岩崎晋也氏
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2008年12月20日,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)は秋葉原でエンドユーザー向けのイベント
「ASUS 年末大感謝祭 2008」を開催した。時期が時期だけに,目を引くような新製品情報などはなかったが,まじめな解説の端々に本音を混ぜ込むスタイルの話術(?)で人気の名物広報,岩崎晋也氏が,今回もポロポロと興味深い発言を行っていたので,今回はそれらをまとめてお伝えしてみたい。
「ASUSは,電源回路には本当に自信を持っている」
ASUSは従来よりマルチフェーズの電源回路を展開してきており,8フェーズはすでに第3世代に移行するなど,熟成が進んでいると岩崎氏。ハイエンド製品で採用される16フェーズも含め,電源変換効率は最高96%に達しており,CPU周辺の発熱は50〜70℃台に抑えられているという。
「他社さんに,『50℃冷える』とアピールしているところがありますけど,理論的にありえない。嘘とは言わないが言い過ぎ……あ,『もう言うな』という指示が(笑)」(岩崎氏)。
また,コンデンサには,105℃の環境で5000時間の動作が可能な,富士通製の長寿命品を採用。仮に75℃で運用したとして,約18年もの利用が可能になっており,マザーボードのライフサイクル中に壊れたりすることはないとのことだ。「これも他社さんの製品で,『(105℃環境で)5万時間動く』と謳っているのがありますが,『5万時間動く』とJISで規定されたコンデンサはありません。桁を間違えているのでは?」とは同氏の弁である。
「Stack Cool 2は,ファンを当てるとびっくりするくらい冷える」
追加の冷却層として機能するStack Cool 2。本機能の紹介時も含め,セッションの端々に,特定の競合を意識した発言が見られた
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マザーボード裏面をヒートシンク化する「Stack Cool 2」については,マザーボードの裏面に風を送ると,「びっくりするくらい冷える」というTipsが示された。
もともとBTX(※高TDPの自社製CPUに対応すべく,CPUの冷却を第一にIntelが考案したフォームファクタ。採用される大型のサイドフロー型CPUクーラーは,マザーボードの裏面にも風を送れるようになっていた)と組み合わせたときに,通常のマザーボードよりも20℃下げられるように設計されていたものの名残だそうだ。
「他社さんのマザーボードで,内部に厚めの銅板を入れることで,『放熱性が高まる』というのがありますが,レイヤーの中にあったら,放熱効果は得られません」「Stack Cool 2は通常のマザーボードにプラスする放熱層なので,例えば8層基板のマザーボードなら,実際には9層ということになります」(いずれも岩崎氏)
「Glaciatorは,隠れた高性能GPUクーラー」
「そもそもグラフィックスカードは,(オリジナルデザインを謳ったものでない限り)どこのメーカーのものも同じで,NVIDIAなりAMDなりから買ってきて,出しているだけ」と始めた岩崎氏は,「PCの電源を入れたときに,グラフィックスカードベンダーの名前が出るような製品は,グラフィックスカードのBIOS『VBIOS』に,ちゃんと手が入っている」という見分け方を紹介。ASUS製品は,リファレンスデザインのカードであっても,VBIOSはきちんと書き換わっているため,ビデオ高画質化機能「Splendid」や,GPUの管理機能「SmartDoctor」,フルスクリーンでのゲーム中にいくつかの操作を行えるオンスクリーンディスプレイ「GamerOSD」などを利用できるとした。
SmartDoctorには,システムの負荷に応じた自動オーバークロック機能(※手動設定も可)が用意され,一方,GamerOSDにも,ゲーム中にGPUコアクロックを引き上げる機能が用意されているが,「GamerOSDは,本当にただクロックを引き上げるだけ」(岩崎氏)で,ハングアップなどの危険があるため,SmartDoctorのほうを推奨するとのこと
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ASUSオリジナルデザインを採用した製品の例。左に見えるのがGlaciatorだ。2Dアプリケーション実行時にはファン回転をオフにする「MATRIX」シリーズ(右)も,「現在はGeForce 9600 GT搭載製品のみだが,今後は広く展開していく」とのこと
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また,リファレンスデザインのカードが流通してしばらく経つと,ASUSオリジナルのクーラーを搭載したモデルが登場してくるが,とくにミドルクラス〜ハイエンドGPU搭載製品で採用されるオリジナルのGPUクーラー「Glaciator」(グラシエータ−)が,非常に高い冷却能力を持っているとアピール。「見た目はアレなんですが(笑) 実は『クーラー単体を売ってくれ』という話がくるほど,使った人達からの評価は高いんです」(岩崎氏)。
このほかイベントでは(やはり岩崎氏の本音コメント付きで)12月の新製品が紹介されたので,最後にそのなかからいくつかを,写真メインで紹介しておきたい。
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| AMD 780G+SB700搭載のmicroATXマザーボード「M3A78-VM」。DisplayPortとDVI-I,D-Subのどの組み合わせでもデュアルディスプレイ出力を行える同製品を,12月中に8000〜9000円程度で発売予定という。岩崎氏いわく,「地味に見えるかもしれませんが,こういうのが年末にはよく売れるんです」 |
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| Intel純正クーラーと同じプッシュピン型を採用しつつ,TDP 180Wに対応するという2ファン仕様のサイドフロー型CPUクーラー「Triton 81」。LGA1366対応となる本製品の出荷はすでに始まっている |
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| 本気でやっているというサウンドカード製品シリーズ,Xonarについても紹介された。「個人的には,(グラフィックス機能統合型チップセットの)オンボードグラフィックスで満足できないといってグラフィックスカードを買う人達が,サウンドをオンボードで我慢している理由が分からない。3時間聞けば,二度とオンボードサウンドには戻れなくなる」とアピールしていた |
なおイベントでは,ASUS製品購入者に先着で容量16GBのSDHCをプレゼントするキャンペーンや,アンケートに答えるだけで参加でき,グラフィックスカードなどが当たるくじ引きなどが行われ,好評を博していた。