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自らの挑戦する気持ちが,ゲーム開発者への道を開く。「ゲームジャムから始める,クリエーターへの一歩」聴講レポート
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印刷2023/10/14 08:00

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自らの挑戦する気持ちが,ゲーム開発者への道を開く。「ゲームジャムから始める,クリエーターへの一歩」聴講レポート

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 札幌で開催された「Sapporo Game Camp 2023」のメインの企画として行われたのが,テーマに沿ったゲームをゼロから企画して開発し,その成果を披露する「ゲームジャム」だ。学生を中心とした参加者と,札幌に拠点を置くゲーム企業のクリエイターがチームを組み,ゲームという形でさまざまなアイデアが生み出された。

 ゲームジャムは,一体なにが魅力なのか。参加する意義はどこにあるのか。Sapporo Game Camp 2023の初日(2023年10月6日)のゲームジャム開始前に,まさにその疑問に答えるトークセッション「ゲームジャムから始める,クリエーターへの一歩」が行われた。登壇者は,ゲームジャム運営の第一人者であるセガ札幌スタジオ社外取締役の中林寿文氏だ。

中林寿文氏。ゲームジャム(と博物館巡り)をライフワークとし,2011年から国内のさまざまなゲームジャムに運営として携わる。関連研究や文部科学省事業,講演なども行っており,Sapporo Game Camp 2023のゲームジャムでも運営,進行を担当した
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「Sapporo Game Camp 2023」公式サイト



自らの挑戦する気持ちと楽しむ姿勢がゲーム開発者への道を開く


 そもそもゲームジャムとはなにか。中林氏は「ゲーム専門のハッカソン」だと話す。ハッカソン(Hack+Marathonの造語)とは,IT関連の技術者の間ではおなじみ,特定のテーマのアプリやソフトウェアを限られた期間に集中して開発し,その成果を発表しあうイベントである。それのゲーム版がゲームジャムというわけだ。

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 ハッカソンには,人材育成や社内外のコミュニティ構築など,いわゆるオープンイノベーションの目的があるが,そういった部分もゲームジャムはハッカソンと同じで,国内外でさまざまな規模の企画が活発に行われている。
 大きな例として挙げられるのが,2009年から例年1月末に行われている「Global Game Jam」(以下,GGJ)だろう。プロアマ問わずさまざまな職歴を持つ開発者が会場に集まり,テーマに沿ったゲームを48時間で企画・開発し,最終的にWebで公開するという,世界最大のゲームジャムだ。
 2020年には118か国,934会場,4万8700人が同時参加するほどの規模で行われ,オンラインで実施された2年間(2021年,2022年)は一時的に参加者が減ったものの,今年(2023年)は4万人を超える参加者を記録し,コロナ禍以前の規模を取り戻してきている。

GGJ初回から2023年までの規模の推移
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 もう一つ例として挙げられたのが,2011年から2017年まで行われた「福島GameJam」だ。東日本大震災に見舞われた地域の復興支援と人材育成を目的に始まったゲームジャムで,東北の学生と県外から集まったプロのゲーム開発者の混合チームによるゲーム開発が行われた。福島の南相馬市を中心に開催され,2015年には4か国,18会場,557人が参加。日本発祥のものとしては最大規模の国際ゲームジャムとなった。

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 「短期間でゼロからチーム開発を体験できる」「仕事ではないので遠慮なくチャレンジできる」「適切な準備で人材育成につながる」など,ゲームジャムにはあらゆる面で魅力と利点がある。そのなかで,中林氏が何より魅力として強調したいことが,「“つくる”は楽しい!」ということだという。

 つくるを楽しむうえで大事なのが,「遠慮をしない」ことだ。年齢や立場のことは考えず,いいものを作るためにチームとして意見を戦わせる。“自分たちが考える,最高に面白いものを自由に作る”を目的に,「失敗を恐れない」「失敗なんかない」という考えでチャレンジする。
 「やらないと決めない」ことも重要だ。自身の得意分野だけをを担当するのではなく,やったことがない作業も積極的に奪っていくぐらいの勢いを持って臨むことが楽しむコツだと中林氏は語る。

 決められた期間で,完成してもしなくても必ず開発が終わるというルールによって,仕事ではできないようなチャレンジブルな企画が生まれる。チームが限られた人数で編成されているため縦割りの関係は崩れ,1人が複数の役割を担うことになる状況によって,普段やったことのない作業を経験できる。参加者にとっての利点が多いゲームジャムは,楽しむ姿勢が参加者自身のプラスを生むというわけだ。

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 続いて,GGJの札幌会場の運営を担当するインフィニットループの三谷実緒氏を迎え,ゲームジャムの運営をテーマとした話が届けられた。
 札幌は,第2回からGGJに参加している地域で,企画の参加や運営は楽しいことが多いものの,冬の北海道での開催という地域的な苦労は多いという。チーム編成も毎回頭を悩ませるものの1つで,参加者の個性を見極め,バランスを考えながら編成するのが難しいそうだ。なお,チーム編成の基準はゲームジャムの主催者によって異なり,GGJの場合は“各会場が主催者”というルールのため,会場によって選出方法も大きく異なるという。
 そういったルールのなか,人材育成という目的も考えたうえで編成することは難しく,中林氏は,ギリギリまで考慮して選考したという「福島GameJam」を例にその苦労を語った。

GGJ運営スタッフ インフィニットループ 三谷実緒氏
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 このように,準備段階から苦労が多いゲームジャムだが,三谷氏,中林氏ともにそれ自体も“ジャム”として捉えて楽しんでいるという。ある程度の準備が進み,余裕ができたときに「さらに面白いものを突っ込めないか」と考えることが楽しく,もしそれがよい結果につながらなかったとしても,次の運営の糧として生かせるという。

 GGJ札幌の運営チームの人数は5〜6名と意外に少ないが,2回目から参加していたこともあり,蓄積されている個々のノウハウはかなりのものだとか。その一方でチーム内の世代交代が進まないという悩みもあり,運営に興味を持つ若いゲーム開発者の参加を望んでいると話した。

 中林氏は,開発と運営そのどちらも,「とりあえず面白そうだからやってみよう」という気持ちで参加することに大きな意義があると語る。経験がまったくのゼロでも意外にできることはたくさんあり,それを見つけながら自身の役割を築き,メンバーの一員として動くことが重要だというわけだ。「開発も運営も,とにかく面白さしかない」とさらに熱弁し,そして2024年1月に行われるGGJへの参加も促してトークを締めくくった。

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[2023/10/14 08:00]
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[2023/10/14 08:00]

「Sapporo Game Camp 2023」公式サイト

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