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ニャル子,宇宙へ! きわめて心騒がされる「放課後ライトノベル」第8回は,暗澹たる冒涜的な『這いよれ! ニャル子さん 5』に這い寄ります
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印刷2010/09/04 10:30

連載

ニャル子,宇宙へ! きわめて心騒がされる「放課後ライトノベル」第8回は,暗澹たる冒涜的な『這いよれ! ニャル子さん 5』に這い寄ります



 先日「オタクの三大教養があるとしたら何だろう?」というテーマで友人たちと話しあった結果,「ガンダム」「三国志」「クトゥルー神話」が該当するのではないだろうかという結論に至った。

 すなわち,さまざまなクリエイターが関わっており,派生作品が多数存在すること。どの作品にも膨大な設定が設けられているため,味わい尽くすのに膨大な時間がかかること。しかも幅広い世代に浸透しており,和洋中それぞれ揃っているあたりも,我ながらバランスが良くていい感じがする。気のせいかもしれないけど。

 しかし,三大教養を適当にでっちあげたものの,クトゥルー神話はほかの二つに比べて少々ハードルが高いかもしれない。
 例えばガンダムと三国志だったら,定期的に新作のアニメや漫画などが発表されており,現在も「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」という,教養コラボと言ってもいい(?)アニメが放映されているくらいなのだが,クトゥルーの場合なかなかアニメ化なんてしてくれない。

 クトゥルー世界の創始者であるラヴクラフトの小説も少々読みづらく,TRPGの名作「クトゥルフの呼び声」も一緒にTRPGをプレイしてくれる友人がいなければ,体験するのは難しい,なかなかとっつきにくいジャンルではある。
 これでは世間の人にクトゥルーの魅力を分かってもらえないじゃないかと全国四十万人(推定)のクトゥルーファンもお嘆きであろう。

 だが,そんなクトゥルーのハードルの高さを解決してくれる作品がライトノベルにはある! そんなわけで,今回の「放課後ライトノベル」ではアニメ化も決定し,クトゥルーを知っている人も知らない人も楽しめる,『這いよれ! ニャル子さん』を紹介するのだ。いあいあ!(挨拶の言葉)

ニャル子,宇宙へ! きわめて心騒がされる「放課後ライトノベル」第8回は,暗澹たる冒涜的な『這いよれ! ニャル子さん 5』に這い寄ります
『這いよれ! ニャル子さん 5』

著者:逢空万太
イラストレーター:狐印
出版社/レーベル:ソフトバンククリエイティブ/GA文庫
価格:641円(税込)
ISBN:978-4-7973-6148-3

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●擬人化される旧支配者たち


 まず,正式なクトゥルー神話を知らない人のために説明しておくと,そもそもの始まりとなっているのは,H・P・ラヴクラフトが生み出した数々のホラー小説だ。その作品世界をラヴクラフトの友人であったオーガスト・ダーレスが体系化し,多数の作家がその小説世界を元に作品を創作した。これらの作品の中には,旧神や旧支配者などと呼ばれる,人智を超越した存在が多数描かれているため,そのようにして生まれた数々の創作物が,まとめて「クトゥルー神話」と呼ばれている。

 しかし,『ニャル子さん』に出てくるキャラクターは神や支配者などではなく,はるばる宇宙からやってきた宇宙人なのだ。
 この世界でのクトゥルー神話は,ラヴクラフトやダーレスが地球にやってきた宇宙人たちと遭遇し,その経験を元にして書いたノンフィクションに限りなく近いフィクションという設定になっている。

 では,なぜ宇宙人たちが地球にやってくるのかというと,地球の娯楽作品――映画やゲームや読み物など――が宇宙的に広く価値を持っているからだ。そして本作のヒロイン,ニャル子もそんな地球の娯楽が大好きな宇宙人の一人なのである。

 元々は悪い宇宙人から主人公の八坂真尋(やさかまひろ)を守るためにやってきたニャル子だったが,仕事そっちのけでアニメショップで買い物を楽しむわ,護衛のためと称して勝手に真尋の通う学校に転校してくるわと,やりたい放題。
 護衛の任務が終わったあとも何かと理由をつけて八坂家に居座り,近頃ではむしろ彼女の存在が原因となって,日々いらぬトラブルが巻き起こっている。

