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「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた
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印刷2019/06/08 00:00

インタビュー

「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

300万本の壁を越えるために


原田氏:
 僕から見ると,モノリスソフトさんの環境は十分に魅力的に感じますけど,高橋さんご自身から見るとどうなんでしょう。モノリスの魅力って,なんだと思います?

高橋氏:
 ……そうですね,何だろうな。

原田氏:
 例えばバンダイナムコの場合は……こう見えて,バンナムはバンナムでいろいろ魅力的な企業ではあるんです。

高橋氏:
 こう見えてって,良い会社に見えてますよ(笑)。

原田氏:
 手広くいろんなジャンルを手掛けているので,自分の泳ぎ方次第でいろんな選択肢が出てくるってのは魅力の一つですね。

画像(010)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

高橋氏:
 弊社の場合,バンダイナムコさんみたいにIPが多いわけでもないですし,多様性のアピールはしづらいですね。これもちょっと誤解を受けやすいですが,ある程度満足いくまで,ものづくりができる環境です,というのがアピールポイントでしょうか。

4Gamer:
 誤解を受けやすいとは?

高橋氏:
 どんなプロジェクトであっても予算と期間がありますし,弊社の場合,プロジェクトをスタートするためには親会社である任天堂さんの承認を受ける必要があるんですね。なので,むしろそのあたりは厳格です。厳格ではありますが,そこに向けて途中で諦めずに,できる限りベストな形でアウトプットできる環境にはあると思います。

4Gamer:
 なるほど。さきほどのゼノサーガでの経験にもつながるお話ですね。

高橋氏:
 ええ。それに任天堂さんはそうしたマインドを持った人がとても多いので,そこから受ける影響も大きいと思います。昔は頑張れば行けたかもしれないのに諦めたり,挑戦する前に止めたりしていたことに,今は挑戦するようになりました。そういったところは魅力かなと思います。

原田氏:
 会社の気質としても挑戦するようになったし,任天堂さんを含めて,それを認める環境にあるということですか。

高橋氏:
 会社がそういう気質になったというのもありますが,逆にそうでないと,任天堂さんになんて全然追いつけないんですよ。向こうにはすごい人がいっぱいいますし,現場の熱量もすごい。とにかくマインドが強い会社で,そこからアウトプットされるものが,どれも面白いんです。そして,そのどれもがものすごく売れるっていう。

原田氏:
 絶対にすごいものを出してきますものね。安心感があるというか。

高橋氏:
 だから,自分達の感覚で「良いものができたね」とか思っていても,常に上には上がいることを思い知らされるんです。そこに追いついていかなければお仕事をいただけないと思うと必死になるんですね,人間は。それが大きいと思います。

原田氏:
 例えば,ゼノブレイドシリーズ以外のオリジナル企画を立ち上げようと思ったら,社内の企画コンペみたいなところに出すわけですか。

高橋氏:
 企画コンペも昔はやってましたが,今は社内でというより,可能性のありそうな企画を集めて任天堂さんに持って行くって形ですね。

原田氏:
 そのアイデアは,自発的に皆が出していいんですか?

高橋氏:
 そこに制限は設けていません。ただ,みんな実務しながらで忙しいので,それだけに注力っていうわけにはいかないですが。

原田氏:
 それでも,それができる環境にはあるってことですよね?

高橋氏:
 そうですね。良いアイデアや企画書があったらいつでも持って来いっていう。ただ任天堂さんの審査は相当に狭き門ですよ。それこそ何十本という企画を出していますが,その中で通ったのは,ここ最近ではゼノブレイドだけ。たまたま僕の企画が通ったに過ぎません。

4Gamer:
 恐ろしい話ですね……。

高橋氏:
 僕から一つ,原田さんに聞いてみたいことがあるんですけど,いいですか?

