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Nintendo Switch用の作曲ソフト「KORG Gadget」開発者にインタビュー。簡単に作曲を楽しめるうえ,対戦や共闘も可能なDAWとは
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印刷2018/05/17 12:00

インタビュー

Nintendo Switch用の作曲ソフト「KORG Gadget」開発者にインタビュー。簡単に作曲を楽しめるうえ,対戦や共闘も可能なDAWとは

 DETUNEは2018年4月26日,Nintendo Switch用ダウンロードソフト「KORG Gadget for Nintendo Switch」を発売した。価格は5000円(税込)。

KORG Gadget for Nintendo Switch

 本作のベースとなった「KORG Gadget」は,“ガジェット”と呼ばれる仮想のシンセサイザーやドラムマシンを組み合わせて,手軽に作曲を行えるiOS向けのDAW(音楽制作ソフト)だ。2017年3月にはMac向けに拡張版の「KORG Gadget for Mac」も発売され,より本格的な作曲も可能となったうえ,CubaseやLogicなどのDAWからガジェットをインストゥルメント(音源)として扱えるようにもなった。

 こうして“手軽な作曲”も“本格的な作曲”もカバーしたKORG Gadgetが,改めてNintendo Switchでリリースされる理由はどういったところにあるのか。DETUNE代表取締役の佐野電磁(佐野信義)氏やコルグの関係者,開発者に詳細を聞いた。

左から佐野電磁氏,加藤智幸氏,中島 啓氏,鈴木秀典氏
KORG Gadget for Nintendo Switch

4Gamer
 本日はよろしくお願いいたします。

佐野電磁氏(以下,佐野)
 よろしくお願いします! DETUNEの佐野でございます。「KORG Gadget for Nintendo Switch」には,プロデューサー兼ディレクターのような形で関わっています。楽しさをどう伝えるか,というところに注力して動いておりまして,最近は動画制作や漫画などのプロモーション活動を積極的に行っています。

加藤智幸氏(以下,加藤)
 コルグ・ソフトウェア開発チームの加藤と申します。仕様の細かいところを策定したり,実際にコードを書いておりました。また,一部グラフィックも担当しています。

中島 啓氏(以下,中島)
 同じくコルグの中島です。アプリチームのマネージャーをやっております。今回のNintendo Switch版を作るにあたり,佐野さんと最初にコンタクトを取らせていただきました。

鈴木秀典氏(以下,鈴木)
 システム全般のプログラムを担当した鈴木です。「KORG DS-10」「KORG M01」など,これまでのDETUNE関連タイトルのプログラムを担当してきました。もともとはスクウェア(現スクウェア・エニックス)やプロキオン・スタジオで,サウンドプログラムやオーサリングツール周りをやっておりましたが,今はフリーのプログラマーです。

4Gamer
 今回のNintendo Switch版を開発するにあたっては,中島さんから話が持ち上がったという形でしょうか?

中島
 いえ,どちらともなくと言うか。DETUNEさんとは定期的にミーティングを行っているのですが,確か1年半ほど前に「任天堂の新しいハードで何か作れないか」というお話をさせていただきました。

佐野
 コルグさんとの協業のきっかけはKORG DS-10なので,もう10年来の付き合いになりますが,半年に一度は“面白いことがないか”の情報交換をさせていただいているんです。初めてのコンタクトは,「ニンテンドーDSを開いたときの見た目がシンセサイザーに似ているのでは?」と思って,ダメ元で連絡をしてみたことでした。あの時は,今からするとあり得ないくらい弱腰なメールを送ったのを覚えています。

(一同笑)

中島
 そういった流れもあって,「任天堂の新ハードでKORG Gadgetを出してみよう!」となり,実際に開発を始めたのが確か去年の7月でしたね。

佐野
 最初はM3(音楽・映像メディアの同人即売会)に出展したんです。10月末のM3-2017秋だったので(関連記事),3か月程度で遊べる状態にしました。そのころから4人同時プレイやJoy-ConのHD振動など,製品版でフィーチャーしている要素の大半は入っていましたね。

KORG Gadget for Nintendo Switch KORG Gadget for Nintendo Switch

4Gamer
 3か月というのはかなり駆け足な開発スピードという気がするのですが,ほかの製品もこのような開発スケジュールなのでしょうか。

加藤
 いえ……。

鈴木
 ちょっとあり得ないスケジュールでしたね。出展する1週間前までは画面が映ってませんでしたから。

佐野
 でも「人前に出す!」ってなるとこう,盛り上がるじゃないですか。〆切があると作業が進むというか!

