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「タイムトラベラーズ」の制作にあたり,ディレクター イシイジロウ氏は,どうして自らに逆境と枷を課したのか
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印刷2012/07/12 00:00

インタビュー

「タイムトラベラーズ」の制作にあたり,ディレクター イシイジロウ氏は,どうして自らに逆境と枷を課したのか

イシイ作品の演出は

映画的ではなくアトラクション的


4Gamer:
 それではタイムトラベラーズ本編について,いくつか教えてください。今まで428のお話も出てきましたが,タイムトラベラーズもいつもの交差点から物語からはじまりますよね。

イシイ氏:
 渋谷ですね。でも、そうなったのは後付けの理由なんですよ。元々赤坂や六本木の交差点を舞台にシナリオを書いていたのですが,見た目がちょっと分かりにくいんですよね。パッと見で分かる交差点というのは,新宿のALTA前か渋谷のQFRONT前くらいで。

4Gamer:
 ああ,全国どこに住んでいる人も知っている東京の風景となると,そうですね。

イシイ氏:
 ゲームを始めて「ここで事件は始まった」「刑事はここを走っていた」となったときに,イメージしやすいわけです。そうやって舞台が渋谷の,いつもの交差点に決まりました。

4Gamer:
 では,428のあのキャラクターが登場するのは,それが決まったあとということですか?

イシイ氏:
 ええ。「ダンガンロンパ」チームと飲みに行った時に,お互いの新作の発売日も近くなりそうだし,何かタイアップができないかという話になったんです。最初はモノクマをタイムトラベラーズに出すことで話を進めていたんですが,その最中,スパイクさんとチュンソフトさんが一緒になられて。
 そこで、思い切って428についてもご相談したところ,快く了承いただくことができました。具体的には,スパイク・チュンソフトさんから,タマの着ぐるみと,20年前に428に関連する事件があった世界というTIPSを,タイムトラベラーズで使うことについて許諾を得ています。

4Gamer:
 なるほど……。

イシイ氏:
 あとから決まったことなので,急遽収録台本を差し替えたり,タマのモーションも僕が直接指導して撮ったりと,これまた大変でした(笑)。

4Gamer:
 そういえば今回はフルモーションだから,タマの動きも見られるわけですね。

イシイ氏:
 そうです。428では静止画だったタマも,ちゃんと動いたり歩いたりします。

4Gamer:
 それはタマファンとして楽しみです!
 ところで今回,全編フルボイス,フルモーションにしたのはなぜでしょう?

イシイ氏:
 これは実写作品だったとしても,今回,挑戦したかった取り組みでした。というのは,ゲームで文字を読むこと自体が,プレイヤーの間口を狭くしている部分があるかと思うんですよ。僕自身は文字を読むのが好きなんですが,一般的には面倒くさい印象があるでしょう。その印象を払拭して,どんな人でも楽にスッと物語に入っていけるための仕組みを考えたんです。
 またフルモーションについては,今回,全編でキャラクターもカメラも動きまくるので,映画のように観ているだけで,どんどん物語がプレイヤーの中に入ってきます。これは,そこまでハードルを下げないと,アドベンチャーゲームは,かつてのように誰でもプレイできるものにはならないんじゃないかと考えたからです。

4Gamer:
 フルモーションにしたのは,PCE(プレイングシネマイベント)を,より効果的に使うためなのかと思ったんですが。

イシイ氏:
 PCEも,どちらかといえば後付けのアイデアでした。そもそもPCEは,今までアドベンチャーゲームを遊んでこなかった人にとって,選択肢を選ぶだけという操作はピンと来ないだろうというところから考えたものです。
 例えばキャラクターが何かから逃げるシーンで,ボタンを押したら実際にキャラが動くようであれば,“映画を触っている”ような感覚が得られますよね。PCEは,そういったアクセントとして入れています。
 アクションゲームのQTEのように失敗したらやり直しではなく,「物語の一番気持ちの良い部分だけを,一緒に楽しんでいただく」くらい気持ちで作っています。いわば,参加型のアトラクションとでもいうか。

