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グリーが「GREE Creators\' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート
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印刷2014/10/31 15:56

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グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート

 グリーは2014年10月29日,「GREE Creators' Meetup」を東京都内の同社オフィスにて開催した。このイベントは,企業や所属の垣根を越えて,ゲーム業界で働くクリエイター達が交流できる場を設ける,というコンセプトのもと企画された勉強会だ。
 その第1回の開催となる今回は,スクウェア・エニックスの渋谷員子氏およびノイジークロークのクリエイターを招いたセッションが行われた。本稿では,その2つをピックアップしてレポートしよう。

画像集#001のサムネイル/グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート


オープニングセッション「ドットの匠」


 セッション「ドットの匠」では,スクウェア・エニックス 第9ビジネスディビジョン アートディレクター 渋谷員子氏が,自身のデザイナーとしての経歴とドット絵のキャラクターデザインについて語った。
 改めて説明しておくと,渋谷氏は初期の「ファイナルファンタジー」(以下,FF)をはじめスクウェア(現スクウェア・エニックス)の人気RPGシリーズにて,ドット絵のキャラクターを手がけた人物である。

スクウェア・エニックス 第9ビジネスディビジョン アートディレクター 渋谷員子氏
画像集#006のサムネイル/グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート

 渋谷氏は,中学から高校まで美術部に所属するなど,絵を描くことが好きだった一方で,アニメにもどっぷりとハマっていた。そこでアニメおよび絵に関わる仕事ということから,アニメーターを目指していたのだが,専門学校に通うかたわらアルバイトとしてアニメの制作現場で働いてみたところ,「どうも自分には向いていないのではないか」と感じたそうだ。

 そんなときに出会ったのが,1986年当時,PCゲームの開発を手がけていたスクウェアである。その頃も今もゲームはほとんど遊ばないという渋谷氏だが,「できないことはないだろう」と面接を受けてみたところ,翌日にはスクウェアから合格の連絡があったそうだ。
 ちなみにそのときの面接官は,FFシリーズをはじめ,数々のコンシューマ向けRPGのヒット作を手がけてきた坂口博信氏と,スクウェア創業者の鈴木 尚氏だったとのこと。当時のスクウェアはいわゆるベンチャー企業であり,スタッフはわずか10名ほどだったが,坂口氏をはじめ田中弘道氏青木和彦氏,そして植松伸夫氏と,FFシリーズの主要クリエイターがすでにそろっていたそうだ。

 そんな環境の中,渋谷氏が初めて手がけた仕事は,PCゲーム「アルファ」の取扱説明書に掲載される挿絵を描くことだった。実際にゲームのドット絵を手がけたのはMSX版「キングスナイト」のときで,最初は16×16ドットで絵を描くということに相当戸惑ったという。
 「指導者もいなかったため,ツールの使い方だけを教わり,自己流で試行錯誤してみたところ何とかなってしまった」と渋谷氏は笑顔で話す。これが今なお後続に影響を与える氏のドット絵デザインのスタートとなったわけである。

FFシリーズのドット絵キャラクター。オリジナルデータは失われており,会場ではプリントアウトされたものから,渋谷氏自身があらためてデジタルデータとして起こし直したものが披露された
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 それから数タイトルに携わり,1986年秋頃からはFFの開発に携わることとなる。渋谷氏は,同じく1986年に発売された「ドラゴンクエスト」を見て,「キャラクターが正面を向いたまま上下左右に移動するのは何とかできないか」「街の建物に屋根がないのはどうなのか」と,いくつか思うところがあり,FFではそうした課題を解決すべく取り組んだという。

スクエニメンバーズのWebサイトで連載された「渋谷員子のドットの匠」。ドット絵の基礎をレクチャーする内容だったが,渋谷氏の描き込みが細かすぎて「これでは読者が真似できない」という理由でリテイクになることもあったとか
画像集#017のサムネイル/グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート

 渋谷氏がスマートフォン向けゲームのドット絵を描くにあたって心がけているのは,色数を抑えること。ファミコンと違って多くの色を使えるのだが,色数が多すぎると逆に制御できなくなってしまうので,渋谷氏は自身でパレットを作り,1キャラあたり32色以内に収めているそうだ。

 また渋谷氏は,FFからFFIIIでドット絵を描いていたときには,ブラウン管のにじみや色の膨張を計算に入れていたとのこと。意外なところにハイライトとして白を置くと綺麗に見えたというエピソードを披露し,ゲームの遊び手を意識することがポイントになると話していた。