原田氏:
 ええ,もちろんです。どうぞ。

高橋氏:
 JRPG――ここではあえてJRPGって言い方をしますが,このジャンルのセールスの限界値ってどのくらいだと思いますか。実は最近ずっとこれを考えてまして,自分の中では200〜300万本くらいのところに高い壁があるイメージなんですけど。

原田氏:
 ……うーん,僕は「テイルズ オブ」シリーズにおけるワールドワイドでのマーケティングも担当してきて,現在はそれらの開発責任と収益責任を担う部門の部長でもあるんですが,その経験から言うと,まずミリオンの段階で1段階目の高い壁があると感じます。
  日本ではRPGって「ゲームの王道」ってイメージもありますが,世界市場ではJRPGにもそれぞれ立ち位置がありますから。日本人にとっては意外でしょうけど,売り上げで言えば「鉄拳」みたいな格闘ゲームタイトルのほうが,出足という意味では断然速いんです。発売2か月で200万本ですし,1年で300万,2年で400万は行きますから。これがJRPGだと,最初の100万本の壁が意外に厚いな,となる。

高橋氏:
 その壁を越える方法をずっと探しているんですよね。

原田氏:
 可能性があるとすれば……例えば「ファイナルファンタジーXV」の事例でしょうか。オープンワールドの仕組みにせよグラフィックスにせよ,あれは最新のテクノロジーの集合体じゃないですか。欧米圏,とくにアメリカのゲーマーは,そういった最新のテクノロジーベースにビビっとくるみたいで,これは一つの突破口になりうるんじゃないかと。僕はテクノロジーというのが,一つのキーワードだと思っています。

※「ファイナルファンタジーXV」の全世界販売本数は現時点で770万本(公称値)。

「ファイナルファンタジーXV」
画像(013)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

高橋氏:
 それは確かに,一つの答えだと思います。でも現実問題として予算は限られるわけで,僕らはその中で表現できるものを見つけなくちゃならない。そう考えたときに,テクノロジーに特化した作り方ができるかというと,絶対に無理なんですよね。それに代わるフックが何かないかと,ずっと悩んでいるんですが……。

4Gamer:
 例えば日本ならではキャラクターや世界観,独自の映像表現なんかはフックになり得ませんか。

原田氏:
 確かに欧米の開発者に聞くと,KOS-MOSにせよノクティスにせよ,ああいうキャラクターは我々にはちょっと簡単には生み出せないって,口を揃えて言うんですよ。ただ,そこには二つの意味が含まれていて,必ずしもポジティブなだけの話ではなかったりする。

4Gamer:
 二つの意味ですか。

原田氏:
 単純に「すごいな」って意味もあるけど,同時に「なんでこうなるんだ」っていうことでもあるから。確かにキャラクターは日本の強みではあるけど,そのままでは海外の一般層には届かない。コアなプレイヤーに響くという点は,世界共通だとしてもです。
 ただ高橋さんのおっしゃるように,テクノロジーの方向に進もうとすると,経営の話になってしまうんですよ。会社としてそれだけのお金を投資できるかっていう。でもモノリスさんは,その環境を着々と整えてきたのでは?

高橋氏:
 環境は徐々に整いつつあるとは思っています。「ゼノブレイド2」は,おかげさまで2019年3月末にワールドワイドで173万本を達成しました。でも,そこが今の限界かもしれないとも感じてるんです。一方で,“任天堂さんのタイトル”になると,1000万本級がゴロゴロあるわけじゃないですか。

「ゼノブレイド2」
画像(012)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

原田氏:
 ……そうなんですよね。モノリスさんも関わられた「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(Switch / Wii U)とかは,ものすごかった。IPの力はもちろんあると思いますが,内容的にも非常にキャッチーでした。

高橋氏:
 IPの力は大きいですよね。あとは圧倒的な物量とそのコントロール,それと任天堂さんのエンジニアの底力だと思います。

原田氏:
 いや,ほんとうに。それはつまり,ゼルダにはそれを実現できるだけの投資があったということでもあるわけです。もちろん,その投資を消化しきるだけの技量が開発側にあることが条件ですが。

