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[インタビュー]家を抵当に入れた真因は,PDの確信犯的な嘘だった。「トリッカル」開発元の代表と,「代表を売った」副代表が語る波瀾万丈な物語
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印刷2026/02/21 10:00

インタビュー

[インタビュー]家を抵当に入れた真因は,PDの確信犯的な嘘だった。「トリッカル」開発元の代表と,「代表を売った」副代表が語る波瀾万丈な物語

 「トリッカル・もちもちほっペ大作戦」iOS / Android)の開発を継続するために,家を抵当に入れたという強烈なエピードを持つEPID Games代表のハン・ジョンヒョン(Michael)氏と,資金繰りのために,代表を売ることを決意した副代表のシム・ジョンソン(Loar)氏に,韓国本社でインタビューを実施した。

 家を抵当に入れることになった本当の原因は,PD(プロデューサー)が吐いた確信犯的なウソだった,今年こそは家を取り戻せそうという話など,波乱万丈なトリッカルの歴史を教えてもらった。

左からシム・ジョンソン副代表,ハン・ジョンヒョン代表
画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]家を抵当に入れた真因は,PDの確信犯的な嘘だった。「トリッカル」開発元の代表と,「代表を売った」副代表が語る波瀾万丈な物語

 なお,EPID Gamesのオフィスも案内してもらえたので,そちらの様子は別の記事でお届けする。

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 「トリッカル・もちもちほっペ大作戦」を開発する韓国のゲーム会社EPID Games本社を訪問した。社内に掲げられたインパクト強めの社訓や,さまざまな2次創作グッズ,メンテナンスの無事を祈る祭壇まで,遊び心に満ちたオフィスの様子をお届けしよう。

[2026/02/21 10:00]

――収録日:2026年1月20日

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。先日(2026年1月17日)に,日本でのリリース100日記念を迎えたところですが,この100日間で印象に残った出来事はありますか。

ハン代表:
 日本で印象的だったのは,2次創作の立ち上がりが想像以上に早かったことですね。もう少し時間が経ってから増えると思っていましたが,やはりサブカルチャーの本場だというのを実感します。
 私自身も,コミケに行ってトリッカルの2次創作グッズや同人誌を買いました。もうここまで好きになってくれる人がいるんだ,と素直に感激しています。

シム副代表:
 日本でどうトリッカルが広がるかを見たくて,毎年コミケに行き,流行や雰囲気の違いを観察しています。以前は,トリッカルのブースは多くても2,3でしたが,今回はかなり増えていました。

 さらに,4月には日本でトリッカルのオンリーイベントも開かれると聞きました。
 我々が頑張るほど,ちゃんと見つけてくれているんだな,と実感して,より力が入りました。いずれにせよ,もっと頑張ろうと思います。

「エーリアスもちもち文化祭」 2026年4月26日開催
即売会開催時間:12:05〜15:30
場所:東京文具共和会館



4Gamer:
 日本の2次創作と韓国の2次創作で,違いを感じたところはありますか。

ハン代表:
 ミームの派生の仕方や,感情の載せ方に差があると感じました。韓国では2次創作が活性化するまでに,かなり時間がかかった印象です。
 トリッカルも1周年のタイミングで一気に認知が広がって,それに合わせて2次創作も増えていった流れです。

シム副代表:
 2次創作の形としては,日本は紙の同人誌やウェブの同人誌が中心です。韓国はアクリル系のグッズが中心で,タペストリー系のグッズも多い傾向があります。
 あと内容の方向性については,言うのが少しあれですが,日本は成人向けに寄った表現が多い印象です。韓国はそういうものはほとんどないです。作る人がいないわけではないですが,そもそも出せる場も少ないです。

4Gamer:
 ミームでいうと,「スピキ」が大流行しましたが,なぜここまで流行ったのでしょうか。

ハン代表:
 正直,理由はまったく分かりません。バターについては,韓国でもミームとして一度大きく跳ねたので,日本でも流行る可能性はあるとは思っていました。

シム副代表:
 バターが流行った理由の1つは,「この会社頑張っているのに,なんか不器用でうまくいってない感じがある」という雰囲気があって,それが「バターっぽい」と受け入れられたことだと思っています。だから私たちもバターみたいに頑張ろう,と前向きに受け止められました。

 しかし,スピッキーには,そういう文脈がまったくありません。声優さんの演技が本当にすばらしくて,それ自体が魅力になって広がった,という感じです。ミームを作った人,最初に拡散した人,そして,声優さんには感謝を伝えたいです。

