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「JETROゲームビジネス海外展開セミナー:海外の主要ゲーム市場の現状と日本企業の展開事例」の聴講レポートを掲載
今回のテーマは,「欧州(フランス、ドイツ、北欧)におけるゲーム市場について」「インディーゲームメーカーの海外展開への挑戦」「持ってるコンテンツを最大限に利活用する海外展開のススメ」の3つだ。
いずれも興味深い内容であったのはもちろん,具体的な手続きやJETROによる支援の内容についても語られたので,今後の海外展開を視野に入れている聴講者にとっては,意義深い講演となったはずだ。本稿では,これら3本のセミナー内容をまとめてレポートしていこう。
欧州(フランス、ドイツ、北欧)における
ゲーム市場について
「欧州(フランス、ドイツ、北欧)におけるゲーム市場について」と題した講演では,JETRO海外調査部・欧州ロシアCIS課の廣田純子氏が登壇。最初に廣田氏は,本講演で示されているデータはあくまでも全体的な傾向で,細部のデータは整合性が取れず各論においては異なってくる可能性があると前置きしたうえで,スピーチを行った。
なお本講演では,「コンソールゲーム」「モバイルゲーム」「デジタルゲーム」といった区分けで紹介が行われたが,コンソールゲームは据え置き機と携帯機両方を含むのかどうかなど,厳密な区分けが確認できなかった部分はそのまま表記している。あらかじめご了承いただきたい。
ゲーム産業も例外ではなく,2008年から2012年まで右肩下がりの状況にあった。
しかし,欧州債務危機が一段落したことや,ゲーム産業では新しい家庭用ゲーム機が登場したことなどから,2013年から市場は上向きの傾向にある。また,デジタルゲーム市場は,先述した欧州債務危機の最中でも右肩上がりの成長曲線を見せるなど,急成長を遂げている。
全体として見ると,現在は市場が堅調に拡大する方向にあるため,状況は今後も改善されていくのではないかというのが,欧州のゲーム業界における一般的な観測になっているそうだ。
2014年のゲーム市場規模予測では,欧州主要国におけるゲーム産業の総収入を合計すると,日本にほぼ匹敵する数字になるという。売上では,ドイツ,イギリス,フランスがそのうち約6割を占めるとのこと。
いわゆる基本プレイ無料のF2Pスタイルが欧州でも浸透してきて,ビジネスモデルの転換期を迎えているとのこと。とはいえ,マネタイズが上手く機能しているのは一部のビッグタイトルに限られているそうで,現在はそれを模索している段階にあるという状況だ。
ただし,国家によって言語や文化的背景が異なり,好まれるコンテンツは違ってくるため,欧州といってもひとくくりにはできないと廣田氏は話す。そこで,欧州市場の中でも規模が大きいドイツ,フランス,イギリスについて,それぞれの特徴が解説された。
・ドイツ市場
廣田氏は,欧州最大の市場であるドイツは,売上の約半分(51.7%)を据え置き型の家庭用ゲーム機が占めており,もっとも重要度が高いと説明した。続いてPCゲーム(15.7%),MMO(11.0%),携帯ゲーム機(9.7%)となっている。スマートフォン(8.5%)とタブレット(3.5%)は,合計でも全体の12%止まりと,家庭用ゲーム機とPCが主力であることが伺える。
ドイツのゲーム人口における男女比を見ると,男性55%に対して女性45%となっており,ほぼ半々の他国より男性の比率が高めだ。廣田氏によれば,これはPCゲーム人口が他国より多いことに起因しているのだろうとのことだ。
次に,ドイツ人ゲーマーが好むジャンルの統計が提示された。
コンソールゲームとPCゲームでは,男女ともにハードコアプレイヤーが多いというのがドイツ人ゲーマーの特徴だ。男女ともにストラテジー,アクション/アドベンチャー,RPGが人気で,これらのジャンルにおいては性別による違いがさほど見られない。ただし,シューティングは男性,ダンスやフィットネスは女性というように,ジャンルによっては男女で好みがはっきり分かれているものもある。
年齢別の統計からは,ストラテジーとアクション/アドベンチャーはどの世代でも人気が高いことが分かる。
一方,モバイルゲームではクイズやロジック系,パズル,脳トレ系の人気が高い。男女別で見ると,クイズやロジック系,パズルは女性寄り,アクション/アドベンチャーやレースは男性寄りという偏りが見られる。脳トレ系はともかく,男女ともにストラテジーの人気が高いのはお国柄といったところだろうか。
