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Access Accepted第340回:「Steam Workshop」で開花する新世代MODカルチャー
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印刷2012/04/02 11:42

業界動向

Access Accepted第340回:「Steam Workshop」で開花する新世代MODカルチャー

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第340回:「Steam Workshop」で開花する新世代MODカルチャー

 「The Elder Scrolls V: Skyrim」のMODを「Steam Workshop」でダウンロードすると,これまで別のMODをインストールした経験のある人ほど,その便利さに驚くはず。ファンメイドのコンテンツをほかのゲーマーが使うというのは,PCゲームコミュニティ独特のカルチャーで,今後のPCゲームではなくてはならない存在になるはずだ。今週は,そんなSteam Workshopについて,MODカルチャーの過去を絡めてお伝えしよう。


PCゲームの歴史と共に歩んできたMODカルチャー


 PCゲーマーにはたぶんおなじみの「MOD」とは,“Modification”あるいは“Modifying”の略で,PCケースに手を入れるなどのハードウェア的なものから,ゲームを改造するといったソフトウェア的なものまで幅広い意味を持った言葉だ。
 「ゲームソフトを改造」することは,知的財産権を無視した違法行為のように聞こえるかもしれないが,欧米ではPCゲームの黎明期から行われており,MOD制作を助けるためにプログラムコードや開発ツールを公開するメーカーも多数存在する。もちろんMODの制作を嫌うメーカーもあるが,欧米PCゲームのMODカルチャーは長い歴史を持った裾野の広いものであり,MOD制作者からゲーム開発者になった人も数多い。

「DOOM」世代のMODは,自分や友人,有名人の顔をモンスターのテクスチャに貼り付けるといった他愛ないものだった。ちなみに本文中にある「WAD」ファイルのWADとは,「Where's All the Date」(データはどこにあるんだ?)の略だという
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第340回:「Steam Workshop」で開花する新世代MODカルチャー
 そんなMODカルチャーの躍進には,1990年代初めに華々しく登場したテキサスのデベロッパ,id Softwareが大きな影響を与えている。1992年に同社からリリースされ,多くのゲーマーの支持を集めた傑作「Return to Wolfenstein 3D」では,他のプレイヤーと異なる自分だけのキャラクターや武器を使用するのが流行した。もっとも,この改造はコードの削除などを伴う難度の高いもので,一般的とは言い難かった。

 この改造行為に対して,id Softwareのジョン・カーマック(John Carmack)氏は当初,不快感を示していたようだが,やがてファンの熱意にこたえる方向に舵を切り直し,1993の「DOOM」には,グラフィックスとサウンドの情報をまとめた「WAD」ファイルを用意された。このファイルのおかげで,MOD制作者はデータの場所が分かりやすくなり,加速度的にMODが増えていくことになったという。MODといえばFPS,という印象が強いのも,こうした経緯があるからだろう。
 さらに,カーマック氏はDOOMのソースコードを公開し,ゲームのレベル(マップ)からルールまで,MOD制作者が手を入れられるような環境を整えた。

 「Counter-Strike」(Half-Life),「Team Fortress」(Quake),「Defense of the Ancient」(Warcraft)など,現在でもファンの支持を得ているゲームは,もともとはこうしたファンメイドMODから産まれてきたものだ※( )内がオリジナルのタイトル


Steam WorkshopでMODが身近なものになる


 その後,2001年にリリースされた「Max Payne」「Neverwinter Nights」や,2002年の「The Elder Scrolls III:Morrowind」など,公式MOD制作ツールがリリースされたタイトルもあるが,2000年代に入って以降のMOD制作は,ゲームプログラミングが高度化したことなどにより,かつての勢いを失っていった。
 専門的な知識のないプレイヤーにとって,MODを探してダウンロードし,それをインストールする行為はかなりハードルの高いものだったのだ。しかも,苦労してインストールしてもゲームがクラッシュするなどのリスクは必ず伴うわけであり,この頃からMODカルチャーは停滞気味になる。

 「Grand Theft Auto」シリーズのような超が付くほどの人気作品は,公式ツールのサポートがなくても,インターネットを通じて熱心なファンが情報を交換し,MOD制作が行われていた。2005年のPC版「Grand Theft Auto:San Andreas」では,通常のプレイでは現れない,隠された性描写シーンをアンロックするMODが登場して社会問題を引き起こしたし,2008年の「Grand Theft Auto IV」に向けては,信じがたいほどの高画質を実現する「iCEnhancer」などが制作されている。しかし,メーカーがサポートしていないだけに,MOD制作は一部のセミプロ級のユーザーにしか許されないことでもあった。

もはや,神業レベルに達している「Grand Theft Auto IV」向けのグラフィックス向上MOD「iCEnhancer 2.0」。2008年のタイトルとは思えない,おそらく現時点で最高レベルのグラフィックスにチューニングできる
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 そんなMODシーンに今年(2012年),大きな変化を感じさせる新星が現れた。それが「Steam Workshop」をサポートした「The Elder Scrolls V: Skyrim」だ。
 Skyrimのプレイヤーならご存じのようにこれは,Valveのデジタル配信システム「Steam」を介してMODのアップロード,インストール,そしてアップデートなどが行えるというもので,2月2日に正式スタートして以降で,わずか1週間で1400以上のMODがアップロードされ,ダウンロードは200万回を数えたという。そして,サービス開始から約2か月を経た現在,実に5000以上ものMODが登場している。
 Bethesda Softworksも,SkyrimのMODが制作できる公式ツール「Creation Kit」をリリースして,積極的にMODコミュニティの支援を行っている。YouTubeでCreation Kitの使い方を教えてくれるチュートリアルムービーが公開されているので,興味のある人は見てみよう(関連記事)。

