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壊すほどに遊びが広がる「ドンキーコング バナンザ」のゲームデザイン[GDC 2026]
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印刷2026/03/13 15:39

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壊すほどに遊びが広がる「ドンキーコング バナンザ」のゲームデザイン[GDC 2026]

 Nintendo Switch 2向けに登場した「ドンキーコング バナンザ」は,ドンキーコングを主人公にした3Dアクションプラットフォーマーだ。

 ドンキーコングが本格的な3Dアクションの主人公を務めるのはかなり久しぶりのことであり,それだけに技術面やゲームデザインはもちろん,この作品を生み出すうえでの考え方にもさまざまな破壊と創造があったようだ。

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 アメリカ・サンフランシスコで開催された「GDC Festival of Gaming 2026」(以下,GDC 2026)の3日目(現地時間2026年3月11日)で,そんな「バナンザ」がテーマのセッション「Constructive Destruction: Fusing Voxel Tech and 3D Action Platforming in 'Donkey Kong Bananza'」が行われた。

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 講演の中心にあったのは,タイトルにもある“Constructive Destruction”という考え方――ボクセル技術による破壊と,3Dアクションプラットフォーマーとしての遊びをどう結びつけたのか,という話だ。

 そして,その根幹にあるコンセプトとして最初に示されたのが「破壊」だった。
 このシンプルなコンセプトを,ボクセルという“箱”の技術と,そして3Dプラットフォーマーとしてのゲームプレイにいかに落とし込まれたかが,講演では丁寧に語られた。

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朝一番(10:30開始)のセッションだったが,入場の1時間前にはすでに大行列ができていた(写真は40分前くらい)
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 登壇したのは,任天堂のプロデューサー・元倉健太氏と,プログラマーの栗原達也氏だ。

 元倉氏はキャラクターアーティストとしてドンキーコング ジャングルビート」や「スーパーマリオギャラクシー」などの開発に参加。リードアーティストを経て,「スーパーマリオ 3Dワールド」や「スーパーマリオ オデッセイ」ではディレクターを務めた。

 現在はプロデューサーとして,マリオやドンキーコングの3Dプラットフォーマー作品に関わっている。そうした経験を通じてゲームの手触りや,プレイヤーに驚きを届ける体験設計の重要性を学んだという。

 栗原氏は,2014年から任天堂でプログラマーとしてゲーム開発に従事し,「スーパーマリオ オデッセイ」では敵やゲームプレイメカニクス,海,雲海,HD振動など幅広い要素を担当。そして本作ではボクセル技術の実装を担ったという。

左写真より,元倉健太氏と栗原達也氏
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 セッションではまず,元倉氏がゲームデザインのコアコンセプトを説明した。

 冒頭でも示されたように,本作の中心には「破壊」がある。ただし,その周囲には,それを支えるいくつかの重要な要素があるという。
 ドンキーコング,ボクセル技術,3Dアクションプラットフォーミング,そしてそれらの要素をつなぐインタラクションという考え方だ。

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 まず元倉氏は,「ドンキーコングとは何か」というところから話を始めた。

 バナナ好き。人間ではない……といろいろ思い浮かぶが,氏がとくに重視したのは「大きくて強い腕」だった。
 マリオのような人間のキャラクターではできないことができる。その力強さを,今回のゲームデザインの重要な要素として取り込みたいと考えたという。

画像ギャラリー No.012のサムネイル画像 / 壊すほどに遊びが広がる「ドンキーコング バナンザ」のゲームデザイン[GDC 2026]

 さらに氏は,ドンキーコングシリーズ自体にも,新しい挑戦を続けてきた歴史があると振り返った。

 ストーリー,レベルデザイン,グラフィックス,操作方法といったさまざまな面で,シリーズは常に新しい試みを続けてきた。だからこそ「新しい挑戦をすること」そのものも,「バナンザ」を作るうえで大切な要素だと考えたそうだ。

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 ここで鍵になるのが,インタラクションという考え方である。
 「スーパーマリオ オデッセイ」では,プレイヤーの行動に反応するオブジェクトを数多く作ってきた。

 小さなオブジェクトであってもちゃんと反応を返す。プレイヤーがどう遊びたいかに応答するようなインタラクションは,3Dアクションゲームにおいてとても重要だと考えているからだという。

 その流れのなかで,元倉氏が印象的な例として挙げたのが,「スーパーマリオ オデッセイ」の岩のギミックだった。

 プレイヤーがハンマーで何度か叩くと壊れるというもので,機能としては十分だったが,ゲーム全体の中ではほんの小さな一要素にすぎなかった。インタラクションをより強く追求するプロジェクトに発展させるには,そのままでは足りない。

