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「バイオハザード」はもうすぐ30周年! 1996年に誕生したシリーズ第1作がゲームシーンにもたらしたもの
一般的なTPSとは異なる肩越しの視点を採用し,同時にアクションの気持ちよさを詰め込んで新境地を開いた「バイオハザード4」。ナンバリング作品としては初めてアイソレートビュー(一人称視点)を取り入れ,原点回帰の「恐怖」を描いた「バイオハザード7」。とりわけ,この両作品は象徴的な存在だろう。
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「バイオハザード」シリーズの変遷を目撃し続けてきたゲーマーであれば,確固たる地位を確立しながらも,攻めの姿勢を続けてきたことをご存じのはずだ。
今やゲーマーの共通言語といえるほどに成長した「バイオハザード」だが,すべての始まりは1996年に発売されたPlayStation用ソフト「バイオハザード」である。
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あれから30年。シリーズファンといえども,初代「バイオハザード」をプレイしたことがない人は多いだろう。若年層であればなおさらだ。リアルタイムでプレイした人でも,当時の記憶が薄れているのは仕方がない。
本稿では,「バイオハザード」30周年を迎えるにあたり,シリーズの原点である初代「バイオハザード」にスポットを当てて,作品の魅力やゲームシーンに与えた影響を振り返ってみたい。
なお,筆者は初代「バイオハザード」をリアルタイムでプレイしていたアラフォー世代であり,当時の思い出をフレーバー程度に挟んでいくことを許してほしい。同世代以上のゲーマーに共感してもらえたら幸いだ。
※初代「バイオハザード」のスクリーンショットは,PS5版「バイオハザード ディレクターズカット」のものです
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3Dゲームが徐々に浸透してきた1996年
「バイオハザード」は静かに誕生した
まずは基本的な情報を整理しておこう。
前述のとおり,初代「バイオハザード」はカプコンから1996年に発売された。ディレクターを務めた三上真司氏は,以降も初期の「バイオハザード」シリーズに携わり,2010年にはTango Gameworksを設立(現在は退職)。同社は「サイコブレイク」シリーズや「Ghostwire: Tokyo」を世に送り出している。
1996年といえば,家庭用ゲーム機に3DCGを用いたタイトルが多く出始めていた頃だ。とくにPlayStationは3D表現を得意としていたため,「リッジレーサー」「キングスフィールド」といったタイトルが人気を博していた。
ただ,「バイオハザード」のように3D空間を探索しながら敵と戦い,弾薬や回復アイテムなどのリソースを管理しながら,生き延びることを目的とした「サバイバルホラーゲーム」はまだ一般的とはいえなかった。「アローン・イン・ザ・ダーク」(1992年)や「ドクターハウザー」(1994年)といった先駆者は存在したが,ジャンルとして市民権を得て,ゲーム業界に波及したきっかけは「バイオハザード」の成功が大きかった。
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とはいえ,「バイオハザード」も最初から大きな期待を持って受け入れられたわけではない。初動に関しては大ヒットと呼べるほどではなく,そこから口コミで広がり,徐々にセールスを伸ばしていき,最終的に国内100万本を超えるミリオンセラーになっている。
では,なぜ「バイオハザード」がこれほどの支持に得るに至ったのか。その理由を探っていこう。
ミリオンセラー達成の背景
「バイオハザード」がミリオンセラーを達成した理由はいくつかあるだろうが,中でもホラー映画を彷彿させるカメラワークや演出,そしてゾンビをはじめとする多種多様なクリーチャーの存在が大きかったと思う。
今でこそゾンビが登場するゲームは珍しくないが,当時のゾンビといえば,「ドーン・オブ・ザ・デッド」に代表されるホラー映画の怪物という認識を持っていた人が多かっただろう。以前にもゾンビが登場するゲームはあったが,「バイオハザード」ほどゾンビをフィーチャー作品は珍しい部類だった。
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うめき声を上げながらゆっくりと近づいてくるゾンビは,銃で撃っても1発や2発じゃ倒れない。倒したと思って油断していたら,急に動き出して足に噛みつかれる。クローゼットの中から突然飛び出してくるジャンプスケアを用いた演出もあり,「バイオハザード」はゾンビの怖さをイヤというほどプレイヤーに教えてくる。
とくにビデオゲームは自分の意思でゾンビに立ち向かっていかなければならないため,映画とは異なるゾンビとの向き合い方がある。
「バイオハザード」をプレイしたとき,ディスプレイの前で思わず叫んでしまった人は少なくないだろう。「バイオハザード」の登場により,ゲームシーンにおけるゾンビの知名度は格段に上がったといっていい。
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映画を意識したカメラワークも,恐怖の増幅に一役買っている。初代「バイオハザード」は定点カメラの視点を採用しているが,角度によっては進行方向の見通しが悪い場合がある。「このまま進んでいいのか」「ゾンビが潜んでいないか」という不安に駆られ,それが恐怖へとつながる。
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もちろん脅威はゾンビだけではない。窓ガラスを突き破って襲いかかってくるケルベロス,俊敏な動きで翻弄してゲーマーをパニックに陥らせるハンターなど,枚挙にいとまがない。
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クリーチャーのほかにも恐怖を感じる瞬間がある。別のエリアに移動するとき,一人称視点でゆっくりとドアに近づき,ノブを回して扉を開ける。その瞬間,なぜか不安を駆り立てられる。とくに初めてプレイしたときには,今でも思い出せるほどに緊張した。
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実はこれ,CD-ROMのロード時間を逆手に取った演出であることは有名な話だ。こうしたところでも,「いかにしてプレイヤーに恐怖を感じてもらうか」という開発スタッフの熱意が伝わってくる。
なお,グラフィックスに目を向けると,当然ながら現行機の表現とは比べものにならない。ただ,近年のインディーゲームシーンではローポリゴンを用いたホラー作品――「バイオハザード」や「サイレントヒル」をリスペクトしたと思われる――が台頭していることを踏まえると,当時のチープなグラフィックスだからこその不気味さも,恐怖を表現するうえでは有効な手段だったのだろう。
