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日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
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印刷2018/11/09 16:37

インタビュー

日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく

画像(001)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
 「ネットマーブルジャパン」という会社を知っているだろうか。最近だと「妖怪ウォッチ メダルウォーズ」「THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR」などが目を引くが,ほかにも「リネージュ2 レボリューション」「セブンナイツ」など,スマホでスマッシュヒットを次々と飛ばしているゲーム会社だ。古くからの読者であれば「CJインターネットジャパンが社名変更した」と伝えるのがもっとも分かりやすいだろうか。
 若い読者だと,リネージュやKOFのIPを運営しているというイメージから,なんとなく「ちょっと大きい会社」くらいに思うかもしれないが,実際はずいぶんと違う。

 ネットマーブルジャパンの親会社である韓国のNetmarble Corp.(以下,ネットマーブル)は,App StoreとGoogle Playを足した,2017年のワールドワイド収益ランキングでTencent,NetEase Gamesに次ぐ世界第3位で,Google Play単体で見れば世界1位の収益をあげている()。「ちょっと大きい」どころではない超巨大企業なのだ。

※App Annie提供によるデータを集計したもので,子会社を含むランキングとなっている。

 そんなネットマーブルの日本法人であるネットマーブルジャパンが,今年の3月1日から「共同代表制」というちょっと珍しい制度を採用し,さらなる躍進に向けての第一歩を踏み出した。どのように会社が動いていて,どこを目指しているのか,ネットマーブルジャパン代表の遠藤祐二氏と話す機会を得たので,ちょっと聞いてみよう。

ネットマーブルジャパン公式サイト


ネットマーブルジャパン代表 遠藤祐二氏。インタビュー中にもあるように,筆者(Kazuhisa)とは古くからの知人。本インタビューで大変久しぶりにお会いしたのだが,15年前の記憶の中の遠藤氏と何も変わっていなくて驚かされた……
画像(012)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく

4Gamer:
 とてもとても,お久しぶりです。
 遠藤さんがソフトバンクにいた時代に仕事でご一緒したことがあるので……かれこれ18年越しのお付きあいでしょうか。お懐かしい限りです。

遠藤氏:
 元気そうですね。

4Gamer:
 遠藤さんこそ全然お変わりなく。ソフトバンク以降は何をされてたんですか?

遠藤氏:
 ソフトバンクには2005年までいたんですよ。その後はディズニーに13年間在籍して,2018年3月からネットマーブルですね。

4Gamer:
 ディズニーがかなり長いですね。

遠藤氏:
 はい。最初はセガで3年,ソフトバンクに5年いて,ディズニーには13年です。職場を変えるたびに勤続年数が長くなってますね(笑)。

4Gamer:
 じゃあネットマーブルは20年くらいいないとダメですね。

遠藤氏:
 ぜひとも頑張りたいところです(笑)。

4Gamer:
 ソフトバンク時代の遠藤さんは「何でも屋」というイメージでしたが,ディズニーでは何を?

遠藤氏:
 ディズニーでは,新規ビジネスを立ち上げる事業開発を主にやっていて,最初に携わったプロジェクトが「ディズニー・モバイル」というMVNOの携帯端末でした。まぁ,そこでもやっぱり何でも屋さんだったんですけど(笑)。

4Gamer:
 そんな気がしました……(笑)。

遠藤氏:
 まぁでも,営業をやったり,PM(Project Management)をやったりしているうちに責任者をやることになって,ミニGM(General Manager)みたいな感じで,ずっとP/Lを見ていました。そんなこんなでキャリア系のビジネスを担当していた時期が長かったんですけど,2008年にディズニー・モバイルが立ち上がってからはずっと,携帯事業をやってましたね。

4Gamer:
 ディズニー・モバイルであれば,ハード/ソフトの両方に関わったのでは。

遠藤氏:
 そうですね。最初は端末をやっていたんですが,どんどんコンテンツに携わるようになってきて,月額課金のサービスなんかをメインでやるようになりました。なので,ディズニーの中ではB to Cの課金系サービスをずっとやっていたんです。

4Gamer:
 それならネットマーブルに来てもそんなに「あさっての方向」のことじゃないですね。
 でも一体どういうきっかけでネットマーブルに?

