連載
実在の岩壁を攻略する硬派なクライミングシム「New Heights」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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次につかむべきホールドを目で追い,指先をかけ,体を引き上げる。一手ごとに地面は遠ざかり,風だけが近くなる。
それでも登る。この壁の頂に,まだ見たことのない景色があるから。
本日は,New Heights Gameが手掛ける「New Heights」を紹介しよう。本作はヨーロッパ各地の実在クライミングスポットを舞台にしたクライミングシミュレーターだ。プレイヤーは一人のクライマーとなり,ジムでのトレーニングを経て,やがて世界各地の自然岩壁へ挑んでいく。
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このゲームの特徴は,四肢を一本ずつ個別に操作するシステムにある。マウスとキーボードで左右の手足をそれぞれ動かし,壁面のホールドを掴む。ホールドには色付きの矢印や円が表示されており,色で掴みやすさが,矢印の向きで力をかけるべき方向がわかる仕組みだ。加えて,体の向きや壁との距離,重心の位置も操作に影響し,フラッギングやレイバック,マントルといった実際のクライミングムーブが自然に再現される。スタミナの概念もあるが,バランスが取れていればゲージすら表示されないほど緩やかで,リアルさと遊びやすさのバランスを取った調整がなされている。
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収録ルートは280本以上。10メートル級のショートボルダーから200メートル級のマルチピッチまで幅広い。課題にはVスケールのグレードが設定されており,完登・ノーフォール・タイムアタックの条件を満たすと最大3つの★を獲得できる。この★の累計で新たなエリアやルートがアンロックされていく仕組みだ。ストーリーやドラマは用意されておらず,ひたすら壁と向き合い,一手ずつ課題を解いていくことになる。
フォトグラメトリで登る実在の岩場
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全ルートの岩壁は,ドローン撮影によるフォトグラメトリで3Dスキャンされた実在の岩場がベースだ。フォンテーヌブロー,アルデンヌ,そして正式版で新たに追加されたノルウェーのハンシェレレン洞窟など,ヨーロッパ各地の名所がゲーム内に落とし込まれている。ホールド一つひとつの形状やテクスチャまで忠実に再現されており,画面越しでも岩場の空気感が伝わってくる。
「次の一手」を読む面白さ
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ただホールドを順番に掴むだけでは登れない。ホールドの位置関係や向き,距離から最適なムーブの手順を組み立てる「ルート読み」が,このゲームの難しさの本体だ。グレードが上がるほど正解に近いムーブを見つけ出すパズル感が強まり,とくにオーバーハングや長いルートでは,どのホールドを"捨てホールド"にして次に繋ぐかといったシークエンス設計が求められる。さらに,正しいムーブが頭で分かっていても,カーソルを正確に合わせ,体の距離や向きを微調整して実行に移す操作精度も必要になる。ルート読みと操作の両方が噛み合ったとき,確かな達成感が待っている。
ゲームだからこそ登れる壁がある
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ロープなしのフリーソロやボルダーに加え,正式版ではロープを使ったビレイシステムも実装されており,登り方の選択肢が広がった。現実なら一つのミスが命取りになる高さでも,ゲームでは何度でもやり直せる。さらに,現実では立ち入れない城壁や大聖堂の外壁も登攀対象として用意されている。開発チーム自身がクライマーであり,「現実では試せないラインを安全に挑戦できる場」としてこのゲームを設計している。
「New Heights」は,クライミングという行為そのものをとことん突き詰めたシミュレーターだ。派手な演出もドラマもないが,一手ずつ壁を登っていく繰り返しの中に,確かな手応えと達成感がある。開発チームがクライマーだからこそ実現できた物理挙動の再現は,経験者であればあるほどうなずけるはずだ。
「Cairn」などの登攀ゲームにもっとシミュレーター寄りの手応えを求めていた人,あるいは実際にクライミングをしていて,ムーブの組み立てをゲームでも味わいたい人にこそ触れてほしい。約2年のアーリーアクセスを経て正式リリースを迎え,280本以上のルートとSteam Workshopによるコミュニティ制作のルートが待っている。
- 関連タイトル:
New Heights: Realistic Climbing and Bouldering
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