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一番いい妹を頼む。「放課後ライトノベル」第19回は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない7』を紹介するわけがない
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印刷2010/11/20 10:00

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一番いい妹を頼む。「放課後ライトノベル」第19回は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない7』を紹介するわけがない



 綺羅星!(挨拶)
 いやーほんと,「STAR DRIVER 輝きのタクト」は面白いよね。タクトが「颯爽登場,銀河美少年!」って名乗りを上げるたびに,こっちのテンションも上がりまくりですよ。これからはきっと「キラッ☆」よりも「綺羅星!」が流行るに違いないね!

 今期のアニメでは,ほかにも「Panty & Stocking with Garterbelt」や「探偵オペラ ミルキィホームズ」も見逃せない。前者は“パンスト”って略すと某パンツじゃないから恥ずかしくないもんアニメに似ているけれど,こちらは言うならば「パンツはいててもはいてなくても恥ずかしくないもんアニメ」。ノンストップで繰り出される放送コードギリギリのネタの嵐に,なんというか,もういろんな意味でおなかいっぱいです。

 一方のミルキィホームズは,普通の探偵vs.怪盗ものっぽく始まったのに,回を追うごとにどんどんフリーダムに。とくに第4話はいろんな意味で伝説になりそうな回だったが,筆者も最近,担当編集様に「またアニメネタですか。本当にダメダメ……いや,ダメダメダメですね。そろそろ自重してください。大好きだけど」と釘を刺されているので偉そうなことは言えないでゲソ。ミルキィホームズは12月16日にPSP版のゲームも発売されるので,アニメを未見の人もこの機会にチェックだ!

 そして,今期のアニメといえばやっぱり,TOKYO MXほかにて大好評放映中の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」を忘れちゃいけない。筆者も毎回,テレビの前に全裸で待機して全裸で視聴し,もちろん原作小説だって全裸で読破している。当然,2011年1月27日に発売されるPSP用ソフト「俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル」も,ダッシュで予約済みさ。
 そんなわけで今回の「放課後ライトノベル」では,11月10日に発売されたばかりの最新7巻が話題沸騰中の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を紹介しちゃいます。

画像集#001のサムネイル/一番いい妹を頼む。「放課後ライトノベル」第19回は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない7』を紹介するわけがない
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない7』

著者:伏見つかさ
イラストレーター:かんざきひろ
出版社/レーベル:アスキー・メディアワークス/電撃文庫
価格:578円(税込)
ISBN:978-4-04-870052-8

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●誰が見ても完璧な妹。だがその中身はオタクだった!!


 主人公の名前は高坂京介(こうさかきょうすけ)。ごく普通の家庭に生まれた,自ら認める平凡な高校生だ。彼には中学生の妹がいた。桐乃(きりの)というその妹は,兄とは違って容姿端麗,成績優秀,運動神経もよしの完璧超人。ファッション誌の読者モデルなんかもやってたりする。俗に言う「超リア充」である彼女には,しかし,ある一つの秘密があった。
 それは――ゲームやアニメが大好きな,いわゆるオタクだということ。

 それも生半可なオタクではなく,自室の隠しスペースにはオタクグッズがぎっしり。中でもとくに偏愛しているのが「妹もののエロゲー(!!)」というから筋金入りである。もっとも彼女はその趣味を,友人はおろか家族にまで秘密にしている。つまりは隠れオタクなのだ。
 そんな妹の趣味をひょんなことから知ってしまった京介は,桐乃が「人生相談」と称して持ちかけてくる彼女のオタクライフに付き合わされることになるのだった。

 「妹もののエロゲーが好き」という,妹の趣味を知ってしまった兄。この設定だけ聞くと,筆者の桃色のエロゲ脳では「じゃあ,このゲームの内容を実践」というアダルトビデオチックな展開を予想してしまうところだが,そうはならないのがこの作品の面白いところ。
 もともと年頃の女子ということもあってか,桐乃は京介を毛嫌いしており,口を開けば「キモッ」だの「ウザい」だのと罵詈雑言の嵐。京介も京介で完璧な妹に少々コンプレックスを持っており,実際に「妹は嫌い」と公言している。

 だが,なんだかんだで2人は十数年を共に過ごしてきた「家族」。困ったことがあれば桐乃は罵倒しつつも兄を頼るし,京介もぶつくさ言いながら妹を助けてやる。そんな兄妹の微妙な距離感の,これまた微妙な変化を追っていくのが『俺妹』の魅力の一つなのだ。まあその結果,京介は「妹から勧められた妹もののエロゲー」を妹と一緒にプレイする羽目になったりするのだが……。


●ついに禁断の恋,解禁!? 兄と妹との微妙なカンケイ


 とまあ,そんな感じで桐乃からさまざまな「人生相談」を受けてきた京介だが,6巻のラストでとんでもないお願いをされることになる。それはなんと「あたしの彼氏になって」というものだった――。