高橋氏:
 おっしゃるとおりです。でも,同じ投資をモノリスソフトにくださいって言ってみたところで,「その前にまず実績を出しなさい」と言われてしまうでしょう。

原田氏:
 ……それはもう,こつこつと光るものを作っていくしかないですね。あるいは簡単な発明ではダメで,何か大きなイノベーションがないと。

高橋氏:
 まさしく,発明なんだろうと思います。僕らはまだ,そこに全然届いてない。

4Gamer:
 なんというか,世知辛いというか。そこは任天堂すごいって話ですね(苦笑)。

高橋氏:
 任天堂,すごいですよ。

原田氏:
 きめ細かな作り方やユーザビリティへの配慮,ボリュームの出し方,それからファミコン時代から培ったIPの力と,カバーしている範囲が尋常じゃない。

4Gamer:
 ……信頼じゃないでしょうか。任天堂なら間違いないだろうっていう,プレイヤーの期待感と言いますか。

原田氏:
 それこそ,そこいらの会社が一朝一夕で追いつけることではないわけで。培ってきた歴史が違うというのはありますよね。

画像(011)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

4Gamer:
 モノリスさんの得意分野がRPGというのはもちろん分かりますが,その外のジャンルに手を広げてみるという可能性はないのでしょうか。

高橋氏:
 なくはないです。ただ随分前,漫画家の荒木飛呂彦先生が「ジョジョ以外は描けません」というようなことをインタビューでおっしゃっていまして。非常によく分かる話で,僕らとしても似たところがあると思ってます。

原田氏:
 でも,RPGがお好きなんですよね?

高橋氏:
 好きですね。ウチはRPGしか作れないんだってことを思いつつ,同時にRPGが大好きでもある。じゃあ「レースゲーム作る?」って言われたら,遊ぶのは好きですけど作るのはちょっと違うんじゃないかって思います。結局,好きで作ってるだけなのかもしれないです。

原田氏:
 あのこれ,すごくしょうもない質問をするんですけど。僕は格闘ゲームが好きだし,自分でも遊びたいから作ってるところがあります。完成したタイトルで対戦すると面白いですし,単に勝った負けただけじゃなくて,自分がうまくなるのが楽しいわけす。
 でもRPGって,自分で作ったらストーリーのオチまで分かってるわけじゃないですか。そこって作り手としてどうなんでしょう。自分で作ったRPGを,自分で楽しんだりできるんですか?

高橋氏:
 人によると思いますけど,僕は割と楽しめてますよ。

原田氏:
 最初からデバッグしたりとか? 完成したロムも最初から遊んでみる?

高橋氏:
 デバッグはスタッフの誰よりやっていますね。もう何百時間も。完成版も遊びます。自分が楽しいと思えないものを,お客さんに提供することはできませんから。

原田氏:
 それはそのとおりですね。でも僕がRPGをプレイするときって,「こんな展開になるのか」とか「おー,ここでこんなのが出てくるんだ」みたいな驚きがあって,ドキドキワクワクしながら世界を探索していくんですけど……作り手はそれ全部知ってるわけですよね。

「コマンドー(ディレクターズカット版)」(リンクはAmazonアソシエイト)
画像(025)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた
高橋氏:
 そうですね……あの,「コマンドー」って映画があるじゃないですか。

原田氏:
 あっ!

高橋氏:
 僕はあれが好きで,1年に1回は必ず見るようにしてるんですね。話は全部知っている。でも,楽しいんです。僕にとってはゲームも同じで,話を知っていて,レベルデザインもフローも全部分かってて,それでもなお遊んで楽しいゲームなら,自信を持って提供できます。

原田氏:
 こんな分かりやすい例えがあったのか。僕も好きですよ,「コマンドー」(笑)。

高橋氏:
 漫画もそうですよね,何度も読んだりしますし,その感覚だと思います。

原田氏:
 「DEATH NOTE」なんて,オチ知っているのに何回も読んでるもんなぁ。すごくしっくりきました。いやあ,ずっと気になってたんですよ。RPGを作ってる人って,完成したらどうするんだろうって。

高橋氏:
 この会社で僕だけかもしれないですけど(笑)。

原田氏:
 よく考えたら誰でも分かる話だった。でもこれ,意外といい質問だったんじゃない?