(一同笑)

佐野
 で,とくに告知なしで展示をしてみたのですが,我々の予想以上に情報が広がりました。海外の方も多く見ていただいていたようで,ポジティブなフィードバックが多かったです。

中島
 はい,日本語のツイートでも海外でリツイートが回るなど,なかなかの反響で,「これはちゃんとやらないとな……」と思いました。


世界初の「対戦型DAW」になった理由とは


4Gamer
 今回はメインのコンセプトとして「対戦型DAW」というのを強く意識されていると思います。この発想にいたった経緯などを教えてください。

本作は画面分割での4人プレイに対応しており,DAWとしては異例なことに,1つの曲を4人が同時に編集できる。他プレイヤーの書いたノートでも自由に消したり上書きしたりできる様子が,さながら対戦ということで,世界初の「対戦型DAW」と謳われている
KORG Gadget for Nintendo Switch

佐野
 皆で話してるうちに決まっていったような感覚ですね。まずは「KORG Gadgetを移植しよう」という話ありきで,次第に「ゲーム機だし共同プレイができても良いんじゃないか」という話が出たりして。

4Gamer
 「4人で遊んでもらおう」というコンセプトから出発したわけではないのですか。

佐野
 そうですね。「楽しそうだからやってみよう!」という感じで,本当にやってみたら楽しかった。昔DS-10を作ったとき,DS本体からシンセサイザーの音が鳴ったのに本当に感動したんです。それを持って会社内を練り歩くくらい。その時の鳥肌が立つような面白さを,4人対戦を実装した時に感じたんですよ。この機能を盛り込むことで顧客の満足度がどうこう,ということではなくて,自分達で遊んで「楽しい!」って思ったものを,とにかく実装した感じです。

4Gamer
 企画書ありきで承認ありきというよりは,自分達の楽しいものをどんどん実装していったという感じですね。これだけ聞くと,なんとなくインディーズっぽい作り方というか。

佐野
 どインディーズですよ! こういう新しいハードって,話してるうちに「あれも面白そう」「これも面白そう」って話が膨らみますから。むしろ,広げた風呂敷を畳むのに苦労しました。

中島
 コルグ的には,もちろん社内的なあれこれはきちんと通してますけどね。

(一同笑)

KORG Gadget for Nintendo Switch

4Gamer
 4人対戦プレイに関して,ユーザーの方にはどういう遊び方をしてほしいと思っているのでしょうか?

佐野
 実は,そこも全く想定していません。自由に遊んでいただきたいなと思っています。

加藤
 私も同感です。予想外のものが飛び出た方が面白いですし。

佐野
 こちらで用意するものは用意したので,サンドボックスとして捉えてほしいかな,と。自由な発想で自由に遊んでいただけるのが,一番嬉しいです。

加藤
 4人の音楽性が違うほどバトルになります。

4Gamer
 複数人のプレイでは,アンドゥできない破壊編集なわけですよね。

佐野
 そうですね。一度消したら取り返しがつかない。対戦型DAWは人生そのものです。

鈴木
 少しだけ技術的なことを言うと,対戦型DAWということで相手のノートを消せるのですが,やろうと思えばトラックそのものを消すこともできるんです。これに関して予期しないバグが多くて。かなりしっかりデバッグしていますから,どうぞお好きなように楽しんでいただければと思います。

4Gamer
 トラックごと消せるんですか! そうなると内部的には,山ほどnullが返ってくるみたいな感じでしょうか。

鈴木
 まさにそれです(笑)。また,4画面分割は描画の処理量が4倍になるので,なかなか実装が難しかったですね。時間がなかったので当初はコスト優先で作っていたのですが,結果的には速度優先の泥臭いプログラムになりました。


Joy-Conならではの触覚フィードバックとモーション演奏


4Gamer
 KORG Gadget自体はiOS版から定番アプリとして人気ですが,今回のSwitch版にあたって特別な工夫などはありますでしょうか。

加藤
 UI的にはいろいろなところが変わっています。iOS版はタッチ操作が前提ですが,Switch版は一部しかタッチ操作に対応していません。TVモードで遊ぶ場合はドックに収納してしまうため,タッチができないからです。そのためJoy-Conでの操作に最適化しています。

佐野
 複数人で遊ぶときはTVモードですから。今回は1人で遊ぶのはもちろんですが,複数人で遊ぶのも推奨しているので,タッチ操作の多くは割愛しました。

4Gamer
 入力デバイスとした見た時のJoy-Conの使い勝手はいかがですか?

