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指先で岩肌と対話する静かな登山シム「Cairn」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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印刷2026/02/02 07:00

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指先で岩肌と対話する静かな登山シム「Cairn」(ほぼ日 インディーPick Up!)

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雲海を突き抜ける未踏の巨峰,マウント・カミ。岩肌には,挑み敗れた者たちの痕跡が墓標のように張り付いている。

風音だけが支配するこの垂直の世界で,アーヴァはただ,次の足場を探す。頼れるのは己の四肢と,古びた機械の相棒のみ。

遥か頭上の頂を目指し,彼女は岩壁に手をかけた。


 本日は,The Game Bakersが手掛ける「Cairn」を紹介しよう。本作は未踏の峰「マウント・カミ」への登頂を題材にしたサバイバル登山ゲームだ。プレイヤーはプロクライマーのアーヴァを操作し,前人未到の頂を目指していく。

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 このゲームの特徴は,四肢を個別に操作する独特のアクションにある。基本的には次に動かすべき手足が自動的に選ばれるため,複雑な操作に悩まされることはない。
 オート選択に委ねながら,手でつかむべきクラックを選び,重心をかけられる岩肌に足を運べばいいのだ。

 もちろん,手動選択にも対応しており,動かすべき部位を選びながら慎重に歩みを進めることもできる。
 指先の配置ひとつが生死を分けるこの挙動は,単なる操作の難しさを味わうためのものではなく,岩肌を攻略する面白さにつながっている。

画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / 指先で岩肌と対話する静かな登山シム「Cairn」(ほぼ日 インディーPick Up!)

 登攀(とうはん)を続けるには,自身の肉体管理も欠かせない。空腹や喉の渇き,寒さは容赦なく体力を奪う。無理を重ねれば失神し,滑落の危険が跳ね上がる。
 ここには襲い来る怪物は存在しない。立ちはだかるのは,変わりゆく天候と夜の寒さ,そして尽きかける物資という現実だけだ。

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 プレイヤーは岩の出っ張りを読み,ルートを定め,ピトンという命綱を打ち込みながら一歩ずつ高度を稼ぐ。静寂の中で己の身体と向き合い続ける行為は,単なるゲーム操作の枠を超え,プレイヤー自身の指先が岩をつかんでいるかのような錯覚すら覚えさせるだろう。

極限まで削られたUI


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 画面上にスタミナや握力を示すゲージは存在しない。代わりに,アーヴァの荒い息遣いや四肢の震え,視界が暗くなる演出が限界が近いことを告げる。数値というフィルタを通さず,キャラクターの苦痛が直接プレイヤーへ伝播する仕組みだ。
 この設計により,岩をつかむ指先に全神経を集中させるような,アーヴァと痛覚を共有する錯覚すら覚える。

じわじわと迫りくる消耗


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 滑落の恐怖以上にプレイヤーを追い詰めるのが,じわじわと迫る消耗だ。道中で手に入る物資には限りがあるため,その場の凌ぎだけで進めばいずれ手詰まりとなる。
 限られた資源をどうやりくりし,休息可能なビバーク地点を経由するルートをどう描くか。物資の管理とルート選定における判断の甘さが,数十分後の自分を窮地へ追いやる厳しさがここにある。

孤独を彩る静寂と絶景


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 アニメーション映画を思わせる柔らかな筆致で描かれたマウント・カミは,過酷さの中にふと癒やしを感じさせる美しさがある。聞こえるのは風の唸りや衣擦れの音といった環境音が主だ。
 時折流れる歌声を除けば,世界は静寂に包まれている。この「静けさ」こそが,孤独な登攀への集中を高め,プレイヤーを時間を忘れる境地へと誘う。



 本作は,ただ山を登るという行為を,極限まで純化させた作品だ。派手な演出はなく,ただひたすらに岩と対話する静かな時間が流れる。ただ山を登る,それだけであるはずなのに時間を忘れて没頭してしまう。そんな不思議な魅力を携えたタイトルだ。
 困難を乗り越え,自分の足で高みへ到達する重厚な手応えを求める人には,忘れられない一本となるだろう。

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