ハン代表:
 感謝の気持ちを形にしたいと準備もしています。ただ,なぜここまで流行ったのかは,本当に分かりません。

 実際に感謝の気持ちとして,2月16日に「2026 TRICKCAL AWARDS」が配信され,声優のパク・シユン氏に,純金24Kのコイン3枚が送られた。1枚あたり100万ウォン(約11万円)という高価なもので,品質保証書も一緒に送られた。
 また,ミームの元ネタを作成した人も招待され,祝福されている。








■スピッキーの韓国語声優のパク・シユン氏が投稿したスピッキーの動画




4Gamer:
 日本では,スマホゲームを日本語音声で遊びたいというプレイヤーが多いイメージですが,スピキの影響で,韓国語音声で遊びたいという声も増えていると感じます。

シム副代表:
 日本で韓国語音声を求める人が増えるのは,かなり珍しいパターンだと思います。もともと韓国語音声の更新は,もっとゆっくり進める予定でした。
 しかし,日本で「韓国語も入れてほしい」「聞きたい」という声が想像以上に多かったので,急いで実装しました。実装を急いだ分,不具合も出ていて,今も直し続けています。

■パク・シユン氏が出演している動画例




4Gamer:
 本来は「スピッキー」なのに,日本でも韓国の発音に近い「スピキ」が広まりました。

シム副代表:
 日本で韓国語音声を求めてもらえるのは,本当に感激ですし,ありがたいです。実装に合わせて出た問題も,1つずつ直していきます。

4Gamer:
 韓国では声優さんが1人で複数キャラを担当することも多いと聞きました。コミーとバターが同じ声優さんで,しかも絡みが多い2人ですが,なぜ同じ声優さんにしたのでしょう。

シム副代表:
 それはいろいろと理由がありますが……いわゆる「大人の事情」というやつです(笑)。包み隠さず申し上げますと,当時はとにかく予算がありませんでした。



4Gamer:
 お金がなかったという当時についてお聞きしたいと思います。トリッカルは,韓国で正式サービスを開始して,すぐに終了し,作り直した経緯があります。そのとき,自分たちのものを作り直す決断をしたエピソードを聞かせてください。

ハン代表:
 当時のことは本当によく覚えています。ほぼ戦場のようでした。旧トリッカルは,2021年9月27日にオープンしました。オープン直後に一気に爆発して,同時接続が5万人を超えました。

 あとから考えると,10万人近くまで来ていたかもしれません。ただ,ゲームの中身がかなり未完成だったので,大きく炎上しました。
 プレイヤーがたくさん集まったのですが,広告費はほとんど使っていませんでした。総額で3000万ウォン(約330万円)も使っていなかったと思います。

4Gamer:
 大々的なプロモーションは,ほとんどないということですね。

ハン代表:
 広告を打っていないのにこれだけ来るなら,このIPは生かさないといけない,と思いました。
 だからこそ早いうちに一度サービスを終了して,作り直すべきだと決めたのです。決断は1時間以内でした。残りの時間は,CFO(最高財務責任者)や周囲の社員を説得することに使いました。
 結果として,オープンから約1時間50分で,サービス終了の告知を出しました。外に告知するまでがその時間,という感覚です。

 旧トリッカルは,2021年9月27日のリリース直後から決済エラーやログイン障害が続発した。同日に正式サービスの延期を発表し,翌9月28日に課金要素を停止したオープンβテストへ移行したものの,アプリが強制終了するなどの問題が収まらず,10月2日をもってサーバーを完全停止している。

旧トリッカル
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 当初は10月中の再開を予定していたが,クオリティアップには時間が足りないと判断し,最終的に再リリースの無期限延期と,課金モデルの大幅な改修を発表した。


 その後,ベータテストを重ね,「トリッカル RE:VIVE」として,当初のリリース予定からの2年後,2023年9月27日に韓国で正式リリースされた。

トリッカル RE:VIVE。○○がコネクトしてRe:Diveしそうな
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アナウンス日時 概要 リンク
2021年9月26日18:11 9月27日17:00にサーバーオープン予定と告知 Naver
2021年9月27日16:38 ストア審査関係によるリリース遅延の発表 Naver
2021年9月27日18:09 サーバーオープンを20:00に遅らせると予告 Naver
2021年9月27日19:57 サーバーオープンに向けて発生したトラブルの謝罪文 Naver
2021年9月27日20:28 サーバーオープンの再遅延に関する謝罪文 Naver
2021年9月27日21:53 正式サービス延期の発表 Naver


