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「来年は200名規模のスケールに!」インディーズゲームデベロッパO-GAMESを率いる元「鉄拳」シリーズ開発者,神江 豊氏インタビュー
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印刷2009/12/28 17:02

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「来年は200名規模のスケールに!」インディーズゲームデベロッパO-GAMESを率いる元「鉄拳」シリーズ開発者,神江 豊氏インタビュー

日本のゲーム開発力は,相対的にかなり低下している


4Gamer:
 さまざまなタイトルの開発に携わってきた中で,常に心がけていたことはありますか?

神江氏:
 それはやっぱり“面白さ”ということになるんですが,その中身はゲームによって変わります。どこまでそのゲームの趣旨を理解し,どこまで面白さを引き出せるか。自分はずっとアーケードゲームを作ってきたので,入り口の“遊びやすさ”と,繰り返し遊びたくなる“奥の深さ”には常にこだわりを持っていました。
 コインを投入してゲームをプレイするというのは,一種の“労働”に近いものがあると思うんですが,そのインタラクションに対して,どこかでそれ以上のリアクションを返してあげる。そのためには,自分のすべてを投げ打っても構わないというつもりで取り組んできました。

4Gamer:
 個人の熱意がダイレクトにゲームに反映できたのは,当時の開発チームが現在ほど大規模ではなかったからなんでしょうか?

神江氏:
画像集#009のサムネイル/「来年は200名規模のスケールに!」インディーズゲームデベロッパO-GAMESを率いる元「鉄拳」シリーズ開発者,神江 豊氏インタビュー
 確かにそれもありますが,現在でも,ゲーム開発における主要4パート,「企画」「プログラム」「デザイン」「サウンド」を統括する人間がどれだけゲームを愛しているか,提案力があるかで,そのゲームの面白さがほぼ決まります。
 もっと言ってしまうと,その製品の売れる/売れないは,さらに前の段階――アクションなのか,アドベンチャーなのか,あるいはFPSなのかといったテーマ選択と,その中でさらに,セクシーなのか,バイオレンスなのか,それとも萌えなのかという,大枠の選択でほとんど決まってしまいます。
 とはいえ,それだけではゲームの真の味は出ないので,いま言ったようなゲームへの愛情や施工段階での緻密さ,これらすべてが揃って初めて面白いゲームになるんです。

4Gamer:
 個人の情熱を汲み上げて面白いゲームに仕上げていくという,そうした開発手法は現在でも可能でしょうか?

神江氏:
 可能か不可能かで言えば,もちろん可能です。要は,スケールが大きくなっているだけですから。それに,ある意味では当時よりも難度は下がっていると思います。というのも,シリーズものなどを作る場合,ゲームデザインから行う必要がないからです。
 そういう方向性は,ゲーム開発において失敗が許されないようになってきたことから出てきたもので,失敗をしないためには当然,あまり冒険をしなくなりますよね。だから,そういう面から見るとゲーム開発の安定度は高くなっているんです。

4Gamer:
 確かに安定はすると思いますが,ゲームの面白さにはつながらない気がします……。

神江氏:
 ええ。だから最終的には,チームをうまくコントロールできるかどうかというのが現在ではより強く求められていて,それはもう個人の技量ではなく,チーム内での信用度とか,ある種のカリスマ性の問題だと言い換えることができるかもしれませんね。

4Gamer:
 なるほど。

神江氏:
 それと,もう一点大事なのは,ツールの整備です。少人数のプロジェクトでも,ダメなものはダメなんです。一人の企画者が,企画・立案時点に頭の中でどれだけきっちり設計しているか。それを実現するための方法論として,プログラマーがどれだけツール化しているか。この二つの重要性は昔も今も変わっていないと思います。
 よく出来ているゲームというのは経験上,調整できるように作られているんですね。なぜ今,日本が海外勢に押されているかというと,エンジンエディターと呼ばれる開発ツールの整備をこれまで軽視してきたからです。