欧州債務危機の被害が最小限だったドイツは「唯一の勝ち組」と言われているが,それでも国民の節約志向は強く,ゲームもF2Pスタイルが人気なのだという。そのため,F2Pスタイルが多いオンラインゲームは,しばらく好調が続くのではないかと思われている。
・フランス市場
フランスビデオゲーム組合の報告書によると,フランスではゲーム人口がこの10年で3倍になるほどの成長を見せているとのこと。ただし廣田氏は,ゲーム人口推移のデータに対しては「正確さが欠けているかもしれない」とコメントしていた。
フランス人ゲーマーの好むジャンルは,ハードコア層とライト層ではっきり分かれているが,「スポーツゲーム」と「冒険ゲーム」が共通して人気上位に位置している。
ゲーム市場の売上規模については,全体としては右肩上がりだが,コンソール市場の数字は横ばいで,成長は微増と予想されている。今後,市場として有力視されているのはデジタル市場というわけだ。2012年から2013年の1年間でデジタル化が27%から40%に跳ね上がったのが,その根拠なのだろう。
現在,フランスでは娯楽に対する出費がシビアで,ゲームにおいても課金率の低さが目立っているという。加えて,フランスではゲームが“望ましい文化”とみなされていないという背景があるため,スポンサーを付けての広告収入もいま一つ伸びないのだとか。そのためフランスのゲーム産業では,国際展開でベースユーザー数を増やすしかないというのが,共通した見解になっているそうだ。
ちなみに,JAPAN EXPOなどが開催されるためフランスといえば「日本の文化が浸透している」印象がある。しかし,日本のアニメやマンガのファンが多いのは主に若年層で,モバイルでカジュアルゲームを楽しむ中高年女性層などは,日本のコンテンツを見ていない(知らない)傾向にある。そのため,「日本製」がアピールポイントになるとは限らないのだそうだ。
・イギリス市場
イギリス市場の説明は短めで,伝統的に価格が安いコンソールゲームが根強い人気を誇るとのこと。モバイルゲームの人口も増えているが,こちらは女性層が増えたことによるところが大きいそうである。なお,モバイルゲームにおける男女比は,男性51%に対して女性49%と,ほぼ半々の比率になっている。
廣田氏は,欧州のゲーム市場においてカギになるのはスマートフォンであると指摘する。
スライドでは,イギリス,ドイツ,フランス,日本におけるスマートフォン各種コンテンツの利用経験の数字が示された。どの国でもスマートフォン所持者の9割近くがエンターテイメントの利用経験があり,日本以外の3国では,エンターテイメント利用経験者の6割以上がゲームを遊んだことがあるとのこと。日本よりゲームで遊ぶ率が高いため,潜在的なマーケットが大きいということだろう。
また廣田氏は,スマートフォンに関連して,「Angry Birds」「Clash of Clans」「キャンディークラッシュ」「Minecraft」など,世界的なヒット作を産むデベロッパが数多く存在する,北欧におけるゲーム産業について言及した。
北欧におけるゲーム関連の企業数,従業員数,売上高は,いずれもスウェーデンとフィンランドが突出している。また,スウェーデンはe-Sportsが盛んなことでも有名で,世界最大規模のe-Sportsイベント「Dreamhack」は,スウェーデンの国営放送が中継するほど注目度が高い。
スウェーデンのゲーム産業が発展した背景にはさまざまな要因があるが,現地ではその理由として以下の事項を挙げているという。
(1)政府がPCとインターネットの普及を早い時期から推進しており,コンソールゲームが普及する前にPCがゲーム環境として普及していた。
(2)冬になると日照時間が短く,室内で過ごす時間が長い。
(3)国内市場が小さいので,デベロッパは最初から国際展開を目指す。
(4)英語が堪能な国民が多い。
なおKingでは,モバイル環境でカジュアルゲームが女性を中心に流行り,女性ゲーマーが増えていることを受け,女性社員を積極的に採用している。他社と共同で女性プログラマー育成プログラムを実施するといった施策も行っているとのこと。
インディーゲームメーカーの海外展開への挑戦
また,日本人が開発するのだから,日本の文化を扱ったゲームを作ろうという方針を立て,“文化”のキーワードとして「侍」を選んだ。
日本国内向けに作るなら,キーワードは「戦国」になるだろうが,世界市場を目指すなら,知名度の高い侍(SAMURAI)にしたほうがメリットが大きいと,キーワードの重要性を語った。