ハン代表:
 ここで今死なないと生き残れない……当時はそういう判断でした。みんなのメンタルが崩れている中,副代表を家まで送る途中に「このゲームを生かすなら,代表を売るしかない」と言われたのです。

4Gamer:
 代表の売られ方は,そこにルーツがあるんですね。

ハン代表:
 はい。私は「好きに売ればいい」と返しました。人生で後悔している言葉がいくつかあって,その1つがそれです。まさか,ここまで本当に売られるとは思いませんでした。
 例えるなら,コンビニの水みたいに売られています。

シム副代表:
 最近は少し落ち着きましたが,元々は代表をもっと前面に出していました。たとえば,発売前に「PlayX4」というイベントに出展したとき,インパクトが足りないとなりました。
 そこで,代表の合成写真を作って,それを掲げて,代表本人も同じポーズで写真を撮らせよう,と決めました。

 当時,チンパンジー系のミームで有名な作家に正式に依頼して,木に縛られて燃やされる人の周りでチンパンジーが踊るイラストを作成してもらい,そこに代表を追加したビジュアルを作りました。

 それをブース横のフォトスポットに掲げ,代表本人も同じ構図で撮影できるようにしました。
 来場者からは,「ここまでやるのか」「代表を上手く売ってるな」という反応が多くて,強い印象として残せました。

「トリッカル RE:VIVE」第2回CBTの予告で公開された画像。開発延期が続き,「いつ出せるかも分からない」と代表が発言した結果,「リリースしないのは死だ」と火あぶりにされている様子。代表を燃やした末に,笑顔になっている
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PlayX4では別ポーズに。実際の様子は,「트릭컬 PlayX4」「에피드게임즈 PlayX4」(前者からトリッカル,EPID Games)などで画像検索してほしい
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4Gamer:
 代表が体を張ったり,家を抵当に入れたり,さらに10億ウォン(約1.1億円)の融資も受けたと聞きます。そこまでトリッカルに,すべてをつぎ込めた自信の根拠は何でしたか。

ハン代表:
 2021年9月のあのトラフィックを見て,確信しました。完成度とは別に,マーケティングをほとんどしていないのに,トリッカルというIPだけで入ってくる人が,15万人近くいるように見えたからです。
 トリッカルIPへの関心がとても高い。だから,一度止めてでも,短期間で作り直してちゃんと出せば,必ず成功できる,という確信がありました。

 それと,私は競争より独占が好きです。私たちが作れば,私たちはオンリーワンになれます。会社は2013年3月に創業していて,もう13年ほどやっています。
 私は元々別の仕事もしていましたが,ゲームが好きすぎて始めました。

4Gamer:
 好きが,その覚悟に現れているのですね。

ハン代表:
 以前,インタビューで「ゲームの仕事しながら死んでもいい」と言ったことがあるくらい,それくらいゲームが好きです。10年以上積み上げてきたものが,いまようやく噴き出した,そんな感覚もあります。
 創業時は,副代表を含めて周りの全員に止められました。「うまくいっている仕事をなぜ辞めてゲームをやるのか」「5人規模で始めても助けてくれる人はいない」と,かなり言われました。

 抵当の話も,当時は美談ではなく,正直かなり情けない状況に近かったです。単に家の権利書を抵当に入れた,というだけではなく,そこに至る経緯もあります。

 もともとハン氏は,流通マンとしてキャリアを積んでいた。2013年頃に,明日死んでも後悔しない仕事をしたい,と一念発起し,周囲の猛反対を押し切ってEPID Gamesを創業している。

4Gamer:
 なるほど。

ハン代表:
 サービス終了を告知した後,2021年10月にPDを迎えました。そして,2022年9月にCBTを行いました。
 そのとき,方向性が噛み合わなければゲームが終わるので,そこが最大の危機でした。CBTの結果自体は良く,何とか乗り切れました。

シム副代表:
 正直に打ち明けると,家を抵当に入れることになったのは,PDのせいなんです。CBTが終わった直後,「実は,完成させるには開発期間がもっと必要だ」と衝撃的なことを言い出しました。PDは最初から分かっていたのに,確信犯的に切り出したのです。
 結果,リリースは想定を半年以上も超過し,約8か月遅れました。

