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美しい音楽と情緒に満ちた「ヨカゼミュージアムTOKYO」をレポート。京都で好評を博した展示&コンサートが,東京にやってきた
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このイベントは,2025年3月に京都国際マンガミュージアムにて開催し好評を博した「ヨカゼミュージアム」の巡回公演で,今回初お目見えのグッズなども販売された。本稿では会場の模様をお届けする。
空間と物語が重なる,ヨカゼの世界
会場となった「自由学園 明日館」は,1921年に羽仁もと子・吉一夫妻が創立した自由学園の校舎として建設された。巨匠フランク・ロイド・ライト氏によって設計されており,国の重要文化財にも指定されている。
講堂には,木と石の温かい質感が調和した温かさがあり,外から差しこむやわらかな光が厳かな雰囲気をたたえ美しい。
講堂に足を踏み入れると,ふんわりと木の香りが漂う。誰もが寝静まった夜中に,ゲームや本などの創作の世界に旅立つ,じわりと心にしみ込むような楽しさ。そんなヨカゼというレーベルの持つ雰囲気と,驚くほどしっくり重なり合っていた。
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ひとたび足を踏み入れたその瞬間からヨカゼのぬくもりに包まれる空間で,来場者たちは,展示や物販での買い物,コンサートをゆったり堪能していた。
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物販には,ヨカゼをイメージしたオリジナル珈琲やクッキー缶,CD型ミュージックキーホルダーなどの可愛らしいグッズが並んでいたほか,ヨカゼ作品の複製原画ポスターの展示&販売も行われていた。
そのほかにも,今回のコンサートのために制作されたヨカゼのアレンジ楽曲を収録した「Yokaze Acoustic Collection vol.1」のLPレコードやマグカップが販売されていた。LPレコードは,会場BGMとして実際にレコードプレーヤーで再生され,その温かな響きが,空間の雰囲気をいっそう深めていた。
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18時からは,ヨカゼ作品の音楽が演奏される室内楽コンサートの時間だ。フルート,ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,ピアノという構成や,演奏される曲目は,京都で行われた「ヨカゼミュージアム」のコンサートと同じだ。
ただ,今回は明日館という別のシチュエーションで演奏されることで,音の響き方や空間に溶け込む温度がまるで違う表情を見せる。演奏されたそのときによって印象が違ってかんじられるのも,コンサートの醍醐味だ。
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すべての音楽の編曲を担当するのは,ヨカゼの音楽づくりに欠かせない存在である椎葉大翼氏。「ホテル アンテルーム 京都」のマネージャーであり,コラボレーションなどで「ヨカゼ」作品と深くかかわっている豊川泰行氏が,コンサートの司会進行を担当した。
冗談なども飛び出す楽しいトークも交えつつの気さくなコンサートながら,各作品の世界を豊かに表現した演奏はあくまで厳かに。
終演後は,椎葉氏がファンにサインを行い,声をかける場面もあった。手厚いサービス精神とクオリティの高い演奏によって,訪れた人たちが満足げな笑顔で会場を後にする姿が印象的なイベントだった。
【出演】(敬称略)
齋藤 寛(フルート)
白壁美緒(ヴァイオリン)
小林明日香(ヴィオラ)
末永亜裕美(チェロ)
四條智恵(ピアノ)
椎葉大翼(作曲・編曲)
hako生活(トークゲスト)
つよみー(トークゲスト)
豊川泰行(司会)
【演目】
[ Quintet ]
「Yokaze Museum 2025」
Opening
[ Piano solo ]
「From_.」
前奏曲 -Prelude-
舟歌 -Barcarolle-
円舞曲 -Waltz-
[ Quintet ]
「アンリアルライフ」
Unreal March
Crazy Eyes
「Recolit」
はじまり -The Beginning-
あの子 -That Girl-
明かり -Light-
「狐ト蛙ノ旅」
狐ト蛙ノ旅 -Kitsune: The Journey of Adashino-
「World for Two」
沼地 -Lagoon-
森林 -Forest-
砂丘 -Sand Dunes-
遺跡 -Snow Ruins-
[ Piano solo - Quartet - Quintet ]
「World for Two」
夢想曲 -Daydreaming-
Encore
「Yokaze Museum 2025」
Opening
「ヨカゼミュージアムTOKYO」を支える人々が語る,開催への想い
コンサートの前に,椎葉大翼氏,room6パブリッシングマネージャーの高市氏,PARCO GAME事業開発部の石井健斗氏の3人へのメディア合同インタビューが行われた。
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──今回の会場を選んだ理由を教えてください。
高市氏:
自由学園明日館を選んでくださったのはパルコさんです。3月に京都で行った「ヨカゼミュージアム」の会場である京都国際マンガミュージアムも元学校の建物なので,椎葉さんにも見ていただいて,ここに決めました。
椎葉大翼氏(以下,椎葉氏):
立派なグランドピアノがあるというのも,決め手の1つでしたね。
高市氏:
京都国際マンガミュージアムも,同様の理由で決めたんです。今回のイベントは,京都での開催時に来られなかった方にも,同じ空気を体験していただきたいと企画したものですが,季節や建物の雰囲気の違いなどにもあわせ,レコードやマグカップなどの新商品をリリースしました。
──印象に残っている「ヨカゼ」の楽曲を教えてください。
椎葉氏:
自身で作曲していることもあり,「From_.」のピアノ作品は思い出深いですね。この曲から今回のコンサート全体の構成,選曲を膨らませていったこともあり,原点・出発点だと思っています。
高市氏:
現在開発中である「狐ト蛙ノ旅」の楽曲です。限られた構成のなかでの“和”の音の表現が素晴らしいので,お気に入りです。
椎葉氏:
フルートの音色にご注目ください!