遠藤氏:
 ちょうど,1年前の2017年9月19日に元NC Japanの朴(パク)さんと5年ぶりぐらいに食事しに行ったんですが……。

4Gamer:
 元NCのパクさんって,「あの」パクさんですか?

編注:NC Japanの立ち上げ時に実質一人で会社を回していた人物。遠藤氏も,当時のソフトバンクのリネージュ事業で見知った間柄である。

遠藤氏:
 そうです(笑)。彼から「今ネットマーブルにいるんだけど,遠藤さんも来ませんか」と言われたのがきっかけでしたね。

4Gamer:
 あれ,意外と軽いですね。

遠藤氏:
 いやいや(笑)。最初は「移る気ないよ」と言ってたんですが,「ネットマーブルはもっと日本マーケットを開拓していきたいんだ」という話を聞いていくうちに「面白いかもしれない」と思えてきたんです。自分は,ゲーム業界経験も事業開発経験もあるし,コンテンツ系サービスやマーケティング周りも分かっているし,それを生かせるんじゃないかな,と。

4Gamer:
 確かにそうですね。広くあまねく見られる人って意外にいないですし。

遠藤氏:
 ええ。そんなこんなで「ぜひ頑張らせてください」ということで,3月に移ってきたんです。

4Gamer:
 2017年9月に話があって,2018年3月に入ったということは,結構即決ですね。

遠藤氏:
 そうですね。ちょうどディズニー側の組織変更などもあって,関わっていたプロジェクトも一区切りついた絶好のタイミングだったんですよね。


日本向け展開を目指すタイトルは,日本人好みの味付けをしたほうが良い


4Gamer:
 ゲーム業界を離れていた13年のギャップはどうですか。

遠藤氏:
 いやもう,全然別物ですよ。セガにいたときも,PCでMMORPGの勢いがすごかったんですが,今はスマホゲームですよね。

4Gamer:
 あのころからしたら,もうまるっきり別な物ですよね。

遠藤氏:
 なにぶんコンソールは,まずプラットフォームを普及させないと売れませんでしたが,今はみんなが「スマホというプラットフォーム」を持っているわけですよね。その中でどうやって自社のコンテンツを普及させていくかというところがポイントになっています。
 あとは,パイが大きいからあのころより何でもできるなという部分もあります。その代わり誰でも入ってこれるという面もありますけど。

画像(002)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく

4Gamer:
 この9月でちょうど半年ですが,そんなこんなの状況を含めて振り返ってみていかがでしたか。

遠藤氏:
 まずこの半年は,今しがたも話した「今のゲーム業界がどうなってるのか」という感じで,13年間のギャップを埋めていました。あとは,ネットマーブルという会社のやり方を学んでいましたね。

4Gamer:
 やり方,といいますと。

遠藤氏:
 ネットマーブルは,本社である韓国で開発を行っているのですが,実は日本もけっこうガッツリ関わっているんですよね。7月にリリースした「THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR」はまさにそれです。僕がジョインして直近で動いていたプロジェクトだったこともあり,開発の動きを見ながら,仕組みやプロジェクトの進め方を吸収していました。

4Gamer:
 外資系の会社は,皆さん割と「日本も絡んでます!」と高らかに言いますが,実はそんなに絡んでないことも多いんですよね。ネットマーブルはどれくらい「ガッツリ」なんでしょうか。

遠藤氏:
 ご安心ください。そこはもうガッツリです。
 ゲームも,料理で言うところの「日本人好みの味付け」にしないと,うまくいかないと思うんですが,そこの部分を日本法人がメインでやっています。タイトルによっては,企画の段階から入り込んで「こうしないと日本ではウケないよ」と詰めている案件もありますし,海外でリリースされているものを日本に持ってくる場合には「ここはそのままじゃ駄目だね」という風に変えています。ローカライズも日本でやっていて自然なものにしています。