4Gamer:
 半年以上遅れると,資金のやりくりは一気に厳しくなりますよね。

ハン代表:
 当然,延期した時点で資金が足りません。会社は長年やっていて資本状態も厳しく,銀行は融資してくれず,不動産を入れても断られました。CFOは積立を崩し,役員は最低賃金以下のような条件で働き,それでも社員の給与は払わなければならない。

 最終的には知人に頼み込み,「年利XX%払うから,半年で返すから貸してくれ」と約束して高金利で借りるしかなくなりました。2022年と2023年に,知人からは合計で3回くらい借りました。
 その相手は2人で,今も本当に丁重にお礼をしています。年始に電話もしています。このゲームを生かしてくれた恩人たちですから。

 また,裏技のような方法でなんとか家を抵当に入れたりと,地獄のような資金繰りをしました。

4Gamer:
 正直,もっと早く言えよ,というPDへの怒りはなかったのですか。

シム副代表:
 私自身は,CBTの結果を見て納得していたので,「嘘をつかずに最初から言ってくれていれば,もっと資金繰りも含めて調整できたのに」とは言いました。

 一方で,CFOはものすごく怒っていました。
 PDは「先に言っていたら,あなたたちは付いてこなかったと思う。結果を見せれば納得すると思った」と言いました。
 それも一理あって,悔しいですが,正しい部分もあります。殴りたいけど,年上なので殴れない,そんな感じです。

4Gamer:
 副代表はゲームメディアでの経験が長いそうですが,その視点で見て,このPDは変わっている,と思った部分はありますか。

シム副代表:
 経験に関係なく,誰が見ても変わっていると思います。PDという職種の人はもともと変わっていることが多いですが,その中でもとくに変わっています。
 生活スタイルも独特で,とにかく変人です。


上記の記念番組で,吹き飛ばされるPDの様子。左から副代表,代表,PD
画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]家を抵当に入れた真因は,PDの確信犯的な嘘だった。「トリッカル」開発元の代表と,「代表を売った」副代表が語る波瀾万丈な物語



4Gamer:
 PDがプロジェクトに入るときのエピソードはありますか。

ハン代表:
 条件が興味深かったです。「開発チームの人事権を含めて,開発に関する全権限を自分に渡せ」と言われ,即了承しました。
 今でも,開発側の人事はPDが握っています。

4Gamer:
 代表が「これをやりたい」と言って,PDに止められたことはありますか。

ハン代表:
 たくさんあります。私の意見は,むしろ却下されることが多いです。半分くらいは普通に却下されます。
 EPID Gamesは,代表,副代表,PD,CFOが,互いに意見をぶつけ合って調整しています。ローマの三頭政治みたいに,各自が権限を持って,各自が本気で意見を言える関係を作っています。

4Gamer:
 結果的に一番強いのは,PDということですか。

シム副代表:
 いえ,代表,副代表,PDの上にいる真の裏ボスがCFOです。CFOは「お金」という軍隊を握っているので,別の意味で強いです。
 代表を罵倒できる人はCFOです。さらに言うと,CFOの指示は「相談」ではなく,基本的に「通告」です。
 明日からあそこ行け,と言われたら,その場で決まります。

ハン代表:
 この構造があるから,直言もできるし,間違っていれば罵倒もできる。自分に直言できる人を2人,罵倒できる人を1人置くという風にしています。
 会社がうまくいくほど,一番気をつけるべき相手は自分自身だ,という意識が強いです。

 ちなみに,私の専門はサウンドなので,サウンド領域はほぼ通ります。別の領域では,専門の人が「それは違う」と言える空気を作るのが好きです。ただし,マーケティングだけは別です。

シム副代表:
 代表を売る施策は,毎回同意を取っていたら遅くなるし,嫌がられる部分も出るので,「これは受け入れてくれ」という形で,マーケティングは独断で進めています。
 昔は代表がマーケティングをやっていて,私が止める側でしたが,最近は私が仕掛けて,代表が止める側になっています。

4Gamer:
 代表を売る,というマーケティングのコンセプトはどう作ったんですか。

シム副代表:
 最初は,「このおっさんをどう売るんだ」と本気で悩みました。知り合いに,芸能事務所出身の人がいて,昔のアイドルを再デビューさせるときのノウハウを教わりました。
 そのやり方を代表にほぼ適用しました。短期で光らせるゲリラ的な動かし方をして,供給を少し絞って,枠の中で回るようにして,薄く「ファンダムがある」雰囲気を作る,という感じです。

