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「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは
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印刷2011/04/28 00:00

インタビュー

「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは

ゲーマーとしての松野泰己


4Gamer:
 そういえば,そもそも松野さんがゲーム業界に入ったキッカケってなんだったんですか?

松野氏:
 キッカケは……何でしょうね(笑)。今思うと,非常に青臭いというかバカな考え方で,何かができると考える前に,何もできないと考えることが強かったんです。

4Gamer:
 何もできない,というのは?

画像集#024のサムネイル/「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは
松野氏:
 例えば映画やテレビ,出版業界は,脈々と続く歴史がありますよね。僕は出版社でライターをやっていたことがあったんですが,今更この業界でのし上がっていくことは凄く大変である,と感じてしまったんですよ。

4Gamer:
 そういう側面は少なからずあるかもしれませんね。

松野氏:
 今の僕であれば,逆にもっと頑張れたかなと思えますが,当時は,そういう壁やハードルが見えた瞬間に,もう少し楽なところ,そこで頭が張れるような場所に行こうと考えたんです。当時,ゲーム業界はまだまだ有象無象の世界で,誰もが面白いものを作ればやっていけるという時代でしたから。

4Gamer:
 元々何かクリエイティブな業界に就きたい,という意志はあったんですか?

松野氏:
 そこは当然ありました。

4Gamer:
 その中の選択肢として,映画やアニメではなく,ゲームがあったと。

松野氏:
 そうですね。

4Gamer:
 でもゲーム制作を志す経緯というか,松野さんが影響を受けたゲームとかって何になるんですか?

松野氏:
 あの時代は,ファミコンも遊んでいましたが,僕はAmigaや海外のPCゲームが好きで,クリエイティブ性という意味では海外のゲームの影響が大きかったかもしれません。海外ゲームの方が考え方が自由で,内容の良し悪しはともかく,新しいものを追いかける特性がありましたよね。そこが好きでした。

4Gamer:
 Amigaで遊んでたんですか。ちなみに松野さんは,ゲーマーとしては,どのあたりを経てきたんですか?

松野氏:
 いや,ゲーマーって言われるほどはやってはいないんですけどね(笑)。

4Gamer:
 あの頃にPCゲームを遊んでたような人はゲーマーだと思いますが(笑)。

松野氏:
 うーん,そうなのかなぁ。ゲーム歴というと,ファミコンが登場したのが1982年ですが,その時まだ高校生だった僕には高いものでした。だから,電車待ちの間に,ゲームセンターで「パックマン」や「ゼビウス」を遊んでいたのが最初の出会いでしょうか。東京に出てきてからは,空いた時間でゲーセンに通って,よく「グラディウス」を遊んでいました。ファミコンで遊ぶようになったのは,大学に入ってからで,麻雀をやっているときですね。

4Gamer:
 麻雀とファミコンにどんな繋がりが?

松野氏:
 麻雀を5人とかでやってると,1人が抜けるじゃないですか。その待ち時間でファミコンをやるんですよ(笑)。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

画像集#017のサムネイル/「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは
松野氏:
 その時に「ゼルダの伝説」にハマってしまって。バイトをしたお金でファミコンとディスクシステムを買ったんですよ。自分でゲームを買おうと思ったのは,それが最初でした。そして今度は「ドラゴンクエスト」にハマッて……。その後で,いろんなRPGを一通りやりましたが,最初にゼルダやドラクエをやったときのインパクトみたいなものがなくなって,より刺激を求めた結果,PCゲームに辿りついたわけです。

4Gamer:
 そこで,Amigaを購入することになったわけですか。

松野氏:
 いえ,当時PCを買うだけのお金がなかったので,クエスト入社後に会社のPCで夜中に遊んでいました(笑)。

4Gamer:
 ただでさえPCが高価な時代ですからね。どんなPCゲームを遊んでいたんですか?

松野氏:
 会社には,PC-88やAmiga等が置いてあったので,それでひたすら海外ゲームをやってましたね。「ポピュラス」を初めて遊んだのはAmigaで,「シムシティ」はMacintosh Plusでしたね。

4Gamer:
 なるほど。そういえば松野さんは,オンラインゲームも結構遊んでいるとお聞きしましたよ。

松野氏:
 そんなでもないですよ。「Ultima Online」(以下,UO)はかなりやりましたが。あとFF11は,仕事でもあったので結構やりましたね。

4Gamer:
 UOやEverQuest(以下,EQ)などは,ゲーム業界の方が仕事そっちのけで遊んでいたという話は結構聞き及びますが。

松野氏:
 僕も,UOは相当ハマりましたね。今でも家を1軒持っています(笑)。

4Gamer:
 えええ。私はとっくに腐ってしまいましたよ。

松野氏:
 年に一回くらいログインするんですよ。で,「よしよし,まだあるな」みたいな楽しみ方をしてます。

4Gamer:
 オンラインゲーム以外で,最近のゲームは遊ばれてますか?