4Gamer:
 なるほど,確かに割とガッツリやってますね。

遠藤氏:
 プログラムやデザインは韓国でやっていますが,“ゲーミング”の部分に関するアイデア出しやバランシングなんかは,韓国側のPM(Project Manager)と日本側のPMが打ち合わせしながらやってますよ。

4Gamer:
 おや,日本側にもちゃんとPMがいるんですね。日本にPMがいてゲームの「味付け」を触ってるのであれば,仕上がりにはかなり期待できますね。

遠藤氏:
 そうですね。ただもちろん,全部のタイトルでそれをやっているわけではないですよ。日本市場を狙って展開していきましょうと決まったタイトルはそうやって作っています。

4Gamer:
 例えば直近だと?

遠藤氏:
 私がネットマーブルに来てから動いていていた5タイトル中,「テリアサーガ」「THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR」の2タイトルは,完全に日本先出しでグローバル版は後から作りましょうという形で動いていました。そういった,日本ローンチを先にやるタイトルは,日本にもPMを立ててやっています。

画像(011)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
テリアサーガ(iOS / Android
画像(010)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR(iOS / Android

4Gamer:
 それってどれくらい深いところまで手を入れるんですか?

遠藤氏:
 例えば「THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR」で言うと,日本チームが最初の企画を作って,このあとどういう風に進めていくべきかという話をしてたりとか。

4Gamer:
 そんな初期から。……しかしいま話を聞いていて思ったんですが,もし本当に日本法人がそこまで噛んでいるなら,1個のバイナリで完結させるのは結構難儀じゃないですか?

遠藤氏:
 確かにグローバル版と日本版で2個できることもありますね。

4Gamer:
 ですよねえ。管理が大変そうです。

遠藤氏:
 いや本当に大変ですよ。このやり方は「セブンナイツ」から始めたんですが,それが成功したことによって「やっぱり日本向け展開を目指すタイトルは,日本人好みの味付けをしたほうが良いよね」となったんです。なので,「リネージュ2 レボリューション」も同じようにやりました。

4Gamer:
 大変だけど,それだけの価値はある,と。

遠藤氏:
 はい,もちろん。遊び方が全然違いますからね。例えば「リネージュ2 レボリューション」で,要塞戦をいつやるかということを決めるとき……などがそうですが,日本と海外ではプレイヤーがアクティブになる時間帯が違うんですよ。そういう基本的なところからして,やはり日本向けの味付けは必要ですね。


韓国を動かす社長と日本を動かす社長の,ダブル体制


4Gamer:
 では今後のタイトルも,重要なものについては日本主導で動かしていく感じで。

遠藤氏:
 そうですね。「七つの大罪 〜光と闇の交戦〜」「妖怪ウォッチ メダルウォーズ」は日本向けタイトルということでそういう具合に開発を進めています。特に「七つの大罪 〜光と闇の交戦〜」は,日本側の意図がガッツリ入ってますね。
 「妖怪ウォッチ メダルウォーズ」は,韓国のNetmarble Monsterというチームが開発を担当しているんですが,社長はとても日本語が流暢な方で,日本のことをとてもよく知っているので,レベルファイブと直で相談しながらやってもらっています。

画像(005)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
七つの大罪 〜光と闇の交戦〜iOS / Android
画像(006)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
妖怪ウォッチ メダルウォーズiOS / Android

4Gamer:
 Netmarble Monster……というのは開発チーム名ですか?

遠藤氏:
 そうです。Netmarbleは日本と違って,開発チームが全部会社になっているんです。Netmarble Nexus,Netmarble Blue,Netmarble Npark,Netmarble Monster……全部で19個の会社があります。これらは100%子会社だけではなく,Jointもありますが。

4Gamer:
 なんと,全部会社なんですね……。日本では聞かないパターンです。

遠藤氏:
 韓国では結構ある事例なんですが,日本ではあまりないですね。

4Gamer:
 そのチーム……というか会社は,一番多いところでどれくらいの人がいるんですか?

遠藤氏:
 数百人はいますね。

4Gamer:
 そんなに!?

