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Access Accepted第310回:今や巨大なゲームプラットフォームと呼べるほどに成長した,iOSベースのデバイス
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印刷2011/07/11 15:35

業界動向

Access Accepted第310回:今や巨大なゲームプラットフォームと呼べるほどに成長した,iOSベースのデバイス

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第310回:今や巨大なゲームプラットフォームと呼べるほどに成長した,iOSベースのデバイス

 このところ,iPhoneやiPadなど「iOS」ベースのデバイス向けゲームタイトルに関するサクセスストーリーがよく聞こえてくる。Apple自身が,自社製デバイスをゲーム機だと発言したことはないが,欧米ゲーム産業におけるiOSの重要性は日増しに高くなっており,その様子は,1980年代の「Apple II」時代のAppleとゲーム産業と関係を思い出させるほど。さらに,欧米のゲーム業界の著名人達も,モバイル向けタイトルの躍進に強い関心を寄せているようだ。今回は,そうした現状をレポートしてみよう。


iOSベースのデバイスが,ゲーム業界そのものになる


 2007年のiPhone発売から4年,iPhoneやiPad,iPod,iPod Touchなど,「iOS」をベースにした携帯デバイスは,世界90か国で総計2億台以上が販売され,ダウンロードされたアプリは150億本に達するという。45万タイトルがあるというアプリの中で,人気,収益性共に最も高いとされるのが,10万タイトルを超えるライブラリを誇るゲームアプリだ。Appストアの分析を専門に行う調査会社Distimo & Newzooによれば,アメリカとヨーロッパの6つの市場を合わせて,毎日約500万本のゲームアプリがダウンロードされているという。

 さらに,ニールセンの発表によると,ユーザーがゲームをプレイする時間はiOSが突出しており,Androidの月平均プレイ時間が9.3時間,Windows Phoneでは4.7時間なのに対し,iOSをベースにしたデバイスのユーザーは月平均のプレイ時間が14.7時間になっている。携帯ゲーム機と比べれば少ない数字なのかもしれないが,それでも「ゲームデバイス」と呼んでさしつかえないような程度の時間ではないだろうか。

すでに世界累計で1500万台を売ったといわれるiPad/iPad 2シリーズは,2011年中に北米で使用されるタブレットPCの5分の4を占めるという予想もあるほどの人気商品だ。ゲームタイトルにはカジュアルなものが多いが,45万タイトルにおよぶアプリに支えられた「どんな目的にも使える」という柔軟性が魅力だ
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 iPad対応ゲーム/アプリiPhone/iPod touch対応ゲーム/アプリは,4Gamerの記事の見てもらえばお分かりのように,日本でも急速に一般化し,日米欧を問わず,ゲームアプリを提供している開発会社からは次々に景気の良い話が聞こえてくる。
 例えば,フランスをベースにするGameloftは,これまでの累計で約2億本もiOS向けゲームアプリを販売し,2011年5月に発売されたiOS用MMOG「Order and Chaos」では,ゲーム内アイテムの販売が好調で,発売から3週間で,100万ドル(約8067万円)の利益をあげたという。
 同じくElectronic Artsのモバイル部門であるChillingoは,2008年6月にスタートした後発メーカーでありながら,すでに約1億4000万本のアプリを販売。また,日本ではDeNAからリリースされることが決まった,Epic Gamesの「Infinity Blade」は,約100万ドルの予算が費やされたビッグプロジェクトだが,現在までに1100万ドル(約8億8850万円)の売り上げをあげたというから驚きだ。

