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同時接続4200万人,成功タイトルはほぼ倍増。Valveが考える,プラットフォームのあるべき姿[GDC 2026]
登壇したのは,コミュニケーション担当のKaci Aitchison Boyle氏と,デベロッパ向けビジネス担当のTom Giardino氏の2名。Steamの最新データや改善事例,そしてデベロッパへの具体的なアドバイスが語られた講演の内容をお伝えする。
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講演の冒頭では,Steamの成長を示す数字が次々と紹介された。
Steamクライアント起動状態でのピーク時同時接続ユーザー数は,直近で4200万人を突破。ゲームを実際にプレイしているユーザーに限っても,同時接続で1390万人という記録を達成している。
いずれも2020年ごろと比べて約2倍の規模であり,Steamが成長を続けていることを物語る数字だ。
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成長の要因の一つが,グローバル市場の拡大である。
Giardino氏が示した世界地図には,従来の主要市場であった北米や西欧に加えて,インド,日本,インドネシア,ブラジル,ペルーといった地域が大きな存在感を示していた。10年前にはPCゲーム市場としてさほど注目されていなかったこれらの国々が,いまやSteamの成長を牽引しているわけだ。
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そしてユーザー数の増加は,デベロッパにとっても朗報となっている。
年間10万ドル(約1500万円)以上の収益を上げるタイトル数は,2020年の約3000本から2025年には約5800本へとほぼ倍増。50万ドルや100万ドルといった閾値で見ても,同様の傾向が確認できるという。
つまり,ゲームの数が増えてパイの奪い合いになるのではなく,ユーザー増加に伴ってパイそのものが大きくなっているのだ。
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ここでGiardino氏は,Valveの立ち位置について言及した。
Valveは非公開企業であり,外部の投資家を持たない。したがって四半期ごとの決算発表に追われることもなければ,株価を意識した短期的な施策に走る必要もない。広告主の存在もゼロだ。
Boyle氏はこの点について「私たちが応えるべき相手は,デベロッパとプレイヤーだけ。それ以外の誰でもありません」と明確に語っていた。
この構造が,Steamにおける意思決定に大きく影響している。フロントページの枠を広告費で売ったり,担当者の好みでキュレーションしたりといった選択肢を排除できるのは,長期的な視点でプラットフォームの健全性を優先できるからこそだろう。
一見すると理想論に聞こえるかもしれないが,後述する具体的な施策を見れば,その言葉が実態を伴っていることが分かる。
講演の中盤では,課題解決のアプローチとして2つの事例が詳しく解説された。
1つ目は,ユーザーレビュースコアの言語別表示機能の追加だ。
問題の発端は,デベロッパからの報告だった。特定地域でのみ発生するサーバー接続の問題や,特定言語のローカライズの不備によって一部ユーザーがつけた低評価が,問題の影響を受けないほかの90%のユーザー向けのスコアまで引き下げてしまう――そんな状況が生まれていたのだ。
対処法としては「レビューの削除」「非表示」「サムズアップ/ダウンだけにする」など,より手軽な選択肢もあったとBoyle氏は認める。しかしValveが選んだのは,レビューを言語ごとに分類して表示するという方法だった。
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プレイヤーはデフォルトで自分の言語のスコアを確認しつつ,他言語の状況にもアクセスできる。情報の透明性を損なわずに,局所的な問題の影響をコントロールする手法として機能しているという。
2つ目の事例は,デイリーディール(日替わりセール)の大幅リニューアルだ。
従来のデイリーディールは枠が限られており,恩恵を受けられるタイトルに偏りがあった。かといって,枠をお金で買える仕組みや,Valve側が人力でキュレーションする方式は,「適切なゲームを適切なプレイヤーに届ける」という根本の目的からはずれてしまう。
そこでValveは,セール枠を1日6枠に拡大すると同時に,パーソナライズ表示を大幅に強化した。
プレイヤーの使用言語,フレンドのプレイ状況,フォロー中のデベロッパなどに基づいて表示内容が最適化され,自分が見るデイリーディールとほかの人が見るそれは異なるものになる。
さらに,デベロッパがSteamworks内のカレンダーから直接セール枠を予約できるセルフサービス機能も実装された。
結果は劇的だったという。2025年にデイリーディールに登場したタイトルは1500本で,そのうち69%は初参加。デイリーディール経由のデベロッパの収益は前年比274%増,購入ユーザー数も125%増の820万人に達した。
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パーソナライズという仕組みによって,「枠を増やしても薄まらない」どころか,全体の価値が押し上げられた格好だ。
講演の後半では,デベロッパが短期・中期的に取り組むべき具体的なアドバイスが共有された。
まずコントローラ対応について。
2025年,Steam上でゲームパッドを用いたプレイセッションは約50億回に達している。Steam DeckやXboxコントローラ,PlayStationのDualSenseなど,PCゲームにおけるコントローラの利用は開発者が想像する以上に多い。
「アーリーアクセスのあとで対応すればいい」ではなく,デモ段階からSteam Input APIを活用した対応を行うべきだとGiardino氏は強調した。
Steam Cloudの有効化も重要だ。アクティブユーザーの50%以上が複数デバイスでプレイしており,PCでプレイした続きをSteam Deckで遊ぶといった使い方は珍しくない。
セーブデータのディレクトリを指定するだけで機能する「Auto Cloud」があるので,デモの段階からでも導入しておくとユーザー体験が大きく改善される。
Giardino氏自身も,Steam Next Festでデモを試した際にクラウドセーブ非対応で離脱した経験を語り,小さな品質向上が定着率に直結することを実感として伝えていた。
ローカライズについては,全プレイヤーの3分の2が英語以外の言語でSteamを利用しているというデータが示された。どの言語を優先すべきか迷った場合は,ウィッシュリスト登録者の居住地域データを参考にするのが有効とのことだ。
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リリース前のプレイテストも繰り返し推奨された。Steam Playtest機能などを活用して,ローンチの数か月前からさまざまなプラットフォームで検証を重ねることで,リリース時のリスクを大幅に減らせるという。
最後に挙げられたのが,クリエイター(デベロッパ/パブリッシャ)ホームページの構築である。GDC直前にカスタマイズ機能が大幅にアップデートされ,ゲームとの紐付けが容易になった。
ホームページをフォローしたユーザーには新作発表時やリリース時に自動で通知が届くため,「開設のベストタイミングは昨日。次にいいのは今日です」とGiardino氏は笑いを交えて語っていた。
講演を締めくくるにあたり,Giardino氏は「Steamは常にフィードバックを受けて改善を続けるアーリーアクセスゲームのようなもの」と表現した。
完成形ではなく,デベロッパやプレイヤーの声を聞きながら長期的に進化させていく――その姿勢こそが,Valveのいう「長期的な幸福度へのフォーカス」の具体的な形なのだろう。
レビューの言語別分類にせよ,デイリーディールのパーソナライズにせよ,安易な解決策を退けて本質的な課題に向き合う姿勢は,規模の大きさに関わらず多くの開発者にとって示唆に富むものだったのではないだろうか。
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