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 そこで頭に浮かんだのが,氏が子どものころから好きだった,ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」の1-2だった。

 画面の中のほとんどすべてに触れることができ,しかもプレイヤーの行動でさまざまな反応が返ってくる。
 ブロックを壊すことでルートが変わるように,インタラクトしたことがゲーム進行にも影響するという点が大きな魅力だった。

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 「スーパーマリオ オデッセイ」における多くのインタラクションは「点と点」の関係だった。

 だが「ドンキーコング バナンザ」では,それを「面」で受けられるようにすることで,インタラクションをもっと起きやすくできるのではないか。そして,その発想が今までにないゲームデザインにつながるのではないか。

 元倉氏は,この「点から面へ」という変化が,本作のゲームデザインにおいて非常に重要な考え方になったと説明した。

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 ドンキーコングの大きくて強い腕,新しい挑戦をしていく姿勢,そして破壊。こうして生まれた発想から,ボクセルを使ってインタラクションを追求し,それを「スーパーマリオ オデッセイ」などで培った3Dアクションゲームのノウハウに応用することで,新しい3Dアクションプラットフォーマーの土台が作れると考えたわけだ。

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 ここで話は栗原氏へと移る。「スーパーマリオ オデッセイ」の完成後,エンジニアチームではさまざまな技術検証が行われており,その1つがボクセルだった。

 ボクセルとは何か。栗原氏はこれを「ピクセルの三次元版」と表現した。もちろん箱だからといって見た目まで必ず立方体になるわけではない。

 「スーパーマリオ オデッセイ」の触れると崩れる雪やハンマーで壊せる岩のように,滑らかな形状のまま細かなアナログ的インタラクションを実現できる。

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 小さな箱の1つひとつにさまざまな情報が格納されており,三次元のグリッド状に並んだこのボクセル群をゲーム中で動的に変化させることで,オブジェクト単位よりも細かいインタラクションを実現できる。

 オデッセイでは一部採用にとどまっていたが,栗原氏はボクセルを用いたインタラクションには大きな可能性があると感じていたそうだ。

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 そこで氏は「スーパーマリオ オデッセイ」の完成後に,ボクセル技術を使ったプロトタイプ制作を始めた。
 地形をパンチで自由に壊し,その一部を引きはがし,武器として使ったり,壁にくっつけたりもできるというものだ。

 オデッセイのアセットを流用しつつ,プログラムは1人で書いたという。その試作から,栗原氏は「地形のどこでも壊せる」という行為そのものが,とても気持ちのいい新しいインタラクションになると感じた。

 とくに気に入ったのは,地形を引きはがして投げたり,何かに貼り付けたりするアイデアで,ここを中心にゲームが作れるのではないかと思ったという。

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 こうして,元倉氏が考えていた「ドンキーコングらしさを生かしたゲームを作ること」と,「新しいインタラクションを作ること」,そして栗原氏が検証していた物理的な破壊インタラクションが“FUSION”し,「バナンザ」の開発が始まった。

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 では,ボクセルを使うことでインタラクションを追求できるとして,実際にゲームのどの部分をボクセル化するのか。元倉氏はまず,3Dアクションゲームを構成する要素を整理した。

 地形,敵,NPC,ギミック,ミニゲームなど,3Dアクションゲームはさまざまな要素でできている。ならば,それらをボクセルに置き換えていけば,自然に新しい遊びが作れるのではないか。
 つまり,目指したのは「基本的に,すべてをボクセルで作る」ということだった。

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 その目標を実現するにあたり,氏が最初に考えたのはプレイヤーキャラクターだった。

 キャラクターアーティストとしてゲームに向き合ってきた経験から,“プレイヤーキャラクターこそが,プレイヤーがコントローラを通じて最初に触れる体験”であり,大事なものだと考えていたからだ。

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 チームメンバーに最初に「バナンザ」を説明した際の資料で示されたのは,アクションゲームのサイクルは基本的に「通常状態のプレイヤー」と「パワーアップした状態のプレイヤー」の関係で考えられるということだった。

 スーパーマリオでいえば,マリオとファイアマリオの関係である。そして,本作ではその「パワーアップ」に相当する部分に,ボクセルを使えるのではないかと考えた。

画像ギャラリー No.020のサムネイル画像 / 壊すほどに遊びが広がる「ドンキーコング バナンザ」のゲームデザイン[GDC 2026]

