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「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE」のコンセプトとそれを実現するための仕様が語られた開発者向けセッションレポート
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印刷2019/08/22 13:00

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「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE」のコンセプトとそれを実現するための仕様が語られた開発者向けセッションレポート

 Unreal Engine 4(以下,UE4)専門のゲームデベロッパ・ヒストリアは2019年8月4日,ゲーム開発者向けの勉強会「出張ヒストリア!」を東京都内で開催した。
 この勉強会は,Unreal Engine 4の技術セッションを筆頭に,さまざまなゲーム開発の事例を紹介していくというもの。本稿では「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE(パックマンチャレンジ)制作事例 〜Oculus Questを使用した我々の挑戦〜」と題されたセッションをレポートする。

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 登壇したのは,VRアクティビティ「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE」(以下,「PAC-MAN CHALLENGE」)のプロデューサーを務めるバンダイナムコアミューズメントの濵野孝正氏,開発を手がけたヒストリアの金山善春氏小倉裕貴氏佐々木 瞬氏である。

左から濵野孝正氏,佐々木 瞬氏
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気持ちよりも身体を先に動かすことが重要

 
 「PAC-MAN CHALLENGE」はバンダイナムコアミューズメントが開発を手がけた2人協力型フィールドVRアクティビティだ。プレイヤーは8m×6mのプレイフィールド上に出現する迷路をさまよい,ゴーストを避けながら,あちこちに配置されたクッキー(黄色いドット)をすべて回収すればラウンドクリア。制限時間内に全5ラウンドのクリアを目指すという内容である。

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 その最大の特徴は,VRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)にOculus Questを採用している点だ。これにより,従来のVRゴーグルのようにケーブルの制約を受けることなく,プレイヤーは自由に動き回れる。

 「PAC-MAN CHALLENGE」では,サーバーPCとOculus Quest2台を無線LANでつないでいるほか,有線LANでクライアントPCをつないでいる。このクライアントPCは,ディスプレイやスピーカーを使って,プレイ中の様子をプレイヤー以外の人に伝えるためのものだ。

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 開発中の動作検証などは,プレイフィールドに近い広さを持つヒストリアの会議室で行われた。しかし会議室を占有し続けるわけにもいかないため,半分くらいの広さのQAスペースやスタッフ席の周囲で検証することも頻繁にあったという。

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 「PAC-MAN CHALLENGE」の開発期間は2018年末から約8か月を要した。2019年初頭からプロトタイプの開発を手がけ,4月に本開発に入り,7月には稼働に向けてQAおよび実際の設置を行ったとのこと。

 「PAC-MAN CHALLENGE」は,VR ZONEのフィールドVRアクティビティ「ドラゴンクエストVR」が好評だったことを受けて企画されたという。「ドラゴンクエストVR」はプレイヤーがそこそこ重量のある装備を着用し,広い空間を実際に歩き回るため,汗をかいたり,筋肉痛になったりもするが,体験者は皆,「楽しかった」という感想を抱くそうだ。

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 この事実から,濵野氏は「身体が動くとプレイヤーは役になりきって,さらに身体を動かすようになる」ことに気づき,VRアクティビティでは「気持ちよりも身体を先に動かすことが重要」であると実感したという。
 そこで「もっと動き回れば,もっと没入感が高まり,楽しくなるのでは」と考え,「PAC-MAN CHALLENGE」を企画することになったが,当初はパックマンとゴーストに分かれて2vs.2でドロケイ(ケイドロ)をプレイするようなゲームを検討していたそうだ。

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 そして,「クッキーを食べる」「ゴーストから逃げる」「パワークッキーで形勢逆転」という,パックマンが持つ3つのコアを「全身を使って体験する」ゲームにたどり着いた。
 また,もう1つのキーワードとして「複数のプレイヤーで楽しめる」ことを挙げた。濵野氏と佐々木氏は,同じ空間内にいるプレイヤー同士で声を掛けあうことで,さらに盛り上がるのではないかと考えたという。

 こうして生まれた「PAC-MAN CHALLENGE」のコンセプトが,「難しいこと抜きで,気の合う仲間と目的達成を目指して夢中になって身体を動かすおもしろさを楽しめる」である。