佐野
 非常に良いですね! 例えば今作ではJoy-Conを傾けることでシンセサイザーのノブを操作することができるのですが,振動もあいまって,すごく良い操作感になっていると思います。

KORG Gadget for Nintendo Switch
加藤
 ノブを回した時のザリザリした抵抗感を出そうと思っていろいろと試したのですが,最終的には机にiPadを置いて引きずってみたときの音からHD振動データを生成して使っています。

佐野
 触覚フィードバックがあるだけでかなり感動したんです。「これは面白いぞ!」と。

加藤
 ほかにJoy-Conで可能なのは,ジャイロを使って指定したスケールを演奏するモーション演奏機能。それと,ボタンを音階に当てはめてのリアルタイム演奏も可能です。Joy-Conを使いこなせたら,Mac版でマウスを使うより打ち込みが早いかも知れません。

中島
 コントローラー演奏でこそ出てくる音楽もあるのかなという気がしているので,ユーザーの方がどう使うのかを楽しみにしています。


収録音源はiOS版に初期搭載されていた15種類 + Kamata


4Gamer
 音源について,もとのKORG Gadgetには有料追加コンテンツを含め,かなりの数のガジェットが存在しますが,本作の音源はどういった意図でチョイスされたのでしょうか。

iOS版のガジェット。最初期のプリインストールは15種類で,それ以外にアプリ内で購入するものや,バージョンアップにあたって実装されたもの,コルグ製の他アプリを購入すると追加されるものがある
KORG Gadget for Nintendo Switch
中島
 Nintendo Switch版は16種類の音源を収録していますが,うち15種類はiOS版のリリース当時にプリインストールされていたものと同様です。シンセサイザーもあればリズムマシンもあって,「音楽を作ろう」と思ったらすぐ着手できる,最適なパッケージです。

加藤
 実装に際して,実現可能性が高かったという理由もあります。プリインストールのものはパラメータがシンプルに絞り込まれていて,各ガジェットの作りが似ているので,素早く実装できました。

4Gamer
 それに加えて,バンダイナムコスタジオとコラボした波形メモリ音源のガジェット“Kamata”も,iOS/Mac版では有料追加コンテンツだったのに標準搭載となっていますね。特殊なガジェットかと思うのですが,Nintendo Switch版にも問題なく移植できたのでしょうか。

佐野
 ほかの音源とフォーマットが違うので,実装には苦労した部分もありましたが,何とかこうしてお披露目できました。Nintendo Switch版でのKamata実装は,ユーザーからの要望が非常に多かったんです。M3でも,いろいろな方から「Kamataは入りますよね!?」といったコメントをいただきました。

Kamata。「マッピー」や「ドルアーガの塔」などに用いられた旧ナムコの波形メモリ音源“C30”を再現したガジェットだ
KORG Gadget for Nintendo Switch KORG Gadget for Nintendo Switch

4Gamer
 ちなみに,皆さんのお気に入りのおすすめ音源はありますか?

加藤
 うーん,おすすめとなると難しいですね。どれも違った方向に特徴的なので。

佐野
 どれかと言うのは難しいですけど,子供達にはKingstonが人気ですね。「わー,ファミコンの音がする!」って。小学生がどうしてファミコンを知っているのか不思議だったんですが,どうやら親が8bitを語り継いでいるらしいです。

8bitゲームのサウンドに特化したポリフォニック・シンセガジェットのKingston。プリセットの音色には,“CHIPTUNE”や“RPG FLUTE”,“Arcade Bass”など,いかにもな名前が付けられている
KORG Gadget for Nintendo Switch KORG Gadget for Nintendo Switch


今後のアップデート予定と将来への展望


KORG Gadget for Nintendo Switch
4Gamer
 今後のアップデート予定などを教えて下さい。Joy-Conでの操作に加え,さらにNintendo Switchならではの要素が追加されることはあるのでしょうか。

佐野
 細かいバグフィックスなどは行いますが,現状はまず,この状態でどこまで広がるかを試してみたいと思っています。音楽制作している状況を他人に見られるのって,今まではなかったと思うんです。あとは,ざっくり言うとeスポーツにしたいですね。

4Gamer
 eスポーツですか……?