4Gamer:
 「コマンドー」で分かるRPG入門ですね(笑)。高橋さんは,RPGに限らず普段ゲームはプレイされるんですか?

高橋氏:
 同世代の同業者よりはやっているのではないかなと。ソシャゲも含めて,主だったタイトルは必ず7〜8時間は触るようにしています。2〜3時間だと導入部分だけになっちゃうので,分からないじゃないですか。

原田氏:
 分からないですね。

高橋氏:
 だいたいどんなゲームでも,7〜8時間遊べば作った人が伝えたいこと,作りたかったことがなんとなく分かるような気がするんです。

4Gamer:
 それは純粋にゲームを楽しむというより,作り手としての視点でプレイされるわけですか。

高橋氏:
 どっちかというと後学のためですね。純粋に楽しむために遊ぶのは,FPSぐらいかな。MMORPGも昔はアホみたいにやりましたけど,今はやらなくなっちゃいました。もう,疲れちゃって。

原田氏:
 まったく同じ心境です。完全に同じ道を歩いてますよ。

4Gamer:
 原田さんが関わられたゲームをプレイされたことは?

高橋氏:
 格闘ゲームはどっちかというと2D派でして,3D格闘はあまりやらないですよ。申し訳ない。でも「サマーレッスン」は買って遊びました。没入感やインパクトが素晴らしかった。

原田氏:
 おお,ありがとうございます!

高橋氏:
 これはぜひお伝えしたいと思っていたんですが,あの路線は続けていただきたいんです。VR自体がこれからどうなるか,というのもあるでしょうが,あそこで終わってしまうのはもったいない。技術的にもまだまだ進化の余地があると思いますし。

原田氏:
 おっしゃるとおりで,「サマーレッスン」はまさに今話していた,投資の壁を強く意識させられたタイトルでした。業界的にも,またバンダイナムコグループ内で考えても,真っ先にVRやるぞと斬り込んだのがアレだったので。本当はあれより60倍は良いものにするつもりだったんですが……ハードのローンチでやろうとしたわけだから,予見できたことではあったんですけどね。しかしそう言っていただけると非常に心強いです。なんとか研鑽したいと思います。

高橋氏:
 あと,VRで言えば「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」PC / PS4 / Xbox One)(以下,AC7)も買いました。実はVRモードしかやってないくらいでして。

「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」
画像(014)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

原田氏:
 そういう人も多いみたいですね。あのAC7のVRモードは,「サマーレッスン」でディレクターをやった玉置(玉置 絢氏)が,VR部分の総監督をしています。「サマーレッスン」で培った経験が活きた結果,大好評になりましたね。

高橋氏:
 飛行機やレースゲームはVR向きですよね。そんなに酔わないですし。

原田氏:
 AC7のVRは,実は最初は僕も玉置も「絶対に酔う。100%酔う」ってシロモノだったんですよ。僕は当初「エースコンバットはVRに向かない」と言いきってましたからね。そこから酔わないところまで,いかにして持っていくかというのをAC7チームがアレコレとで突き詰めたのが,あのVRモードなんです。

高橋氏:
 いやあ,とても面白かったです。いちユーザーの立場から,応援しています。

原田氏:
 やっぱりやり続けないと良いものってできないてこないなっていうのは本当ですよ。世の中の人は,まさか「サマーレッスン」の経験がAC7に生きているとは思わないでしょうけど。実際は全部つながっているんですよね,ものづくりって。


新卒をしっかり育てて10年後に戦力に


原田氏:
 ちょっと話がズレちゃいましたけど,求人募集への反応は,実際のところいかがですか。僕なんかから見ると,モノリスさんが募集かけたら,共感したクリエイターがいっぱい応募してきそうにも思えるんですけど。

高橋氏:
 2パターンあって,一つは今まで弊社で作ってきたタイトルが好きで応募してくる人。もう一方は,勤務の環境に惹かれて応募する人ですね。例えば定時制だとか。もう,相当に神がかった優良企業だと思われてるみたいで。

原田氏:
 実際,ホワイトだと思いますよ。サイトを見ても,福利厚生はしっかりしてますし。その2パターンの割合はどのくらいなんですか?