4Gamer:
 確かに技術力の面で見ると,日本の優位性はすでになくなっていると感じます。

神江氏:
 日本のゲーム開発力は今,相対的にかなり落ちてきています。その理由は,オリジナルタイトルを作るチャンスが減ってきたことにあります。企業に入ってもオリジナルタイトルを作るチャンスはほとんどないし,あったとしても,携帯アプリのミニゲームを1か月半で作りましょう,みたいな。
 日本がゲームの輸出国と呼ばれていたころは,ゲーム作りのノウハウを持った少数の会社が利益を得やすい環境がありましたが,今はもう,ノウハウが世界中に散らばってしまっています。企業としてゲームを作り,それによって収益を得るというビジネスモデルが転換期を迎えているんです。


ソル エンタテインメントって何をしてる会社なの?


4Gamer:
 ナムコで「鉄拳」の開発といえば,ゲームクリエイターの花形といってもいいと思いますが,辞めようと思ったきっかけは何だったんですか?

神江氏:
画像集#010のサムネイル/「来年は200名規模のスケールに!」インディーズゲームデベロッパO-GAMESを率いる元「鉄拳」シリーズ開発者,神江 豊氏インタビュー
 いろいろありますが,大きいのはナムコからバンダイナムコゲームスに変ったことです。ナムコが好きだという理由の中に,黄金期の作品であったり,社風であったり,当時の社長だった中村雅哉氏だったりというのがあって,要するに“ナムコ”のファンだったんです。
 それと同時に,もう少しインターネット寄りの仕事がしたいという気持ちもあって,だったらクリエイターとしての仕事に一区切りつけて,今度は自分で経営をやってみるのも面白いんじゃないかなと。自分としては,ナムコ最後の日に辞めようと思っていたんですが,有給が残っていて,バンダイナムコゲームスに1か月間だけ籍を置いていました(笑)。

4Gamer:
 そのバンダイナムコゲームスを退職して,ソル エンタテインメントを設立したのが2006年のことですね。その当時のソルの事業内容はどういったものだったんですか?

神江氏:
 事業内容は今もあまり変わってなくて,創業時から企画・プロデュース会社として,ほかの企業の企画書や仕様書の作成のお手伝いをさせていただいています。

4Gamer:
 それはゲームの企画・開発の提案といったことですか?

神江氏:
 市場を先読みしての,あらゆるハードウェアでのゲームやサイトを企画・提案できるのが強みなので,もちろんそれもあります。また,「こういう企画書を書いてほしい」というオファーに沿った企画書の作成も行っています。これは例えば,クライアント側である企画について専属で人をアサインするのが難しかったり,経験が少ない人しかいなかったりしたときに,こちらで代わりにその企画書などを作成するといった感じです。

4Gamer:
 ソルの企業情報サイトを拝見すると,中小企業向けのIT支援事業なども含まれていますね。

神江氏:
 そうですね。もっとインターネット寄りの事業として,そういったことも行っています。創業300年という老舗の和菓子屋さんのECサイトなどもやっているんですよ。

4Gamer:
 創業300年!? それって江戸時代から続いてるってことですよね。

老舗の和菓子屋「松屋
画像集#020のサムネイル/「来年は200名規模のスケールに!」インディーズゲームデベロッパO-GAMESを率いる元「鉄拳」シリーズ開発者,神江 豊氏インタビュー
神江氏:
 福岡にある松屋さんという和菓子屋さんで,日本三大銘菓の一つに数えられる「鶏卵素麺」という和菓子で有名なんですが,これがすごくおいしいんですよ。

4Gamer:
 (サイトを見ながら)「ポルトガル伝来の南蛮菓子」ですか……。
 ところで,ソル自身でゲーム開発を行おうとは考えなかったんですか?