 10回仕掛けて1回当たるくらいの戦略でした。ただ,やっていくうちにファンが増えて,今は1回仕掛けると1回当たるくらいになってしまって,むしろ慎重にしています。

4Gamer:
 これまで出したグッズの中で,これは最高傑作だ,というものはありますか。

シム副代表:
 まだないです。これまではアイデア系のグッズが多かったです。
 でも今は,クオリティを上げる方向に移っています。理想の壁が高くて,これだと言えるものはまだ出せていません。

4Gamer:
 逆に,反応が良くなかった,失敗したと思うグッズはありますか。

シム副代表:
 たくさんあります。ただ,他社に作ってもらったものもあるので,具体名を出すのは避けておきます。
 目安としては,第2弾が出なかったものは……という感じです。

 印象に残っているのは「代表マスク」です。追加販売はしません。勢いで300個作りましたが,15分で完売しました。
 フルフェイスでかぶるタイプのマスクで,前面に3Dプリントの顔が出て,その人になりきれるやつです。

EPID Games本社にしれっと飾られていた代表マスク
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 代表の顔で作ったらかなり流行って,レビューも面白くて,それ自体が拡散しました。
 当時,国内で流行る前に先に持ち込んで,メーカーとも直接交渉して作りました。送料込みで1万ウォン(約1100円)くらいにできたのも大きかったです。
 私はこういう,ちょっとギークで面白いアイデア商品が好きです。

トリッカル 1周年グッズ(画像リンク)。一番下が代表マスク
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ハン代表:
 ただ,正直に言うと,「中年男性が売れたところで,すぐ飽きられるだろう」と思っていました。それが長引いてしまって,荷が重いです。
 機会があれば副代表をちょっと殴らなきゃいけないんだけど,という気持ちはあります。
 それと,モザイク眼鏡も,本来は「最低限,プライバシーを守るために何かを付けたい」という意図でした。
 でも,それ自体がミーム化してしまいました。

シム副代表:
 代表は「人権のため」に眼鏡を求めていたのに,私は「キャラクター要素を強めたいんだな」と受け取りました。
 最初はモザイク感の強い眼鏡を提案されましたが,その時期は韓国映画「パラサイト」も流行っていて,そちらを推しました。
 今使っている眼鏡は映画のグッズではなく,AliExpressで850ウォンくらい(100円弱)の格安のものを大量に買って,壊れたら次という風に使っています。


ハン代表:
 他人事なら笑えたと思いますが,自分のことなので全然笑えない……普通に悲しいです。

4Gamer:
 家の権利書グッズも印象に残っています。あれは何の狙いで作ったんですか。

ハン代表:
 当時はトリッカルの認知がまだ上がり切っていない時期でした。直感的にゲームを説明できる,分かりやすい手段の1つとして,権利書グッズを作りました。
 ただ,その後は継続的に作ってはいません。再販もしませんのでレアグッズです。

4Gamer:
 家の権利書は,現実のほうでも取り戻せそうですか。毎年取り戻すのが目標と聞きましたが,2026年はいかがですか。

ハン代表:
 今年こそ家を取り戻すぞ,という目標ですね。残りはだいたい35%くらいで,今年はたぶん,いけると思っています。
 ただ,お金がなくて返せないというより,お金の使い道の優先順位の問題に近いです。急いで返さなくてもいい,という事情もあります。


韓国版とグローバル版は,それぞれ別の作品として


4Gamer:
 グローバル版のお話も聞かせてください。そもそも,パブリッシャをbilibiliに選んだ決め手は何だったのでしょうか。

EPID Games本社にいたbilibiliぬいぐるみ+α
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シム副代表:
 私たちの強みは,スピード感のある対応だと思っています。そこで,話が通じるパブリッシャが必要でした。

 契約の話はリリース前から進めていたので,選択肢が多かったわけではありません。その状況でもbilibiliは積極的で,こちらの話をよく聞いてくれました。正直,パブリッシャがここまで聞いてくれるのか,と思うくらいでした。
 だから,私たちの強みを生かせる相手だと判断しました。

4Gamer:
 ガチャ表記のミスなどありましたが,対応がとても早かった印象があります。bilibiliとは,どう連携しているんですか。

シム副代表:
 まず「何をやっているんだ」と,普通に怒ります。
 ただ,bilibili側が「こちらが悪かった」と受け止めてくれるだけでも,デベロッパとパブリッシャの関係では成立しにくいことなので,そこは助かっています。