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 このように「身体を動かすこと」を突き詰めていくと,体験はスポーツに近づいていくと濵野氏は説明する。実際,「PAC-MAN CHALLENGE」ではディスプレイやスピーカーによって,プレイ中の様子が外部に伝えられ,また音声による実況も入る。待機列に並んでいる人や通りがかった人は,それを見たり聞いたりしながら,まさにスポーツ観戦のように一緒に盛り上がれるのだ。
 佐々木氏は「VRゴーグルから見える部分だけでなく,空間全体で楽しめることを意識した」と話していた。

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 以上をまとめて制作されたのが,「PAC-MAN CHALLENGE」のキービジュアルだ。キャッチコピーは「おもしろさは,汗に出る」。全体のイメージは躍動感とスピード感を覚えさせ,かつデジタル世界にいる雰囲気を醸し出している。

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ヒストリアが制作した「PAC-MAN CHALLENGE」のコンセプトシートも披露された。コアコンセプトをもとに4つの柱を立て,それを実現するために必要な環境や機材などを示している
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全身を“身軽に”動かすための仕様とそれに拍車をかける要素


 続いて,「PAC-MAN CHALLENGE」のコンセプトを実現するための仕様が紹介された。金山氏によると,まずはOculus Questを実際に試してみて,「全身を身軽に使える強みを実感」したうえで,それを最大限に活かそうと考えたという。
 具体的には「全身を“身軽に”使う仕組み」「“全身を使う”に拍車をかける要素」が必要となった。

 全身を“身軽に”使う仕組みは,「ゴーストに触れないようにクッキーを集める」ゲームであることから,「クッキーを使って,全身を使うようにプレイヤーを誘導する」ことを最初に考えたという。
 空間に浮かんでいるクッキー(停止クッキー)は,並べておくだけでプレイヤーが歩き回って回収してくれる。

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 さらに停止クッキーの配置に高低差を付けると,プレイヤーはしゃがんだり,手を伸ばしたり,ジャンプしたりして,より身体を動かすようになる。

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 しかし,それだけではクッキーの配置に沿って動くだけになるので,作業感が強くなる。
 そこで,金山氏らは空間内を一定の法則に従って移動し続けるクッキー(移動クッキー)を用意し,状況に変化を与えた。これにより,プレイヤーはクッキーを追いかけたり,待ち伏せたり,狙って飛びついたりして,直感的・反射的に身体を動かすようになるのである。

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 迷路のレベルデザインにおいても,全身を身軽に使うことを意識したという。「十分な通路幅」「行き止まりを作らない」「全体を見渡せる」を意識し,歩きやすさと視界の良さを優先した,“歩みを止めない”周回型迷路を目指したとのこと。

 さらに床に穴を開け,プレイヤーがまたいだり,ジャンプしたりすることを促し,穴の上にクッキーを配置することで,プレイヤーが身を乗り出してそれを回収することを狙った。
 また,壁に穴を作ったり,アーチを作ったりして,そこにクッキーを配置することで,プレイヤーがのぞき込んだり,かがんだりといった行動を取るようになったという。

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 一方,“全身を使う”に拍車をかける要素では,プレイヤーを妨害してくるゴーストを活用した。プレイヤーはゴーストに接触してしまうと一定時間,クッキーを掴めなくなるが,パワークッキーを取ると撃退できるようになる。
 そのため,プレイヤーは通常のゴーストを見ると回避行動に出るが,パワークッキー獲得後は逆に追いかけ回したり,先回りしたり,あるいは捕まえるために腕を伸ばしたりして,動きに変化が生ずる。

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 こうした過程をまとめて,金山氏は「クッキーを集めつつ,ゴーストの動きに応じた行動を取らなければならないため,プレイヤーはクッキーのない場所でも身体を動かすことになった」と説明した。

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 また,制限時間も“全身を使う”に拍車をかける要素になっているという。金山氏によると,制限時間はプレイヤーに焦りを与え,残り時間が少なくなるほどにプレイヤーはより大胆な行動に出る。つまり,より身体を大きく動かすようになるというのだ。

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「PAC-MAN CHALLENGE」の危険対策も紹介された。プレイヤー同士の接触やプレイヤーの走行,予期せぬ不具合など,さまざまな危険な状況が想定されるが,「とにかく動きを止めること」が重要だという
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開発初期のレベルデザインや採用が見送られたギミックなども公開された
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セッションの後半には,小倉氏から「PAC-MAN CHALLENGE」の開発中に得られた技術的知見が紹介されている
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「MAZARIA」公式サイト

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