4Gamer:
 なるほど。PCEは,ゲーム的なシビアさを要求しないと。

イシイ氏:
 僕はゲームを演出するとき,よくスタッフに「映画ではなく,アトラクションとして作ってください」と言うんです。つまり,アクターが観客を巻き込みながらセリフをしゃべるように作るわけです。例えばディズニーランドのシンデレラ城で,魔王が出てくるようなシーンを思い浮かべてください。アクターが「魔王が出てきました! 誰か,この剣で魔王を切ってください,そこの坊や,お願い」と言って,観客の一人に剣を渡すと,ビカビカビカーッとなって,見事,魔王を倒す展開となるわけです。
 PCEは,まさにアレで,プレイしていて気持ちよくなるよう,一番おいしいところをプレイヤーに渡すための演出なんです。
 まぁ魔王が超絶難度で子供じゃ全然倒せないようだったら,泣きますよね,子供。

4Gamer:
 間違いなく心に傷を負いますね。
 つまりそれぐらい,一般的なQTEとは,発想が違うわけですね。

イシイ氏:
 ええ。そのほかの演出も,アトラクションを意識しています。映画的だと思われるかもしれませんが,僕のタイトルでは,実際には映画ではなかなかやらない手法を使っています。特徴的なのはアップとカメラ目線の多用ですね。
 例えば,「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」では,会話の最初と最後にキャラクター達は必ずカメラ目線になって,画面の外側にいる先生,つまりプレイヤーに語りかけます。これはアトラクション的な手法で,映画では原則やらない手法です。


4Gamer:
 映像にこだわっているからといって,何でもかんでも“映画的演出”という言葉でまとめてしまうのは,ちょっと違うと。

イシイ氏:
 そうなんです。今回のタイムトラベラーズでは,画面の外側に金八における先生のような存在(主人公=プレイヤー)はいないんですが,その代わりキャラクターがカメラをプレイヤーと見立てて、カメラを挟んで,まるでプレイヤーのほうを見ながら会話する様な演出を多用しています。
 これも映画ではあまり使わない演出ですから,映像の演出家が見ると「ドラマを見せることに最適でない」と不思議に思うかもしれません。確かにドラマを見せるのではなく,アトラクションに巻き込もうとしている演出なので。


セリフ単位でのスキップを可能にした反面

スキップさせない意気込みで作った演出


4Gamer:
 そのほか,タイムトラベラーズでここに注目してほしいというポイントを教えてください。

イシイ氏:
 今回,演出面で一番こだわったのはセリフのスキップです。フルモーションでカメラが動くのに,シーン単位のスキップではなく,セリフ単位でスキップができます。カメラがパンしていようがキャラが走っていようが,セリフをスキップできます。キャラクターのモーションもカメラ位置も次のセリフの始点までちゃんとスキップします。

4Gamer:
 あまり聞いたことがないスキップですが,技術的には結構すごいことですよね。

イシイ氏:
 ええ,技術もそうですが,調整の手間も大変でした。早送りという手法もあるのですが,アドベンチャーゲームのプレイヤーはセリフ単位でスキップすることに馴れていると思うので,あえてこのシステムを入れました。
 その一方で,絶対にプレイヤーにセリフを飛ばさせないように演出も努力しています。

4Gamer:
 また自分でハードルを上げたわけですか(笑)。

イシイ氏:
 これも枷です(笑)。
 まず,一つ一つのセリフを徹底的にチューニングして,セリフのスピードが早くても意味が分かりやすく,リズム感があるセリフ作りを心掛けました。またボイスの収録時も,音響監督が「これ以上早く話すと聞き取れない」というところまで,声優さん達にテンポよくしゃべってもらいました。
 さらに字幕もセリフの15から30フレームくらい前に先行表示しています。そうすると字幕を見て頭に情報が入ると同時に,セリフを聞いて芝居とニュアンスが突き刺さってくるというスピード感になるんです。これでスキップされたら,僕ら演出組の敗北です。

4Gamer:
 ……うわぁ。

イシイ氏:
 映画はスキップせずに観てもらえますが,ゲームはスキップできるのが普通です。だったら,スキップできるけれども,させないという枷を作って戦ったほうが,演出の精度を高いモノに出来る可能性があると思うんです。そのくらいの勝負をしないと,後追いのエンターテイメントとしてゲームを選んだ僕らは,映画演出には勝てません。
 とくに映画は大画面かつ大音響で上映され,しかも劇場なら早送りもできません。一方でゲームは電車の中など,落ち着かない,音を出せないような環境で遊ぶ可能性もあるわけです。そうだからこそ,やっぱりあえて音を聞きたい,あえてスキップなしでしっかりプレイしたいと思わせるような演出を突き詰めていかないと,勝負したことにならない気がします。