高橋氏:
 半々ぐらいですね。なるべく前者の人に入ってもらいたいという思いは強いです。それがあると,作る作品に対する愛情や,芸術性に違いが出てくるので。といっても,たまにいるんですけど,周りが見えなくなって「ただ大好きです」っていう人は,ちょっと。

原田氏:
 ちょっと,怖いタイプですか。

高橋氏:
 怖いというか,一つのことしか見えないと,作れるはずのものが作れなくなってしまいますから。

原田氏:
 分かります。そこから抜けられなくなっちゃうんですよね。僕は自分の価値観を,何年かおきに自分で壊すように心がけてます。時代や世代によって,価値観は変わっていくものだし。けれど,ただ熱狂的ってだけだと,昔良かったことを追い続けるだけで広げていくことができない。

高橋氏:
 そうですね。好きだという気持ちは,ある種の成功体験のようなものだと思います。実際にものを作ろうとするとき,これが強過ぎると邪魔になってしまう。例えば,「ゼノブレイドはここが良かったから,こうでなきゃダメなんだ」みたいな感じになっちゃうんですよ。

原田氏:
 判断基準が,全部そこに寄っちゃうんですよね。

高橋氏:
 ええ。時代は変わっているし,売れたタイトルであっても,それはたまたま時期や世相,タイミングが合って成功しただけかもしれないわけで。3年後,10年後にまったく同じことをやって成功するかと言えば……するかもしれないし,しないかもしれない。そこの判断が鈍るので,一つのものに固執し過ぎるのは怖いと常々思っています。

4Gamer:
 今の話は,新卒採用の話でしょうか。

高橋氏:
 新卒ですね。ウチはデベロッパですし,知名度もそこまで高くないので,中途採用はなかなか思いどおりに進んでないというのが正直なところです。それはそれとして,新卒の子をしっかり面倒を見て育て,5年後,10年後に戦力になってもらう方が向いてるかなと思っていて。なので,毎年数名は新卒を入れています。

画像(015)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

原田氏:
 いやあ,新卒を採るのはやっぱり重要ですよ。育てないとダメですね。我々も採用を減らしていた時期があって,空洞化を感じることもありました。ただバンダイナムコエンターテインメントの場合は,事業の幅が広がっていることもあってか,志望者の層も一昔前とはガラッと変わってきていて。

4Gamer:
 変わってきたというのは?

原田氏:
 学生の就職したい企業ランキングでトップ10に入るぐらいになって,“優良企業のうちの1社を選びました”みたいな感じなんです。それで併願してる会社を聞いたら,日本を代表する名だたる企業が並んでいたりするし。

高橋氏:
 バンダイナムコさんの状況とは全然違いますけど,うちに来る新卒も似たような感じですよ。「ゲーム大好きです」っていうから「何やってるの?」って聞いたら,カジュアルなゲームの名前が1本しか挙がらなかったりとか。

原田氏:
 そうなんですよ! こっちから聞かないと,ゲームの話すらなかなか出てこない。きっとすごく優秀なんでしょうけど,ウチで働くことへのモチベーションがどこにあるのか,こっちが探っていかなきゃいけない感じになったりしてて。

高橋氏:
 話を広げてみようとしても,「PS4持ってないです」とか「Switch買おうと思ってます」とかなんですよね。「ああ,今の新卒はそんな感じなのか」みたいな印象はあります。

原田氏:
 別にカジュアルゲームでもいいんですよ。だけど例えば本人が「ゲーマーだ」と言うからには,ランキングで上位ですとか,なんかそういうエピソードが聞きたいじゃないですか。なのに,ヘタすると片手間にやってる俺の方が上じゃねえか,みたいなことすらある(笑)。

4Gamer:
 それはゲーマーなのか,みたいな?