神江氏:
 ゲーム開発は,経営面から見るとやはりギャンブルになってしまいますからね。ナムコ時代も相当頑張りましたが,打率でいうと3割打者にいったかどうかというところで,それでも普通に考えると難しいことだと思います。自分はオリジナルタイトルを数多くやらせてもらいましたが,何かがヒットすると普通はシリーズになってしまう。
 自分の中に,シリーズ開発がメインになっていくと,オリジナルタイトルの開発力が落ちてしまうという思いがあって,そのことも辞めた要因の一つになっているんですが,会社や業界自体がオリジナルタイトルをあまり作らなくなっていました。だけど,クリエイターである以上,新しいものを作っていきたいし,作らなければいけないと思うんです。

4Gamer:
 最近は続編ものやシリーズものが目立つようになって,これだというオリジナルタイトルが少なくなりましたね。

神江氏:
 オリジナルタイトルはお金がかかりますからね。開発費より宣伝費にお金をかけないといけないというのが,ゲーム業界ではすでに前提になっていて,より宣伝費のかからないシリーズもののほうが自動的に売れてしまうし,その結果,そちらに宣伝費が集まってしまう。より低いリスクで,より高い利益を得ようとすれば,企業活動がそちらに寄っていくのもある意味当然ですが。

4Gamer:
 そういった傾向はいつごろから始まったんでしょう?

神江氏:
 PlayStationくらいじゃないでしょうか。あそこでワーッといろいろなゲームが出ましたが,結局売れたのはシリーズものや宣伝費をかけたものだったという学習をしたメーカーさんが伸びて,そうでない会社は調子が悪くなっていったように思います。

4Gamer:
 PlayStationのころから,さらに開発費がかかるようなったことも要因としてあるんでしょうか。

神江氏:
 それもありますね。


「ウルティマ オンライン」と「ハーフライフ」がやっぱり最高!


4Gamer:
 ところで,最近は何かゲームをプレイしましたか?

神江氏:
ウルティマ オンライン
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 最近はあまりプレイしてませんね。個人的には,「ウルティマ オンライン」と「ハーフライフ」でいったん“上がっちゃった感”があって。やらないといけないとは思うんですけどね。

4Gamer:
 そうですか。最近,これだと思ったゲームがあればお聞きしようと思っていたのですが。

神江氏:
 例えば,任天堂さんが2年くらい前から取り組んでいる一般層向けの新たなゲームは,やはりすごいなと思いますが,マルチプレイの究極形とシングルプレイの究極形という大きな枠で見ると,ほとんどのゲームは「ウルティマ オンライン」と「ハーフライフ」の派生でしかないというのが自分の考えですね。

4Gamer:
 「ウルティマ オンライン」はMMORPGの草分け的存在ですし,現在までサービスが続いているという息の長さも驚異的です。もう一つ挙げられていた「ハーフライフ」については,どこを高く評価しているんですか?

神江氏:
ハーフライフ
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 「ハーフライフ」はマルチプレイでも遊べますが,一人で遊ぶゲームの究極形だと思います。それまでにも,シングルプレイのアドベンチャーものはありましたが,「映画的なシチュエーションを体験型で進んでいく」「敵が,ちゃんと敵らしい振る舞いをする」「パズル的な要素とアクション要素が絶妙なバランスで入っている」という,“全部盛り”の原型がそこにできあがっている。それ以降のゲームは,FPSであれTPSであれ,その原型の中でバリエーションを付けていけばいいだけです。

4Gamer:
 例えば,その後,より映画的な手法を突き詰めて登場した「Medal of Honor」や「Call of Duty」などの作品はプレイしましたか?

神江氏:
 ほんの少し触った程度ですが,同じだなという感触です。遊び込んでみれば当然,独自の緻密さやAIの作りこみなどもあるでしょうが,それも想像の範囲内だろうと思います。これがあったら,次はこう拡張しようというエッセンスの部分は大方想像できてしまうので,自分の中ではすでに新たな刺激が得られないんです。

4Gamer:
ハーフライフ2
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 では,「ハーフライフ2」はいかがですか?

神江氏:
 実はまだプレイしていないんです。「ハーフライフ2」はいつか100インチくらいのディスプレイと,高性能のPCを用意して遊ぼうと思っているんですが,いまだにそれを買っていないから遊べていない(笑)。

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