 そんな彼女の元ネタになっているのは,クトゥルー神話に君臨する旧支配者の一つ「ニャルラトホテプ」
 『ニャル子さん』でのニャルラトホテプは銀髪碧眼の美少女の姿だが,本来のクトゥルー神話では,吐き気を催す肉の塊として触手や腕をニョロニョロ伸ばすことから「這い寄る混沌」と呼ばれたり,どんな姿にでも変身できることから「無貌の神」とも呼ばれたりと,さまざまな姿と異名を持つ。
 さらにたびたび地球を訪れてはサバトを牛耳ったり,核兵器の開発に手を貸したりといろいろな悪だくみを働き,人類を嘲笑うかなり邪悪な存在なのである。ニャル子のトラブルメーカーっぷりも,ある意味元ネタどおりといえるのかもしれない。

 ちなみに『ニャル子さん』の中でのニャルラトホテプというのは個人名ではなく,種族名。“ニャルラトホテプ星人”みたいなニュアンスだとか。
 また,作中に登場するクトゥルー神話由来のキャラクターは当然ニャル子一人にとどまらず,「クトゥグア」のクー子に,「シャンタク鳥」のシャンタッ君など,元ネタを知っている人ならばニヤリとしたり,苦笑いを浮かべたりすること間違いなしの顔ぶれが勢ぞろい。

 どいつもこいつも元のクトゥルー神話からは,まったくかけ離れたキャラに描かれているが,原作の設定を忠実になぞっている部分も多いから意外と侮れない。
 例えば「ハスター」のハス太なんてのは,クトゥルー神話からは全然想像もできないショタっ子として描かれているが,ちゃんと元ネタどおり全身黄色尽くめの格好をしていたりして,そういったところは原作に忠実だったりするのだ。


●パロディの連発に君はついていけるか!


 本作の特徴は何と言っても,クトゥルーを中心とした,強烈なパロディネタの数々だ。
 例えば小道具一つとっても,「名状しがたいバールのようなもの」「冒涜的な手榴弾」なんていう,いかにもクトゥルーっぽい言い回しが使われており,宇宙的な通販サービスには「ヤマンソ・ドットコム」と,クトゥルーの邪神とどこかで聞き覚えがあるサービスを組み合わせたような名前がつけられている。
 また,目覚まし時計のアラーム音が「テケリリリリリリ」だったり,「若いうちのタイタス苦労は買ってでもしろ」などという,どれだけの読者がついてこれるか怪しいフレーズまであったりと,全編クトゥルー尽くし。

 さらにクトゥルーだけではなく,マンガや特撮,ゲームのネタもふんだんに盛り込まれている。
 普段の何気ない日常会話から一見シリアスな戦闘シーンに至るまで,よく見たらどこかで聞いたようなフレーズが,ほぼ全ページにわたって連発されている。読み終わったあとに,ちょっと気になった台詞なんかを,ネット上で検索してみるのも面白いだろう。

 そして,パロディネタが盛り込まれているのは文章だけではない。例えば表紙に描かれているニャル子は,2巻以降は毎回仮面ライダーの変身ポーズを取っているし,最新5巻でニャル子が「ビビビビビン」とびんたを炸裂させるシーンでは,イラストが某妖怪漫画タッチで描かれていたりと,細かいところでも遊び心が満載なのだ。


●ニャル子,宇宙へ! 最新5巻の内容は!?