原田氏:
 ゲーマーって言葉のイメージが,僕らが考えてるものとはちょっと違ってきてるのかもしれません。うん,もはや違うんだろうな。大企業化ゆえの現象というだけじゃなく,僕らの頃とはゲームに対する向き合い方が。

高橋氏:
 だけどゲームのことを知らなくても,原石みたいな人は絶対いるんですよね。なので,できるだけ話を聞いて,この人に何がやれるのか,何をやってもらおうかを考えてから決めるようには心がけてます。

原田氏:
 確かにゲーム好きじゃなくても,プロジェクトの重要なメンバーになってガンガンまわしてくれる可能性はありますよね。僕の場合,新卒採用では「基本ポジティブなのかどうか」「信念だったり執着だったり執念があるかどうか」ってところを見るようにしているんですが,高橋さんはどんな質問をされてます?

高橋氏:
 そういう人に聞くとしたら……「なぜうちなのか」でしょうか。ただこれを聞くと,大抵は「労働環境がしっかりしてるから」みたいな答えが返ってくるんです。採用する立場としては,「じゃあ仕事の中身はいいのかい?」って,思っちゃうんですよね。

原田氏:
 環境だけならもっといいとこあるじゃん,みたいな。確かにモノリスさんを受けようってくらいだから,労働環境とかはそれなりに調べては来るわけだ。でも採る立場として聞きたいのはそこじゃなく,どこが君の琴線に触れたのか,もしくは何を求めてきたのか,なんですよね。

高橋氏:
 そうなんです。でも,どうやって見極めればいいんでしょうね。

原田氏:
 僕はモチベーションを維持できるかってのが,すごく重要だと思ってます。だから,例えば体育会系でフィジカルが強い人は,けっこうこの仕事に向いてたりする。なんというか,芯があってなかなか折れないんですよね。僕自身が体育会系出身だから,というわけでもないですが,これがなかなかどうしてあなどれない。

高橋氏:
 あと,新卒の面接ということでは,趣味や娯楽で何が好きなのかは,もっと教えてほしいです。みんな恥ずかしがって,本当の自分を見せないんですよ。映画鑑賞とか読書って一般的で言いやすいのかもしれないけど,聞きたいのはそれじゃない! 例えば「とあるサブカルコンテンツが大好きです」でも,それに人生かけてるくらいなら,むしろそれが聞きたいんですけど。

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原田氏:
 ああ,見せてくれませんね。で,無理矢理聞き出すと,「それ先に言ってよ」ってくらい面白い話を持ってたりする。実はハードディスクレコーダーのストレージが,録画したアニメで大変なことになってますとか。

高橋氏:
 いや,それでいいんですよ。「ずっと卓球をやってました」とかでも。ハマった経験を知ることで,とことんやる人なんだってことが分かりますから。
 
原田氏:
 ようやく話を引き出したと思ったら,すでに面接のタイムリミットだったりすることも多いので。恥ずかしがらずに,「本当に自分が一番注力したこと,もしくは大切にしているものを包み隠さず言ってごらん」っていうのは,これから就職活動する人にとって良いアドバイスになるかもしれません。

4Gamer:
 中途採用を受ける人へのアドバイスについてはいかがですか。

原田氏:
 中途ということなら,RPGの制作経験だけじゃなくて,例えばアクションゲームの経験とかがあると活かしやすいんじゃないですか?