松野氏:
 最近だと,「Red Dead Redemption」は最後までプレイしました。あれは面白かったです。

4Gamer:
 どのあたりが良かったのでしょう?

松野氏:
 自由にオープンワールドを闊歩できることや,何でも好きにやれちゃうところが良かったですね。お話もちゃんとあるので,自由に動くのに飽きたら,お話に乗っかれば良いですし。“1人でやるオンラインゲームっぽさ”が好きでした。

4Gamer:
 なるほど,たしかにオンラインゲームを1人で遊んでいるような感覚がありますね。

松野氏:
 オンラインゲームの面倒なところは,自由になんでもできるけど,リアルと同様に対人関係を気にしないとダメじゃないですか。もう眠たいんだけど,誘われたら断り難いなぁ……みたいな。

4Gamer:
 寝るに寝られないときもありますね。

松野氏:
 そうなんですよ。でも,そこは仲間に好かれたいもんだから,良い人を演じてないといけない(笑)。

4Gamer:
 な,なるほど。

松野氏:
 それが面倒くさいから,僕は1人で遊べるタイプのオンラインゲームを良く遊ぶんですけどね。その意味でUltima Onlineは,1人で遊べるオンラインゲームでした。対人関係に飽きたら,船に乗って釣りでもしていれば良いじゃないですか。そして,人恋しくなったら他人とパーティーを組んで冒険に出かける。

4Gamer:
 初期のUOは,とくに牧歌的なゲームでしたしね。

「Ultima Online」
画像集#055のサムネイル/「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは

松野氏:
 一方でFF11は,「絆」「仲間」という田中さん(※)のコンセプトがあって,最初は仲間がいないと経験値稼ぎが難しいというシステムになっていました。あれはあれで,仲間を作ってみんなでやっていく「友情・努力・勝利」というところで,良くできたオンラインゲームだと今でも思っています。

※田中弘道:スクウェア・エニックスのエグゼクティブプロデューサー。「ファイナルファンタジー」シリーズや「聖剣伝説」シリーズを手がける。4Gamer的には,「ファイナルファンタジーXI」「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサーとしてお馴染み

4Gamer:
 少年ジャンプ的世界観ですね(笑)。

松野氏:
 でも,ある程度やると煩わしくなってくるんですよね。仲間集めやレアハントが面倒になったり。

4Gamer:
 まぁオンラインゲームの流れでいうと,MMORPGとしてUltima Onlineがあって,次にEverQuestがありますが,EQは“オンラインゲームで遊ぶからには,共闘プレイが楽しいよね”という暗黙の了解を前提にシステムを組んでいるんですよね。
 そこで,「World of Warcraft」や韓国産のオンラインゲームが立ち返ったのが,ソロプレイがちゃんとできるよ,という視点でしたしね。

松野氏:
 その意味でいうと,「モンスターハンター」が良いのは,オープンワールドで見知らぬ他人とパーティー組むのではなくて,仲の良い4人が集まってやれるからなんですよ。気を遣わなくてよいのがいいですね。

4Gamer:
 人間関係っていう意味でいうと,MOタイプのゲームの方が楽ですからねぇ……。

松野氏:
 あと,オンラインゲームで遊んだのは「大航海時代 Online」ですね。あれが良いのは,海賊行為は嫌いでしたけど,港で他人と絡む以外,洋上はひとりで気兼ねなく旅ができるので,貿易商人をメインでひたすら貿易だけやっていました(笑)。デスクトップPCやノートPCを5台くらい並べて,自分で艦隊を作ってロンドンと東アジアをひたすら往復していました。貿易に飽きると造船職人もやっていたので、適当に都市でシャウトして造船を請け負うとか(笑)。

4Gamer:
 また,激しくコアな遊び方を(笑)。


妄想から生まれたタクティクスオウガは究極のごっこ遊び?


4Gamer:
 しかし,やっぱり松野泰己というクリエイターが分からない……。

松野氏:
 (笑)。

4Gamer:
 いや。タクティクスオウガでは,民族紛争といった難しいテーマをうまく昇華して,ゲームに落とし込んでいますし,世界観も壮大で緻密じゃないですか。

松野氏:
 うーん(苦笑)。

画像集#051のサムネイル/「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは
4Gamer:
 それだけに。あれだけの世界を構築しうる素養だったり,物語を作る能力というのがどうやって養われたんだろう?とずっと疑問だったんです。例えば,子供の頃に小説を書いていた,とかはないんですか?