 Steam WorkshopのSkyrimのページでは,気になるMODの「Subscribe」ボタンを押すだけで,そのMODがゲームに自動的にインストールされる仕組みになっており,これまでMODに手を出したことのないプレイヤーにも遊ばれている。一方で,これまでNexusModsなどのMOD専用サイトを舞台にコツコツとMOD制作を続けていたクリエイターの中には,自分の作品をSteam Workshopに移植できない人もおり,さまざまな利便性を考えれば,今後こういったMODはSteam Workshopなどに集約されていくかもしれない。

 こうして,Steam WorkshopとSkyrimによって,プレイヤーを増やしつつあるMODシーンだが,その昔,DOOMのテクスチャとして使われた顔写真が肖像権の問題に発展したことがあったように,MODには著作権にまつわるグレーゾーンが避けがたくあるし,上記のようにゲームをクラッシュさせたり,セーブデータがなくなったりというリスクも存在する。さらに,悪意のあるソフトウェアが混入されている可能性を完全に否定することもできないだろう。しかし,そうしたことを十分理解し自己責任で使えば,大好きなゲームをさらに長く遊ぶことが可能になり,より深いゲーム体験ができるのだ。

 以下に,現在Steam Workshopでダウンロードできる,Skyrim向けの気になるMODを紹介して,まとめにかえよう。すべて筆者が実際に試したものだが,使用はあくまで自己責任でお願いしたい。


 ■「Fall of the Space Core, Vol. 1」
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SkyrimがSteam Workshopに対応した初日,Valveがアップロードしたことで知られるMODだ。なんと「Portal 2」のスペースコアが,大気圏を突き抜ける爆音とともに宇宙から降ってくるというもの。「宇宙に行きたい」と呟き続けるのがうっとうしいが,旅のお供にするのも良し,家に置いておいておくのも良しだ。「Vol.1」であるので,宇宙に送り返してあげるといった流れの続編が出てくる可能性が高く,今後が楽しみなMODでもある。


 ■「WATER」
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正式名称「Water And Terrain Enhancement Redux」。NexusModsでも活躍するMOD開発グループDMPの最新作で,水面のテクスチャや滝の流れ,しずくが水に落ちてできる波紋などが最適化されている。Skyrimを遊び始めた当初,リバーウッドを流れる川の美しさに多くの人が感嘆したと思うが,このMODはバニラ(何もインストールしていない状態)がショボく思えるリアリティの向上を達成している。樹木や雪質を改善するMODもリリースされているので,まとめてチェックしておこう。


 ■「The Asteria」
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デフォルトで用意されている持ち家には狭いものが多く,何よりせっかく集めた武器やアーマーを飾るスペースが限られていたり,作業場から離れていたりする。そういった意味で家のMODは重宝するのだ。このThe Asteriaは,ドウェマー(古代のドワーフ種族)によって作られたエアーシップという設定で,必要なものをすべて完備する。それぞれの部屋へのアクセスが多少面倒くさいものの,ドヴァキンが住む場所として申し分のないデキだ。


 ■「Nemonic Dragon Slayer」
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Steam WorkshopのMODには武器やアーマー関連のものが多いが,中にはテクスチャを変えただけのようなものが多かったり,ほとんどチートに近いような強力な武器になっていたりと,満足できるものは少ない。そんな中で注目したいのが,この「Nemonic Dragon Slayer」だ。異様な外観ながら,Skyrimの世界観を超えないギリギリの性能がいい感じ。二刀流で戦う姿が格好よく,エンチャントしたものを部屋に飾っても見栄えがいい。


 ■「SkyUI」
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Skyrimのユーザインタフェースの問題として,所持アイテムが多くなるとリストが見づらく,スクロールのアップダウンに時間がかかるようになることが挙げられる。おそらく,コンシューマ機向けにデザインされたユーザインタフェースであるためだが,この「SkyUI」はそれをPCに最適化されたものに変更可能で,所持アイテムをタイプ別に一覧できる。現状,スクリプト拡張ソフトを別にインストールしないと警告サインが出のが玉にキズで,制作者の今後の奮闘に期待したい。


 ■「Moonpath to Elsweyr」
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ネコ族カジートの故郷Elsweyrへと続く秘密の道で,SkyrimのMODとしては最大規模を誇っている。ジャングルの隠れ家には,さまざまな施設や作業場,そして執事やペットのトラまで徘徊している。砂漠地帯につながる道の途中にはモンスターやサルモール兵がいるだけでなく,クエストまで存在するという相当な力作だ。NPCの声の演技がアマチュアっぽいが,現在改善されつつある模様。


 ■「Call of Madness」
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シャウトのMODで,狂王シェオゴラスのミッションの際に入手可能になる。3つのシャウトが一度に入手できるが,ドラゴンソウルで1つ1つをアンロックしていくのは,ほかのシャウトと同じ。1つめの「Random」は魔法の杖ワバジャックの性能をシャウトにしたもので,2つめの「Insanity」は,シェオゴラスを自分の味方として召喚するもの。そして3つめの「Cheese」は雷の代わりにチーズの雨を降らせるというお笑い系。ぜひ,ホワイトランをチーズだらけにしてほしい。


著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるだろう。
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