佐野
 あ,いや,今のは本当に言っただけなんですけど,でも“作曲で戦う”みたいなことができないかなと思っています。作曲をeスポーツにするなら,一番適したアプリケーションじゃないかなぁと。

4Gamer
 なるほど。4人 vs.4人のチーム戦で,ランダムガジェットをonにした時間制限モードでの作曲をしてもらう,みたいな形でしょうか。

0.5〜10分での作曲に挑む,時間制限モード。ランダムガジェットをオンにすれば,音源が自動でセットされる。ランダムガジェットは,音源選びに悩んだときにも便利だ
KORG Gadget for Nintendo Switch KORG Gadget for Nintendo Switch

佐野
 良いかも知れませんね! 審査員がいたりとか,あとは実況・解説がいても良い。「ここで拍頭にキックを!」みたいな(笑)。どちらにしても,作曲って「ハードルが高い」というイメージがあると思うんです。そうじゃないのもあるんだよっていうことをお伝えできる手段になればと思っています。

中島
 KORG Gadget自体,「作曲のハードルを下げる」というコンセプトがあったので,Nintendo Switch版も同じ視点で作っていますね。

4Gamer
 今後ガジェットの追加などはあるのでしょうか。

佐野
 もちろん検討はしていますが,まずは今の状態でたくさん遊んでいただきたいと思っています。

4Gamer
 コンセプトとはズレるかも知れませんが,例えば外部MIDI機器の接続や,オーディオ出力などのご予定はあるのでしょうか。

佐野
 まずオーディオ出力ですが,現状ではPHONE OUT(ヘッドホンマイク端子)から出すか,またはUSB-AudioかHDMI経由です。サウンドファイル出力は条件が整えばもちろん対応したいです。また,外部コントローラについても同様で,まさに条件次第というところですが,まずは「Joy-Conならではのユーザーさんの音楽」というものをぜひ堪能したいです。

4Gamer
 ちなみにKORG M01やKamataのリリース時に公式コンペが行われていましたが,今回そういったイベントはないのでしょうか。

佐野
 今のところ具体的な予定はありませんが,今はSNSなどで一般の方による発信が容易になっているので,まずは皆さんのプレイを楽しみたいです。その後,ユーザーの方からフィードバックを得ながら考えていきたいと思っています。

KORG Gadget for Nintendo Switch

4Gamer
 本作を用いた小学校での作曲体験会などもありましたが,教育方面での活用も考えているのでしょうか?

佐野
 ぜひ,やって行きたいと思っています。コンピューターが楽しいのは,「誰が命令してもその通り動いてくれる」というところ。子供の言うことを大人は聞いてくれませんが,コンピューターなら聞いてくれる。KORG Gadget for Nintendo Switchは,そんなコンピューターの根源的な面白さも体験できますし,4人同時で曲を作るというのは,共同作業の体験として最適だと思っています。教育現場も確実に世代交代していて,ゲーム機にアレルギーのある方も減ってきているので,何らかの形で実現したいです。ご興味のある教育関係者の皆さま,ぜひご連絡を!

4Gamer
 ありがとうございます。最後に,佐野さんからプレイヤーへのメッセージをいただければと思います。

佐野
 多くの方々に遊んでいただきたいと思っています。そしてぜひ,Joy-Conのキャプチャボタンで保存した30秒動画をSwitchから直接,SNSにバンバン投稿してください! 完璧じゃなくても良いんです。4人で「ワー!」って遊んで,「なんだこれー! 取りあえずアップしよう!!」でもぜんぜん大丈夫です。むしろそういうものがたくさん出てくると面白いと思っています。実際,僕はTwitterハッシュタグ#GadgetSwitchで投稿動画を四六時中見ていて,楽しませてもらっています。
 あとは,公式サイトで連載しているKORG Gadget for Nintendo Switch紹介マンガ「スーパー作曲ボーイ ガジェ太」を,よろしくお願いします!(笑)

4Gamer
 ありがとうございました。

「M3 2018-春」や「東京ゲームタクト2018」で配布された冊子版「スーパー作曲ボーイ ガジェ太」を持つ佐野氏
KORG Gadget for Nintendo Switch

「KORG Gadget for Nintendo Switch」公式サイト

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