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GPU普及の立役者,John Spitzer氏が語るゲームグラフィックスの未来とAI活用[GDC 2026]
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ちなみに,GDC Luminariesは,ゲーム開発の実務や技術そのものを扱うものではなく,ゲーム業界の未来を業界のVIPに語ってもらうコンセプトの講演となっている。
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いつのまにか,「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくるエルフの王のような出で立ちになったことで周囲を驚かせているが,1989年からグラフィックス業界に在籍しており,2001年にNVIDIAへ入社。登場時は新しい概念のプロセッサだったGPUの普及に貢献した,立役者の一人である。
さらに同氏は,OpenGL向けベンチマークソフト「SPECglperf」の開発者としてもGPU業界では名高く,NVIDIAが中心となって出版したGPUプログラミングの基本を解説した名著「GPU Gems」の執筆者として記憶している人も少なくないだろう。
最近では,Nintendo Switch 2のメインプロセッサ開発を指揮したことでも知られており,Switch2正式発表のだいぶ前に,うっかりとそのことを某カンファレンスの自己紹介で口を滑らせたことがあるお茶目な人物でもある。
オールパストレーシングを実現しつつあるハイエンドPCゲームグラフィックス
まず最初に,Spitzer氏が取り上げたのは,GPUの進化についてだ。
ただし,1990年代から現在までの性能向上率を話題にすると,NVIDIAの株価チャートのような現実味のない数字になるためか,Spitzer氏は,10年前の2016年に登場した「Pascal」世代の「GeForce GTX 10」シリーズを起点として話を始めた。
氏によると,10年間の進化によって,2026年の現行世代である「GeForce RTX 50」シリーズ(Blackwell)までで,パストレーシング性能は1万倍に向上したという。
Pascal時点では,Compute Shaderベースのソフトウェアによるパストレーシングだったが,2018年登場の「GeForce RTX 20」シリーズ(Turing)以降は,ハードウェアレイトレーシングベースへと移行した。
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Spitzer氏は,家庭用ゲーム機向けの大作ゲームがPCに移植されるときには,パストレーシングへの対応が今後はますます強まっていくとの見方を示した。
その例として,2026年2月にカプコンから発売となった「バイオハザード レクイエム」や,同じくカプコンから4月発売予定の「プラグマタ」,IO Interactiveから5月発売予定の「007 First Light」などを挙げ,そのビジュアルクオリティは,家庭用ゲーム機版とは大きく異なると指摘する。
そのうえで,「この流れは衰えることはないはずだ」と自信を見せていた。
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さらに同氏は,今後の展望にも言及した。
たとえば,CD PROJEKT REDが開発中の「The Witcher 4」では,Epic GamesやNVIDIAが技術面で全面協力することが明らかとなっており,同作では,広大な森林地帯シーンに対しても,リアルタイムなパストレーシングの実現を目標として掲げている。
Spitzer氏は,こう述べる。「植物の葉は,人間の肌に次ぐ難しい表現だ。デモのようなシーンの植物を表現する各ピクセルは,100〜1000レイヤーで折り重なっているので,正確なライティングや間接照明は困難と言われてきた。
実際には計算できたとしても,リアルタイムのグラフィックスとして描画するのは無理だとされてきた。しかし,The Witcher 4の技術デモでは,実際にこうしたシーンに対してパストレーシングをリアルタイムに実現しているのだ」
Spitzer氏によると,膨大な樹木と草木が立ち並ぶシーンでの高効率パストレーシングで活躍するのを可能にしたのは,GeForce RTX 40シリーズ(Ada)で搭載された「Opacity Micromap Engine」(以下,OMM)と,Blackwell世代GPUで搭載された「RTX Mega Geometry」エンジンだとアピールする。
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OMMは,葉のような透明要素入りテクスチャを大量に持つ植物に対しても,高いレイトレーシング効率を実現する機能だ。一方のRTX Mega Geometryは,無段階LOD表現に対応した樹木や草のレイトレーシング描画を加速させる。
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OMMとRTX Mega Geometryは,DirectX Raytracingには含まれないNVIDIA独自機能であるため,ほとんどのユーザーが所有するGeForce RTX 50/40シリーズでは,これまで活用される機会が少なかった。