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不自由さが独特の緊張感につながった
一人称視点や三人称視点での操作が馴染んで久しい「バイオハザード」シリーズだが,初期の作品では定点カメラ,いわゆるラジコン操作を採用していた。これはなかなかクセがあり,とくに初代「バイオハザード」はお世辞にも操作しやすいものではなかった。慣れればうまく動かせるようになるが,序盤のうちは壁に向かって走り続けたり,近くにあるアイテムを全然取れなかったりと苦労した記憶がある。
ただ,その不自由さが焦りを誘発し,恐怖と緊張感につながっている。一見するとデメリットでしかないが,ことホラーゲームにおいては操作性の難点が良い方向に作用したというわけだ。
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若いゲーマーに手放しではオススメできないが,当時を知るという意味であれば,一度プレイしてみるのも面白いだろう。かえって新鮮に映るかもしれない。
「バイオハザード ディレクターズカット」はPC版(GOG.com)とPS5/PS4版(PlayStation Store)が配信中。後者はPlayStation Plusのクラシックスカタログにも収録されている。
初期の貴重なアイテム「インクリボン」
昨今のゲームではデータセーブの回数に制限があることは珍しいと思うが,初代「バイオハザード」はインクリボンと呼ばれるアイテムが必要だった。セーブをするのにもアイテムの管理を求められるスパルタ仕様だ。
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筆者の記憶ではインクリボンはそこそこの数が手に入り,セーブができなくて困ったことはほとんどなかった。ただし,それはあくまで一例であり,インクリボンの不足を意識したプレイヤーもいたはずだ。セーブ回数の制限によって計画性が求められ,それがゲームの戦略性に結びついている。現在ではあまり見られないゲームデザインだが,時代を感じさせる要素といえるだろう。
今もなお世界中で愛されるキャラクター
初代「バイオハザード」には,現在も根強い人気を誇るクリスやジル,ウェスカー,レベッカ,バリーといったキャラクターが登場している。
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クリスといえば,今でこそ筋骨隆々な体格として知られているが,初代「バイオハザード」では初々しさすら感じさせる。当時はまだ25歳だが,特殊部隊S.T.A.R.S.の一員として活躍しており,正義感の強い好青年だった。
一方のジルも初代から一貫して,正義感の強いキャラクターだ。さらに仲間を思いやる優しさと高い戦闘能力を備え,魅力的なキャラクターとして描かれている。
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初代「バイオハザード」では,最初にプレイヤーキャラクターをクリスとジルのうち,どちらかを選択するが,前者がハードモード,後者がイージーモードの位置付けになっている。
クリスは体力こそ多いが,アイテム所持数が6個まで。一方,ジルは体力に劣るものの,アイテム所持数は8個まで。クリスより多く設定されているため,リソース管理がしやすい。また,ジルのピンチにはバリーが助けてくれるなど,だいぶ攻略しやすくなっている。
そのほか,クリス編ではレベッカ,ジル編ではバリーがパートナーとして登場するため,両方のキャラクターをクリアしないと事件の全貌が見えないつくりになっていた。
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初代「バイオハザード」は,数時間でクリアできるコンパクトなボリュームだ。前述のとおり,プレイヤーキャラクターによってストーリーが異なり,さらに短時間のクリアによるボーナスアイテムといった特典もあり,周回プレイの動機が用意されていた。
なお,初代「バイオハザード」ではオープニングとエンディングに実写ムービーを採用し,クリスやジルら主要なキャラクターを海外の俳優が演じている。もちろん,ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のハリウッド映画シリーズよりも前の話だ。
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とても味わい深い実写ムービーだが,どうやら撮影は多摩川の河川敷で行われたようだ。当時はアメリカで撮影されたものとばかり思っていたので,後年に事実を知ってたいへん驚いた。
今となってはシュールな映像ではあるが,まったく新しいIPの限られた予算の中でスタッフのアイデアや細かな工夫が詰め込まれている。そう考えると,「バイオハザード」にもこんな時代があったのか……と感慨深い。
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あの衝撃は忘れられない
1996年当時,初代「バイオハザード」のようなスタイルのゲームはまだ珍しかった。筆者も発売前から注目していたわけではなく,友人の家でプレイしてその魅力にハマってしまった。
初めてプレイしたときは操作に馴染めず,リソース管理もままならない。自分にクリアできるとは思えなかった。しかし,徐々に操作に慣れ,リソース管理のコツが分かってくると,一気にその面白さに引き込まれたのだ。キャラクターボイスが英語音声のみだったことも,当時はまるで洋画を観ているような感覚があり,新鮮に映った。
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30年が経った今でも,やはり「バイオハザード」を初めて体験したときの衝撃は忘れられない。操作性にクセがあったり,ユーザーフレンドリーとは言い難い部分も少なくなかったりするが,こうした尖りも含めて初代ならではの魅力だと感じている。
初代の物語を楽しむのであれば,リメイク版にあたる「バイオハザード HDリマスター」が断然おすすめだ。ただ,本稿をきっかけにシリーズの原点を思い出して(または知って)もらえたのであれば幸いだ。
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- ライター:御簾納直彦
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(C)CAPCOM CO., LTD. 1996, 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
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