 ここで「すわ待望の18禁な展開か!」と期待したあなた,エロゲーのやりすぎです。桐乃が求めていたのは,自分を強引に専属モデルにして海外に連れて行こうとするモデル会社のアプローチをかわすため,彼氏のふりをしてほしい,ということだったのだ。苦闘の甲斐あって当初の目的を果たすことには成功するが,それをきっかけに桐乃との関係がギクシャクし始め――というのが7巻の展開である。

 キーワードは「恋愛と兄妹愛」。ゲームの中では当たり前のようにあっても,現実では妹に恋愛感情を抱いたりすることはほぼありえない。けれど,相手のことを大切に思い,半端なヤツに渡したくない,という気持ちは恋人も兄妹も同じ。恋愛感情と,妹(兄)を思う気持ちとの間で翻弄される京介と桐乃が取った行動とは? 揺れ動く2人の心理に注目してほしい。そして最後には,6巻並みの強烈な引きが待っている。その内容は――ぜひ,自分の目で確かめてみてほしい。

 それにしても京介,1巻の時点ではオタク趣味の“オ”の字も知らないパンピーだったはずなのだが,巻を追うごとにどんどん変態化している気がする。これが「朱に交わればなんとやら」ということなのか……いやはや,おそろしや。


●オタクの,オタクによる,オタクのための小説


 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という作品を読んでいてしばしば感じるのが,全編に漂う「あるある」感。コミケに行く話なんかはまるで自分も参加しているような気分になるし,先に書いた京介と桐乃の距離感というのも「ああ,実際にこのくらいの歳の妹がいるとこんな感じなんだろうなあ」という雰囲気が非常によく出ている。
 桐乃が女子中学生にしてエロゲー好きという根っこの設定についてはさすがに「ねーよ」とは思うのだが,その分,細かな描写にはしっかりこだわっていこうとしている感がひしひしと伝わってくる。

 その桐乃にしても,外見と内面のギャップが激しいだけで,内面だけに限っていえばどこに出しても恥ずかしい(笑)立派なオタク。好きな作品のことになるとつい熱く語ってしまう様子や,作品の好き嫌いをめぐって他人と激しく口論する場面などは,鏡を見ているようでどうにもむずがゆい。

 よくゲームやアニメのヒロインに対して「オタクの願望を具現化したような」という形容詞が用いられることがあるが,非の打ちどころのない外見とオタクな内面を併せ持つ桐乃は,ある意味それに最も当てはまるキャラなのかもしれない。兄のことが大好きな(=オタクが妄想するような)妹なんていない,と1巻で早々に断言した桐乃だが,彼女自身がその「妄想の産物」のようなキャラだというのは皮肉な話である。

 まあ,それを言うなら,自分で自分を平凡だ平凡だと言いながら,実の妹には何かと頼られ,妹の友人にして後輩の少女からは思いを寄せられ,しかも幼なじみまでいる兄・京介のほうがよほどありえない(=エロゲーの主人公っぽい)キャラといえるかもしれない。妹に振り回されて迷惑そうにしているが,奴もしょせんはリア充,とりあえず爆発しろ! と叫んだところで今回の結びとしたい。

 すべてのオタクに幸あれ!

■可愛げがないリアル妹にお悩みの人でも分かる,伏見つかさ作品

『ねこシス』(著者:伏見つかさ,イラスト:かんざきひろ/電撃文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#002のサムネイル/一番いい妹を頼む。「放課後ライトノベル」第19回は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない7』を紹介するわけがない
 著者の伏見つかさは2006年,電撃文庫から『十三番目のアリス』でデビュー。以後同レーベルから『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『ねこシス』を発表。そのほか,ゲーム「名探偵失格な彼女」ではシナリオを担当(同作は第1話がVA文庫より小説として刊行されてもいる)したり,アンソロジーに参加したりするなど幅広く活躍している。
 現時点での代表作と言える『俺妹』は,コミック化,ドラマCD化,トレーディングカードゲーム化されているほか,本文にもあるように2010年10月からTVアニメが放映,2011年1月にはPSP用ゲームの発売が予定されている。
 『俺妹』では作中に実在のサイト名を登場させるなど,オタクのコア層に向けた要素で話題を呼んだが,著作を通してみると異能バトル(『十三番目のアリス』),学園探偵もの(『名探偵失格な彼女』),ハートウォーミングな物語(『ねこシス』)と作風の幅は広い。その中でも,『俺妹』と同じくかんざきひろとコンビを組んだ『ねこシス』には,『俺妹』のプロトタイプ的な要素が含まれているとのことなので,『俺妹』から入ったファンもぜひ押さえておきたいところ。

■■宇佐見尚也(ライター/綺羅星十字団)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「『俺妹』のキャラの中では麻奈美とアプリボワゼしたいですね」と語る仮免スタードライバー・宇佐見氏が,例年ライターとして制作のお手伝いをしている「このラノ」の今年度版,『このライトノベルがすごい!2011』が発売されました。この記事が掲載されるころにはお店に並んでいるはずなので,近所の書店を今すぐチェック! その隙に黒猫はもらっていきますね。
  • 関連タイトル:

    俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル

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