 ルルイエや幻夢境(ドリームランド)など,毎回クトゥルーゆかりの地に行くのが,『這いよれ! ニャル子さん』のお約束となっているが,最新巻で向かう先は,プレアデス星団にある「セラエノ図書館」。全宇宙の叡智を収めているというだけあって,『ネクロノ・ミカン絵日記』『邪神様のメモ帳』『ルルイエ以外全部沈没』など,どこかで聞いたような怪しげなタイトルの本が盛りだくさん。

 ニャル子が返し忘れていた本を返却するために,星間航行機ビヤーキーでセラエノ図書館へ向かった真尋たちだが,図書館では二人組の宇宙人,ツァールロイガーが何かを求めて,禁書保管庫を荒らしていた。果たしてこの二人組の目的は? ニャル子が返し忘れていた本は関係あるのか? とまあ話は宇宙規模だが,やってることはいつもどおりのドタバタギャグ。だがそれがいい。

 このようなギャグ全開の本作に対して,古くからのクトゥルーファンの中には眉をひそめる人もいるかもしれない。しかし,クトゥルー神話というジャンル自体が,ラヴクラフトが書いた小説に,後世の人々がいろいろな設定を積み重ねて形を成したもの。ならばこそ,このような作品を受け入れる度量の広さがクトゥルー神話にはあるのではないだろうか。

 最後に作中で出てくるこの言葉で締めよう。
「あなたがクトゥルー神話だと思うものがクトゥルー神話です」

■読むとSAN値が下がる,ライトノベルのクトゥルーモノ

『風に乗りて歩むもの』(著者:原田宇陀児,イラスト:ringo/ガガガ文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
ニャル子,宇宙へ! きわめて心騒がされる「放課後ライトノベル」第8回は,暗澹たる冒涜的な『這いよれ! ニャル子さん 5』に這い寄ります
 『ニャル子さん』でクトゥルー神話に興味を持ったはいいが,どこから手をつけていいのか分からない。そんなあなたにお勧めするのが,学研M文庫から出ている『クトゥルー神話事典』(著:東雅夫)。人名・用語解説,作家名鑑,歴史年表と,これ一冊でクトゥルーに関するデータは大体網羅できる。シンプルなデータだけでは満足できない人にはイーグルパブリシングから出ている『萌え萌えクトゥルー神話事典』がお勧め。クトゥルーのさまざまな有名キャラが擬人化され,タイトルどおり萌え萌えなイラストになっている事典だが,内容は結構しっかりしている。
 さて,クトゥルーを扱っているライトノベルでは,ほかにどんなものがあるか。まずはガガガ文庫の『風に乗りて歩むもの』(著:原田宇陀児)。アメリカを舞台に,少女とタクシードライバーの逃避行を描いたロードストーリーだ。ハードボイルドな親父に,ローラーコースター上からの人体消失の謎,そしてクトゥルーと,さまざまな要素が目白押し。ちなみにタイトルは,オーガスト・ダーレスの同名の小説から取られている。
 お次は角川スニーカー文庫から出ている『斬魔大聖デモンベイン 機神胎動』(原作:鋼屋ジン 著:古橋秀之)。原作は,クトゥルーに巨大ロボットを持ち込んだことで,「ラヴクラフトも草葉の陰で卒倒」と大いに話題を呼んだニトロプラスのゲームだが,ノベライズ版では,古橋秀之が加わったことでその設定がさらに強力に。パンチカードと蒸気で巨大ロボットが動き,2作目の「軍神強襲」では地球に火星人が襲来! 原作を知らない人にもぜひ手に取ってもらいたい作品だ。
 ライトノベルに限らず,クトゥルーを使ったネタは,いろいろな漫画やアニメ,ゲームに紛れ込んでおり,知っているとニヤリとできるケースが多数ある。これまで興味がなかったという人もこれを機にクトゥルーについてちょっと調べてみたり,原典であるラヴクラフトの小説を読んでみたりするのも良いのではないだろうか。いあいあ(別れの挨拶)。

■■柿崎憲(ライター)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。本文の端々から,本人のSAN値(正気度のこと。宇宙的恐怖に触れるなどしてゼロになると発狂してしまう)が底を尽きかけているのではないかと不安にさせられる柿崎氏。クトゥルーの魅力について熱弁を振るうも,誰も耳を傾けてくれないため,最近では「三国志大戦」や「ガンダムカードビルダー」に対抗して,一人で自作のクトゥルーカードを作ったりしているとか。ヤダ,何その冒涜的なカード……完成したら一緒にコミケで売りましょう!
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