このようなコンセプトで制作された「サムライ・ディフェンダー」は,リリース後にライセンス契約という形で,中国/アメリカ/欧州市場で展開された。英語化は自社で行ったが,プロモーションなどそこから先の展開は,現地の企業に頼んだとのこと。
続けて竹内氏は,世界中に星の数ほどあるスマートフォンアプリのパブリッシャから,どのような企業を選べばいいのか,同社がライセンス契約を結ぶ際の判断基準を説明した。
(1)ミニマムギャランティとイニシャルロイヤリティの有無
海外の,いわば「見ず知らずの企業」に自社のゲームを託すにあたって,最大の不安要素となるのは,お金がきちんと払われるのか,またしっかりゲームを運用してくれるのか,という点だ。この不安を取り除いてくれる相手を選ばなくてはならない。
(2)担当者の信頼度と熱意
担当者の熱意は大きなポイントとなる。「サムライ・ディフェンダー」の場合,中国のパブリッシャは,担当者がさまざまな資料を次々に提示してくるなど,非常に高い熱意を示したという。そのパブリッシャを選んだ結果,中国では良い展開ができたとのこと。
(3)実行能力と実績
そのパブリッシャが過去にどんなゲームを運営してきたのか,その具体的な実績は大きな判断材料になる。「日本のコンテンツを漁りにきたような相手は危険」だと,竹内氏は来場者に釘を刺していた。
逆に,以下の2点については,パブリッシャを選ぶ際の基準にはしなかったという。
(1)相手企業の規模
リンクキット自身が小さな会社であるため,相手企業の規模は問題にならないとのこと。
(2)プロモーションの具体的な方法
プロモーションの具体的な方法について,実際にどのような形で行うか事前に教えてくれない相手が大多数のため,判断の基準にはならないと竹内氏は話す。ただし,パブリッシャが何もしないのを防ぐため,「自社ではこれくらいやっています」というように,プレッシャーを与える必要はあると述べていた。
海外との交渉においては,相手のレスポンスが早いのか(それとも遅いのか)感覚をつかみかねるかもしれないが,竹内氏によれば,熱意のある人と商談をうまく進められているときは,日本でも海外でも相手のレスポンスは早いという。そのためレスポンスを特別視する必要はないそうである。
契約に関しても,相手企業が契約書のテンプレートを持っているので,それをベースに交渉できるとコメント。ただし,自分達で契約書を作ったほうが何かと有利なので,その点には注意したほうがいいとのこと。
東京ゲームショウでは,2013年にインディーズゲームコーナーが新設された。ビジネスデイには海外から多数の来訪者があるため,世界に向けて情報を発信できるというわけだ。
また,JETROが支援する国際ビジネス相談コーナーでは,通訳完備かつ無料で海外企業とのミーティングができる,ビジネスマッチングサービスも提供されていた。国際ビジネス相談コーナーはビジネスデイのみの開催だったが,10社程度の海外パブリッシャと交渉ができたそうである。
なお,一般公開日はインディーズゲームコーナーへの来場者が多く,国際的なアピールという面ではいま一つだが,国内ユーザーに対するアピールは可能とのこと。
そのほか,東京ゲームショウには海外メーカーが出展しているコーナーがある。これらのブースはあまり人気がなく,ブースに詰めているスタッフにも応対の余裕がある。ブースのスタッフは日本語を喋れる人も多いので,こういったブースを地道に回って情報交換をするのも,海外パートナーを見つけるうえで意外に効果的なのだとか。
中国においては,中堅ゲームメディアである「GM86」で「ベストタワーディフェンス賞」を獲得。中国でも「サムライ」というコンテンツでアワードを獲れることを証明した。また,「Best Windows 8 app」アワードを獲得したことで,アメリカからのダウンロードが増加し,Windows 8版におけるダウンロード比率は,日本とアメリカで半々くらいになったという。
竹内氏は2014年3月に,アメリカで行われたGame Connection America 2014(以下,GCA2014)に参加した。このイベントは,参加企業の合計が数千社にも及ぶ,デベロッパとパブリッシャを対象とした商談会のようなイベントである。
海外のイベントに参加すると相当な費用がかかるが,JETROの支援枠に応募して合格すれば,支援を受けることが可能だと竹内氏はコメント。レポート提出などの義務もあるが,テーブル費用やコーディネーターとの相談が無料になるなど,そのメリットをアピールした。
また,会場ではJETROが支援する日本企業が固まって配置され,パブリッシャに向けて“日本企業のブース群”という雰囲気をかもし出せるのも,有利なポイントだと述べていた。
