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ARM,低消費電力がウリの新型CPUコア「Cortex-A7」を発表。100ドル以下のエントリー向けスマートフォン向け
さらに,今回発表されたCortex-A7と「Cortex-A15」(Cortex-A15 MPCore)とを組み合わせて省電力化を実現する「big.LITTLE処理」も合わせて発表されている。
big.LITTLE処理は,負荷状況に応じて処理に使うコアを切り替えるというもの。負荷が低い場合にはCortex-A7を利用し,負荷が高い場合はCortex-A15を利用するといった具合だ。アプリケーションやソフトウェアからは1つのプロセッサと認識されるうえ,コアの切り替えにかかる時間は約20μsと短いため,負荷状況に応じたシームレスな切り替えが可能だという。
……ここまでの説明でピンと来た人も多いのではないかと思うが,9月21日にNVIDIAがホワイトペーパーを公開した省電力技術「Variable Symmetric MultiProcessing」(vSMP)に近いものといえそうだ。vSMPを取り入れたNVIDIAの次世代プロセッサ「Project Kal-El」(プロジェクトカルエル)では,「Cortex-A9」(Cortex-A9 MPCore)による4+1コア構成を採用し,負荷状況に合わせて4コアと1コアを切り替えるものになっていたが,それをCortex-A15とCortex-A7で実現してきたものがbig.LITTLE処理といったところだろうか。
ARMは,Cortex-A7を,100ドル未満のエントリー向けスマートフォンで高い性能を実現できるプロセッサとして訴求しつつ,big.LITTLE処理を採用するなら,ハイエンド向けのSoC,ひいてはスマートフォンでも,性能とバッテリー駆動時間の両立を図れる技術としてもアピールしている。次世代(次次世代?)スマートフォンやタブレットに向けて,面白いCPUコアが登場してきたといえそうだ。
ARM公式Webサイト
####以下,リリースより####
ARM、史上最高のエネルギー効率を誇るアプリケーション・プロセッサを発表、big.LITTLE処理により消費電力と性能の新たな関係を確立
性能向上とバッテリ寿命延長の両立により、常時オン、常時接続でのモバイル機器利用をさらに拡大し、現代の業界課題を解決
英ARM社(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:横浜市港北区、以下ARM)は、ARMが開発したアプリケーション・クラスのプロセッサとして史上最高のエネルギー効率を誇るARM Cortex-A7 MPCoreプロセッサ、および消費電力と性能の関係を再定義する柔軟なアプローチとしてbig.LITTLE処理を発表しました。Cortex-A7プロセッサは、現代の主流スマートフォンの多くに採用されているCortex-A8プロセッサが確立した低消費電力の先進性をさらに強化しています。Cortex-A7プロセッサは、Cortex-A8プロセッサに比べ、エネルギー効率は5倍、サイズは5分の1にもかかわらず、大幅に高い性能を提供します。Cortex-A7プロセッサは、100ドル未満のエントリ・レベルのスマートフォンでも高度な機能を可能にし、発展途上市場のスマートフォン・ユーザを10億人増加させると期待されています。
現代のテクノロジーにおける最大の課題の1つは、性能向上とバッテリ寿命の延長という矛盾する消費者ニーズを満たすシステムオンチップ(SoC)の開発です。Cortex-A7のbig.LITTLE処理は、高性能のCortex-A15 MPCoreと超高効率のCortex-A7プロセッサを組み合わせることにより、これを実現します。big.LITTLE処理では、性能要件に応じて、デバイスがタスクに適切なプロセッサをシームレスに選択できるようにします。重要なのは、この動的な選択がプロセッサ上で動作するアプリケーション・ソフトウェアやミドルウェアにトランスペアレントで行われる点です。
ブロードコム、Compal、フリースケール、HiSilicon、LGエレクトロニクス、Linaro、OK Labs、QNX、レッドベンド、サムスン、Sprint、ST-エリクソン、テキサス・インスツルメンツなど、ARMパートナー各社がこれらのテクノロジーを支持しています。文書および映像でのコメントは、以下およびhttp://www.youtube.com/ARMflix でご覧ください。