2008年に渋谷氏をドット絵の世界に引き戻したのが,「FINAL FANTASY IV THE AFTER-月の帰還-」。14〜15年振りのドット絵だったとのことだが,自分で「昔よりも上手くなってる」と感じたそうだ
画像集#012のサムネイル/グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート

「FINAL FANTASY IV THE AFTER-月の帰還-」の白魔導士と黒魔導士。とくに黒魔導士は,「これ以上直しようがないほど完璧なドットの配置」と渋谷氏本人が思うほどの仕上がりになっているという
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「FINAL FANTASY LEGEND」(上が携帯アプリ版,下がスマートフォン版)。渋谷氏いわく,「今見るとスマートフォン版は影が入りすぎていて,濃い絵になってしまった」とのこと
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スマートフォン版FFVのドット絵キャラクター。48×48ドットで描かれており,端末上ではほぼドット絵としては認識できなくなっている。渋谷氏によると「ドットとして表現するのは,このサイズが限界」とのこと
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 セッションの終盤では,あらかじめ用意された質問に渋谷氏が回答するコーナーも設けられた。「(FFシリーズで)天野喜孝氏の絵をどのようにドットに起こしていったか」という質問には,「よく聞かれるんですが,とくにないんです」と渋谷氏。これは「サガ」シリーズで小林智美氏のイラストをドット絵にしたときも同じで,元の絵を見ながら描いていただけだったという。
 その中で意識していたのは,ディテール(細部)よりもシルエット(全体)を大事にするということ。ファミコンやスーパーファミコンでは使える色数が少なく,細かい部分を再現できないので,遠くから見てもすぐにどのキャラか判別できることを優先したからだそうだ。渋谷氏は,「ゲーム中のドット絵キャラクターは記号に過ぎないので,プレイヤーの皆さんは,天野さんや小林さんの絵を思い描きながら遊んでほしい」と語っていた。

 「仕事をするうえでのこだわりポイントは何か」という質問に対しても,渋谷氏は「得にこれというものはないですが」とし,強いて挙げるのであれば「仕様書を待たない」と答えていた。
 これは,坂口氏から「とりあえず何か描いて」とオーダーされることが多く,自分から「どんな感じにしますか」と聞きにいっていたスクウェア時代の事例に起因しているという。
 また渋谷氏は,「キャラクターに限らずユーザーインターフェイスなども,デザイナー側でたたき台を作ったほうが話がスムーズに進みやすいのではないか」とも話していた。

スクウェア・エニックスのコンピレーションアルバム「FINAL FANTASY TRIBUTE 〜THANKS〜」のジャケットに使われたドット絵。3Dグラフィックスに移行してからのFFシリーズに登場するキャラクターも,渋谷氏の手によりドット絵になっている
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 渋谷氏のもう一つのこだわりが,作業中のモニターの向こうに,常に世界中のユーザーがいることを意識し,彼らに喜んでもらうことを考えているということだ。渋谷氏自身,人に喜んでもらえることが嬉しいとのことで,仕事を頼まれるとあまり断ることがなく,またどんなに小さな仕事でも全力で取り組むと話していた。

 最後の質問は,「業界の中でデザイナーとして変わること,変わらないこと」というもの。渋谷氏は「自分の中でブレない何かを持ったうえで,どんどん変化していくべき」と回答し,「これがやりたい」「これが好き」という信念や軸を大事にしていれば,どんな変化にも対応できると回答。
 また長く仕事を続けていると,作業環境の変化などさまざまな局面が訪れるが,どんなときでもプロとしてベストを尽くすことや,常に健康で楽しく毎日を過ごし,それをゲームに落とし込んでいくことが重要であるとしてセッションをまとめた。

セッションの最後には,渋谷氏がホワイトボードに黒魔導士を描き,会場を沸かせていた
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セッション「消滅都市からみたモバイルサウンドの今後とゲームサウンドの歴史」


 セッション「消滅都市からみたモバイルサウンドの今後とゲームサウンドの歴史」には,グリーの竹内雅樹氏と,ノイジークロークの川越康弘氏および蛭子一郎氏の3名が登壇し,スマートフォン向けゲーム「消滅都市」におけるサウンド制作の事例などを紹介した。