しかし,The Witcher 4のリリース後には,これらの機能ブロックに,火が入るようになるかもしれない。
AIとゲーム開発
Spitzer氏は,ゲームにおけるAIの活用事例についても説明した。
NVIDIAは,ゲーム初心者にゲームの仕組みを解説したり,ゲームの世界観を説明したりする用途に生成系AIを活用するソリューションとして,「Project G-Assist」や,ユーザーのPC上で動作する小規模言語モデル(SLM)ソリューションを提供している。
Spitzer氏は,それらを紹介したうえで,ゲーム体験の品質向上や,没入感の増強に,AIを活用できると力説した。
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NVIDIAは最近まで,ゲームにおけるAI活用については,クラウド側のAIを使わせるソリューションを推進していた。NVIDIAの「Avatar Cloud Engine」(以下,ACE)は,まさにそうしたソリューションだ。
しかし,ゲーム開発の現場からは,「ゲームプレイの相手をするNPC制御のためだけに,サーバー上のAIを使わせていたのでは運用コストが見合わない」という反発を受けたという。その影響もあってか,最近では方向性を変えてきたのが興味深い。
先のSpitzer氏の発言でも,ローカル環境で使えるAIに言及したあたりは,まさにそうした方向のソリューションにも,力を入れ始めたことをうかがわせる。
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実際,NVIDIAの提供しているSLMの「Nemotron」は,評価が高い。すでに,一部のゲームが試験的に採用しており,そうしたSLMを組み込んだゲームが,2026年内に登場する見込みだ
Nemotronの正式名称は,「Mistral-Nemo-Minitron-8B」(約80億パラメータ)というもので,ベースとなるのは,約120億パラメータを用いる大規模言語モデル(LLM)の「Mistral NeMo 12B」だ。
LLMをベースに,「モデル間蒸留」(Distillation)や「プルーニング」(枝刈り)といったAIの軽量化を施した高効率モデルがNemotronである。
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なぜ,そんな優秀な言語生成AIをローカルPCで実行できるようになったのか。ベースモデルでは,16bit浮動小数点(FP16)量子化で構築していた学習データを,4bit浮動小数点(FP4)にまで軽量化したからだ。
データサイズが約20GBもあったベースモデルの学習データは,これによって,SLMクラスの約6GBにまで軽量化できた。
言語生成AIとしては,8Bクラスと相応のデータ量があるモデルなので,性能面では標準的なLLM並みといわれるくらい,評価が高いのだ。
FP4化の恩恵もあって,推論速度はベースモデルよりも圧倒的に速い。推論精度もベースモデルに対して5%の劣化,すなわち95%の性能を有するという。
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補足しておくと,FP4やFP8の演算性能が加速するのはGeForce RTX 40シリーズ以降から。GeForce RTX 30シリーズ(Ampere)以前のGPUでも,FP4やFP8の演算には対応するが,実行速度がFP16と変わらない。
そろそろGeForce RTX 30シリーズ以前のユーザーは,GeForce RTX 40以降への買い換えを検討してもいい。ちなみに,Switch2のGPUはAmpere世代である。
現行世代の家庭用ゲーム機への統合は難しいだろうが,次世代機やPC環境では,自然言語で対話できるゲームが増える可能性はあるだろう。
最後にSpitzer氏は,AIやクラウド上の仮想マシン(vGPU)をゲーム開発現場に導入する必要性について述べた。
GPU性能の高いPCを,すべてのゲーム開発メンバーに提供するのは,実際のところコスト的に困難だ。ただ,同じ開発現場でも,アートやモデリング,レベルデザインといったコンテンツ制作の担当者なら,性能の低いGPUを積んだPCよりも,高性能GPUを使えるクラウドのほうが,制作効率も上がりそうだと,Spitzer氏は述べる。
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同じ理屈が,テストプレイやデバッグといったQA工程にも当てはまるだろうとまとめていた。
ちなみに,ゲームのプレイテストをクラウド上の仮想マシンで行うソリューションは,近年ではAmazon Web Servicesも強く推している。
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Spitzer氏は,高性能GPUを必要とする開発スタッフには,「RTX Pro Server」ソリューションや,「GeForce Now Cloud Playtest」サービスを利用するようにとアピールして,講演を締めくくった。
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