もちろん,交渉は自分で行わないといけないし,会社資料をはじめ,パブリッシャにアピールするためのパンフレット,チラシ,ポスター類は,英語版のものを用意して持っていく必要がある。
竹内氏は,これらの資料を用意する際は,パブリッシャに自社製品をアピールしに行くのだという意識を強く持つべきだとコメント。例えば,ポスターはA0サイズ以上の大きさが望ましいなど,どういう資材なら訴えかけることができるかを考える必要があると述べていた。
竹内氏が反省点として挙げたのは2点。一つは,GCAが開催された3日間で40社とのミーティングを行ったものの,中には60社以上とのミーティングをした企業もあり,時間を調整する余地がまだあったということ。次回挑戦するときは,もっと多くの企業と面談できるようにしたいと竹内氏は述べていた。
もう一つは,とにかく参加企業が多いため,自社の目的に合致した企業との面談を設定するだけでも時間がかかってしまったこと。資料を見ただけではどんな会社か分からないことが多く,選定するだけでも時間がかかるので,事前調査の必要性を感じたそうである。
竹内氏は,海外展開における短期戦略として,ライセンス提携すべき地域と自社で展開できる地域を判断する必要があると指摘する。
北米や欧州は自社で展開してもかまわないが,中国はライセンス提携すべき地域であるという。中国では公式のGoogle Playストアがなく,無数にあるポータルサイトでアプリが提供されているため,現地パブリッシャとの契約が明らかに合理的だと竹内氏は述べる。
台湾や韓国は,ライセンス企業を見つけるのも,見つけたあとの交渉も大変なので,自社で展開することも視野に入れておくべきだと竹内氏は語った。なお,東南アジアのような「これからの市場」においては,現状では静観を決め込むのも手の一つで,無理にライセンス先を探す必要もないだろうと,自身の見解を述べていた。
竹内氏は補足として,ライセンス提携するかどうかの判断材料には,ユーザーサポート(と言語の問題)も入ってくると述べる。
「サムライ・ディフェンダー」の場合,海外でも定番といえるタワーディフェンスタイプのゲームのため,ユーザーからの問い合わせは,月に1〜2件程度しかないそうだ。この程度であれば,たとえ自分が読めない言語で問い合わせメールが来ても,対応できないことはない。
しかし,問い合わせが多く寄せられそうな内容のゲームでは,自分達だけでは対応しきれなくなるのは目に見えている。そういったケースが予想される場合,グローバル展開をサポートしてくれる企業を間に挟むのも良い選択だと竹内氏は述べ,講演を締めくくった。
持ってるコンテンツを最大限に利活用する
海外展開のススメ
グロザスは,産業革新機構とニフティの官民連携により誕生した企業だ。官民連携企業として中立性が高いのが特徴で,日本のコンテンツを世界市場に届けることを目的としている。
具体的には,現地でのマーケティングやチャンネルの開拓,ローカライズやユーザーサポート,海外展開にあたって必要になる調査や事務的手続きなど,海外展開における“非競争領域”の部分をその業務としている。
とくに注力しているのは,スマートフォンユーザーの増加が著しい東南アジア方面への展開とのこと。東アジアでは日本のアニメやマンガの普及度がとくに高く,もっとも好影響を受けるのはゲーム系コンテンツであろうと,その理由を述べていた。
スマートフォン向けコンテンツがトレンドになっている現在だと,「フィーチャーフォンが強い国ではコンテンツを展開させにくい」という考えに至りやすい。しかし発想を逆転させて,「良質なフィーチャーフォン向けコンテンツを持っているなら,東南アジアで展開すればいい」と考えることもできるわけだ。
もっとも,フィーチャーフォンと言っても,日本がそうであったように,国ごとにハードウェア発展の歴史は異なっている。
インターネットアクセスの機能を持たない端末が主流を占めている地域もあれば,ある程度のインターネットアクセス機能を持つ端末が主力の地域もある。また,超高機能なフィーチャーフォンなどは,普及の段階を踏まずにスマートフォンに移行してしまった地域もあるので,注意が必要だ。
加えて,コンテンツがユーザーの手元に届く最後の通信環境,いわゆる「ラスト・ワンマイル」は,その地域のユーザーがどのようなコンテンツを利用するかに大きく影響する。
そのため,展開する地域におけるモバイルインターネットのインフラ環境を考慮しなければならない。通信環境がある程度整っている地域であれば,ブラウザベースのオンラインゲームなども展開できる可能性があるが,通信環境があまり良好でない地域では,ネイティブアプリでないと事実上展開は難しい。
