐一(CV:浪川大輔),大蛇 卓(CV:平川大輔),犬戒慎司(CV:下和田ヒロキ)の5人。彼らはそれぞれ不思議な力を持っていて,玉依姫と共に鬼斬丸の封印を守る宿命を背負っている。
玉依姫と守護五家,そして鬼斬丸の力を狙うロゴスの存在――突然降りかかる運命に,珠紀は翻弄されていく。
そんな穏やかではない物語が展開される本作。ゲームの目的はもちろん守護者たちとの恋愛なのだが,彼らはそれぞれ宿命に縛られていたり,大事な人を失った過去があったりと何かしらの問題を抱えていて,関係を深めれば深めるほど,どんどんシリアスなモードになっていく。
加えて,封印を守るための命を賭けたバトルシーンが多く,選択肢によっては死んでしまうことも。「緋色の欠片」の“きゅんきゅん”は,恋の甘さではなく胸を締めつけられる切なさと愛から来るものだった。
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本作では守護者たちが“玉依姫を守る”から“珠紀を守りたい”に変わっていく過程が,丁寧に描かれていた。(乙女ゲームの主人公として見ると賛否が分かれそうだが)珠紀はちゃんと意思がある子なので,守護者とはぶつかることも多い。珠紀が自分なりに守護者たちを理解しようとしても,「お前に何が分かるんだ」とか「俺たちの心の中に入ってくるな」とか言われてしまう。筆者は何度,「え。だって引っ越してきたばっかで珠紀,結構頑張ってるよ? そこまで言う?」と珠紀の応援をしたくなったことか。
![]() 激しい戦いで倒れてしまうことも |
![]() そ,そこまで言わなくたっていいじゃないか |
敵であるロゴスや,人間同士の関係も複雑で,玉依姫(主人公)を利用しようとさまざまな思惑が交錯していく。拓磨ルートでは無関係だと思っていたキャラクターが,別ルートから見ると裏で動いていたなんてこともあり,キャラクターの善い面と悪い面の両方が見えてくるのが面白い。全ルートをとおして見ると,どのキャラクターも憎めないので,最終的に「みんな幸せになってほしい」と願わずにはいられなくなる。
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さて,ここで筆者の一番好きな攻略キャラクター狗谷 遼(CV:野宮一範)を軽く紹介しておこう。遼をひと言で表すならば,“匂いフェチの変態”が一番ぴったりではないだろうか(個人の感想です)。
実際,初対面の珠紀のにおいを嗅ぐシーンもあり,それ以降も隙あらば嗅いでいる。名セリフ(本編+ファンディスクの内容含む)をピックアップすると,「おまえの匂いは、果実のように甘く、やわらかで……俺を惹きつける」「そうだな……メシの時間……つまり、お前を食う時間だ」などなど匂いに関するものが多い。これだけ聞くと“ただの変態”だが,ちゃんと物語を綴っていくと,遼がかわいくてかわいくて仕方なくなってくるから不思議だ。
ちなみに,遼は一匹狼なキャラで最初は珠紀とも関わろうとはしない。ただ,一度壁がなくなればかなりストレートな愛情表現をしてくるので,その結果が上記のようなセリフに繋がってくる。もちろん,もっとかっこいいセリフもあるし,強引だけど本当に珠紀が嫌がることはしない優しさもあるし……ほかにも魅力はたくさんあるので,匂いフェチを許容できるなら,遼ルートをぜひ体験してほしい。
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これから「緋色の欠片」をプレイしたいという人には,PlayStation Vita版「緋色の欠片 〜おもいいろの記憶〜」をおススメしたい。本編+ファンディスク+過去の追加要素+PS3版のダウンロードコンテンツがすべて収録されているほか,グラフィックスなどもリメイクされていて,PS2版よりも綺麗な画質で遊べるはずだ。
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