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MMORPGでも“ジャンプ操作”は絶対必要なんです!――チーフプランナー安西 崇氏も招いた「ドラゴンクエストX」バージョン2.1インタビュー
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印刷2014/04/17 00:00

インタビュー

MMORPGでも“ジャンプ操作”は絶対必要なんです!――チーフプランナー安西 崇氏も招いた「ドラゴンクエストX」バージョン2.1インタビュー

“新しい遊び方”を提示した本作のバトルシステム


4Gamer:
 齊藤さんからすると,安西さんってどういう評価になるんですか?

齊藤氏:
 んん〜。「イケメン」ですかね。メディアへの露出は,全部彼に任せようかと(笑)

安西氏:
 いやいやいや(笑)

齊藤陽介(さいとうようすけ):スクウェア・エニックス エグゼクティブ・プロデューサー。黎明期から旧エニックスでオンラインゲームの開発を行ってきた開発者で,「ドラゴンクエストX」でもプロデューサーを担当。代表作には「アストロノーカ」,「クロスゲート」,「ニーア レプリカント/ゲシュタルト」などがある
画像集#003のサムネイル/MMORPGでも“ジャンプ操作”は絶対必要なんです!――チーフプランナー安西 崇氏も招いた「ドラゴンクエストX」バージョン2.1インタビュー
齊藤氏:
 まぁ真面目な話をすると,やっぱり,あのバトルシステムをきっちりまとめあげたのは凄いことだと思います。4Gamerさんはわかっていただけると思いますが,バトルシステム周りって,オンラインゲームにおいては,とくにプレイヤーさんから責められやすい部分じゃないですか。とても難しい部分ですから。

4Gamer:
 そうですね。その意味で言うなら,僕は「ドラゴンクエストX」のバトルシステムって本当に凄いと思ってるんです。発売当初は,割と賛否両論あったような雰囲気でしたけど,ドラクエらしさをちゃんと残しながらも,オンラインゲームとしての体裁を整えるためにいろいろな仕掛けが施してある。リアルタイムに動き回れるところだったり,前衛と後衛の役割分担が見た目で分かりやすいところとか。戦士が体を張って敵を押し止めるっていうのは,やっぱりビジュアル的に相当分かりやすいんですよね。

齊藤氏:
 一見すると従来のドラクエとはまったく違うものに見えるかもしれませんが,根底にあるものは「ドラゴンクエスト」シリーズのバトルシステムだったりもするんですよ。パラメータの持ち方とか,敵のAIの動かし方とかは,実は従来の「ドラゴンクエスト」のものを踏襲していて。

りっきー:
 従来のドラクエをベースにして,じゃあこれをオンライン化するとどういう風になるの?っていうところで,さまざまなものを積み上げていった結果が,今の形なんじゃないかなという気がします。

齊藤氏:
 戦闘のルールというか,細かい仕組みの部分は,作っていく過程で詰められていったものなんですが,ビジュアル的なイメージそのものはかなり初期の頃から「こういったバトルだよね」ってものがありました。以前の春祭りイベントでちょこっと公開しましたけど,バトルシステムのイメージムービーとかも作って,チーム全員でそのイメージは共有していましたから。

4Gamer:
 MMORPGの,例えば「EverQuest」あたりを参考に作られているゲームって,バトルシステムのロジックがいわゆる「ヘイト()」をどう管理するかを中心に据えているものが多いじゃないですか。前衛が敵を引きつけて,後衛は自分が狙われないように与えるダメージなどを調整しながら戦う――といった風な仕組み(遊び方)ですよね。「ファイナルファンジーXI」あたりも,まさにそういう系統で作られている作品で。

※ヘイトシステム:敵対心といった意味。ダメージを与えたり,味方を回復するなどといった,敵が嫌がる行動をとると,そのプレイヤーキャラクターに対するヘイトが高まり,もっともヘイトが高いプレイヤーキャラクターに向けて攻撃が行われる。

齊藤氏:
 おっしゃる通りですね。

画像集#032のサムネイル/MMORPGでも“ジャンプ操作”は絶対必要なんです!――チーフプランナー安西 崇氏も招いた「ドラゴンクエストX」バージョン2.1インタビュー
4Gamer:
 でも,あのシステムはやっぱり上級者向けのものというか,とにかく“分かりにくい”んですよね。一方で,「ドラゴンクエストX」では,そのあたりの駆け引きを見た目で分かるようにしていて。しかもアクション要素も盛り込んで,キャラクターを動かしながら戦うという新しい形に昇華させていた。その意味で「これは凄いシステムだな」と思ったんです。