4Gamer:
 そんなところにも勝負が……。

イシイ氏:
 あと,面白かったことのエピソードなんですが,開発中,3DSの下画面に行動や心の中のセリフが書かれている地の文が出ないという不具合が発生したとき,上画面の映像だけでプレイしても,きちんと面白さが成立していたというものがあります。

4Gamer:
 それは地の文による説明がなくても,ちゃんと楽しめるぐらいに上画面の演出がしっかりしているということですよね。

イシイ氏:
 ええ。なので当然,上下の画面がしっかり表示される製品版は,さらにかなり面白く仕上がっていると思います。

4Gamer:
 その説明は,すごく納得できます。
 それでは,システム面でもう一つ,「タイムトラベルチャート」について教えてください。

イシイ氏:
 今回は,物語の中盤まで,自動的にキャラクターが切り替わっていきます。その中でバッドエンドになったときに「TIME STOP」となるのですが,それを修正するときのみ,タイムトラベルチャートを使います。ほかのタイミングでもタイムトラベルチャートを開くことはできますが,あまり意味はありません。
 ゲームが進むにつれて,その意味も変わってくるんですが,それは実際にプレイして体験してもらったほうがいいでしょう。

4Gamer:
 その意味がゲーム全体の鍵というわけですか。

イシイ氏:
 そうですね。ゲームシステムと物語が途中から上手く融合するような感じになっていると思います。


ゲームにおける三人称視点の物語は

誰も作らないがゆえ,可能性も未知数


4Gamer:
 ちなみにイシイさんがゲームに複数の主人公を立てるのはなぜでしょう?

イシイ氏:
 ほかの人がなかなかやってくれないからです。流行っていたらやっていないかもしれません。
 基本的にゲームは主観で遊ぶものが多いですよね。アドベンチャーゲームを含めて,そうした主観のゲームにおける語り方のスタイルはほぼ固定化していますし,どこで差をつけるのかもある程度決まってしまっているような気がします。
 ところが三人称のゲームは,それほど多く作られていないので,まだまだ可能性があると思います。もし三人称形式かつ複数主人公で,お互いのフラグが影響し合うスタイルのタイトルがある程度の数リリースされていれば,僕はタイムトラベラーズをまったく別のスタイルにしていたかもしれません。

4Gamer:
 しかしイシイさんぐらいしか作らない状況というのもさびしいですね。

イシイ氏:
 この仕組みは複雑で,僕自身も正直しんどいので,これで終わりにしたいくらいですけど(笑)。その一方で,このスタイルがメジャーになるまでは作り続けたいという思いもあります。
 このスタイルには新しい可能性があると信じているので,何とかヒットさせたいんですよね。このスタイルのゲームが売れてくれれば,皆が作るようになって,その中からすごいアイデアが出てくるかもしれませんし。

4Gamer:
 複数の主人公で物語を描くと複雑になりすぎてプレイヤーがついていけなくなったり,物語の輪郭がぼやけてしまったりするという懸念はないのでしょうか。前者に関しては,これまでのお話からイシイさんが相当考えていると分かりますが,後者についてはどうでしょうか?

イシイ氏:
 うーん,そもそも僕自身,複数主人公だから物語の輪郭がぼやけるという発想がありません。強いて言うなら,タイムトラベラーズも,428と同じように輪郭がぼやけない作品になっていると思います。
 むしろ物語の輪郭をどう語るかどうかの系統分けであって,群像劇の個々の物語を強くして,全体の輪郭をあえてぼやかす感じのスタイルが街,最終的に集約することで輪郭がぼやけないのが428なんじゃないでしょうか。
 つまり,街は一人の主人公の話だけを読んでも成立するけれど,428はそれぞれの集約として一つになっている。タイムトラベラーズも428と同じで,4〜5人の主人公がそれぞれ語っていくことで,全体の物語の輪郭がぼやけるのではなく,より多面的に見えてくるから面白いという作りになるのだと思っています。

4Gamer:
 というとタイムトラベラーズでは,イシイさんにとって,とくに思い入れのある主人公はいなくて,全員均等みたいな感じですか?