 着目したのは,栗原氏のプロトタイプにあった「ボクセルを引きはがして投げる」という行為だった。これがプレイヤーキャラクターをパワーアップさせる手がかりになるのではないかと考えたという。

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 地形,すなわちボクセルを掴んで振り回して攻撃すれば強化パンチになる。投げれば遠距離攻撃になり,上に投げれば二段ジャンプにも使える。スケボーのように滑って移動することもできる。

 このように,ボクセルを使うことで,アクションゲームにおける重要なプレイヤー能力である近距離攻撃,遠距離攻撃,縦横両方の移動をパワーアップできたわけだ。

 1つひとつは小さなゲームサイクルだが,それは高い頻度で繰り返される。
 そのコアな部分にボクセルを組み込むことで,そこを中心にほかのすべてが回るような,しっかりした核を作れた(ちなみに本作には「バナンザ」というパワーアップ要素もあるが,これはまた別の話)。

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 さらに,その少し外側にある探索のサイクルにも,ボクセルは大きく影響した。面で受けるインタラクションが連続的に起きることで,プレイヤーの好奇心を刺激し,探索につながるのではないかと考えたという。

 つまりプレイヤーは探索を進めながら,次々と新しい興味の対象を見つけていく。
 チームの中ではこれを「破壊の連鎖(chain of destruction)」と呼び,レベルデザインを作るうえで重要なサイクルとして扱っていたそうだ。

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 ここから再び栗原氏が,そのゲームデザインを技術的にどう実現していったのかを説明した。

 プロデューサーからは「全部ボクセルで作りたい」「なんでも壊せるようにしたい」という要望が来る。しかし,それを実際にどうやるのか,そもそも“全部”とは何なのか,というところから考えなければならなかったという。

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 まず,「バナンザ」の地形はボクセルで作られている。至るところに壊せるものがあり,固定された地形だけでなく,せり出してくる壁や動く床のようなギミックもボクセル化され,壊せるようになっている。

 それだけではなく,敵もNPCもボクセルにした。体そのものがボクセルでできている敵は地形と同じように壊せるし,不思議な住民たちは壊しても再生し,なかには変形して道案内をしてくれる者もいる。
 このように,地形以外にもアクションゲームを構成する要素の多くをボクセル化し,壊せるようにしていったわけだ。

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 では,それをどう実現しているのか。「バナンザ」では,三次元空間にグリッド状に並んだ箱であるボクセル1つひとつの中に,密度,材質,ダメージ,湿り気といった情報を持たせている。

 それらのボクセルデータから動的にポリゴンメッシュを生成。できるだけ60fpsを維持するため,ポリゴン数は最小限に抑えるようにした。

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 とはいえその規模感もかなりのものだ。たとえばかなり大きな渓谷のレイヤー1つで,約3億4700万ボクセルあるという。

 Nintendo Switch向けであれば,メモリ面の対策をしてもこれだけの量を読み込むのは相当難しかった。しかしNintendo Switch 2ではメモリが増えたことで,この規模を成立させることができたと語っていた。

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 さらに本作でもう1つ重要なのが,複数のボクセルが動き回ることだ。

 地形以外にも,たくさんのものがボクセルでできており,それぞれが独立した存在として扱われ,個別のボクセルデータと位置情報を持っている。
 しかも,これらの独立ボクセルは,地形と比べて解像度も異なる。

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 このように複数のボクセルが存在する3Dアクションゲームでは,衝突判定の扱いが非常に重要になる。

 地形も,そこに乗っている敵も,どちらも形が変化するからだ。一般に,ボクセルの衝突メッシュは表示メッシュと同じ形をしている。
 ボクセルでできた敵も,ボクセルの並びに応じた形の衝突メッシュを持っている。

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 ただし,本作では敵と地形の衝突判定をボクセル同士で直接行っているわけではない。

 敵などの動くオブジェクトの内部には単純なプリミティブ形状があり,実際にはそれがほかのボクセルメッシュとの衝突判定に使われている。中心となるプリミティブ形状が動きながら,衝突を検出しているわけだ。

 そのため,敵の体についたボクセルの形が変わっても,敵と地形との衝突判定そのものは変わらない。
 この方式によって比較的安定した挙動を実現したという。見た目としては体の一部が壁にめり込む場合もあるが,そこは許容できると判断したそうだ。

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 また,開発チームは「破壊」の気持ちよさ自体もさらに追求していった。