ちなみに,通信環境が整っていない地域では,アプリのダウンロードはインターネットカフェの無料Wi-Fiスポットなどが利用されることが多いそうだ。
伊藤氏によれば,現在の東南アジア各国における市場傾向は以下のとおり。
タイ:
もともとPCゲームが強い市場で,インターネットカフェ文化が普及している。ユーザーはオンラインゲームに馴染みがある。
インドネシア:
人口が多く可能性があるとしばしば語られる市場だが,通信環境と決済周りの整備が遅れているという印象。
マレーシア:
英語が準公用語として広く使用されており,コアゲーマーが強い。そのため,FPSなどのハードコアなゲームと競合する。
ベトナム:
IT系アウトソーシングが進んでいる地域。ITリテラシーは高いが,回線環境が弱い。
フィリピン:
回線事情が悪いため,インターネットカフェでのゲーム利用が多い状況。インターネット・コンテンツへの関心は全体的に低め。
続けて,タイ,インドネシアと台湾について,詳しい国別の状況が紹介された。
また,世界的な傾向から微妙に遅れているところはあるが,写真アプリが盛り上がっているとのこと。
ちなみに,PCを使ったインターネットチャット文化が根付いており,オンラインゲームは女性プレイヤーが増えると,ゲーム全体の人口も増える傾向にあるらしい。
携帯電話の支払いはプリペイドが基本で,コンテンツの購入もそのプリペイド金額から支払うことになる。そのため,携帯電話のユーザーは課金に対してかなり慎重になる傾向があるそうだ。
現在は,日本でも行われているような,月額固定で特定アプリがダウンロードし放題のサービスがはやり始めているとのこと。ただし通信環境が悪いため,「メンテナンスが必要ない」コンテンツなら問題ないが,運用が必要なコンテンツは厳しいという。
伊藤氏は,インドネシアは人口が多く,Facebookも普及しているため可能性が高いと語られがちな地域だが,人口×通信環境×課金決済環境の積算で可能性を考えるべきだと話していた。
有料アプリではナビアプリなどツール系が上位にランクインしており,ゲーム系は少ない。無料アプリではゲーム系が多くランクインしており,売上では「パズル&ドラゴンズ」に似た「神魔の塔」が大ブレイクしている。
なお,Facebookが非常に流行しているので日本と似たような広告戦略も可能だが,広告単価は高い。ARPPUも日本とそこまで劇的な違いはなく,日本に似た市場ではあるが,理想郷を求めると肩透かしをくらうとのこと。
加えて,タイ,インドネシア,ベトナムなどで拡大してきた“中間層”にも注目とのこと。このグループは,スマートフォンは持っているが英語はほとんど読めないというのが特徴だ。
国際展開されているスマートフォンアプリの多くは,英語をはじめとする主要言語でのみローカライズされることが多いため,この中間層にリーチできていないともいえる。現地の言語にローカライズし,中間層の人達が便利に感じるコンテンツを提供できれば,そこが“ブルー・オーシャン”(競争のない未開拓市場)となる可能性があると伊藤氏はコメント。
伊藤氏は,現地の消費者が言語のハードルを越えてまで遊びたいかどうか,展開する際は見極めが必要だと話していた。つまり,ユーザーに寄り添ったほうが良い(あるいは寄り添うことで成立している)コンテンツであれば,ローカライズが必須と言えるだろう。
海外市場で成功するためには,現地を意識せず日本での運用・マーケティング実績を再現することが,実はもっとも効率的なのだと伊藤氏は主張。
海外展開でよくあるパターンは,「現地に合わせた(とサービス側が考えている)“新しい”施策」を「傾向がはっきり見えているとは言えない市場」にぶつけて,どこに課題があるのかが分からなくなってしまうケースだ。
伊藤氏は,未知数の市場に未知数の施策を行っても最適な答えは絶対に出ないと述べる。日本での運用データを活かした施策を行うことで“未知数”の片方を確定し,課題部分を「予測不能な市場動向」に絞ることで,改善もしくは現地に最適化する施策が打ちやすくなるというわけだ。
グロザスでは,国内配信と同程度の負荷で配信が行えるようなシステムを用意していると伊藤氏は説明。ローカライズをはじめ,営業・プロモーション費用などの金銭的リスクはグロザスが負担するので,海外市場に進出しようとする企業はぜひ利用してほしいと述べ,講演を締めくくった。
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