タイムトラベラーズ
イシイ氏:
 うーん,いや,思い入れという話であれば,ルサンチ☆マンですかねえ。今のところプレイした誰もが彼のことを大好きになっています。もう「僕ら(オタク)のヒーロー」という感じで,抜きん出て人気です。ちなみにネーミングの元ネタは花沢健吾さんの漫画です。

4Gamer:
 ああ,やっぱり。
 脚本の北島行徳さんが手がけられてきた作品には,どこかルサンチマン的な臭いのするものが多いですから,さぞかしハマるんだろうなぁと想像できます。

イシイ氏:
 そうなんです。北島さんは駄目な人間を書くのが本当に上手ですよね。ルサンチ☆マン編は駄目な人しか出てこないんですが,何であんなに駄目な人のストックがあるんだろう(笑)。
 また話は変わりますが,今は絶版なんですけど,北島さんが最初に書いたノンフィクション「無敵のハンディキャップ―障害者が『プロレスラー』になった日」が本当に素晴らしいんですよ。北島作品ファンなら,まずこれを読んでもらって再度「金八先生(死と乙女)」,428,タイムトラベラーズと北島シナリオを堪能してほしいです。

4Gamer:
 ですね!
 さて,そろそろお時間なので,最後に一つ教えてください。タイムトラベラーズが発表された2010年の「LEVEL FIVE VISION 2010」で,「今まで僕達が作ったタイトルを楽しんだ方を裏切らない,満足していただける作品にする」と「内容は面白いけれど,もっと売れるべき……という“寂しい励まし”を返上する」と宣言されていましたが,これは実現できましたか?(関連記事

イシイ氏:
 頑張って売ろうという宣言については,まだ結果が出ていないので分かりません。準備はしたつもりですが,まだこれから先の話ですよね。レベルファイブのほかのタイトルに負けないように,息長く売れる作品にしていきたいと思います。
 もう一つの,僕のファンを裏切らないという宣言に関しては,ウザいくらい裏切ってません。逆に,今までで一番濃いというか,純度が増したと思います。これまでの作品では半分プロデューサーという立場でもあったので,自分の色を押さえるところは押さえようとか,売るために自分とは別の色を入れてみようとした部分も多少あったんです。しかし今回は,日野がプロデューサーとして構えてくれていたので,ディレクターとして自分のやるべきことだけに集中できました。ですから,本当に満足のいくものになりました。
 これで満足できないファンがいたら,ごめんなさい。実は僕の作風が合ってなかったのかもしれませんというくらい,“イシイ作品”に仕上がっています。


4Gamer:
 そうそう,プロレスネタも豊富になっているとか。

イシイ氏:
 豊富かもです。それ以外にも,今回はオマージュネタが多くて本当にてんこ盛りですよ。70年代,80年代ネタが多くて……どんだけおっさんホイホイなんだと。ゲーム中のとあるシーンは,「マクロス」──「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」と「ハッスル・マニア2007」をMIXしたモノだったり。こう表現すると,何だそりゃって感じですけど(笑)。

4Gamer:
 両方知っていますが,おっしゃることの意味がよく分かりません(笑)。

イシイ氏:
 というより,今回はプロレスネタじゃなくて,プロレスそのものを描いている部分もあります。“信頼関係のある殴り合い”というか,殺し合いにならないレベルでお互いを本気にさせるというか……。

4Gamer:
 なるほど。いわゆるドラゴンストップ的な……。今日はありがとうございました。


 ゲームに限らず,クリエイターに自身のモノ作りへのこだわりや根源を語ってもらうと,業の深い話が聞けることがあるのだが,今回のインタビューがまさにそれである。
 イシイ氏の業の深さは,氏が1970〜80年代をSF,映画,アニメ,そしてプロレスというマニアックかつマニア同士で熱い議論を交わすような──つまり,あえて言ってしまうなら“面倒くさいジャンル”を趣味として過ごしたことと無関係ではないだろうし,だからこそ,その面倒くささが好きな,ある種の人達を惹きつけるゲームを作るのだろう。

 このインタビューからは,イシイ氏はこれまでのタイトルで,その面倒くささを抑えて,より多くの人に受け入れられるようバランスを取っていたことが読み取れる。
 しかしタイムトラベラーズでは,その面倒くささを抑えることなく盛り込み,その一方では,その面倒な部分を理解できなくとも楽しめるような内容と,これまでとは異なるアドベンチャーゲームの演出にもチャレンジしている。
 イシイ氏のさまざまなこだわりとチャレンジが詰まった同タイトルを,ぜひ心行くまで楽しんでほしい。

「タイムトラベラーズ」公式サイト


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