齊藤氏:
 「ドラゴンクエストX」でも,ヘイトって概念がまったくないわけじゃないんですけど,相当分かりやすくはなっていますよね。従来のMMORPGのような形じゃなくて,直感的に分かるようなバトルにしたいっていうのは,バージョン1.0のディレクターである藤澤()が本当にこだわっていた部分でした。

※藤澤 仁(ふじさわじん):スクウェア・エニックス ディレクター。1998年より堀井雄二氏のアシスタントとして「ドラゴンクエスト」シリーズのシナリオ制作に参加。「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」ではディレクターを務めた。「ドラゴンクエストX」でもディレクター&シナリオを担当し,ゲームの運営と開発を統括していた。「ドラゴンクエストX」ではバージョン1の開発終了に伴い,ディレクター職を退いている。

安西氏:
 そうですね。実際,私が最初に書いたバトルの仕様は,従来通りのヘイトシステムをベースにしたものだったんですよ。だけど,藤澤さんが「ヘイトって何?」と聞いてきて。説明をすると「なるほど。そういう仕組みなんだ。でも,それだとお客さんには伝わらないよね」って言ってきたんです。

齊藤氏:
 そのへんは,当時,MMORPGをそんなに遊び込んでいなかった藤澤ならではの視点だよね。

安西氏:
 ええ。藤澤さんは「前衛が後衛を守るというのを,ちゃんと見た目として分かるようにしたい」と希望されていたんです。しかも,それは単にコマンドとして処理するんじゃなくて,戦闘中にちゃんとキャラクターを動かせて,敵が来たら直接押し止めて守れるようにすべきだと。
 ただ,一方で,藤澤さんのアイデアをそのまま形にしてしまうと,通信量が膨大になって実装しづらいという問題がありました。自由に移動できると,その位置情報を常にサーバーとやりとりしなければいけませんし,まして敵を「押せる」となると,キャラクター間の当たり判定なども常に処理しなければならない。サーバーのパワーをけっこう使うことになるんで,私は現実的じゃないと思っていたんです。

齊藤氏:
 技術的にもインフラ的にも,かなり高度なものが求められたんですよ。

安西氏:
 だから私は,あくまでも「大ぼうぎょ」とか「におうだち」みたいなコマンドを入力したときにだけ,敵と当たって押すことができる仕組みを考えていました。これだと,基本的にはコマンドの入力のみで処理ができて,サーバー側の負担も軽減できる。落としどころとして,妥当な仕様だろうと。

4Gamer:
 なるほど。

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安西氏:
 だけど,藤澤さんは「そこは,このゲームでは絶対欠かせない部分なんだから,ちゃんと,敵に当たったら止められるようにしてほしいんだ」と言うんです。私は,「その壁は高いですよ」と説明したのですが,「このプロジェクトだからこそ挑戦できるのであって,今挑戦しなければ絶対に越えられない」と,逆に説得されたことをよく覚えています。

4Gamer:
 でも,今のバトルシステムじゃなかったら,果たして「ドラゴンクエストX」で初めてオンラインゲームに触れるというお客さんがついてこれたかどうか……。結構,きわどかったんじゃないかって気はしています。

齊藤氏:
 いやぁ,実際そうだと思いますよ。開発時に,我々がどこを一番重要視していたかというと,やっぱり「見た目で分かる」ってところでしたから。テキストログ主体の状況説明だけでは,絶対に駄目だと思っていました。

4Gamer:
 しかも,キャラクターの位置だったり,敵を押したりっていう要素が,ちゃんと戦略性の要素としても織り込まれているじゃないですか。分かりやすい形で,そういった駆け引きをきちんと盛り込んであるというのは,ある種の発明だと思います。

りっきー:
 実際に作る前は「絶対に無理だ!」と言われまくってましたけどね。端から見ていても,本当に頑張った部分だと思います。

齊藤氏:
 予算という意味でも結構しんどくて(苦笑)。私に対しては「とにかくサーバー台数を確保してくれ」って言われてましたね。

4Gamer:
 前から疑問だったんですが,「ドラゴンクエストX」のバトルシステムって,バトルになるとサーバーが変わったりしているんですか?