 元Sony Computer Entertainment EuropeのExecutive Vice Presidentで,現在はロンドンに本拠を置く投資会社の運営に関わるPhil Harrison(フィル・ハリソン)氏は,イギリスのゲーム誌「Edge」のインタビューに対して「Appleは,数年後にゲーム業界そのものになる可能性がある」と述べている。「iPhone,iPad,そしてiPodシリーズが,AppストアやiTunesをベースにした“エコシステム”の中にあり,消費者がゲームソフトを“発見”し“購入”するメカニズムが非常に良く機能している」というのがその理由で,Harrison氏は,場合によってはiOSをベースにしたハードウェアが,欧米のゲーム市場を淘汰していくかもしれないと考えている。
 現在,クラウドゲームサービス「Gaikai」の顧問としても活動するHarrison氏はさらに,既存のゲーム業界は「AppleのほかにもAmazonやSteamなど,成功しているビジネスモデルを積極的に考察し,学んでいくべきだ」と主張する。


iOS用ゲームアプリの成功のメカニズム


「Max Payne」や「Alan Wake」などで知られるRemedy Entertainmentが発表したばかりの,iOS向け本格派レーシングアクション「Death Rally」。発売からわずか3日間で,開発費用を完全に回収したといわれる。10万タイトルを超えるiOS向けゲーム市場からは,こうしたサクセスストーリーが良く聞こえてくるが,もちろん,さざ波ひとつたてずにリストの底に沈んでしまう作品も多いはず
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 Harrison氏の言う“発見”と“購入”のメカニズムに乗って,最も成功した例が「Angry Birds」だろう。
 2009年12月に発売されたAngry Birdsは,2010年2月初めにイギリスのAppストアで1位に輝き,その3週後に北米でも1位を獲得した。つまり,ヒット作と認められるまで約4か月かかっているわけだが,この間はとくにプロモーションをするわけではなく,ユーザーの評価にほぼ頼っていた。
 鳥をパチンコで飛ばし,積み木のような建物に隠れる豚を倒すという単純なゲームだが,中毒性の高さだけでなく,99セントという価格の安さや頻繁なアップデートなどで人気を呼び,iOS向けのゲームアプリのお手本としての評価も高い。

 難題にぶつかったときにパズルを解いてくれるインゲームアイテム“イーグル”が本体と同じ価格で販売されているが,開発元のRovioによると,約半数のプレイヤーが購入しているという。また,ハロウィンやクリスマスなどにリリースされるホリデーバージョン,CGアニメ「RIO」とのタイアップバージョンなど,さまざまな関連作品が発売されており,iOS版だけの数字ではないが,現在までに約2億5000本という大ヒットのアプリになっているのだ。

 こうした成功例は今後も見られるだろうし,事実「Fruit Ninja」「Tiny Wings」といったヒット作も生まれている。確かに,ゲームアプリの中には安易なコピーだったり,作り込みの足りない中途半端な作品もあるが,タイトルの豊富さと価格の安さが消費者のハートをがっちりつかんでいるのは事実だ。

 以前からモバイルゲームには興味を持っていたというid SoftwareのJohn Carmack(ジョン・カーマック)氏も,当然ながらiOSの将来に対して肯定的だ。アメリカのゲーム情報サイトIndustryGamersに掲載された記事で,Carmack氏は「(2011年10月に欧米で発売される予定のFPS)『RAGE』の開発が始まった頃には,iPhoneなど存在しなかった」と,iOSベースのデバイスが非常に早く普及したことを述べ,「確かに,グラフィックス面ではコンシューマ機と比較できないが,5年,10年と時間が経つにつれて性能や環境が整備され,やがて多くの人を満足させるだけのゲーム体験を得られるプラットフォームになるのではないか」と述べている。

 ハイレベルだといわれるInfinity Bladeだが,実際にプレイしてみると,やはりカジュアルな雰囲気が濃厚で,コアゲーマー向けのタイトルほど深みのあるプレイは望めない。iOSベースのデバイスが,本格的なゲームデバイスとしてさらに発展していくためには,Carmack氏の言う性能向上に加え,もしかすると,現在のコアゲーマーを取り込んでいくことも必要になってくるかもしれない。
 そうなった場合,任天堂やSony,Microsoftといった既存のプラットフォームホルダーとのより激しい競合が待っているはずだ。今後数年間は,欧米の携帯ゲーム機市場は激動の時代を迎えるかもしれない。

著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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