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Access Accepted第845回:「まさか!下宿生が 美女ですって?2」のリリースで盛り上がる実写ゲームジャンル
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印刷2025/12/08 11:00

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Access Accepted第845回:「まさか!下宿生が 美女ですって?2」のリリースで盛り上がる実写ゲームジャンル

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 FMV(フルモーションビデオ)という言葉は,日本ではあまり聞きなれないかもしれないが,1990年代,CD-ROMの商業化とともにアメリカを中心としたゲーム業界で一時的に持てはやされたことがある。要は「実写」を用いたゲームのことだ。もはや死語と化しているかと思いきや,ここのところはアジアを中心に大きく発展しており,韓国産の「まさか!下宿生が 美女ですって?2」も,欧米で話題になっている。


復活したFMVゲームの人気の秘密


 筆者がFMVという言葉を知ったのは1990年代のことだ。映画のように毎秒24フレーム以上の実写をゲームのカットシーンなどに織り交ぜる,もしくはゲーム自体を実写で動かすというものである。
 マルチメディアという新しい時代の到来を告げるネーミングを広めた庄野晴彦氏の「Alice: An Interactive Museum」(1990年)を皮切りに,当連載の「第434回:怪作ナイトトラップは復活できるのか」で紹介したことがある「Night Trap」(1992年),さらにはホラーアドベンチャー「The 7th Guest」(1992年)や,俳優マーク・ハミルさんが主役を張ったスペースコンバットシムとして日本でも知名度があった「Wing Commander III: Heart of the Tiger」(1994年)などがリリースされた。

1990年代のFMVゲームでも代表的なのが「Night Trap」。当時のB級映画風のノリに“バカゲー”感が漂っていた。2017年には日本語未対応ながらも「25周年記念版」がSteamストアページで販売されている
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 FMVというのは正確にはジャンルではなく,ゲームの表現手法の1つとして広まっていった用語だった。媒体がフロッピーディスクからCD-ROMの時代に移行したことで,その空き容量を埋めるための素材として実写映像が重宝されたのだ。

 そんなFMVも,3Dグラフィックスの進化とともにあまり使われないゲームテクノロジーとなっていったが,ここ最近は恋愛ゲームとして実写ゲームが大きく成長し始めている。その震源地となっているのはアジアであり,一説によるとショート動画を楽しむ「マイクロドラマ」が大流行になっていることから,その制作システムがゲームにも影響を及ぼし始めているという。

 簡単に言えば,単純な選択を行いながら主人公である自分の色恋の行方を追っていくというインタラクティブドラマであり,Steamなどでの広範囲な販売を目的にしているために,お色気もキスをするために顔を近づけるとか,胸の谷間が見えるといった程度に抑えられている。そしてちょっとした選択の間違いが,理不尽なほどバッドエンドに直結する。

 その実写恋愛ゲームの大きな潮流になったのが,韓国のStorytacoというスタジオが2024年10月にリリースした「まさか!下宿生が 美女ですって?」だ。
 親から譲られた下宿に住む5人の美女たちとの恋愛ドラマを楽しむという内容で,英語や日本語を含む多言語ローカライズが行われていたことに加え,可愛い系だけでなく欧米受けもしそうな大人びた女優兼インフルエンサーのドン・グラン(Dong Geuran)さん(ゲーム中ではグラン役)を起用したことなどもヒットにつながったという。

「まさか!下宿生が 美女ですって?」で絶大的な人気になった“ワイフ”がグラン。その続編にも父の企業を受け継ぐ美人CEOとなって再び登場している
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 社会的現象としては,この数年にわたって「欧米のゲームスタジオは,ゲーム中の女性から故意に女性らしさを消している」と言われる風潮への反発として,こうした見た目重視のアジア産ゲームが受け入れられ始めたのかもしれない。コロナ禍で異性と出会う機会がめっきり減った若者たちの,気軽なデートシムという位置付けになった可能性もある。欧米の人気YouTuberであるAsmongoldさんらが,熱狂的なプレイ動画を公開したことなどもブームに火が付く原因になったのだろう。

新世代FMVゲームには,2023年に韓国のMonster Guideが開発し,MediBang Gamesから販売された「沼落ち禁止(Love Too Easily)」というゲームもあった
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アジア全域で次々と実写系ゲームがリリースへ


