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あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと
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印刷2015/08/01 00:00

インタビュー

あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと

PS4に変更したということ


4Gamer:
 あと1つ,待っているユーザーから見たときに,4年ぶりの発表で一番大きかったのは「プラットフォームの変更」ですよね。先ほどの話がここで繰り返されるんですが,PS4に変更になったとはいえ,繰り返しになりますがグラフィックスレベルそのものは――元々高い水準ですが――それほど変わっていないように見えるんです。

上田氏:
 ちょっと細かい話になるんですけど,ええと……なんて呼ぶのがいいのかな。ここでは暫定的に“前世代機”と呼びますが(注:PS3/Xbox 360などを指すものと思われる),それぐらいの表現力になると,これはたぶん日本国内の開発会社さんのほとんどに当てはまると思うんですが,ハードの表現力というよりも,先に人材面――スタッフのリソースなど――のほうがボトルネックになっちゃうと思うんですよ。

4Gamer:
 なるほど確かに。そんなに多くはいないですしねきっと。

上田氏:
 開発者の数がそこまでいないというのももちろんですが,「作れます,表示できます」っていってもそれはあくまでもスペックの話であって,結局はそれは誰かが作らなくてはいけないので。人を揃えてそれを作るであったり,そもそも人を用意するであったり,人材リソースであったり,制作コストの方がネックになってくるという状態だと思うんですね。

画像集 No.020のサムネイル画像 / あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと

4Gamer:
 確かにそうですね。

上田氏:
 そのような限られたリソースの中で,ゲーム全体のクオリティバランスを考えつつ,かつ商品力のあるものを……というと,フォトリアリスティックであったり,とてつもない手数を入れたものよりも,もう少しユニークなビジュアル表現のほうがいいだろうと思って,元々そちらを目指していましたし,今もそれは変わりません。
 PS4になることで,より「フォトリアルな表現ができるようになった」と言われますが,トリコにとって,それはボトルネックではなかったですし,ましてや,それに合わせてグラフィックスの方向性を変える必要はないと思っています。

4Gamer:
 確かにいまのお話を聞く限り,ヒューマンリソースがボトルネックになるのであれば,それはPS4になっても変わらないわけですし,同じことの繰り返しになっちゃいますね。

上田氏:
 そのとおりです。

4Gamer:
 ……であれば,PS3版も一緒に出すというわけにはいかないんでしょうか。

上田氏:
 ゲームデザイナーとして,また実際に開発に携わっているスタッフとして,より多くのお客さんに楽しんでもらうというのが一番だと思います。ただ,それは僕が決める部分ではなく,SCEの判断ですね。
 元々プラットフォームに左右されないゲームデザインなので,プラットフォームの変更に合わせて方向性を修正するというよりは,最初から目指しているものに向かって作り続ける感じで。

4Gamer:
 そこはまったくブレていないんですね。

上田氏:
 はい。例えばPS4専用に何か新作を作るとなれば,また別のデザインを発想するのかもしれないですが。

4Gamer:
 あのグラフィックスからさらに手を入れるのは,なかなかしんどそうです。4年前にお聞きした話を割と覚えていますが,あのこだわりで作っているとなると。
 例えば前回もおっしゃっていた「ジャンプできない,それでいて違和感のない柵を作ったり」とか,そういう作業で時間を取られているんでしょうか。

上田氏:
 レベルデザインの話ですね。レベルデザインも,実はあのインタビュー時にはほとんど確定していました。それを実装して,実際にプレイしつつ,調整はするんですけど。

4Gamer:
 ……では興味本位で聞いちゃうんですが,今は何をしているんですか?

上田氏:
 PS3のものをPS4へと移植する作業が終わり,足りなかったところの実装と調整です。


実はトリコは結構出来ていた?


4Gamer:
 ちなみに4年前のインタビュー時点では,何%ぐらいできていたんでしょうか。

上田氏:
 ええと……2011年9月ですよね?

4Gamer:
 はい,そうです。

上田氏:
 難しい質問ですね。正直なところ,完全に覚えているわけではないですし。
 でも1つそれを端的に示していることがあるとすると,今回E3で見せたプレイ映像は,実は2010年にPS3ではすでに出来ていた部分なんです。

画像集 No.021のサムネイル画像 / あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと

4Gamer:
 え?

上田氏:
 まったく同じものを出すのはどうかと思ったんですけど,一番惹きがあるシーンだし, E3で出すには効果的だということで,PS3上で動いてたものをそのまま PS4で再現したものです。

4Gamer:
 なんと。5年前にはすでにあそこまで出来ていたんですね。

上田氏:
 そうですね。内容もほとんど同じです。

4Gamer:
 ほかのレベルデザインに関しても,割と多くの部分が出来上がっていた?

上田氏:
 あれから1年以内には,ほぼ全ステージの構成は終わっていました。もちろん調整までは進められてはいませんでしたが。

4Gamer:
 では今に至るまで,その調整の部分が手間取っていた感じなんでしょうか。

上田氏:
 いえ,そうだけでなく単純に, PS3で動いていたものを新しい環境で動かすための準備期間が,当初想定していたのよりもずいぶんかかっていたらしいというとこですかね。

4Gamer:
 ……細かい突っ込みですが,なんでそこは伝聞なんですか?

