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画像生成AIを安心・安全に活用するための持続的な枠組みの議論と実証を行う。「日本画像生成AIコンソーシアム」設立記者会見レポート
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登壇したJIGAC代表のアマナイメージズ AI倫理対応・政策企画責任者 望月逸平氏は,同団体で日本において画像生成AIを安心・安全に活用するための持続的な枠組みの議論と実証を行っていくという。
活動を通じ,日本が有する著作権資産である著作物の保護とテクノロジーの進化を両立させ,クリエイターが新しい創作物を生み出す知的活動を妨げることなく,日本のAI技術を世界と対等なレベルまで押し上げる起点となることを目指していくと説明する。
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また現在,画像生成AIについて,「データを学習に利用したときの権利許諾が必要となるのはどんな場合か」といった線引き,「画像生成段階において学習データと類似の著作物が生成されるリスクへの対処」「AI生成物が著作物と該当するのはどのようなケースなのか」といった整理が,法的な観点で議論されているとの認識を示した。
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望月氏は,行政関連団体による法律上の整理と並行して,持続可能な画像生成AIの社会利用が実社会で成立するためには,ビジネスサイドが主導した具体的かつ実践的な枠組みの議論が必要だと語る。
そのため同団体には,画像ライブラリ業者,AI開発者,創作者,研究者,有識者,法律家など,さまざまな関係者が企業や業界の枠を超えて集まっており,連携しながら具体的かつ実践的な枠組みの在り方,およびその実現方法について議論を重ねていくと話した。
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望月氏は,オープンデータセットを利用した開発が許される範囲が,今後,著作権法のもと明確化されていく一方で,「著作権法のもとで学習段階において許諾が必要とされる範囲」,あるいは法的な整理に関わらず「権利者・創作者を筆頭にユーザーを含めた関係者の倫理やリスクの許容度として許諾を取ることが必要な範囲」を,しっかりと具体化していかなければならないとする。
具体的には,画像生成AIの学習に利用されてもいいか否かという意思表示と,それらに応じた適切な対価が必要とのことで,その方法と実効性,透明性を確保した枠組みを構築するための議論をしていくそうだ。こうした議論により,画像生成AIの学習段階における権利侵害リスクやトラブルリスクの最小化,ひいては最終的にユーザーが画像生成ツールを利用したときの権利侵害リスクの最小化を目指すという。
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骨董通り法律事務所 弁護士 福井健策氏は,コンテンツホルダーや画像生成AI開発者など,さまざまな関係者が連携して同団体が設立されたことは,非常に意義深いとコメント。また現在,AIと著作権などをめぐる多くの課題について政府やG7などで議論の整理が図られているが,そうした議論を重視しつつ,現場ならではの権利者の同意に基づく学習と収益還元の試みや,AI生成物による権利侵害リスクを低下させる方策などの実証や情報の共有が図られることを期待すると話していた。
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東京大学 次世代知能科学研究センター 教授 松原 仁氏は,AIの研究者の立場から画像生成AIの利点や問題点などを指摘する。画像生成AIの利点は,プロンプト(AIに対する指示)を入力するだけで,対応する画像を短時間で作成できるところにある。抽象的なプロンプトでは画像も抽象的になりがちだが,コツを掴んでプロンプトを工夫すると,かなり精度の高い画像が出てくるという。そうやって作成された画像に対して,最終的に人間が手を加えたものが,コンテストで入賞した事例も紹介された。
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その半面,画像生成AIには問題点もある。画像生成AIはインターネット上にある無数の画像データから学習しているわけだが,望月氏らが指摘したとおり,その画像データの作成者や,あるいは写真を撮ったカメラマンなどの権利がないがしろになっているのではないかと,世界中で議論されていると松原氏は語る。
そうした議論では,「自分の画像データを画像生成AIは学習に使ってほしくない」という作成者の権利が守られているのか,今後守られるのか,画家,イラストレーター,写真家といった画像を作ることを仕事とする人達の仕事を脅かさないか,創造性を侵害しないか,という部分がとくに問題視されているという。
松原氏は「人間とAIが協調してさらなる高みを目指したいと思っている」とし,そのためには「どのように使っていくか,権利をどのように守るか」というルール作りが必要であると語る。そしてJIGACにて,関係者が議論を重ねた結果多くの人にとって望ましい形で,画像生成AIという新しい技術が発展していくことに期待していると話していた。
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シーラテクノロジーズ グループ 執行役員 CAIO 李 天琦氏は,同社がAIを使って不動産取引の業務効率化を図るといった事業に取り組んでいることや,自身がAI開発の責任者であることを紹介した。また以前勤めていたDeNAでは,画像AIの研究開発をしていたそうで,GAN(Generative Adversarial Network)を利用したアニメの生成に関する研究と国際学会での発表などを行っていたことを挙げ,それらAI技術に関する知見をJIGACに寄与していきたいと語った。
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電通グループ AI MIRAI 統括 児玉拓也氏は,同グループが社内向け・社外向けを問わず,さまざまなプロダクトに生成AIを活用しているとし,その一例として,2022年末に電通デジタルがリリースした広告制作プラットフォーム「∞AI(ムゲンエーアイ)」などを挙げた。
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児玉氏によると,画像生成AIを広告などクリエイティブの制作に活用するには,クリアしなければならない課題が多いとのこと。それら課題には,法律自体の解釈がまだ定まっていないことや,法的にOKであっても望月氏らが指摘するように,クリエイターへの配慮やエコシステムをどう作っていくかといった倫理的な問題が含まれているという。
また現在使われている画像生成AIは,学習データが開発している国のものに偏っていることがあるそうだ。そのため,たとえば電通グループが広告用に日本人の顔や日本の風景を生成しようとしたとき,微妙にズレたものが出来上がってしまう問題もあるという。
さらに電通グループは,国内だけでも1000人以上のクリエイターを抱えているクリエイティブの会社としての側面もある。そのためカメラマンやイラストレーターなどクリエイターに貢献するべきであり,JIGACを通じてエコシステム構築の一助になりたいと話していた。
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JIGAC 副代表を務める,FastLabel 事業開発・AI倫理対応責任者 藤原宏貴氏は,実際のビジネスに対する画像生成AIの可能性と課題を紹介した。それによると,まず画像生成AIの開発・運用には数千〜数十万の画像データが必要になるという。膨大な画像量の収集が困難な場合は,データをどのように作るかが重要になるそうだ。
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画像データの作成には,3つの手法がある。「データ拡張」は,元画像に対して回転,拡大縮小,ノイズ付与などの処理を施す手法だ。2つめの「データ合成」は,元画像に対して人工的な修正を施す手法である。そして3つめの手法が,入カしたプロンプトをもとにAIに画像を自動生成させる「データ生成」だ。
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藤原氏は,データ生成について「元画像が必要ないので,データがなくともデータを作れることが大きな強み」としつつも,望月氏らが指摘するように解決しなければならない課題が山積みであると説明する。それらの課題を1つずつ解決していくことによって,日本における画像生成AIの活用を促進し,ひいてはAI自体を発展させていきたいと語っていた。
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