 ローンチから1週間経過して,私が「このままではダメだ」と思って,そこから強く言うようになりました。リリース前からも,「明日,中国に行くから会議しようね!」といった感じで,こちらから強引にねじ込むこともあります。
 急に出張が決まって,翌日飛ぶみたいなことは,8回くらいやっています。

4Gamer:
 フットワークがとても軽いですね。

シム副代表:
 お互いにミスもあります。彼らも私たちと似ているんです。だから,直接言い合えるし,感情の温度を含めて話せる。

 以前,bilibiliのパブリッシングPDが弊社に来て会議をしていたときに,会議途中にグローバル版運営チームが大きなミスをしたことがありました。それに激怒したハン代表が,オフィスの床に寝っ転がって抗議をしたのです。
 あの巨体を床に投げ出して,声を荒らげながら糾弾する姿は,本当に見事なものでしたね(笑)。

 ビジネス関係でも,そこまで踏み込めるのが強みです。そうやって,似た者同士でケンカしながら進めています。
 たとえば,新年に合わせた配布施策も,そういう連携で進めました。

4Gamer:
 秋葉原イベントの「オリシナルクリアっアイル」(誤記)は日本だけの出来事なのに,韓国側にもお詫びの配布をしていて印象的でした。この配布はどのような意図があったのですか。

■当初のポスト


■誤記ではなく,妖精が書いたことに(補填も配布)


ハン代表:
 できるだけいいものは互いに共有しよう,という考え方があります。韓国の施策を日本にも配ることもあれば,日本の施策を韓国にも配ることもあります。
 トリッカルが好きな人たち同士で,一緒に楽しめたらいい,という発想です。

誤って報酬として配布されたアイテム。グローバル版では今のところ使い道がない。後日補填された(Xポスト
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4Gamer:
 一発ピコピコハンマーもその類で。

ハン代表:
 いや,あれはbilibiliのせいです。

4Gamer:
 スピキのペット実装も早かったですが,それもbilibiliとの協力で進めた感じですか。

シム副代表:
 作るのは私たちで,主導権は私たちが持っています。
 ただ,「韓国と日本の両方に,早く入れよう」と提案したときに,bilibiliが「いいと思う」と言ってくれて,進められました。

年末に既視感のあるような形で予告され,1月のログインボーナスで配布された伝説のペット「スピキ」。無料配布なのに,活力S,自信Bと優秀なスペック
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4Gamer:
 今後200日,300日とサービスを続けていく中で,韓国版とグローバル版には2年の差があります。この差を今後縮めたいのか,別々のまま運営したいのか,目指す方向性はありますか。

ハン代表:
 現時点では,別々の運用で考えています。今の韓国サーバーと日本サーバーは,システムも資源もバランスも違っていて,ほぼ別のゲームです。なので,しばらくは別のタイムラインで進めると思います。将来,方針や志向が変われば,どこかで合わせていく可能性はあります。

 今年に関して言うと,差を縮めるのは難しいですし,プレイヤーへの負担も大きいので,別のゲームとして走らせます。

 例として,「すくすく!パワータワー!」関連のアップデートは,日本では1月29日の更新が翌日に入ったのですが,韓国では導入まで1年半以上かかっていました。


4Gamer:
 最後に,今年の目標を聞かせてください。ゲーム内の目標でも,ゲーム外の挑戦でも構いません。

ハン代表:
 ゲーム内は,改善できる点がまだ多くあります。利便性の改善もそうですし,プレイヤーが不便に感じる部分もまだあります。
 日本では2月初旬に,「エーリアスフロンティア」というエンド級のPvEレイドコンテンツが来ます。

 そのコンテンツも,パターンを多様化し,ゲームとしての楽しさを高められるか,という観点で見ています。


シム副代表:
 ゲーム外では,日本での目標はIP拡張です。グッズ,イベントなど,いろいろ考えています。
 運よくスピキミームで話題になったので,それを一過性で終わらせず,きちんと定着させることが今年の最大目標です。

 ゲーム外のIPパワーを上げたいので,分かりやすい目標としては,コミケのブースを50くらいまで増やしたいです。
 今回のオンリーイベントは50から60近いブース数だという話もあるので,それ以上を狙えるように,IPの活性化に力を入れたいです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

ハン代表:
 こちらこそありがとうございました。記事はいつ頃公開予定ですか。

4Gamer:
 私の取材スケジュールが詰まっていて,1か月ほどお時間をいただくかもしれません。

ハン代表:
 焦らなくて大丈夫です。エン〇〇〇〇ルドが出るので。

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