遠藤氏:
 複数のラインで動いているところもありますし。私もまだ,すべてを把握しているわけではないんですが。

4Gamer:
 仮に1社が20人だとしても,19社となると結構な数になりますよね。というか,そもそも動いてるライン数が……?

遠藤氏:
 ええ。なので,毎年2月に「NTP」(Netmarble Together with Press)という戦略発表会をやっていて,そこで開発中のタイトルを発表します。だいたい20作品くらいありますかねえ。

2018年2月6日に開催された「4th Netmarble Together with Press」の様子(関連記事
画像(003)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく

4Gamer:
 それって,開発会社が挙げる企画段階のものを含めた数ではなくて,全部表に出てくるタイトルなんですか?

遠藤氏:
 そうですね,その20タイトルは明確に動いているもので,そのうちの大半は,すでにリリース済みです。2019年以降に向けての作品も含めると,タイトル数はもっとたくさんありますよ。

4Gamer:
 なんという数……。

遠藤氏:
 ご想像はついているでしょうが,企画段階で消えたり,諸事情で弊社がハンドリングしなくなったタイトルを含めたら,もっともっとありますよ。

4Gamer:
 それらを,ペクさん(白 永勲氏:もう一人の代表取締役社長)と2人で,どうやってハンドリングしているのでしょうか。代取が2人いるって,普通に考えるとあまりメリットが思いつかないです。

遠藤氏:
 まぁそうですよね(笑)。共同代表であるペクは,韓国のNetmarbleの副社長でもあり,もともとCJインターネット時代の社長だった人です。

4Gamer:
 はい,存じております。

遠藤氏:
 彼は,つい最近まで韓国の事業部を全部まとめる役割を担っていて,開発部隊を全部動かしている立場の人間だったので,韓国側の開発事情ならすべてを把握しています。一方で,私は長く日本のエンタメ市場に携わってきたので,日本市場のことはよく分かっているけど,韓国のことはあまり分からない状態です。
 そこで,共同代表という形で,韓国側の状況を把握して動かす部分はペクが,マーケティング周りや日本の組織の部分,各タイトルを日本市場にどうフィットさせていくのか……などを私が考える,という役割分担でやっています。

4Gamer:
 うまく動けばとても理想的に思えますね。

遠藤氏:
 そうですね。私が韓国語を話せないので,韓国側と仕事をやるとやっぱりスピードが落ちてしまうんですよね。なので,そういう部分をペクと分担して進められているのは理想的と言えるかもしれません。ペクも,もちろんですが日本のことをすごく分かっている人ですので,わずか半年ほどで5タイトルをリリースできました。

4Gamer:
 そういえばそうでしたね。それにしても遠藤さんがジョインした3月からすでに5タイトルリリースって……結構なスピードですよ。

遠藤氏:
 はい,スピード感を損なわずにやれています。まぁいろんなところが,良い意味でバタバタしてますけど(笑)。

4Gamer:
 広報さんとかが,ちょっとかわいそうかもしれません(笑)。

遠藤氏:
 プレスリリースを書いて出すことに追われる毎日らしいです(笑)。

4Gamer:
 でも少し前でも,韓国に限らず多くのグローバル企業が,日本法人のトップに日本人を置かず,うまく回せないということが多々ありました。とはいえ事態はそう簡単な話でもないわけで,「共同代表」の発表リリースを見て「ああなるほど,その手か」とちょっと感心してしまいました。しかも社長を,昔どこかで見た名前の人がやっていたり。

遠藤氏:
 ははは(笑)。


韓国企業にとっては,国内で勝負するより日本のマーケットを取りに行ったほうがよい


遠藤氏:
 共同代表ってけっこうメリットが多いんですよね。単純なところで言うなら,今後は日本の企業といろいろ提携していこうという感じで動いているんですが,たぶんそういう部分は私が動いたほうがいいことも多いでしょうし。

4Gamer:
 逆にデメリットはないんですか? デメリットまでいかないまでも「ここはもうちょっとやりようがあるんじゃないか」と思うところとか。

遠藤氏:
 うーん……今のところ大きい部分ではとくにないですね。海外で作ったものを日本でパブリッシングする……ということに対しては良い体制だと言えます。逆に日本で何か作るというときには,ちょっと話が変わるかもしれませんが。
 唯一問題があるとすれば,「ペクがすごい頻度で韓国と日本を行き来しているのですごく大変そう」というところでしょうか。僕はあまり関係ないんですが(笑)。

4Gamer:
 近いとはいえ確かに大変そうです。どれくらいの頻度で?