 「まさか!下宿生が 美女ですって?」は30万本のスマッシュヒットとなり,Steamでは4500件を超えるゲーマーから「非常に好評」のレビュー評価を獲得。第2作となる「まさか!下宿生が 美女ですって?2」を1年ほどで開発し,11月18日に配信開始するまで,10万人のゲーマーが事前購入をしていたという。今では1100人以上から「圧倒的に支持」の評価を得ており,前作以上の人気っぷりだ。

 「まさか!下宿生が 美女ですって?2」では,恋愛対象となる入居者が5人から6人に増えており,アイテム獲得システムや隠し映像の存在などの新要素も増えている。とはいえ,ゲーム性云々は超越して,ラブコメというシチュエーションを楽しむカジュアルなインタラクティブドラマとして評価されていそうだ。

「まさか!下宿生が 美女ですって?2」では,主人公の下宿管理人ウユマンが交通事故で入院しているシーンから始まり,看護婦や事故の加害者,医師らも登場。デモ版も日本語にローカライズされているのでチェックしてみよう
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 もともと,女性ゲーマー向けのアプリ開発が主軸だったStorytacoは,男性向けに全振りして大きく当たったことによって,FMV恋愛ゲーム市場に注力している様子だ。
 7月には,家を追い出された主人公が女性上司や職員がいるホテルで働くことになる「イジらないで,女神様たち!」の配信を開始。
 さらに,YouTube映像制作会社に就職した主人公がYouTuberたちと恋愛するという「シーッ,美少女撮影中!」を年内に,アポカリプス後の世界で美女たちと地下生活を続ける「美女とバンカー生活?!」を近日中にリリースすることをアナウンスするなど,開発サイクルの早いFMVならではのスピード感で新作を次々と展開している。

 また,恋愛シムではないものの,上海をベースにするNew One Studioは9月に,中国史上唯一である女帝,武則天の生涯を追っていく宮廷ドラマを楽しむ「盛世天下〜女帝への道〜 I」をリリースした。
 本作は,8時間を超える映像全編が4Kで撮影されているうえに,舞台セットも手の込んだ開発資金の多そうなプロジェクトだ。官鴻(グアン・ホン)さん,黄羿(ホアン・イー)さん,姚弛(ヤオ・チー)さん,林小宅(ハナ・リン)さん,梓渝(ジユ)さん,圻夏夏(チー・シャアシャア)さんら人気俳優を起用している。

9月にリリースされたばかりの「盛世天下〜女帝への道〜 I」は,中国発のインタラクティブ宮廷ドラマで,武則天のサクセスストーリーを圧倒的な映像クオリティで体験する。Iというからには,今後もシリーズ化されるようだ
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 こちらも日本語に対応していて,Netflixで海外ドラマを見ているような雰囲気ながら,さまざまな選択を迫られる。武則天が主人公なだけに,死亡率の高さもウリだ。
 お気に入りや嫌いなキャラクターに投票できるグローバルランキングシステムも実装し,プレイヤーが今後のシリーズの行方を変えることになる。こちらはSteamで,1万人近いゲーマーから「非常に好評」という評価を得ている。

 さらに注目しておきたいのが,シンガポールの映像制作会社であるTitan Digital Mediaが,FMVでゲーム市場に殴り込みをかける「Island of Hearts」だ。
 謎のリゾート島に流れ着いた主人公の恋愛ドラマとなっており,マレーシアを中心に2400万人のフォロワーを持つSiew Pui Yiさんや,韓国で100万人のフォロワーを持つNahyun Kimさんら,実在するビューティ系インフルエンサーが恋愛相手に登場する。
 すでに4Divinityという名の知れたパブリッシャのサポートを受けており,このジャンルのアジア産ゲームとしては珍しく,アジア風アクセント強めではあるが,全編で英語のセリフが話されている。明らかに欧米市場を狙っているということであろう。

シンガポールで開発が進められる「Island of Hearts」は,アジア訛りながらも英語で会話が進められるのは注目点。こうした1人称視点のFMVは,プレイヤーが実際に国際デートをしているような気分を味わえるのも人気の秘密なのかもしれない
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
  • 関連タイトル:

    まさか!下宿生が 美女ですって?2

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