 開発のかなり早い段階からボクセルを壊す仕組みそのものは動いていたが,壊したときの気持ちよさがまだ足りなかったという。
 そこで,「壊せなさそうなものを壊せるほうが楽しい」「美しいものを壊せるほうが楽しい」と考え,破壊をより魅力的な体験にしていった。

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 ここまで「全部ボクセル」と言ってきたが,厳密には少し違う。見た目の情報量をボクセルだけで表現するには限界があるため,実際にはボクセルではない要素も多く含まれている。

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 ただし,ボクセルであろうとなかろうと,ドンキーコングの力によって壊される運命にあるというのが重要な考え方だった。

 ノンボクセルのオブジェクトの多くは,壊れると吹き飛ぶように作られており,その飛んだ先でまた別の破壊が起きる。それによってシーンがより賑やかになるだけでなく,「破壊の連鎖」の新たな一部にもなっていく。

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 ここで意識したのは,プレイヤーが「どこまでがボクセルで,どこからがそうでないのか」を気にしなくて済むようにすることだという。
 ボクセルとノンボクセルの形状や表面をなるべく似せ,区別がつきにくいようにしたそうだ。スライドで比較が示されたが,説明されるまで分からないレベルだった。

 また,ボクセルの見た目を改善しつつ,プレイヤーに必要なアクションが分かりやすくなるよう,Dual Contouringというアルゴリズムを使ってボクセルメッシュを生成していることも明かされた。

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 では壊したときに何が起きるのか。ドンキーコングがパンチすると,ボクセルにダメージが入り,ひびが入る様子が見える。

 さらにパンチを続けると,そのボクセルが壊れ,武器として使える塊が出現する。さらに地形を壊していくと,埋まっていた金や宝物がランダムに出てくる。

 つまり,破壊によって武器になる塊が出る,埋まっていたオブジェクトが露出するといったことが起き,それがまた次の行動につながっていく。
 このように,破壊というシステムそのものが,プレイヤーに「もっと壊したい」と思わせるよう誘導しているわけだ。

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 講演では,このボクセル世界をどう制作しているかという制作システムについても説明があった。

 「バナンザ」には,主にボクセルで作られた多様なレベルがあり,その上をボクセルでできた敵やギミックが動き回っている。一般的な3Dゲームのレベル制作との大きな違いは,ボクセルには「中身」があることだという。

 「スーパーマリオ オデッセイ」ではレベルの外側を作ればよかった。だが「バナンザ」では,壊した時の中身まで作らなければいけない。

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 それを実現するために,レベルエディタ上で直接ボクセル形状を置いて組み合わせられるようにした。

 直方体のボクセルで土台を作り,円柱状のボクセル消しゴムでその中をくり抜くといった作業を行い,そうして配置したボクセルは,そのままゲーム内で即座に遊べる形になるという。

 レベルデザイナーたちは,このシステムを使ってさまざまなレベルを作っていったそうだ。

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 さらに,アーティストがボクセルを彫刻できる仕組みも用意された。

 Mayaで作ったモデルをHoudiniでボクセルデータに変換し,それをランタイムでボクセル化してポリゴンを生成する。この仕組みによって,敵やNPC,象徴的な地形といった特徴的な形のものを制作していったという。

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 2人はセッションの最後に,本作を成立させるためには今回語られた以外にも多くの工夫があったと強調した。

 技術とデザインを融合するためには,エンジニア自身が技術面とデザイン面の両方から考えることが重要だったと栗原氏は話す。そして,これらすべてが,3Dアクションのドンキーコングを作るために必要なものだったという。

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 また元倉氏は,今日ここで話しているのは2人だけだが,このゲームは本当にたくさんのチームメンバーのアイデアと技術によって作られたと語った。

 新しいものを作るためには,これまでの作り方や考え方を壊す必要があり,開発を進める中で何度もそのような場面があったという。
 そのぶんチームの中に混乱が広がることもあり,正直「Oh,Banana!」と声に出しそうになったこともあったそうだ。

 それでも,お互いの考えを理解し合いながら前に進んでいった。「バナンザ」のスタッフロール冒頭に表示される“Donkey Kong Bananza Bunch”という名前には,そうした開発チームの思いも込められている。

 最後に元倉氏は,バナンザができてfusionは終わりではなく,GDCに集まったゲーム開発者たちとも融合を続けたいと述べ,「一緒に楽しいゲームを作って,ワクワクを生み出していきましょう」と呼びかけ,サムズアップとともにセッションを締めくくった。

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