松野氏:
 書いていないですね。そこまで文学少年じゃなかったので。

4Gamer:
 それで,あの物語というか,テキストが書けるのは不思議というか。

松野氏:
 それは,ライター時代の修業の成果じゃないですかね。大学時代は映画研究会にいたので脚本/シナリオを書いたこともありましたけど,やはり大学時代のライターのアルバイトから始まって,フリーのライターをやっていた経験は大きいと思います。
 例えば,編集長とかに原稿に赤(修正)を入れられて,ガーっと直されるじゃないですか。それが文章書きとしては貴重な体験になりました。

4Gamer:
 でも,私も編集者として記事を書いたりはしていますけど,だからといってタクティクスオウガ(に相当するもの)は普通書けないと思いますよ。

松野氏:
 そうですかね? そこは,映画を見たり,小説を読んだりするのは好きなので,それが理由かもしれません。

4Gamer:
 じゃあ,松野さんの原体験になった映画や小説ってどのあたりなんですか? なんといいますか,松野作品のルーツを知りたいんです。

松野氏:
 映画で言えば,「スターウォーズ」には結構ハマりました。ただ,とくに僕がスターウォーズで面白いと思ったのは,最初に“新たなる希望”が出てから,その続編となる“帝国の逆襲”やジェダイの復讐”が出るまでの,ある種の“妄想できる期間”なんですけどね(笑)。

4Gamer:
 どういう意味ですか?

松野氏:
 いや,あの当時のスターウォーズには「いろんな謎」が散りばめられていて,続編が出るまでに,あれはどうなるんだろう?とか,あそこはこうに違いない!みたいな妄想ができたじゃないですか。それが楽しかったというか。

4Gamer:
 ああ,それは理解できます。

松野氏:
 スターウォーズに限らずとも,シリーズものの映画やドラマ,漫画,小説,何でも良いんですけど,次が気になるというファン心理で,そういう妄想をするのが,僕は好きだったんです。マンガの続きを考えたりとか。僕の原体験というか,クリエイティビティの源って意味では,そのあたりがルーツなんじゃないかと思います。すべては妄想,という感じかな。

4Gamer:
 その妄想力が,ゲーム制作の源になったというのは納得できます。

松野氏:
 映画繋がりでもう少し話すと,先日,「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」という映画のファンイベントがあって,そこにプロモーションで来日された監督のエドガー・ライト氏がおいでになったんですね。その際,ファンからの質疑応答中の質問で,彼の映画(のアイデア)はどこから来るんですか?というのがありました。

4Gamer:
 エドガー・ライト氏はなんて答えたのですか?

松野氏:
 彼の答えは,「何もないイギリスの片田舎で生まれ,自分の妄想だけが友達だったから」というものでした。

4Gamer:
 なるほど。

画像集#010のサムネイル/「タクティクスオウガ」は若さ故の作品――ゲームデザイナー・松野泰己氏が語るクリエイターとしてのルーツとは
松野氏:
 僕には,それが凄くよく分かるんですよね。僕も新潟県の小さな片田舎で生まれて,今みたいにインターネットも携帯電話もなくて。夏であれば野球をやったりして遊びますけど,冬になると,それこそ3メートルくらいの雪に閉ざされて何もできないわけです。雑誌を買いに行くのも面倒で,漫画とか小説,テレビでやっている映画が唯一の娯楽で。他にすることといったら,妄想でもしているしかない(笑)。

4Gamer:
 妄想……といっても,具体的になにをするんですか?

松野氏:
 それこそ,子供の頃,ウルトラマンの人形を使って“ごっこ遊び”をしたりするじゃないですか。ああいうのが,原点と言えば原点かもしれません。

4Gamer:
 “ごっこ遊び”ですか。

松野氏:
 あと僕は,子供の頃,ジオラマが大好きで,1/72スケールの戦車のプラモデルとかを買ってきては,ジオラマを作って遊んでいました。図書館とかに行って,第二次世界大戦時の東部戦線がどうだったのか,写真とか資料を見ながら研究して,再現するんです。

4Gamer:
 へー,ジオラマですか。

松野氏:
 で,ジオラマを作っていると,再現するだけじゃなくて,なんというか「ドラマを作りたくなる」んですよ。「ここは毒ガスが漂っているから,人がバタバタと倒れている。少し離れたところには,ガスマスクをした兵隊が慌ただしく人を助けようとして……」みたいな感じですね。そういうのを再現していたんですよ。

4Gamer:
 あ,何か松野さんの作るゲームに繋がってきた気がします。

松野氏:
 僕にとってのゲームというのは,そうして作り上げた世界の中に模型(ユニット)がたくさんいて,それを箱庭としてパッケージングしたものといいますか。

4Gamer:
 タクティクスオウガには,確かにそういう“趣”がありますね。

松野氏:
 タクティクスオウガなんて,究極の“1人ごっこ”ですよね。

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    タクティクスオウガ 運命の輪

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