石井健斗氏(以下,石井氏):
いろいろ「ヨカゼ」楽曲をコンサートやLPレコードでお見せできるお手伝いができるのが,パルコとしても嬉しいですね。
──ゲーム音楽を生音で作ることの魅力を教えてください。
椎葉氏:
ひとつは,そのままコンサートの演目にできること,ふたつ目は,100年,200年先に残るのは,こういったピアノや弦楽器などの音色なのではないかと思えるところです。
──PARCO GAMESを立ち上げたことで,ヨカゼとの関わりに変化はありますか。
石井氏:
特に変わりはありません。以前と同じく,一緒に盛り上げていきましょう,というスタンスです。
これからについても,良い関係性を維持しつつ,ヨカゼさんも新しい取り組みを進めていらっしゃるので,パブリッシングだけでない新しい枠組みを広げる活動を,我々としてもやっていきたいですし,ご一緒できたらとも思っています。
──コンサートにない楽器を使っている楽曲は,どのように演奏用に編曲していったのでしょうか。
椎葉氏:
ほかの方が作った曲は,原曲を大事にしたいので,まずはそのまま譜面に起こしました。たとえば,「狐ト蛙ノ旅」の曲は,本来7人くらいで演奏するのですが,5人でも厚みが出るようにしています。編曲方法は企業秘密です(笑)。
もうひとつ,ループする曲に関しては,「まるで作曲家の方が作ったような終わりかた」になるよう,作曲者本人と打ち合わせて,誰にとっても納得できるように進めました。
──ご自身の曲に関してはいかがですか。
椎葉氏:
驚きを持って聞いていただけるように。そして,各楽器の良さを味わっていただけるように編曲をしています。
──展示で,特に注目してほしい部分はありますか。
高市氏:
これからリリースされるゲームも含めて展示を行っていますが,まるで展覧会のような会場づくりには注目してもらいたいですね。また,レコードの音を流していることもポイントです。
──今回,レコードを新商品としてラインナップに加えた理由はなんでしょう。
高市氏:
椎葉さんからリクエストを受けたということもありますが,ファンの皆さんに喜んでいただき,つながりを持ち続けたいという狙いがあります。
インディーの開発者の中には,長年開発を続けている方もいらっしゃいますし,私たちも,そうしたゲームのサウンドトラックを作り,それを実際に演奏して聞いてほしいという思いをずっと持っていました。
デジタルのものをアナログにして,手元に置いてつながりを持ち続けてほしい。そういう思いに合致するのがLP版リリースで,今回の東京会場で実現したんです。
椎葉氏:
2時間のコンサートにおける演奏時間は,40分くらいの配分がちょうどいいと考えていて,今回のコンサートもそうした構成になっています。LPの収録可能時間は,A・B面合わせてちょうど40分なので,うまくいったなと思っています!
──3月の京都で行った「ヨカゼミュージアム」に関して,皆さんのもとに届いたファンからの声はどんなものがありましたか。
高市氏:
「開催してくれてありがとう」という声をいただいて,嬉しかったですね。それから,「ヨカゼが好きな仲間がこんなにいるんだと,来場して実感できたのが良かった」という感想もいただきました。
石井氏:
パルコの立場としては,ゲームのパブリッシングもしているなかで,レーベルの方と協力していろいろな施策を行っていることに対して,「これまでにない取り組みだけど,パルコらしいね」と好意的なお声をいただきました。
椎葉氏:
「World for Two」の「夢想曲 -Daydreaming-」を演奏したときに,ピアノソロ,カルテット,クインテットという3つの編成を続けて聞いていただいたんです。
これは原曲にはないアレンジですが,聞いてくださった方が「音色が変わっても,良いものは良い」と言ってくださったのが嬉しかったですね。
──今日という日を迎えた,皆さんの気持ちをお聞かせください。
椎葉氏:
京都に来られなかった,という方にも聞いていただけるチャンスができたことを嬉しく思います。これからも日本全国,海外にも打って出られたらと。
高市氏:
京都の小さなゲーム会社が,まさか東京でこんな機会をいただけるとは思っていませんでした。これも,パルコさんのご助力と,椎葉さんの演奏があってのことですが,未だ実感がわかないというのが本当のところです。
これからも,音楽と物語を味わっていただけるような場所を作っていけるよう,力を入れていきたいですね。
石井氏:
ヨカゼさんとは,外から見たら,立場的にライバル関係に見えてしまうような面もあるのかなと思うのですが,こうして良い関係で1年以上一緒に協力してこられたということ,展示などには開発者の方々の助力もいただき,それをお客様に楽しんでいただけていることがまず嬉しいことです。
コンサートに関しては,私もいちファンとして楽しみにしていました。多くの人にこの良さが届けられたらと思っています。
──今後のヨカゼの展開について,決まっていることはありますか。
高市氏:
来年は,ゲーム作品のリリースをいくつも控えておりますので,そちらをがんばります。でも,今後も積極的に企画をしていきたいと思っています。まだ予告できるようなものはありませんが,楽しいことができたらなと考えています。
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- ライター:内藤ハサミ
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