モバイル機器の利用は大きく変化しており、現在、消費者はインターネット接続にスマートフォンを利用することが多くなりました。これには、Web上のブラウジング、ナビゲーション、ゲームのほか、音声通話、ソーシャル・ネットワーキング、電子メールなど、「常時オン、常時接続」のバックグラウンド・タスクが存在します。この結果、携帯電話は、多くの消費者にとって生活に不可欠な電子機器となっています。同時に、タブレットなど新しい形のモバイル機器が、消費者のニーズに応えてコンピューティング・プラットフォームの概念を塗り替えつつあります。消費者は、新しい形でコンテンツを利用し、かつては有線機器に限られていた機能をモバイル環境でも利用しています。
ARMは、big.LITTLE処理とCortex-A7プロセッサの開発により、コンテンツの制作と消費に必要な性能を提供する技術上の問題を解決しつつ、極めて高い電力効率によってバッテリ寿命の延長を提供します。これは、スマートフォンやタブレットが消費者にとってインターネット利用の主要プラットフォームへと進化しつつある現在、特に重要なことであると言えます。
●Cortex-A7 - 低消費電力におけるARMの先進性
ARMプロセッサの消費電力とフットプリントが小さい理由は、アーキテクチャの効率性にあります。Cortex-A7プロセッサは、28nmプロセス・テクノロジーで0.5mm2未満の実装面積で、シングル構成でもマルチコア構成でも卓越した性能を提供します。Cortex-A7をスタンドアロン・プロセッサとして使用した場合、2013〜2014年には100ドル未満のエントリ・レベルのスマートフォンで、現在500ドルのハイエンド・スマートフォンに匹敵する処理性能を提供すると期待されています。
ARMは、エントリ・レベルのスマートフォン市場に関し、モバイル機器でインターネット上のコンテンツやサービスを利用する発展途上世界の消費者を10億人増加させるというビジョンを掲げています。
●big.LITTLE処理 - 適切なプロセッサの選択
big.LITTLE処理では、互換性を持つ2種類のプロセッサを同じSoCに組み合わせ、電力管理ソフトウェアを使用してタスクに適切なプロセッサ、または複数のプロセッサをシームレスに選択します。2つのプロセッサは、アプリケーション・ソフトウェアからは同一と認識されます。
消費電力の低い「LITTLE」プロセッサ、この場合Cortex-A7は、オペレーティング・システム(OS)のほか、ソーシャル・メディアや音声再生など、基本的な常時オン、常時接続タスク向けのアプリケーションを実行します。OSとアプリケーションはナビゲーションやゲームなど、ハイエンド・タスクのニーズ増加に従って高性能プロセッサへとシームレスに移行します。この移行にかかる時間は、約20マイクロ秒です。
作業に適切なプロセッサを選択するというこの柔軟なアプローチが、処理の高度な最適化を可能にし、一般的な処理に必要なエネルギーを大幅に節約します。システムIPとツールがマルチコア・ソリューションのコヒーレンシ確保と最適化を実現2つのプロセッサ間での効率的でシームレスな作業の切り替えに貢献するのは、AMBA(R) 4 ACEコヒーレンシ・エクステンションなどのARMシステムIPです。このIPが、Cortex-A15とCortex-A7、およびシステム全体にわたって、キャッシュ、I/O、プロセッサ間の完全なコヒーレンシを確保します。このため、ソフトウェアとアプリケーションは遅滞なく実行され、タスクのバランス維持によってユーザに意識されることなく最適なbig.LITTLE処理を実現します。
●big.LITTLE電力管理ソフトウェアは、ARM DS-5ツールおよびFast Models
仮想プロトタイピング・テクノロジーにより、シリコン完成の数カ月前にARMのエコシステム・パートナーによって開発されました。この仮想プラットフォームは、現在、リード・パートナーに提供を開始しており、Cortex-A15、Cortex-A7プロセッサとキャッシュ・コヒーレント・インタコネクト・システムIPの搭載によって、総合的なシステム・ソフトウェア開発を可能にしています。
詳細は、以下をご覧ください:
■ big.LITTLE処理:
http://www.arm.com/products/processors/technologies/bigLITTLEprocessing.php
■Cortex-A7:
http://www.arm.com/products/processors/cortex-a/cortex-a7.php