左から竹内雅樹氏,川越康弘氏,蛭子一郎氏
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セッションの冒頭では,コンシューマゲームおよびモバイルゲームのサウンドに関するスペックの変遷が紹介され,クオリティや演出力がより求められるようになっていることが示された
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 「消滅都市」のサウンドにおける大きなポイントは,楽曲と効果音のバランスだそう。どちらも聴かせたいというのが開発側の正直な気持ちだが,端末のキャパシティなどの事情があり,そうもいかないのが現実である。また,単純に音量の大小でバランスを取ってしまうと,結果としてどちらもよく聴こえないということにもなってしまいかねない。
 そこで本作では,周波数のすみ分けにより,両立を図っているのだという。つまり,楽曲と効果音の帯域が可能な限り被らないよう,効果音の高域や低域を強調しているのである。

 また「消滅都市」は,画面の前面でアクションゲームが進行し,その奥でバトルが展開されるという構図になっている。したがって同時に起きる二つの事柄を,効果音でどのように差別化できるかということもポイントになってくるのだ。本作では,前面の効果音はモノラルにしたり,ドライな音にしたりして手前にあることを表現。一方で奥の効果音は音量を下げたり,リバーブ(残響)を掛けたりすることで距離感を演出している。

会場では効果音の立体感を重視して調整したバージョンと,未調整バージョンとの比較も行われた。未調整バージョンは味気なく,耳障りという印象だ
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 そうしたバランス調整の結果,「消滅都市」の楽曲は,一般的なゲームの倍近い音量で鳴らすことが可能となり,本作をプレイした人に,楽曲の印象を強く残せたという。川越氏はこうしたバランスを「音楽ゲームに近い」とし,また竹内氏はその意図を「ゲームのスピード感やノリを表現するため,なるべく楽曲を聴かせたかった」と説明していた。

画像集#025のサムネイル/グリーが「GREE Creators' Meetup」を開催。スクウェア・エニックスの渋谷員子氏や,ノイジークロークのクリエイターを招いたセッションの模様をレポート

 それでは,「消滅都市」のようなサウンドを実現するためには,どうすればいいのか。とくにサウンドはノイジークロークのような専門の会社に外注し,自社やチームに専任スタッフを置かないケースも少なくない。そのときは,きちんとした資料を準備し,スタッフ間での適切なやり取りが重要になるという。

 まず当たり前の話として,効果音や楽曲の数量および,それぞれの内容と方向性を示す指示書は最低限必要となる。さらに,楽曲のジャンルを決定するときの参考にするため,ゲームジャンルやターゲット層が明確であることも大切だそうだ。

 そして,一見楽曲には無縁そうなゲームのルーチンやシステムも重要な情報だという。たとえば,1ステージが30秒のプレイで終わるようなケースに対して,2分の曲を作っても意味がない。また,頻繁にBGM切り替える場所にイントロのある楽曲を入れてしまうと,常にイントロばかりが流れてしまうことにもなりかねないからだ。

 世界観とシナリオ,キャラや背景などの絵素材も,全体的な雰囲気や楽曲のスケール感,喜怒哀楽などの感情を表すサウンドを決めるためには必要だ。とくに効果音を作るにあたっては,キャラクターがどういった体格なのかなどが分かると,音の質感を決めやすいとのこと。また動画や実際に動かせるバージョンなどがあると,スピード感やタイミングを捉えやすいという。

 蛭子氏がとくに強調したのが,実際に顔を合わせての説明である。文字に表せない開発チームの熱を感じることが,楽曲や効果音を作るうえでの参考になると話していた。
 竹内氏と川越氏は,何を表現したいのか,遊ぶ人に何を感じさせたいのかといった,根底にある部分を伝えてもらうことで,より要望に沿ったサウンド作りが可能になると語っていた。

 最後に,川越氏と蛭子氏は,作曲自体は極めて短い時間で終わることもあるが,むしろその段階に至るまでの過程が大切で,とくにほかのゲーム開発スタッフとの信頼関係が重要になるとコメント。今後も「消滅都市」のように優れたゲームのサウンドに携わっていきたいとして,セッションを締めくくった。

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グリーの村越 悟氏によるセッション「変数と定数で考えるデザイン これからのデザイナーの生存戦略」で興味深かったのが,同社内で行われているユーザーテストの模様だ。村越氏はユーザーが実際にゲームをどう遊ぶのかを観察し,なぜそうした行動に至ったのかを対話により聞き出し,それを理解することこそが今後のデザインの現場に必要になると語っていた
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グリー 公式サイト

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