齊藤氏:
 そうです。バトルは専用のサーバーで処理される形になっていますね。

安西氏:
 先ほどお話したように,バトル時は通信量がかなり多くなるんですよ。なので,それをワールドサーバー上でやってしまうと,大変な負荷になってしまうので,バトルの処理はバトルサーバーで処理するような形になっているんです。

4Gamer:
 ただ,ほかの人の戦いの様子がマップ上で見える状態になっていますよね。戦ってるほかのプレイヤーに対して「おうえん」もできたりしますし。

齊藤氏:
 あれは,バトルサーバーとワールドサーバーを連携させて,裏側でデータのやりとりをしているんですよ。だから,戦闘自体はバトルサーバーで処理しつつも,ワールドからは切り離されずに,あたかも一体化しているように見える。あれもなにげに,技術的にはとても難しい部分の一つですね。

安西氏:
 はい。凄く高度なことをやっていますね。

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自分で遊んでいてツライと思った部分を直していく


4Gamer:
 しかし,これはりっきーさんの方針だと以前にお聞きしましたが,バージョン2以降は,とにかくプレイヤーさんが“つらい”と感じる部分が徹底的に見直されていっていますよね。

りっきー:
 そうですね。そこはかなり意識していますから。

4Gamer:
 バージョン2.1の修正点で言えば,「ピラミッド」でもらえる「ブローチ」も確率による出現だけじゃなくて,破片を集めれば確実に獲得できるようになりました。また日課的なコンテンツの一つである「魔法の迷宮」も,かなり短時間で終わるように修正されましたよね。

りっきー:
 バージョン2.1では,「釣り」や「料理」といった新しい要素も追加されたので。「魔法の迷宮」はもっと短くした方が,プレイヤーさんにはよりいろいろな遊びを楽しんでもらえるだろうと考えたんですよ。

画像集#029のサムネイル/MMORPGでも“ジャンプ操作”は絶対必要なんです!――チーフプランナー安西 崇氏も招いた「ドラゴンクエストX」バージョン2.1インタビュー

4Gamer:
 正直なところ,「ドラゴンクエストX」がスタートして3か月目ぐらいの頃って,「もうすることねーよ」みたいな不満がかなりあったような気がするんです。その頃から考えると,今のバージョン2.1って,レアアイテムを出し渋ってないし,ストレスなくいろいろな遊びが楽しめるわりには,あんまり「遊び尽くした!」っていう人がいない状態に見えます。とてもいいバランスになってるなと感じるんですよね。

齊藤氏:
 その意味で言うと,「やることが多すぎ」っていうのも,あんまりいい言葉じゃないと思うんですよ。だから,やりたいことがいっぱいありながらも,「全部やらなくていい」ってさじ加減が大切だと思うんです。義務感で「あれもこれもやらなきゃ!」って状態になってしまうと,それはそれでツライ。だから,日課的なコンテンツの報酬も,多すぎず少なすぎずってバランスが重要だと思っていて。

4Gamer:
 そうなんですよね。「ついて行けない」って感覚を抱いてしまうと,それはそれでプレイのモチベーションが下がってしまう。

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齊藤氏:
 だから,いろいろな遊びを用意したうえで,「今日はどれをやろうかな」って思えるくらいがちょうどいい。全部やろうとするんじゃなくて,気分によってあっちをやったり,こっちを遊んだりって状況が一番理想的なんじゃないかって思うんです。

4Gamer:
 個人的に,「魔法の迷宮」の調整はとても嬉しいですね。正直,「ちょっと面倒くさいなぁ……」と思っていたので(苦笑)


齊藤氏:
 報酬も「ふくびき券」が2〜3枚もらえる程度ですからね。

4Gamer:
 はい。4層目に到達するあたりでダレちゃっていたんですよね。

齊藤氏:
 まぁ,日課的なコンテンツって意味でいうと,近いうちに「強ボス」周りに手を入れて,より遊びやすく楽しんでもらえるようにしたいなとは思っています。

4Gamer:
 それはつまり,ボスのいる場所に行く手間を省くとかってことですか?

齊藤氏:
 はい。そうしていきたいと頑張っているところですね。私自身は,ボスのところまで移動する時間は別に苦じゃないんですけど,そういう時間の使わせ方が今の時代にそぐわない面があるのも確かですから。

4Gamer:
 ちなみに,そうしたプレイヤーさん的にツライ部分の修正をするしないって判断は,具体的にはどういう感じでやっているものなんですか?

りっきー:
 僕はそこは凄くシンプルで,自分で遊んでいてツライと思った部分を直していくって形ですね。とくに僕は,「うわ,これはつらい」とかすぐに言ってしまうタイプなので,そういうものをプランナー陣にどんどん出していく感じです。僕は,やっぱり自分自身で“そういう感覚”を持ってないと嫌な人間なので,公私の両面で「ドラゴンクエストX」を遊んでいますしね。

4Gamer:
 りっきーさんって,ご自身ではどのくらい遊ばれてるんですか?

りっきー:
 プライベートアカウントのプレイ時間はまだ1000時間いってないくらいですかね。ただ,開発中のテストプレイ時間も入れたら,誰にも負けないくらいのプレイ時間になるとは思います! まぁ,皆さんがバージョン2.0を遊んでる頃に,僕はバージョン2.1を遊んでいるので,これはこれでちょっと寂しいんですけど……。

一同:
 (笑)

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