遠藤氏:
 毎週行き来してますよ。本当に「毎週」です。完全に移管させてしまうと,本社とのつながりが切れてしまうというパターンは外資系企業でよく聞く話ですが,弊社に関しては,ペクのおかげで昔のまんまという感じでつながっていますね。人望も厚いですし。なので,今はとても理想的だと思っています。

画像(004)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく

4Gamer:
 お互いの良いところをうまく生かせているその共同代表制度で,遠藤さん自身が受けているミッションってどんなことなんでしょう?

遠藤氏:
 非常にシンプルで,「日本の事業をいかに根付かせて大きくするか」ということです。海外で作ったゲームを日本でもヒットさせることや,日本のパートナーとのネットワーク作りもそれの一環ですね。もちろん,日本だけで成立するタイトルも何か考えていかなければならないと思っています。

4Gamer:
 それにしても,ここへきて日本にここまで本腰を入れたのはなぜなんでしょう。

遠藤氏:
 日本でヒットしているゲームって,やはりまだまだ日本の会社が作っているタイトルがほとんどじゃないですか。こんなに比率が高いのって日本だけで,今でも80%ぐらいが日本のデベロッパ発のタイトルなんですよね。
 とはいえ,一昔前まではそれこそ90%ぐらいが国内タイトルだったので,それを考えると海外のゲームが徐々にヒットしてきているということなんですよね。「日本はガラパゴスだから入れない」と言われてきたのが,スマホになって少しずつ壁がなくなってきているのだと思います。だから我々も,今まで以上に本腰を入れたほうがいいだろう,と。

4Gamer:
 なるほど。そもそもが日本で真面目に活動していた会社ですが,ここへきてなぜ急に……と思った次第です。

遠藤氏:
 あとやはり大きいのは,日本マーケットのサイズですね。世界を見ても,中国,アメリカ,日本というのが,ゲームにおける三大マーケットだというのはご存じだと思いますが,韓国は,日本と比べると半分くらいの規模なんですよ。
 なので韓国企業にとっては,国内で勝負するより日本のマーケットを取りに行ったほうが大きいんですよね。ネットマーブルは韓国でもトップの企業なので,日本や中国,アメリカにどうやって自社のコンテンツを根付かせるかというのが大きな課題です。

4Gamer:
 ということは,同じようなことが,中国やアメリカでも行われているということでしょうか。

遠藤氏:
 はい。とはいえ中国市場はご存じのようになかなか難しいので,ウチの3番めの株主であるTencentと組みながら展開しています。

4Gamer:
 あぁ……Tencentはホントどこにでも張りますねえ。びっくりするようなところにも張ってますし。
 アメリカはどうでしょう?

遠藤氏:
 アメリカは,Netmarble USが日本と同様にネットマーブルのゲームを展開しているほか,子会社であるKabamとJam Cityとも協業しています。その2社と一緒にゲームを作りながら動いているという形です。

Kabam
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4Gamer:
 なるほど。単なるイメージなんですけど,Netmarble USはちょっと静かそうな印象ですね。

遠藤氏:
 いえいえ。ネットマーブル以外にKabamとJam Cityが作ったタイトルを合わせれば,多くのタイトルをサービスしてますよ。ただ,代表は1人です。日本はアメリカとは違って2人の代表を立てていて,日本専用のビルドもたくさん作ったりしているので,ものすごく力を入れてやっているという感じでしょうか。

Jam City
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4Gamer:
 韓国や中国,北米などとても広範囲に活躍を見せるネットマーブルという巨大企業の中において,日本がそれに見合うだけの価値を持つのかどうか,当の日本人的にはちょっとピンとこない部分もあります。

