連載
インディーズゲームの小部屋:Room#228「DLC Quest」
ゴールデンウィーク進行でほかの連載が軒並み休載だというのに,平常運転でお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第228回は,Going Loud Studiosの「DLC Quest」を紹介する。本作は,今や多くのゲームで当たり前のように行われるようになったダウンロードコンテンツ販売を,これでもかと皮肉ったアクションゲームだ。チクショー,俺に働けって言われても……!
本作のストーリーは,目の前で悪い奴にお姫様がさらわれてしまったから助けに行こうというもの。あまりにも前後の脈絡がないが,本作では一事が万事この調子なので,深く考えてはいけない。ゲームは横スクロールアクションとなっており,プレイヤーは名前のない主人公を操作して,悪い奴のあとを追うことになる。
さてゲームを開始すると,プレイヤーはすぐに,このゲームにはいろいろなものが足りないことに気づくだろう。まず問題なのが,スタート直後の主人公は右にしか進めないという点。どうも何かがおかしいが,仕方がないので途中に落ちているコインを拾いながら右へ進んでいくと商人がいるではないか。
どうやら,この商人からダウンロードコンテンツを購入できるようだが,手持ちのコインで購入できるのは“MOVEMENT PACK”だけなので,まずはこれを購入しよう。説明文には「次世代の操作を体験せよ! ジャンプと左移動をフィーチャー。このアイテムの払い戻しはできません」とある。やったね! これで自由に移動できる!
しかし,足りないのはこれだけではない。本作には,キャラクターのアニメーションやBGMも,ゲームのセーブ機能もないのだ。もうすでにお分かりのとおり,これらの機能はすべてダウンロードコンテンツ(という設定の機能拡張)を購入することで追加していく。これはヒドイ! ……けど,ちょっと面白い。さすがに,ここまで悪質なDLC販売を行っているゲームも実際にはないだろうが,本作ではそこをあえて極端なまでに強調することでブラックなユーモアに仕立て上げているのだ。
そんなわけで,とりあえずは自由に動けるようになったキャラクターを操作して,マップ中にあるコインを拾い集めていこう。そして,拾ったコインで新たなダウンロードコンテンツを購入し,ゲームを進めていくというのが本作の唯一にして最大の特徴となっているのだ。武器が欲しい? よろしい,ではこのダウンロードコンテンツをどうぞ。2段ジャンプがないと進めない? そんなときは,このダウンロードコンテンツで万事解決。次のマップに行きたい? もちろんダウンロードコンテンツを買ってね……とまあ,何もかもがこんな調子だ。
ダウンロードコンテンツの中にはゲームクリアには必要ないものも含まれているが,その極めつけは“THE ZOMBIE PACK”。これを購入すると,マップ上をゾンビがうろうろするようになるというものだが,別に主人公に襲い掛かってくるわけでもなく,本当にただそこらでうろついているだけという代物だ。このアイテムの説明文がまた傑作で,曰く「このゲームには全然ぴったりこないんだけど,マーケティング部門がすべてのゲームにゾンビが必要だって言うからさ。このアイテムの払い戻しはできません」 うん,そうだよね。やっぱりゾンビは必要だよね……。
ゲームを進めるほど,そのあまりのバカバカしさに思わず黒い笑いがこみ上げてくる本作。一応はアクションゲームだが,アクション性があるのはジャンプで飛び上がってコインを取るところくらいで,敵らしい敵も登場せず,普通にプレイしても30分くらいでクリアできてしまうショートゲームになっている。
本作のXbox 360版は,2011年11月にXbox LIVE Indie Gamesで80マイクロソフトポイントにて発売済みだが,Xbox 360を持っていない人は,2012年3月に発売されたこちらのPC版を遊んでみよう。PC版は,Desuraにて1.99ドルで発売中だ。ちなみに,本作のダウンロードコンテンツ(?)はすべてゲーム内コインで購入できるのでご安心を。
■Going Loud Studios公式サイト
http://goingloudstudios.com/- この記事のURL:
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