ARMおよびARMパートナーによるコメント
ARM:
ARMのプロセッサ部門執行副社長であるMike Inglisは、次のように述べています。「消費者は、コンピュータとしてスマートフォンやタブレットを主に利用するようになり、性能だけでなく、一般的な常時オン、常時接続サービスを求めています。業界とARMのエコシステムにとっての問題は、それをどのように実現するかです。Cortex-A7およびbig.LITTLEの発表は、高エネルギー効率プロセッサの新しい基準を確立し、消費電力と性能の既成の関係を改めることで、この問題を解決するとともに、ARMの技術的先進性を高めています。」
ブロードコム:
ブロードコム社のモバイル・アプリケーション・プロセッサ・ビジネス・ユニット副社長兼ジェネラル・マネージャであるMartyn Humphries氏は、次のように述べています。「ARMは、新しいCortex-A7プロセッサIPの発表により、消費電力と性能のレベルをさらに引き上げました。Cortex-A7による消費電力を最適化したマルチコア方式は、モバイル機器の機能向上、そして最終的にはユーザ・エクスペリエンスの向上を促進するものです。」
Compal:
Compal Electronics社のイノベーション担当副社長であるLeonard Tsai氏は、次のように述べています。「多機能、接続性、そして低消費電力に対する市場需要に応えるには、高度なプロセッサ、システム、チップ設計が必要です。当社は、ARMの新しいCortex-A7プロセッサと新しいbig.LITTLEテクノロジーが、エネルギー効率と性能の大幅な向上を実現し、消費者が未来のスマートフォンやモバイル・コンピューティング機器に期待するエクスペリエンスのレベルを塗り替えると期待しています。」
フリースケール:
フリースケール社のマルチメディア・アプリケーション部門副社長兼ジェネラル・マネージャであるBernd Lienhard氏は、次のように述べています。「市場が進化するにつれ、幅広い市場にわたって最高のユーザ・エクスペリエンスを提供できる低消費電力と高性能処理に対するニーズが高まりつつあります。ARM Cortex-A7テクノロジーとbig.LITTLE処理、それにフリースケールのマルチコア技術の組み合わせにより、当社は、革新的なすばらしい新製品をお客様にお届けすることができます。」
HiSilicon:
HiSilicon社のGeorge Yiu氏は、次のように述べています。「これからの携帯電話およびポータブル・コンピューティング機器は、優れた処理性能を必要とする高度な機能と長いバッテリ寿命により、さらなるユーザ・エクスペリエンスを追求することになるでしょう。Cortex-A7プロセッサの低消費電力と性能、それにCortex-A15と組み合わせたbig.LITTLE処理の開発により、当社のお客様には、常時オンの卓越したモバイル・コンピューティング機能を備えた最先端のモバイル機器を提供していただけると期待します。」
LGエレクトロニクス:
LGエレクトロニクス社副社長兼SICセンター長であるBo-ik Sohn氏は、次のように述べています。「ARMは、ARM Cortex-A7プロセッサの発表により、モバイル機器とバッテリ電源アプリケーションの性能とエネルギー効率のレベルをさらに引き上げています。big.LITTLE構成でCortex-A15プロセッサと協調するCortex-A7の機能は、次世代の携帯電話およびモバイル・コンピューティング機器で最高のユーザ・エクスペリエンスを提供しようとする機器メーカにとって、高性能と低消費電力の要件を満たす大きな助けとなるでしょう。」
Linaro:
Linaro社のCEO(最高経営責任者)であるGeorge Grey氏は、次のように述べています。「Linaroは、Linuxベースのシステムが、セキュリティ、高性能、最高の電力効率を含め、マルチプロセッサ型ARM搭載システムのすべての機能を十分に利用できるよう、ARMおよび他のメンバーと緊密に協力しています。当社は、新しいCortex-A7プロセッサと、それが実現するbig.LITTLEシステムを継続的にサポートすることにより、将来のコンシューマ機器および企業用機器に、高エネルギー効率、高性能のシステムがさらに普及すると期待しています。」
OK Labs:
OK Labs社の創立者兼CEO(最高経営責任者)であるSteve Subar氏は、次のように述べています。「OK Labsの仮想化技術は、機器メーカがCortex-A7プロセッサの機能を最大限に活用する上で役立っています。スケーラブルな性能を誇るCortex-A7とOKL4の両方が、低消費電力動作と、シングルコア/マルチコアのbig.LITTLEシステムに貢献しています。」
QNX:
QNX Software Systems社のストラテジック・アライアンス担当ディレクタであるLinda Campbell氏は、次のように述べています。「ARMは今回も、車載機器および医療機器業界のお客様が求める高性能と低消費電力の両方を提供できることを実証しました。当社は特に、Cortex-A7プロセッサのエネルギー効率とマルチコア機能が、設計の進化に応じて処理能力を増減する自由をお客様に与えることを歓迎しています。」
レッドベンド:
レッドベンド・ソフトウェア社のCEO(最高経営責任者)であるYoramSalinger氏は、次のように述べています。「コネクテッド・ワールドに対するARMのビジョン、それにプロセッサ設計における専門知識という無敵の組み合わせにより、現在、ARMテクノロジーは、ほとんどすべての携帯電話に搭載されています。ARMのbig.LITTLE処理が実現する高度な機器は、私たちの生活や仕事を変えることになるでしょう。レッドベンドは、ARMプロセッサの仮想化拡張機能を生かし、極めて包括的なモバイル・ソフトウェア管理ソリューションを機器メーカやサービス・プロバイダ、自動車業界、企業、その他の市場に提供する独自の立場にあります。私たちは、ARMのパートナーとして、世界中のモバイル・ユーザ・エクスペリエンス向上に取り組んでいることを誇りに思います。」
サムスン:
サムスン・セミコンダクター社の副社長であるJohn Kalkman氏は、次のように述べています。「高性能で電力効率に優れたスーパーコンピュータを消費者の手のひらサイズにしようと、各社がしのぎを削っています。当社は、ARMと提携し、モバイル・コンピューティングにおける消費電力と性能の方程式を新たに定義することをうれしく思います。当社とARMの革新的テクノロジーの組み合わせにより、SoC設計者は、常時オン、常時接続のモバイル・コンピューティングに対応する機器を将来的に提供する上で、最適のアプリケーション・プロセッサを得ることになるでしょう。」
Sprint:
Sprint社のイノベーション&アドバンスト・ラボ・ディレクターであるVonMcConnell氏は、次のように述べています。「バッテリ消費は、特に、データ利用が急増している現代において、スマートフォンを使用する上で重要な要素です。ARM Cortex-A7プロセッサとbig.LITTLE処理は、スマートフォンの性能とエネルギー効率の向上に大きく貢献する可能性を秘めています。」
ST-エリクソン:
ST-エリクソン社のスマートフォン&タブレット・ソリューション担当上席副社長であるMarc Cetto氏は、次のように述べています。「ワイヤレス・コンピューティング・ソリューションが、3Dナビゲーション、モバイルAR(拡張現実)、HDビデオ、その他の高度な機能を、多くの消費者に手軽に提供できる時代が到来しました。高エネルギー効率のCortex-A7と、高性能Cortex-A15プロセッサを、ARMのbig.LITTLE構成で組み合わせることにより、スマートフォンやタブレットのメーカは、さらなる高性能と高電力効率を備えた機器の開発が可能となります。」
テキサス・インスツルメンツ:
テキサス・インスツルメンツ(TI)社OMAPプラットフォーム・ビジネス・ユニット担当副社長であるRemi El-Ouazzane氏は、次のように述べています。「TIのOMAP(TM)プラットフォームの成功要因は、超消費電力のモバイル・コンピューティングにより、スマートフォン、タブレット、超薄型ラップトップで、すばらしいユーザ・エクスペリエンスを提供することにあります。当社モバイル・プロセッサのスマート・マルチコア・アーキテクチャは、最小の消費電力で特定のタスクを実行するよう特化したエンジンやアクセラレータとともに、長年、ARMのメイン・プロセッサを支えてきました。当社はCortex-A7とbig.LITTLE処理の発表を歓迎しています。これは、スマート・モバイル・コンピューティングに対する革新的な取り組みの当然の成果であり、業界全体を進化させ、さらに低消費電力の汎用CPU性能を実現する新しいチャンスと考えられます。」
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