遠藤氏:
 なんとなくその感覚は分かります。でもやはり売り上げを考えると,アメリカより日本に力を入れるほうが良いんです。

4Gamer:
 中国の会社も,日本だけは別にビルドを作ったりしますからねえ。

遠藤氏:
 ましてやこれから中国の会社がああいう状況になるのなら,みんな日本で勝負しにきますよね。

後日,プロセスの完全停止が伝えられた。 →「こちら

4Gamer:
 でもそんな日本であっても,スマホゲームはちょっと“踊り場”的な位置にいるわけで,誰もがうらやむ右肩上がり……というわけではないですよね。そんな状況をどう捉えてどう動いていかれるのでしょうか。

遠藤氏:
 そうは言いますけど,日本のスマホゲーム市場って,売り上げ自体は伸びていますよね。

4Gamer:
 そうですね。数字としては。

遠藤氏:
 トップ10の顔ぶれなんかはほとんど変わっていないので,プレイヤーの皆さんは慣れ親しんだタイトルをプレイしていて,あまり市場が循環していないというイメージは確かに受けます。我々もいろいろなことを試す中で,IPもののタイトルも積極的に出していますが,「皆に知られているようなIPはどういった反応があるのか」ということも学びながらの展開といった感じです。

4Gamer:
 どんなに成功した有名タイトルであっても,IP化に失敗すると先細りにしかならないわけですが,ネットマーブルはハナからIPを主軸に据えるということでしょうか。

遠藤氏:
 そうですね,やっぱり日本のゲーム業界はIPモノが強いので……。

4Gamer:
 自社で作ったりは?

遠藤氏:
 もちろんです。何らかのIPを自社で作っていくということは,まず絶対に必要なことです。例えば「セブンナイツ」はSwitch版を展開する予定もありますし,続編の「セブンナイツ2」も作っています。そういうチャレンジをもっと重ねていきたいですね。
 あとはまぁ,最近のスマホゲームは「どれも一緒だよね」という感じなので,「斬新で面白い」と言ってもらえるようなものを追求して作っていきたいですね。ゲーム作りの基本といいますか。

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セブンナイツ2
画像(008)日本マーケットへの注力が著しい,韓国の雄「ネットマーブル」――日本法人に日韓の社長2名を置く盤石の体制で,速度とクオリティの両方を上げていく
Seven Knights Switch(仮)

4Gamer:
 そういう話になると,御社が開発会社を19社も抱えているというのは大きいですね。なかには予想もつかないようなものを出してくる会社もあるかもしれないですし。

遠藤氏:
 会議で開発会社の人が開発状況を説明してくれるんですが,我々日本側がプレイして新鮮味が感じられなかったら,「全然新鮮じゃないです」と直接言ってます。

4Gamer:
 意外と厳しいですね……。

遠藤氏:
 でも,ある意味健全ですよね。

4Gamer:
 まぁ,そこは確かに。
 今はスマホメインですが,それはこれからもしばらくは変わらない?

遠藤氏:
 しばらくメインがスマホなのは変わらないでしょうね。

4Gamer:
 1年半で500万台を普及させて,いまノリにのってるSwitchはいかがですか。

遠藤氏:
 本体が相当普及してきているので,ちょっとやってみようかなと思って,先ほど申し上げたように今「セブンナイツ」の制作を進めています。プレイする層が弊社のタイトルに合うのかな? という懸念はあるにはあるのですが,それは出してみて,という感じでしょうか。

4Gamer:
 では最後に,スマホゲームファンに向けて一言お願いします。

遠藤氏:
 これから「ネットマーブルのゲームなら楽しめる!」と言ってもらえるようなブランドづくりを,まだまだやっていかなければならないと思っています。その信頼を築き上げるために,これから面白いゲームをリリースしていきますので,ぜひご期待ください。
 また,現在運営中のタイトルもどんどん改善していこうと思っています。こちらも引き続き遊んでいただいてご意見などいただければと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。20年くらいがんばってくださいね(笑)。

――2018年9月20日収録
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