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脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート
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印刷2019/04/09 17:39

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脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート

 2019年3月28日,都内の日仏会館 2F ギャラリーで開催された,ボルテージ主宰のクリエイター向けイベント「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」において,人気ドラマを多数手掛ける脚本家の森下佳子氏によるトークショーが行われた(関連記事)。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート

 イベントでは,ボルテージの取締役副会長である東 奈々子氏と,「天下統一恋の乱 Love Ballad」ディレクターの長島麻衣子氏も登壇。
 2人から森下氏に質問する形で進行した。森下氏が脚本家になったきっかけやキャラクターの捉え方など,創作活動に関わる人にとって貴重なアドバイス満載の本イベントの模様をレポートしよう。


演劇への熱が冷めず脚本の道へ


脚本家,森下佳子氏。TVドラマ「世界の中心で愛を叫ぶ」や映画「花戦さ」などを世に送り出し,数々の賞を受賞している。よく読んでいたのは木原敏江氏の作品や,池田理代子氏の「ベルサイユのばら」などの少女漫画。王道またはヒロインのために尽くしてしまう不憫系のイケメンが好みだそうだ
画像集 No.006のサムネイル画像 / 脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート
 まずは,なぜ森下氏が脚本家の道を志したのか……という話題から始まった。森下氏は学生時代,演劇サークルに所属し,舞台に立った経験もあるなど,もともと演劇への熱が高かったという。その後,就職したものの熱は冷めることはなく,25〜6歳のときに会社を退職し,今に至るそうだ。やはり好きなものに対する情熱は,創作活動にとって大きな原動力になっているのだなと筆者は感じた。

 次に,もっとも印象に残っている作品は何かと聞かれた森下氏。その答えは2016年にTBS系列で放送された東野圭吾氏原作のTVドラマ「白夜行」だった。ある事件を複数の視点から描いている原作に対し,ドラマ版は事件の重要人物を中心に物語が進行していく。森下氏は,視聴者が「自分もしてしまう可能性がある」とその人物に感情移入できるように描くことが,とても大変だったと語っていた。

 原作モノの作品や,史実に基づく大河ドラマを描くことも多い森下氏。実際に舞台となる土地を訪れたり,ネットや書籍で資料を集めたりして情報を集めているという。加えて歴史モノの場合,すでにある創作物も参考にするとのことだ。その時代を生きる先人たちが,想像を広げて作りあげた作品を見ることで,絶対に外してはいけないエピソードが見えてきたり,逆に少ししか触れられていない部分を広げたりと,脚本作りの道しるべになると,脚本家ならではの見方を伝授してくれた。

 また,織田信長など数多くの作品で描かれ,イメージがほぼ固まっている人物の場合,あえてそれを崩さないキャラ作りをすることもあったという。それは,森下氏が脚本を手掛けたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年放送)でのこと。女ながらに当主になった直虎の生き様にプロデューサーが惚れ,絶対に物語が作れるはずだと言われてドラマ制作が始まったそうだが,森下氏的には直虎の資料が少なく設定が真っ白で無茶ぶりだと感じたそうだ。直虎のイメージは想像で埋めていくしかないため,他の信長などの登場人物まで従来のイメージから外れてしまうと,物語が分かりにくくなると判断して,パブリックイメージどおりの人物として描いたという。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート

 オリジナル作品については,森下氏主導というよりも企画プロデューサーとのやり取りのなかで固めていくことが多いとのこと。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年放送)を例にコンセプトの捕まえ方を説明していただいた。

 近年の連続テレビ小説は,主人公の女性が目標に向かい成長していく物語が多いが,現実の女の子は本当にそれを幸せと思っているのか……と感じて企画が始まったそうだ。そこから「生活そのものを幸せに送っていくのが“夢”」で,夫婦モノ,料理をメインにするアイデアが固まっていったという。さらに旦那さんの職業を建築関係にすることで,“衣食住”という人の暮らしに関するメッセージ性を持たせたとのことだ。1つのアイデアからここまで設定は広がっていくのかと驚かされた。また,「序盤はラブコメでいこう」とプロデューサーと話し合い,意図的にキュンとなるシーンを増やしたことも明らかに。そういったシーンを描くのはとても楽しかったと森下氏は語る。

 続けて,恋愛モノを描くときもそうではないときも,恋愛以外を軸にして物語を考えていくとも教えてくれた。事件モノならばどんな事件なのか,どんな出会いなのか,どういった協力作業をさせるかなど,何か目標があって男女が惹かれていく流れだと,描きやすいという。恋愛のみを中心とした物語は描くのが難しいとも語った。


変化していくキャラクターを楽しむことも重要


画像集 No.007のサムネイル画像 / 脚本家・森下佳子氏より目からウロコなアドバイスが満載。「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」レポート
 次の話題は,キャラクター作りについてだ。森下氏はキャラクターを作る際,ある程度の設定はありつつもあまり細かくは決めないそうだ。物語を書き進めるなかで,初期の設定が使えなくなることがあるからだと話す。これには,セミナーの参加者も頷きながら聴いていて,脚本家あるあるなのだなと感じた。

 また,連続ドラマによくあるのが,個性の強い主人公が徐々に成長して,落ち着きすぎてしまうことだという。そんなときはあえて初期の設定に戻し,「そういえば,最初からこんな人物だった」と説得力を持たせつつ変化を与えるそうだ。キャラクターを長く描き,愛着が湧くほどイメージが固まってしまいがちになるが,森下氏は「その人物が絶対にやらないことをやらせなさい」という師匠の言葉を大事にしているという。

 その教えもあり,長年の付き合いであるプロデューサーから「10年ぐらい一緒に仕事をしているけど,君が次に何を言うか分からない」と言われたそうだ。キャラクターがブレることを恐れないのは,想像以上に大変なことだと筆者でも思う。師匠の言葉や,これまでの経験から培ってきた森下氏だからこそできるのだろう。

 続いて,物語中に張り巡らされる伏線の話題に。森下氏の場合,キャラクターが過去に話していた言葉や行動を振り返ることで,自然と伏線が回収できるという。伏線を張ることに意識を向けすぎると,逆に視聴者に意図がバレやすいと話す。

 また,脚本家として森下氏が心掛けていることも教えてくれた。それは,おもしろい記事をプロデューサーに送ったり,メモしたりすること。「トンボをきる」や「ドテヤマ」など,実際に森下氏が気になったワードを交えながらアイデアを広げていくのだという。筆者もライターとして,情報や興味のアンテナを広げておく重要さを再実感した。

 最後に森下氏は「(脚本家は)基本的には楽しい時間がたくさんある仕事。しめ切りに急かされて進めるのではなく,キャラや物語の展開を楽しみながら進めると,仕事も結果的に早くなる」と脚本家としてのアプローチ方法をアドバイスしてくれた。創作活動をしているみなさんも,ぜひ参考にしてみよう。

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