上田氏:
 あ,すみません。実際に僕がクリエイティブディレクターとして作るべきクリエイティブな部分は,「あの当時出来ること」という話であればすでに終わっていたんです。

4Gamer:
 なるほど。

上田氏:
 その次にクリエイティブディレクターがやるべきところというのは,実際に設計したものが実装されたら,それをチェックして,不都合な箇所だったり,整合性が取れていないところをブラッシュアップしていくという作業なんです。それで,そういった作業はその期間にはほとんどなかったんですね。

4Gamer:
 しかし,数年前にすでにトリコは「結構出来上がっていた」というのが驚きました。単に上田さんがこだわり抜いて遅れていたんだと思ってたんです,すみません。

上田氏:
 いえいえ。

4年前の時点ですでに,E3 2015トレイラーで公開したものは完成しており,氏の関わるクリエイティブな部分は出来ていたという。早く出してほしかった……
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gen DESIGNという会社


4Gamer:
 もう1つ気になるのは,スタジオ ジェン・デザイン(gen Design)の設立です。あれはどういった経緯だったんですか?

上田氏:
 説明しづらいですが,簡単に言うと,新しいことをやるために,またここまでの経緯を生かし,ある程度自分の裁量で自由に出来る場のために,というか。

4Gamer:
 画力(えぢから)があるものを一緒に作りましょう,というフレーズが上田さんらしいなと。

上田氏:
 そうですね。お分かりいただけているとは思いますが,あれは単にすごいグラフィックスのものを作りましょうという意味ではないんですよ。

4Gamer:
 はい。重々承知しています。

上田氏:
 画(え)で語る,といいますか。

4Gamer:
 画だけでも十分引きがある,魅力のあるものを目指しているということですよね。
 しかし先ほどの話じゃないですが,ゲームのグラフィックスは,みんな「綺麗ならいいのか」という疑問を持ちつつも,綺麗じゃなきゃどうしようもないよね,という結論に落ち着きますね。

上田氏:
 やはり分かりやすいですからね。それは社内においてもそうです。なにかしらのプロジェクトを立ち上げたり,その進捗を把握するときに「絵がどれぐらいできているのか」というのはとても分かりやすい要素ですからね。

4Gamer:
 そんな画力を重視するジェン・デザインのロゴですが,あれはやはりICOがモチーフなんでしょうか。上田さんのスタジオで,ロゴが男の子と女の子といったら,これはやはり。

上田氏:
 あぁそうですね。ICOというゲームを遊んだ子供がそれを真似して遊んでるという図柄です。そのまんまICOというわけではないんですが,そのゲームを体験して,それを真似して遊んでいる……というイメージでしょうか。

「スタジオ ジェン・デザイン」サイトのトップページ。ロゴは,ICOを真似して遊んでいる子供達がイメージ
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4Gamer:
 ロゴと同時に気になるのは,サイトの「and more」にある絵なんですが。見たことのない絵が何枚もありますよね。

上田氏:
 よく見てますね(笑)。先ほどもちょっと話しましたが,トリコでクリエイティブな進捗がない期間があったので,その間にいろいろと仕込んでたんです。

4Gamer:
 あんな下の方にこそっと載せているので,余計に気になってしまいます。

上田氏:
 今はトリコを完成させることが最優先ですね。

4Gamer:
 海外の人も待ってますしね! ……しかしさっき海外の話をしていて思ったんですが,欧米のタイトル名「The Last Guardian」についてなんですけど,「人喰いの大鷲トリコ」に比べると,よりストーリーに密着したタイトルに思えますね。

上田氏:
 はい。ストーリーに密着しているようにも感じるし,どうとでも受け取れるようなタイトルですね。「ワンダと巨像」も同じようなスタイルだったと思います。

4Gamer:
 そうですね。ワンダとまったく同じパターンの付け方ですよね。

上田氏:
 「ワンダと巨像」に対して「Shadow of the Colossus」という。これって僕の一存で全部決めているわけではなく,北米には北米の,欧州には欧州のマーケット担当者がいるわけで,彼らが「こういうタイトルの方がよりアピールできますよ」という提案をしてきて,それを私が了承するという形です。

4Gamer:
 ファンとしては,あのタイトルだけでご飯3杯いけるわけです。「ラストって何のラストだろう?」とか「ガーディアンとはどれ(誰)なのか」とか。そのあたりのヒント……は,まぁいただけないですよね(笑)。

上田氏:
 そうですね。そのあたりは,今は聞かない方がいいんじゃないでしょうか(笑)。楽しみにしておいてください。

4Gamer:
 例えば「Last」って,少年にとってのLastなのか,世界にとってのLastなのかとか。「Guardian」にしても,それは世界の守護者という意味なのか,少年の保護者としての意味なのか……。以前のトレイラーで影と戦ってるところを見たときは“守護者”としての印象だったんですが,今回初めてゲームプレイの様子をそのまま見た素直な印象では,優しい目線で少年を導いていて“保護者”的なイメージも持ちましたし。
 遊ぶまで知らなくてもいいか,と思うんですけど,でもやっぱり今知りたいような気もするし。

上田氏:
 でも,先ほどの話同様,今みたいな感想は理想的で,1つだけの意味ではなくて,いろいろな形で受け取れると思うんですよ。そうやっていろいろ考えていただくのが,本当の意味での正解だな,と思いますよ。

様々な想像が膨らむ欧米版のタイトル「The Last Guardian」。でもやっぱり「人喰いの大鷲トリコ」のほうが好きかも
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