高橋氏:
 そういう人,欲しいんですよね。キャラクターコントロール周りって,手触り感がすべてじゃないですか。アクションゲームを作っている人の知識や経験は役に立ちますよ。

原田氏:
 それなら僕も,行けるかもしれないな。

高橋氏:
 全然行けますよ。指導してほしいくらいです(笑)。
 あと中途採用では,今まで自分がやってきた中で「これはあかん!」と思ったことを教えてほしい,って質問をよくします。それに対して「自分はどうしたのか」「どうすべきだったのか」を聞くんです。僕らも勉強になりますから。

原田氏:
 僕なんか,それだけで6時間ぐらい語れそうですけど。もう少しミクロな話で,職種でいうとどこが足りない感じなんですか。

高橋氏:
 やっぱりエンジニアが欲しいですね。これは持論でもあるんですが,僕らが作るものって,エンジニアやプログラマの力で上限が決まってしまうところがあるじゃないですか。

原田氏:
 おっしゃるとおりで,僕もエンジニアは欲しいです。それはどこも同じなんですね。

高橋氏:
 企画を立てるにしても,単に夢をぶつけるだけじゃ意味がないんで。今のモノリスの人材と能力を考えて,「ここまでだったらできる」というものを提示しなくちゃならない。エンジニアが豊富であれば,当然ながら作れるものも変わってきます。

4Gamer:
 応募自体はどうなんでしょうか。多いんですか?

高橋氏:
 応募自体は多いですね。これまでよりもはるかに。だから倍率も相当高いです。ただ応募が多いこと自体は嬉しいんですが,話を聞いてみると,当然ながら皆さん併願されてるわけです。だから,やっぱり取り合いなんですよ。どこと取り合うかっていうと……それこそバンダイナムコさんとか。あと,ほかの大手さんだったりですね。

原田氏:
 有名どころばっかじゃん,みたいな。

高橋氏:
 取り合いになった結果,もちろん来てくれる人もいます。でもやっぱり,希望と合わないことがあるし,あとは職場環境ですね。バンダイナムコさんは,こないだ本社が新しいビルになったじゃないですか。

4Gamer:
 えっ,そこなんですか?

高橋氏:
 採用とかの段階だと,これがけっこう決め手になるんです。各社さん,すごいじゃないですか。それに対して,うちは箱だけで負けちゃうよなって。

原田氏:
 ここはもう,パーティションがなんか,すでになんか懐かしい感じですよね。

高橋氏:
 あれ実は,旧ナムコの頃から同じものなんですよ。

モノリスソフト社内の風景。同社の公式サイトより
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原田氏:
 あ,やっぱり! いや,絶対そうだと思いましたよ! オフィスにお邪魔して,最初に思ったのが「あれ,この雰囲気。なんか俺,知ってるぞ!」でしたから。

高橋氏:
 近々リノベーションする予定です。さすがに20年使ってるんで。会社の魅力って,もちろんゲーム作りに関わるところが本質ではありますが,やっぱり環境も大事だと思います。

原田氏:
 大事ですね。僕はあのパーティションで,1990年代に泊まり込んでたときの風景が完全にフラッシュバックしました。

高橋氏:
 この会議室の椅子や机も,あの頃のままなんです。こういうところもちゃんとしないと,ほかの会社には絶対勝てないと思うわけです。

原田氏:
 本当は物質的なことよりも,先輩後輩に恵まれるっていうことの方が重要なんですけどねぇ。

高橋氏:
 そうなんですけど,来る人はそこまで分かりませんから。

原田氏:
 そこが難しいところなんですよね。

4Gamer:
 最後に4Gamerの読者,あるいはモノリスさんを志望する人に向けて,何かメッセージをいただけますか?

高橋氏:
 新卒と中途のどちらにも言えることですが,楽しくゲーム作りをするためには,自分からのアプローチが必要です。ただ餌が来るのを待っているだけでは,楽しくならないんです。自分から能動的にアプローチしてくれる人を求めていますし,弊社はアプローチすればするだけ,望んだ形でものづくりができる会社です。「ゲーム作りたいぞ!」「こういうものやりたいぞ!」っていう強い思いがある人は,ぜひ門を叩いていただけると嬉しいですね。

原田氏:
 それを言い切れるのは,かなりすごいことだと思いますよ。本当に。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。
 
画像(018)「ゼノサーガ」の紆余曲折が「ゼノブレイド」を生んだ――不定期連載「原田が斬る!」,第7回はゼノシリーズ総監督の高橋哲哉氏にモノリスソフトの今を聞いた

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